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2017.10

2017.10.23 Mon

Elvin Jones / Live At The Lighthouse

今回はElvin Jonesの代表作Elvin Jones Live At The Lighthouseを取り上げてみましょう。

1972年9月9日The Lighthouse, California

ts,ss,fl)Dave Liebman

ts,ss)Steve Grossman

b)Gene Perla

ds)Elvin Jones

Volume 1: 1.Fancy Free 2.New Breed 3.Small One 4.Sambra 5.My Ship 6.Taurus People 7. For All Those Other Times/Announcement

Volume 2: 1.Happy Birthday 2.Sweet Mama 3.I’m A Fool Want You 4.The Children Save The Children 5.Brite Piece 6.Childrern’s Merry-Go-Round

我々の間では「サカナ」と呼ばれ、Coltraneスタイルを信奉するテナーサックス奏者にとってバイブルのような存在のアルバムです。演奏内容もそうですが、こんなに個性的でエグいレコードジャケットを他に見た事はありません。

1973年にBlue Noteから2枚組レコードで発表され、1990年に計6曲の未発表テイクを加えてVolume1, 2の2枚のCDの形でリリースされました。このリリース時にDave Liebmanがプロデューサーとして関わり(CDに自身がライナーノートも書いています)、そのお陰か、レコードでは若干引っ込んでいたSteve Grossmanのサックスの音がCDではぐっと前に出て、むしろLiebmanよりも音像がはっきりしており、当日絶好調、神がかったGrossmanの演奏を一層明確に聴く事が出来るようになりました。ちなみにレコーディング当日はElvinの45歳の誕生日、メンバー全員演奏に気合が入るというものです。

Elvinは1966年John Coltrane Quartet退団後George Coleman、Joe Farrell、Pepper Adams、Frank Fosterらのサックス奏者たちとレコーディングをしていました。その後とうとう二人の若きテナー奏者を見つけたのです。Dave Liebmanは当時26歳、Steve Grossmanに至っては21歳!二人ともMiles Davis Bandに在籍し、すでに名前はジャズ界に知れ渡っていましたが、二人をフロントに迎えて2テナー・ピアノレス・カルテットとは素晴らしい発想、人選です。二人ともユダヤ系アメリカ人、頭の構造や幼少期からの教育環境が違います。楽器が上手いのは勿論ですが、イマジネーションに優れ、常にクリエイティブなのです。実はこのLighthouseの前年71年2月12日に既にLiebman-Grossmanの2テナーでElvinはレコーディングをしています。

Merry-Go -Round (Blue Note)

1曲目Round Town、2曲目Brite Piece、そして6曲目Chick Coreaと一緒にLa Fiesta(!)を、7曲目The Children’s Merry-Go-Roundを演奏しています。いずれの曲もコンパクトな演奏に仕上げており、各々のソロがない曲もありますが、逆にElvinの作品の中では比較的聴き易い作品になっています。それにしてもこちらのレコードジャケットも物凄いインパクトです(笑)

実はこのメンバーでの演奏がyoutubeに上がっています。

 

https://www.youtube.com/watch?v=F_SVp5QtuHI

(クリックして下さい)

1)The Children’s Merry-Go-Round

2)Yesterdays

3)Brite Piece

73年フランスでの演奏、テレビ放映の画像のようです。ぜひご覧になって下さい。映像が合わさるとCD以上に迫力があり、Lighthouseの演奏を凌ぐ勢いです。モノクロの画像、限られたアングルでの撮影が時代を感じさせますが、演奏内容は現代では考えられないスポンテニアスな印象を受けます。Elvinのドラムセットの斜め後ろからの撮影なので最前列にいるElvinの奥方、ケイコさんの姿を見る事が出来ます。彼女はElvinのマネージメントも手がけ、ドラムセットのセッティングからスネアのチューニングまで行っていました。Elvinはそれこそ一人では電車の切符も買う事ができない、というかそんな必要はないのですが(笑)、ケイコさんに全てを任せ自分は演奏だけをすれば良いという状態でした。Elvinは89年にKeikoさんの出身地長崎市にInternational Elvinというライブハウスを持っていました。そこではなんと毎夜Elvinが出演するのです!東京からミュージシャンを呼び、トリオやカルテットで演奏を繰り広げ、共演者が不在の時にはElvinが一夜ドラムスソロを演奏するのです!一晩Elvinのドラムソロを聴いた人はソロのインパクト以上にドラミングからメロディが聞こえてきた、と言っていました。

時代は日本がバブル絶頂期から崩壊に向かい始めた平成の初年度、ギリギリの時期に1年間だけInternational Elvinは存在したのです。実は僕も2晩そこでElvinと共演したことがあります。

その時のツーショットです。随分痩身ですがElvinと肩を組んでいるのは僕本人です(笑)

どんなに素晴らしい、ジャズ界のリビング・リジェンドでも毎夜毎夜フルハウス、と言う訳には行かず、さらに一地方都市では集客も大変なことでした。加えて全てがElvinのためにという愛情深い奥方は、あまり演奏鑑賞に熱心ではないお客様に対して「貴方のジャズの聴き方は間違っている」とか、毎夜開演の前にお客様たちにかなり長い時間をかけて「平和のために祈りましょう」と説くのでお客様の足も遠のきがちになります。見かねたElvinの古くからの大親友ジョージ川口さんが自分のバンド「ジョージ川口とNew Big Four」を引き連れて応援に駆けつけることになりました。演奏のメインはElvinとジョージ川口さんのドラムバトルです。僕はそのメンバーとして長崎に向かいました。

International ElvinではElvinとKeikoさんが手弁当でわざわざ応援に来てくれたジョージさん一行を大歓迎で迎えてくれました。メンバー全員Elvinにきつくハグされ、当夜の演奏が盛り上がる気配を身を以て感じることが出来ました。

演奏はまずジョージ川口New Big Fourからスタートしました。スタンダードナンバーを軽快に演奏するジョージさん、Elvinの視線を意識してかいつになく飛ばしています。2曲演奏してその後ドラマーがElvinに変わります。あれ?この違いは何だろう?明らかに何かが違うのです。ドラマーが繰り出すリズム、音色やリズムの粘り方、最も感じたのが「1拍の長さ」です。僕が思うにジャズ界あらゆる器楽奏者の中でElvinが最も1拍が長く、目一杯たっぷりとしています。「拍」という枠の中に「音符」を入れるとするとElvinは拍に入りきらずはみ出てしまう程の長さを湛えたプレイをします。人間の繰り出すリズム、拍の長さがこんなに違うとは思いもよりませんでした。ステージの最後にElvinのオリジナル・ナンバーE.J.BluesをElvinとジョージ川口さんのツイン・ドラムで演奏しました。ミディアム・アップのブルースナンバー、テーマでのElvinのフィルインが物凄いです!超たっぷりとしているのにスピード感があってシャープ、ドラムの音色はまさにレコードで聴いたElvinそのものです!アドリブの際は二人のドラマーが同時に演奏しています。シンバルレガートも二種類聞こえてきます。1コーラス12小節に一度Elvinが大きくフィルインを入れるのですが、ジョージさんはすでに2拍以上早くなっています(汗)。長いものに勝てるわけがありません、1コーラスに一度2~3拍の調整をジョージさんその都度「あれれ?俺先に行っちゃたの?」という感じで慌てて行いつつ曲が進行していく、こんな不思議な演奏を体験したことはそれまでも、以降もありません。Elvinは大親友のジョージさんとの久しぶりの共演で満面の笑みを浮かべながら実に楽しそうに演奏しています。1回目のセットが終わるとElvinがジョージさんと固く握手、汗まみれの二人がハグをしています。その後休憩時間にジョージさんが僕に話をしにきました。ジャズファンの方々にはジョージさんのお人柄をご存知の方もいらっしゃると思います。大変に楽しい方で負けず嫌い、面白い話、経験談をよくしますが、尾ひれの他に背びれ、胸びれも付いているような話っぷりです。例えばバンドのメンバーに「先週の日曜日釣りに行ってきて、この位の魚を釣ったよ」と両手の人差し指で50cmほどの間隔を示します。メンバーの誰かが「ジョージさんそれってあまり大きくないじゃなですか?」と言おうものならジョージさんカチンと来て、「バカヤロウ!人の話は最後まで聞け、目と目の間がこの位ある魚をオレは釣ったんだ!」という具合です(爆)。「おい佐藤、エルビンのドラムはリズムが全く遅いだろ?音符が全部3連譜で早いテンポの曲なんて出来やしない。お前も大変だろうけど頑張ってくれ」ワオ!ジョージさん凄い!超負けず嫌い!一晩に物凄い2ステージを2夜に渡り繰り広げ、とても得難い経験をさせてもらいました。

 

いつもの悪い癖です、話がすっかり脇道に逸れてしまいました。本題のLighthouseに戻りましょう。

皆さんはThe Lighthouse Omnibookという本があるのをご存知ですか。

Charlie Parker Omnibookがあるように、このLighthouseのLiebman、Grossmanの演奏を全て採譜しオルタネイト・フィンガリングやフリークトーンの表記まで、事細かく記譜したコピー集です。こんな譜面集が出版されるなんて凄い時代になりましたね。僕も学生時代に結構Lighthouseはコピーしましたが、ここまで微に入り細に入りはやり遂げませんでした。

またLiebmanはPetter Wettreというノルウェーのテナー奏者、上記のThe Lighthouse Omnibookの著者ですが、その彼と2テナーカルテット、ベースが LighthouseのメンバーGene Perlaで「New Light / Live In Oslo」というCDを2006年に録音しています。Brite Piece、 Fancy Free、Sambra等のLighthouseのレパートリーを演奏しています。

学生の頃はこのLighthouseはColtrane Schoolのテナー奏者向けのマニアックなレコードと思っていましたが、現代のジャズ界ですっかり文化、ムーブメントとして定着しているように感じます。

 

Lighthouse Volume1の1曲目Fancy Free、トランペット奏者Donald Byrdのオリジナル曲です。Elvinのボサノバのリズムは切れ味が良くってたっぷり、強弱のダイナミクスが尋常ではありません。ここまで盛り上がるか!と言うfffからpppへの急降下、超人的コントロールが聴かれます。Liebmanのソプラノ、流暢でエグイです。Grossmanのテナー、嫌になるくらいに物凄い音をしています。この時の二人のマウスピースはOtto Link Four Star Model(Otto Linkの2番目に古い30~40年代のモデル)、オープニング5番か6番位にリフェイスされています。リードはGrossmanがRico4番、Liebmanは分かりません。リガチャーはSelmer Metal用、楽器本体は二人ともSelmer Mark6、多分14万番代前後ではないでしょうか。数年前eBayにこの時Liebmanが使用していたマウスピースFour Star Modelが本人の解説映像付き!で出品されていました。よっぽど入札しようかと考えましたが、今の自分にはちょっと狭いオープニングなので断念しました。

2曲目LiebmanのオリジナルNew Breed、全編Elvinはブラシでドラミングしています。Liebmanのソロも素晴らしいですが続くGrossmanの出だしの音色に背筋がゾクゾクしてしまいます。

3曲目Small OneはCD追加曲ですが、興味深い点があります。Liebmanがフルートを吹き、Grossmanがソプラノを吹いていますが、当夜はGrossmanはLiebmanがフルートを吹いている時以外ではソプラノを演奏していません。上記のyoutubeでGrossmanがLiebmanのソプラノを受け取って吹いている光景が見られるのですが、ここでも間違いなくLiebmanからソプラノを借りて演奏していると思います。同じ楽器ですがGrossmanの方が深い音色のように聞こえます。

4曲目Gene PerlaのオリジナルSambra、可愛らしい曲ですが演奏はとんでもないことになっています!カリプソのリズムでのLiebmanのソロ、メチャメチャカッコいいです。続くGrossmanのスイングでのソロ、なんて素晴らしいタイム感、ノリでしょうか!誰よりも1拍の長いElvinに対し丁々発止と一糸乱れぬコンビネーションを聴かせます。同じElvinのドラミングで名演奏のSonny RollinsのVillage Vanguardでのライブを連想、いやひょっとして上回る演奏かもしれません。

6曲目Taurus Peopleはその後Grossman、PerlaとドラムスのDon Alias3人で結成したバンドStone Allianceの重要なレパートリーとなった曲です。ここではレコーディングを意識したと思われるコンパクトなサイズで演奏されていますが、多分Grossmanがテーマを間違えたのに加えソロが他の演奏と比べてラッシュしているのでレコード収録までには至らなかったと思います。

Volume2の2曲目PerlaのオリジナルSweet Mama、この作品のハイライトの一つです。テーマに続くPerlaのフリーソロ。きっとこの人はシャレの通じるタイプだとソロの内容から感じ取りました。今一度テーマ奏の後Grossmanが先にソロを取ります。学生の頃は二人のテナーの違いが余り分からなかったのでどちらだろう?と首をひねった覚えがあります。Grossmanの太くてダークで倍音豊富な音色、彼の完璧な奏法の賜物です。Liebmanも素晴らしい枯れた音色です。

4曲目The Children Save The Children、Elvinはシャッフルも素晴らしいです!深いビート感、シャープなシンバルレガート。Elvinのローディを長年やっていたドラマーの吉田正弘氏から聞きましたが、Elvinは膨大な数のジルジャン・シンバルを持っていたそうです。今は一体何処にあるのでしょう?

5曲目未発表曲LiebamnのBrite Piece。彼の作風にしては明るめのサウンドなのでBrite Pieceでしょうか?ぜひyoutubeの73年の演奏とも比較してみて下さい。

ラスト6曲目はやはり未発表曲のChildren’s Merry-Go-Round。演奏時間28:31は60年代のColtrane Quartetを彷彿とさせます。ここでもLiebman〜フルート、Grossman〜ソプラノの持ち替えが聴かれます。ソロの先発はLiebman。出だしの音色がとてもGrossmanっぽく聴こえます。フィナーレにふさわしく物凄いソロの応酬です!バンドメンバー全員体力勝負です。でも同時にとても知的な作業にも聴こえます。

 

 

2017.10.18 Wed

Don’t Mess With Mister T. / Stanley Turrentine

テナーサックス奏者Stanley Turrentineの作品「Don’t Mess With Mister T.」を取り上げてみましょう。

1973年6月7, 8日録音

ts)Stanley Turrentine

g)Eric Gale

el-p)Harold Mabern

org)Richard Tee

b)Ron Carter

ds)Idris Muhammad

perc)Rubens Bassini

el.p,arr,cond)Bob James

Recorded by Rudy Van Gelder

Produced by Creed Taylor

1)Don’t Mess With Mister T. 2)Two For T 3)Too Blue 4)I Could Never Repay Your Love

2001年のCD化に際し1973年3月に録音された別テイク、未発表曲が計4曲追加されています。

この作品はあたかも大変声質が良い歌唱力のあるボーカリストが、お気に入りの曲を心ゆくまでの歌い上げた名唱集のようです。テナーサックスのインストルメンタル・アルバムという範疇を超えた説得力があります。

テナーサックスを志す者であれば一度はテナーらしい太い、豪快、男性的な益荒男ぶりを表現出来る、テナーサックスの王道を行く奏者を目指す時があると思います。Turrentineはまさにその憧れの頂点に座するテナーサックス奏者です。テナーサックスの魅力を箇条書きに挙げたとするならば、その全てがTurrentineの演奏に当てはまるはずです。

僕自身もTurrentineの音色を目標にした時期があります。特にこのアルバムの近辺、一連のCTIレーベルの作品での音色の素晴らしさには圧倒されました。この頃のTurrentineの使用マウスピースはOtto Link Florida Metalのオープニング9番にリードはLa Voz Med. Hard、楽器本体はSelmer Mark6 Gold Plateです。数字的に少しオープニングの狭いOtto Link8番、8★と9番、実は結構な吹奏感の違いがあり、峠一つ越える感じです。僕自身良い個体を手に入れようと、かつてかなりの額をこの辺りのオープニングのマウスピースに投資した覚えがあります(笑)

Turrentineの音色の秘密を探るべくデビュー当時から晩年までの使用マウスピース、楽器を調べましたが一貫してOtto Link Metal、Selmerで、テナーサック奏者の標準的セッティングです。他に例えば身体的特徴が影響しているのではないかと、よくよく見ればTurrentineは首がかなり短いのです。この短さが音色に影響しているのでは??とまで考えてしまいましたが、まさか。でも見回しても彼ほど首の短いテナーサック奏者はいませんので、首の短い奏者は良いサウンドが出せる論、あながち間違いではないかも知れません。

Turrentineの演奏スタイルはいわゆるTexas Tenorにカテゴライズされますが、他のTexas Tenor達、Arnette Cobb、Buddy Tate、Illinois Jacquet、Eddie “Lockjaw” Davis、Willis Jackson、Big Jay McNeely、Herschel Evans、David “Fathead” Newman、James Clay、Don Wilkerson、King Curtis、Wilton Felder、Sam Taylorとは根底にあるサウンドに同傾向のものを感じさせますが、表現力やジャズ的要素の深さ、風格で明らかに一線を画しています。本人もかなりプライドの高さを感じさせる人物で、「あなたのようなテナーサックスの音色を出すにはどうすれば良いのでしょう?」という質問に対し「僕のような音を出すのは他の人ではちょっと無理だろうね」と答えています。かつて雑誌の取材でTurrentineとMichael Breckerの二人に僕がインタビューするという企画がありました。この二人をアイドルとする僕は嬉しさ楽しさ反面、かなり緊張気味にその場に赴きました。Turrentineはあの強面で僕にコイツは誰だ?と睨みつける感じで椅子に座っています。その隣のMichaelが空気を察知し「Stanley、彼は僕の友人で素晴らしいテナー奏者のTatsuyaだ」と助け船を出してくれ、「おぉ、そうか」と言う感じでTurrentineがたちまち破顔し、雰囲気が和らぎました。実はMichaelもTurrentineの大ファン、彼を尊敬し、彼の演奏にも多大な影響を受けています。2人はインタビューの最中、終始和やかな感じでお互いをリスペクトしながら丁寧に質問に受け答え、互いの話題に談笑していました。このツーショットによるやり取りははあたかも横綱相撲を観るようでした(笑)

MichaelはTurrentineにアメリカからのフライト前に自分のリーダー作をプレゼントしたらしく、「飛行機の中でMichaelのCDを聴いてきたよ。素晴らしかったね!」と言っていました。このインタビューが1989年、時期的にはMichael「Don’t Try This At Home」がリリースされた後ですが、その前年にリリースされた初リーダー作「Michael Brecker」を渡した可能性もありますね。

 

89年7月はSelect Live Under The SkyにてSELECT LIVE”SAXOPHONE WORKSHOP”が企画され、出演しました。ts)Michael Brecker ts,ss)Bill Evans ts)Stanley Turrentine ts,as)Ernie Watts  p,direction)Don Grolnick b)鈴木良雄 ds)Adam Nussbaumというオールスター・セッション。そうなんです、インタビューはこの時に実現しました。この4テナーの人選、実はMichaelにオファーがあったのです。彼曰くTurrentine、Bill Evansの他にJoe Hendersonを推薦したそうですが、Ernie Wattsは他のバンドで当日出演が決まっており、主催者側としてはどうしても起用して欲しかったようでやむなくJoe Hen案はボツになりました。またこの前年にMichaelに会った時「Tatsuya、誰かベーシストを知らないか?来年日本でSummer Jazz Festivalに出演する予定なんだ」と尋ねるので、Chin Suzukiと言う素晴らしいプレーヤーがいるけれど、と答えました。当時僕は彼のバンドに参加させて貰っていました。I know his name. と言うやり取りがあった関係かどうかまでは分かりませんが、チンさん鈴木良雄氏の出演が決まりました。何のフェスティバル?とまでは聞かなかったのですが、まさかこのLive Under The Skyの4テナーとは思いもよりませんでした。そして89年7月29日よみうりランドEastのステージでSaxophone Workshopの演奏が行われたのですが、コンサート前日のリハーサル時にErnie Wattsがトラブルを起こしたのです。

Michaelに招待して貰い、都内某所のリハーサルスタジオでその全てを見聞きすることができました。Don Grolnickのオリジナル曲やLive Under The Sky’89のコンセプトであるDuke Ellingtonの作品スイングしなけりゃ意味がない、等をGrolnickの素晴らしいアレンジ、超豪華なミュージシャン達で楽しく綿密にリハーサル…と思いきや、何となくリハーサルの進行が思わしくありません。いちいち口を挟む輩のお陰で円滑に進行していないのです。それが誰あろうErnie Watts、エキセントリックな性格の彼は自分がリーダーでもないのにバンドを取り仕切ろうとしています。自分がいつも中心に居ないと気が済まない人っていますよね。リハーサルが終盤に差し掛かろうとした頃、ついに熱血漢のAdam Nussbaumがブチ切れてドラムスから立ち上がり、Ernie Wattsに殴り掛かろうとしたのです!!そこをGrolnickとMichaelがすぐさま「まあまあ、Adam、ここはひとつ落ち着いてくれよ」と間に入りました。暫くAdam NussbaumとErnie Wattsの睨み合いが続きましたが、機嫌を損ねた方のErnie Wattsはすぐさま楽器をケースに仕舞い込み、スタジオをそそくさと出てしまいました。TurrentineやBill Evans、チンさん 達は呆気にとられた感じで傍観しているのみでした。その後は当然、残された者達で早退した男の悪口大会になります。大会の終いには「Ernieはさ、あいつIndianの血が混じってるらしいぞ」出生にまで話が及んでいました。こんなトラブルがあった翌日のコンサート本番、演奏がバッチリと上手く行く訳がありません。更には事もあろうにErnie Wattsが曲の進行を取り仕切り、勝手に自分が司令塔となって指で4,3,2,1とCue出しをしています。当夜の演奏は出来が悪い訳ではありませんが、どこか空々しい雰囲気が漂う内容になってしまいました。翌日Michaelに会うと当然Ernie Wattsの話になり、「そもそもErnieは僕に強いライバル意識を持っていて、全然フレンドリーではなかったね」そして昨夜のErnie Wattsの所業の確認、それが一通り終われば今度は話の矛先がMichael Brecker Bandに主催者側の意向で参加したパーカッション奏者Airto Moreiraに向き、「オレはAirtoとは一緒に演奏したくなかったけれど、やっぱり酷かった。あの演奏じゃあまるでサーカスだ!」滅多に人の悪口を言わないMichaelですが、いつになく熱い語り口でした。

 

すっかり脱線してしまいました(汗)。話をDon’t Mess With Mister T.に戻しましょう。

1曲目表題曲Don’t Mess~はWhat’s Goin’ Onで有名なソウルシンガー、作曲家Marvin Gayeのオリジナル曲。72年の彼の大ヒット作「Troubled Man」に収録されている名曲です。Mister T.が当人Turrentineの事かどうかは定かではありませんが、彼のテナーサックス演奏のために書かれたかのようにその音楽性に合致した曲です。ここでのTurrentineの素晴らしい音色、歌い回しと言ったら!以前どこかの音楽誌に書いたことがありますが、自分の音色に迷いが生じた時には原点に戻るためにこのCDを聴くことにしています。確かにテナーサックスの録音に長けた、その腕前はジャズ界の至宝と言って良いRudy Van Gelderによるレコーディングですが、それにしてもこの音色には参りました。Turrentine自身も以降のライブでは重要なレパートリーの一曲になりました。

2曲目はTurrentineのオリジナル曲、Two For T。多分TはTurrentineで、もちろんVincent Yumans作曲、Doris Dayの唄でお馴染みのTea For Twoに引っ掛けた曲名ですが、アメリカ人もダジャレが好きなので安心しました(笑)スイングフィールのカッコいいナンバーで、Turrentineの唄心やリズムセクションとのインタープレイを存分に楽しめます。ソロの途中に出てくるHigh F音〜4度下のB♭音の色気とファンキーさに何度聴いてもグッと来てしまいます。

3曲目はTurrentineの大ヒット作Sugarと同傾向、似た雰囲気のマイナーのブルースナンバーToo Blue。一度大ヒットが出ると類似曲でも本人作ならば許される傾向は洋の東西を問わずあるものです。そう言えばSugarに纏わる逸話ですが、1973年8月CTIオールスターズで来日したTurrentine、楽屋でずっと練習をしていたそうですが一体何を吹いていたのか、何とSugarのメロディを延々と何十回も練習していたのです。大ヒットして既に何千回、何万回と演奏していたでしょう。でも多分自分自身はテーマ、メロディの唄い方に納得がいかず更に良く吹けるようにと暇さえあれば精進していたのです。見習わねば。

4曲目はTurrentineのサックスがまるでソウル・シンガーの歌いっぷりに聞こえてしまうゴスペル調のナンバーI Could Never Repay Your Love。Bob Jamesのアレンジも冴えています。Turrentineも録音された音色は轟音で生音が大きいように聴こえますが、Joe Hendersonと同じく意外と生音は小さいです。

この作品を最後にTurrentineは CTIレーベルを離れ、Fantasyへと移籍します。レーベルのカラーでしょう、作品はよりポップな芸風に変わって行きますがTurrentineはひたすらマイペースにそのサウンドを貫き通しています。個人的にはレコーディング・エンジニアが変わったためTurrentineの音色が物足りなくなりましたが。

2017.10.11 Wed

The Standard Joe / Joe Henderson

今回取り上げるのはテナーサックス奏者Joe Hendersonのリーダーアルバム「The Standard Joe」

テナー、ベース、ドラムスのトリオ編成による演奏です。

ts)Joe Henderson b)Rufus Reid ds)Al Foster

1991年3月26日NY録音

イタリアのRedレーベルから同年にリリースされました。

Joe Hendersonにとって次なるステップへの足掛かりになった作品です。

1)Blue Bossa 2)Inner Urge 3)Body And Soul(Take1) 4)Take The A Train 5)Round Midnight 6)Blues In F (In’n Out) 7)Body And Soul(Take 2)

誤解を恐れずに言うならば、Jazz演奏に於いてその楽器の良さやプレイヤーの個性を存分に引き出す演奏フォーマットはベーシスト、ドラマーを従えたトリオ編成です。ピアノトリオに代表され、ギタートリオしかり。サックス奏者もトリオ編成が可能ですが、行うには十分な音楽性をたたえたプレイヤーでなければなりません。

何しろコード楽器が不在のためにサックスのラインからコード感を確実に出せるハーモニー感が備わっている、演奏するメロディラインからリズムをしっかり聴かせる事が出来る、ベーシストとドラマーを音楽的に牽引する能力がある、同時に両者のプレイを踏まえつつインタープレイが出来るセンスを持つ、あと個人的にはサックスの音色やニュアンスに魅力がある事が条件になります。

「The Standard Joe」を語る前にサックストリオの名盤を何枚か挙げてみましょう。

まずはSonny Rollinsの「A Night At The Village Vanguard」

1957年11月3日NYC  ts)Sonny Rollins b)Donald Bailey, Wilbur Ware ds)Pete La Roca, Elvin Jones

素晴らしいテナーの音色、これぞレイドバック!というリズム感、究極小粋な”鼻唄”感覚のスインギーなソロ、Rollins絶好調です。

John Coltraneの「Lush Life」A面3曲のトリオ編成も素晴らしいです。

1957年8月16日NYC ts)John Coltrane b)Earl May ds)Art Taylor

Rollinsに比べると構築的なアドリブソロを展開していて、この頃から求道的なテイストを感じます。構築的であるからこそ後年Coltraneには幾多のフォロアーが現れたとも言えるでしょう。

ドラマーElvin Jonesのリーダー作でJoe Farrellをフィーチャーした「Puttin’ It Together」

1968年4月8日NYC ts,ss,fl)Joe Farrell b)Jimmy Garrison ds)Elvin Jones

Elvinが盟友Coltrane没後に組んだテナートリオ、Coltrane役に選ばれたのは当時新進気鋭のマルチリード奏者Joe Farrellでした。Coltrane Likeではありますが独自のカラーを持ったプレイヤーです。以降の活躍には目覚しいものがありました。

サックストリオはテナー奏者だけの特権ではありません。アルトサックスの名手Lee Konitzの代表作でもある「Motion」

1961年8月29日NYC as)Lee Konitz b)Sonny Dallas ds)Elvin Jones

クールな中にも大変にホットなジャズスピリットを湛えたKonitzの、ワンアンドオンリーなソロが聴けます。全曲有名なスタンダードナンバーが収録されていますが、いずれもが半世紀以上経過してもなおフレッシュさを失っていません。そしてどのソロも各々の曲目の代表的な演奏と言えます。Elvinの的確なサポートがこの作品の品位を高めています。

ベーシストDave Hollandのリーダー作でアルト奏者のSteve Colemanをフィーチャーした作品「Triplicate」

1988年3月NYC録音 as)Steve Coleman b)Dave Holland ds)Jack DeJohnette

個性的(変態的?)アルトのColemanをHolland、DeJohnetteの二人が驚異的なリズムでサポートしています。

現代ジャズシーンに欠かせないアルト奏者の一人、Kenny Garrettのサックストリオ作品「Triology」

1995年リリース as)Kenny Garrett b)Kiyoshi Kitagawa, Charnette Moffett ds)Brian Blade

Sonny RollinsとJoe Hendersonに捧げた作品だけあってテナーと見紛うばかりの演奏。でもサックスの音色は超個性的ながら間違いなくアルトサックスそのものです!このバランス感にやられてしまいました。

もう一作番外編?としてThe Ornette Coleman Trio「At The “Golden Circle”Stockholm 1&2」

1965年12月3,4日 Stockholm as)Ornette Coleman b)David Izenzon ds)Charles Moffett

以前はさっぱりこの演奏がワカリマセンでした(汗) Ornetteだけが出せるアルトの音色、フレージングやソロの展開の自由さ、捉われのなさ加減、僕の耳は最近やっとこの演奏に追いつけるようになりました。

The Standard Joeに話を戻しましょう。

ジャズファンの方なら耳にしたことがある話かも知れません、「Joe Hendersonの生音は小さい」と。レコーディングされた彼のテナーの音はあれだけ太くてゴリゴリとしており、音の輪郭もはっきりしているのに本当?と思う方もいらっしゃるでしょう。この話は都市伝説ではなく真実、いわゆる「マイク乗りの良い音」の典型的なケースで、黒人サックス奏者に多いのですが、オープニングの狭いマウスピースに薄めのリードを使い、「フッ」と吹いてアンブシュアを極力ルーズにしてマウスピース、楽器の美味しい倍音成分をしっかりと鳴らしている奏法なのです。他に該当する代表的なサックス奏者がアルトのCannonball Adderleyです。Johnny Hodges、Benny Carterもまたしかり。

因みにJoe Henの楽器セッティングはマウスピースがSelmer Short Shank(Long Shank使用時も有り)オープニングEにリードはLa Voz Med.Soft、サックス本体はSelmer Mark6 シリアル5万6千番台です。アンブシュアですが、デビュー当時から口ひげあごひげをたっぷりとたたえた口まわりですので、その詳細は謎に包まれています(笑)

この作品のドラマーは音量を小さくタイトに且つダイナミックに叩けるプレイヤーの代表選手Al Foster、Joe Henとのコンビネーションは完璧です。

以前ブルーノート東京にJoe Henderson Trioの演奏を聴きに行きました。メンバーはベーシストにGeorge Mratz、ドラマーにJeff ”Tain” Wattsでした。Jeff WattsはMarsalis兄弟やMichael Breckerと演奏できるストロング音量爆発タイプの演奏を信条としています。演奏中によく動くことでサックスのベルがマイクロフォンからしばしば離れてしまうJoe Hen、演奏が盛り上がれば盛り上がるほどオフマイクになり、Jeff Wattsも大暴れ状態、爆音にかき消されてテナーの音は全く聞こえませんでした(涙)

ベーシストRufus Reidも大変にタイトなプレイ、音色も生音に近いサウンドなのでAl Foster同様Joe Henを小さな音で大きくサポートしています。

1曲目トランペッターKenny Dorhamの代表曲Blue Bossa、Joe Henは彼の初リーダー作「Page One」でやはり1曲目で演奏していますが、ここでの成熟ぶり、変貌ぶりと言ったら!!

自由奔放とはまさにこの事を指すのでしょう。リズミックなサックスアカペラのイントロから始まりますがシンコペーションを上手く活かしたメロディープレイです。ソロもメチャイケてます!ストーリーの意外性はWayne Shorterにも通じるところがありますが、Joe Henの方がより「ジャズ」を感じさせます。トリルを駆使した「Joe Henフレーズ」はとてもインパクトがあります。

今はなき六本木Pit Innに1987年、オルガン奏者のKankawa TrioフィーチャリングJoe Hendersonを聴きに行きました。ライブ終演後にJoe Henに話し掛けてみましたが、小柄なJoe Henとても高いテンションで早口に対応してくれました。「初めましてジョー、僕もテナーサックスを演奏しています」と話すと「ああそう、じゃあ今度僕にレッスンをしてくれるかい?」「?…あなたが僕にレッスンをしてくれるのではなく、僕があなたにですか?」「そうだよ!お願いします!」と彼流の初対面のジョークなのでしょう、やられました(笑)

2曲目はJoe HenのBlue Note Labelへの3作目のリーダー作の表題曲、ベースもメロディユニゾンの難曲Inner Urge。テーマ自体がJoe Henフレーズのオンパレードの名曲です。イヤ〜この演奏もカッコいいです!

John McLaughlin Mahavishnu Orchestraに在籍していたベーシスト、Rick Lairdが自身のリーダー作「Soft Focus」でJoe Henを迎えて同名曲をOuter Surge(ダジャレの一種ですね)と言うタイトルで録音しています(1976年12月10.11日)。こちらは異種格闘技的なセッションですが、Joe Henはいつもの様にマイペースで素晴らしい演奏を繰り広げています。

それにしてもJoe Henのタンギング、タイムの素晴らしさ、楽器のコントロールの的確さ。人から聞いた話ですが、Joe Henが夜中ギグから家に帰ってくると演奏のままのハイテンション、休むことなくそのまま朝まで練習するそうです。きっと「ファック!今日はあそこがダメだった、出来なかった。悔しい!」とか言いながら。練習の鬼でないとこんなSuper Human Beingのような演奏が出来る訳がありません。

3曲目はスタンダードナンバー、テナー奏者のバラードプレイ・ショウケースBody And Soul。7曲目にTake2も収録するほどのお気に入り、もの凄いクオリティの演奏です。

4曲目はJoe Henが取り上げる事自体が意外なBilly Strayhornの名曲Take The A Train。これまた素晴らしい演奏です!「おいおい、君の褒め言葉のボキャブラリーには素晴らしいしか無いのかい?」と言われても仕方ありません、本当に素晴らしいのです!!曲という題材があってそれを元にストーリーを語って行く、落語のお題をしっかり膨らませて行く作業と同じ次元ですね。Joe Henフレーズ、ワールド、歌い回しがTake The A Trainの曲想と見事に有機的に反応しています。

推測するにここでの選曲が功を奏したことにより、Joe Henは1991年9月3~8日録音、翌1992年Verve LabelからBilly Strayhorn特集であるLush Life : The Music Of Billy Strayhornをリリース、同年Grammy賞Best Jazz Instrumental Performance, Soloistを受賞するという栄誉に輝き、「通好みのテナーサックス奏者」が一躍ジャズ界を代表するテナーサックス奏者に変貌しました。そしてその後Verveから名作を立て続けに発表する事になります。

5曲目はJoe Henオハコのバラード、Round Midnight。The Lighthouseのライブ盤や日本公演のライブでも演奏しています。

Joe Henの音色、吹き方とこのバラードが絶妙にマッチしていると思います。こちらでもまた名演奏が生まれました。

6曲目は自身のBlue Note2作目のリーダー作「In’n Out」からの表題曲。Joe Henならではの凄いメロディラインの曲です。

Blues In Fということですが、これまたJoe Henらしいトリッキーなイントロ〜エンディングが付け加わっています。当CD最速の演奏、物凄〜くカッコいいです!スピード感、スイング感、ソロの構成、ベースとドラムスとのコンビネーション、完璧です!!Al Fosterが曲が終わってからも曲中でプレイしたフレーズを名残惜しそうに(?)まだ叩いているのが印象的です。

2017.10.01 Sun

Buster Williams / Something More

美しくて深い音楽、ベーシストBuster Williamsのリーダー作「Something More」を取り上げてみましょう。

New JerseyにあるRudy Van Gelder Studioにて1989年3月8,9日録音。

ドイツのIn+Out Recordsから1989年にまずレコードがリリースされ、後に1曲追加(7曲目I Didn’t Know What Time It Was)されてCDもリリースされました。

およそCD発売時の追加テイクに関しては残り物感が漂いますが、この作品では全く異なり、むしろ最重要な演奏曲です。演奏時間が14分28秒と長く、レコードでは時間の関係でやむなく収録を見合わせたように思います。CD化されて作品として完全な形になりました。

bass,piccolo bass) Buster Williams

piano,keyboards) Herbie Hancock

tenor,soprano sax) Wayne Shorter

trumpet) Shunzo Ohno

drums) Al Foster

 

1.Air Dancing

2.Christina

3.Fortune Dance

4.Something More

5.Deception

6.Sophisticated Lady

7.I Didn’t Know What Time It Was

我々ミュージシャンの演奏を生かすも殺すも録音エンジニアの腕に掛かっていると言って過言ではありません。

この作品は内容の素晴らしさもさることながら、録音がとても素晴らしいのです。美しい音で良い演奏を楽しめるのは音楽鑑賞の原点です。

さすがBlue Note、Prestige、Impulse、CTI、ジャズ黄金期の名レーベルの録音を支えたレジェンド・エンジニア、Rudy Van Gelder(RVG)、そして自身のNew Jerseyにあるスタジオでのレコーディングです。各々の楽器の音色の美味しい成分、倍音成分、輪郭、雑味、音像の位置を的確に捉えたレコーディングに仕上がっています。

RVGは楽器の特性、音色の本質、ミュージシャンそれぞれの個性やスタイルによるサウンドの表現の違いや醸し出される音のどこに着眼すべきなのか、芸術的な領域まで理解しています。その意味ではもう一人の参加ミュージシャンと言えます。ミキシングの際の各楽器の配置、レイアウト、マスタリング時のサウンドの変化の度合いも全て見据えて録音に臨んでいるので、さぞかしミュージシャン達は自分の音をRVGに任せていれば安心、大船に乗った気持ちで演奏に専念することが出来た事でしょう。

60年代Blue Note Labelの諸作ではポータブル蓄音機やジュークボックスでのレコード再生を念頭に置いた、『凝縮された音質』での録音で、これらをCD化した際には多少違和感のある音質でしたが、本人RVGによる24bitデジタルマスタリングでかなりの高音質に変化しました。でも個人的には60年代Blue Note録音の再生はレコードに勝るものはありません。

80年代CDのデジタル録音が主流になってからもRVGはその手腕、他の追随を許さないセンス、生涯クオリティの高いレコーディングのするための研究を続けた情熱、実績から、録音エンジニアの第一人者の地位を確固たるものにしています。

ここでのWayne Shorterのソプラノサックスの深い音色が堪りません!もう何度も耳にしていますが聴く度にゾクゾク、ワクワクしてしまいます!誰も成し得ていない未知の領域の音色。いわゆる普通のソプラノサックスの音色とは全く次元が異なります。太くてエッジー、暗くて明るくて、ツヤがありコクを併せ持ちつつ、七色に刻々と変化するサウンドを完璧なまでに押さえています。

実はソプラノサックスを録音するのはテナーやアルトよりもずっと難しく、エンジニアの腕の振るいどころ、いや、むしろその逆で鬼門かも知れません。ソプラノのベル先端に1本、管体中程に1本、そしてソプラノの全体のアンビエント(雰囲気)を収録すべくもう1本、少なくとも合計3本のマイクを必要とし、収録の際の楽器とマイクの距離や位置、イコライジング、更には3本のマイクのバランスが大切なのです。以前取り上げたことのあるSteve Grossmanの「Born At The Same Time」のソプラノの録音はベル先端に1本のみ使用の音色に聞こえます。これはこれで迫力のある音色ですが、どこか「チャルメラ」っぽさは否めません。大雑把に述べるならばベルからの音は金属的な硬い成分、対する管体中程からの音がマイルドな美味しい成分と言えます。ソプラノRVGは特に管楽器、中でもテナー、ソプラノサックスの録音が特に上手いと思います。Blue Noteで何枚ものリーダー作を録音した名テナー奏者Stanley Turrentineをして、「僕の生音よりRudyの録音の方が全然格好良いよ」言わしめています。Sonny Rollins、John Coltraneに始まり、Eddie “Lockjaw” Davis、Illinois Jacquet、Tina Brooks、Dexter Gordon、Hank Mobley、Benny Golson、Willis Jackson、Joe Henderson、Sam RiversたちのRVGが手掛けたテナーの音色は、確かに本人達の生音よりも良いのかもしれません(笑)

この頃のWayne ShorterはYAMAHA YSS-62ネック部分がカーヴしたストレート・タイプのソプラノを使用しています。YAMAHAからのエンドースではなくWayne本人がチョイスしたと言われています。マウスピースはOtto Link Slant、オープニングが10番と特注以外考えられない仕様のものです。因みにテナーのマウスピースもOtto Link Slant 10番。ソプラノMPはOtto Link本人に何本か作って貰ったそうで、複数本まとめた状態での収納されたケースを見た事がある人がいます。リードに関しては色々な種類を使っていたようで、この頃は何を使っていたかは確認できていませんが、後年Vandorenの3番を使っていた模様です。テナーはRicoの4番を使用していたので、ソプラノもひょっとしてRicoを使っていたのなら3番から3半の辺りと推測されます。

作品中2曲目のChristinaの演奏が真骨頂です。メロディ、コード進行の美しいBuster Williamsのオリジナル曲、まさしくWayne Shorterのソプラノのために書かれた曲と言えます。Buster Williamsのベースライン、Herbie Hancockのバッキング、YAMAHAのDX7と思しき?シンセサイザーのオーケストレーション、ドラムスAl Fosterのカラーリングが「さあ下ごしらえは出来上がった。Wayne、思いっきり歌ってくれ!」とばかりにバックアップしています。

タイトル曲のSomething Moreでも全く同様の事が言えます。因みにBuster Williamsは”Something More Quartet”というバンド名でリーダー活動を継続的に行なっているようです。メンバーは流動的ですが、フロントはアルトサックス奏者の場合が多いようです。

そしてそして、もう一曲Wayneのソプラノサックスが大活躍するテイクが、CD追加分のスタンダード・ナンバーI Didn’t Know What Time It Was。この当時はWayne がスタンダードを演奏する事自体が珍しかったのです。1960年代Art Blakey Jazz MessengersやMiles Davis Quintetで曲目限定ではありましたが、スタンダード演奏を聴くことが出来ました。その後Weather Reportや自分のグループでの演奏では全くと言って良いほどスタンダード・ナンバー演奏から無縁でした。

このRichard Rodgersの名曲をBuster Williamsが素晴らしいアレンジに仕上げました。ミステリアスなベースパターンに始まり、イントロほか随所にWayneが独り言を呟くようにユニークなブリガードを入れています。美しくて深い音色でこんな風にメロディを演奏されたら我々は成す術がありません(涙)。それにしてもこのWayneのソロは一体何を考えているのでしょう??いわゆるジャズのインプロヴィゼーションで使われるリック(常套句)は用いられてもアクセント的に、異常なほどに研ぎ澄まされたメロディセンス、コード感から成り立つアドリブは、全てその場で自然発生的に生まれているに違いありません。このワンアンドオンリーぶりは他の追従を許すさず、そのためにWayne Shorterスタイルの後継者が生まれることを拒んでいます。

続くHerbieのピアノソロ、リーダーのベースソロ、ドラムスソロとこの曲の演奏者全員のアドリブがたっぷりと聞くことが出来、アルバムの大団円となります。

 

 

2017.09.19 Tue

Jack Wilkins / You Can’t Live Without It

今回取り上げるのは、ギタリストJack Wilkinsのリーダー作「You Can’t Live Without It」(1977年10月31日NY録音)。

g)Jack Wilkins

ts)Michael Brecker

flh)Randy Brecker

p)Phil Markowitz

b)Jon Burr

ds)Al Foster

 

Side A 1.Freight Trane 2.What’s New / Side B 1.Invitation 2.What Is This Thing Called Love?

77年当時Michael Breckerが参加したレコードでアコースティックな作品は数が少なく、更にジャムセッションで取り上げられるようなポピュラーなナンバーばかりを演奏した例は他にありません。

そしてこれが実に素晴らしい内容で、僕はこの演奏でMichael Breckerに開眼してしまいました。

 

録音されたレコードはその瞬間の演奏、スタジオ内の雰囲気を全く真空パックにして封じ込めたものです。

特にジャズのような打ち込みやオーバーダビングを基本的に行わない(実はBlue Note Labelの名盤やMiles Davisの作品の幾つかは違っていたようですが)一発勝負の録音には、生々しいほどに録音現場の情景が浮かび上がる場合があります。

この「You Can’t Live Without It」は収録された4曲がスタンダードやジャズマンのオリジナルで、ほとんどアレンジも施されていない点からリハーサルを行ったとしても別日に一回、もしくは録音当日にリハーサルを行って準備が出来、『さあ、テープを回してくれ』的なラフな状態で演奏されたように思います。

そしてこの手のセッションでは往々にしてどこか音楽的に隙間風が吹く物足りなさ、統一感の希薄さを聞かせてしまいますが、この作品は極めて高度な次元で演奏が展開されています。

メンバー全員が一丸となってクリエイティヴに音楽を作り上げる姿勢が収録曲全てから、一瞬の緩みもなく、お互いの音を聴き合い、究極一音も無駄な音が存在しない高みにまで演奏が昇華している様に聞こえます。とにかく自然体なのです。

それはリーダーJack Wilkinsの人柄、音楽性から?メンバー6名集合体の相性から?プロデューサーの采配によるもの?レコーディングスタジオの雰囲気から?ここまで一体感のあるセッション・レコーディングに仕上がるには、必ず何か必然、理由があるはずです。

かつてMichael Breckerに会うたびに色々な話をしました。こちらからの一方的な質問といっても良いかも知れません。それこそ音楽的な事に始まり、彼の両親兄弟家族について、食べ物の嗜好、休日の過ごし方、好きな映画について… 彼はどんな質問にも丁寧に分かり易く答えてくれましたが、残念ながら気になっていたこの作品のクオリティの高さが何に起因するのかについて、尋ねる機会を逸してしまいました。

この作品のレーベルChiaroscuro Recordsにも気になる点があります。現在も作品をリリースしているChiaroscuro(絵画用語で明暗法、キアロスクーロ)RecordsはEddie Condon(cl)、Earl Hines(p)、Ruby Braff(cor)、Buck Clayton(tp)、Bob Wilber(ss)、Mary Lou Williams(p)、Al Grey(tb)といったいわゆる「中間派」(1950年代に存在したジャズの演奏スタイルのうち、バップにもスイングにも分類されないスタイルの総称)ミュージシャンの作品ばかりを制作しており、この「You Can’t Live ~」はレーベルのカラーに反して全く毛色の異なるミュージシャンによる、異色な内容の作品に仕上がっています。

Jack Wilkinsにはこの作品の前にもう一枚同レーベルからリーダー作がリリースされています。

1977年2月NY録音「The Jack Wilkins Quartet」

g)Jack Wilkins

flh)Randy Brecker

b)Eddie Gomez

ds,p)Jack DeJohnette

 

Side A 1.Fum 2.Papa, Daddy And Me 3.Brown, Warm & Wintery / Side B 1.Buds 2.Falling In Love With Love 3.500 Miles High

Randy Breckerのワンホーン・カルテット、Eddie GomezにJack DeJohnetteという素晴らしいリズム陣、彼らメンバーのオリジナルを取り上げた、内容的にはこちらも”コンテンポラリー・ジャズ”です。

上記2枚のレコードを1枚のCDにカップリングしたものが「Merge」(合併)というタイトルで1992年Chiaroscuroよりリリースされています。残念ながら「The Jack Wilkins Quartet」の方から収録時間(77分30秒!)の関係からか1曲カットされていますが、大変お得なCDですね(笑)

そして後年「The Jack Wilkins Quartet」のリズムセクションにMichaelとRandyの2管を加えたJack Wilkins Chiaroscuro Records総まとめ?的な作品「Reunion」を2000年12月11日NYで録音、やはりChiaroscuro Recordsから2001年にリリースしています。惜しむらくはMichael当時のレコード会社との契約の関係で3曲だけの参加になっていますが、テナーの音色が実に素晴らしく録音されています。

この演奏についてはMichaelに尋ねた事があります。収録曲Horace SilverのオリジナルBreak Cityでのソロ、いつものようにカッコ良いには良いのですが、何だかちょっと変です。落ち着きが無いと言うか、いつになく音楽的ではなく同じBreckerフレーズの連発があり、「あれはどうしたの?」と聞くとMichaelさんちょっと困ったような顔をして「スタジオのブースがとても狭くて演奏し辛かったんだ」と答えてくれました。どうも別の理由がありそうな返答の仕方ですが、演奏的不具合は本人にも覚えがあったのですね。

それにしてもJack Wilkins + Chiaroscuro Records = Contemporary Jazzには一貫した流れがあります。

今一度Chiaroscuro Recordのリリース・カタログを調べるとJack Wilkins以外全てが前述の「中間派」のミュージシャンの作品で完璧に占められていました。「You Can’t live ~」のスポンテニアスな素晴らしさには何かレーベルとの関わり具合が関係していても良さそうな気がします。

この写真は1977年当時のMichael Breckerのアンブシュアのクローズアップです。使用マウスピースはOtto Link Double Ring 6番、これはクラリネット奏者Eddie Danielsから譲り受けたものです。リードはLa Voz Medium Hard、リガチャーはSelmer Metalテナー用。テナー本体はSelmer MarkⅥ 67,000番台。勿論この「You Can’t Live ~」の演奏も含め、この当時(76年頃から78年頃まで)のMichaelの数々の名演、例えば「Heavy Metal Be-Bop」「Blue Montreux」「Sleeping Gypsy」「Browne Sugar」を生んだセッティングです。76年末頃にマウスピース、楽器いずれも入手したようです。

 

「You Can’t live Without It」に話を戻しましょう。僕がこのレコードを初めて聴いたのは78年夏頃、当時行きつけのJazz喫茶で新譜として壁にディスプレイされていました。アルトからテナーに転向したばかりの僕はElvin Jonesの「Live At The Lighthouse」がバイブルのような存在で、Dave Liebman、Steve GrossmanらのいわゆるColtrane派のテナー奏者がフェイバリットでした。Michael Breckerの演奏も勿論聞いていましたが、それほどの感銘を受けるものには出会っていませんでした。そしてこのレコードの登場です。

以前から感じているのですが、John Coltraneは1955年Miles Davis Quintetに大抜擢も56年にドラッグの悪癖のため一時解雇されました。その後クリーンさを取り戻したColtraneは56年から57年にかけて神の啓示を受けたかのようにテナーサックスの腕前が飛躍的に上達しました。時は20年を経て1976年、Michael Breckerも翌年77年にかけてやはり超人的に上達し、ワンアンドオンリーなスタイルを確立しました。前述のマウスピース、楽器の入手もかなり関係しているように思えますし、Michaelも神の啓示を受けたかもしれません。僕はついに77年当時のMichaelに出会えたのです。

素朴でシンプルな文字だけの黒地のレコード・ジャケットをジャズ喫茶の店主が指差し、「ブレッカーの入った新譜が入荷したよ」ということで早速リクエストしました。インターネットやyoutubeで幾らでも新しい情報を好きなだけ入手可能な今の若い人たちには、ジャズ喫茶でレコードをリクエストするという習慣がない、それ以前に知らないのでピンと来ないでしょうが、当時の我々にはジャズを知る唯一にしてベストの方法でした。

いきなりSide B 1曲目Invitationを聴きました。その時の事は店内の情景も含めて今でもはっきりと覚えています。

スピーカーから流れてくるテナーの音の洪水!!〜フレージングのアイデア、コード進行に対するアプローチ、スピード感、タイム感、タンギングの正確さ、完璧なまでのフラジオの使い方、当たり具合、華麗なテクニックの数々、テナーの音色の素晴らしさ、ストーリーの語り口の流麗さ、起承転結の的確さ…

演奏のあまりのインパクトに薄暗い店内、座っている席から立つことが出来なくなりました。身体が感動で打ち震える、なんだこれは一体? 膨大な量のテナーサウンドにもかかわらず、身体がその情報量の全てをスムースに受け入れる、あたかも血液型やDNAタイプが全て合致した輸血や臓器移植であるかのように。このかつて無い体験を1枚のレコード鑑賞から出来たことに自分も驚きました。

「これだ!自分が目指すテナー奏者はMichael Breckerだ!このスタイルを掘り下げて研究しよう!」LiebmanやGrossmanにはない都会的でスマートなセンス、押し付けがましくない超絶技巧、明るさと仄暗さ、繊細さと大胆さ、演奏のバックグラウンドに感じる秘めたる情熱、努力と向上心。「見つけたぜ!」と20歳そこそこのサックス奏者は目を爛々と輝かせながら明日からの明確な目的を見出したのです。

2017.08.14 Mon

Born At The Same Time / Steve Grossman

Steve Grossmanの代表作、1977年録音のBorn At The Same Time(OWL)を取り上げてみましょう。

ts,ss)Steve Grossman

p)Michel Graillier

b)Patrice Caratini

ds)Daniel Humair

Recorded In Paris, November 25th 1977

 

 

 

Steve Grossmanは18歳でWayne Shorterの後釜としてMiles Davis Bandに大抜擢、約1年間ほど在籍していた模様です。この時の映像を新宿DUGのオーナー、写真家として知られる中平穂積氏がNew Port Jazz Festivalにて録画したものを見たことがありますが、大御所にして圧倒的な存在感のMiles Davisの横で堂々たるプレイを繰り広げていました。レコーディングでは”Jack Johnson””Big Fun””Bitches Brew”を始めとして、ソプラノサックスでの演奏が殆どですがそこではテナーを吹いていました。

早熟の天才、10代前半にアルトサックスを始めてすぐにCharlie Parkerのスタイルで演奏出来るようになり、テナーに転向後Miles Bandに参加という華々しいと言うか、前人未到、とんでもない経歴の持ち主です。以前Blogで取り上げたEddie Danielsもそうですが、ユダヤ系白人サックス・プレイヤーの代表格の一人です。

New York州Long IslandのHicksville出身、裕福な家庭に生まれ育ちましたが、ミュージシャンとして自立すべく、新聞配達の仕事をしていた時期もあるそうです。兄はトランペット奏者Hal Grossman、Berklee音楽院の講師を務めており、この兄の影響でサックスを始めたと言われています。弟の名前はMiles Grossman、特に管楽器奏者、ミュージシャンではないようですが、現在Hicksvilleの実家に戻ったSteve Grossman、全くテクノロジー関係に疎いので(そもそも興味がないのでしょう)弟Milesがインターネット関係(それこそメールの代筆等)で兄を手助けしているようです。

ところでアルバムタイトルのBorn At The Same Timeの意味するところは何でしょう?考えられるのは参加ミュージシャン4人が同世代に生まれたからでしょうか。ミュージシャンの生年月日を挙げてみましょう。

Steve Grossman(ts,ss) 1951年 1月18日

Michl Graillier(p) 1946年10月18日

Patrice Caratini(b) 1946年7月11日

Daniels Humair(ds) 1938年5月23日

ピアニスト、ベーシストは確かに同年生まれですがGrossmanとは5年違い、ドラマーとは13歳も歳が離れています。同世代とは言い難い年齢差ですが、Grossmanは何しろ18歳1969年から第一線、ジャズ界最先端で演奏しています。5歳13歳の年齢の違いは関係無く、音楽的な経験値のみ捉えてみれば同世代の4人と言えるのではないでしょうか。このアルバムの演奏内容、驚異的なインタープレイの連続を聴くとまさに同世代に生まれたミュージシャン達ならではの、彼らだからこそ成し得たクオリティの演奏と聴く事が出来ます。

だとしたらメンバー全員の写真、せめてレコーディング風景の写真をレコードジャケットに掲載すればアルバムタイトルとの統一感が出るものを、Grossman本人と当時のガールフレンド?奥方?とのツーショットが見られるだけです。Miles Davisのアルバムで何枚か当時のガールフレンドの写真を用いたジャケットがありますが、Miles Band出身のGrossmanならではのセンスかも知れません。

 

Miles Davis Bandを退団し、その後Elvin Jonesのピアノレス・カルテットにて盟友Dave Liebmanとのツーテナーで名盤Live At The Lighthouseを72年に録音、この演奏でジャズ・テナーサックス界に不滅の金字塔を建てました。ワンアンドオンリーなフレージング、50年代のSonny Rollinsを彷彿とさせるタイトでグルーヴィーなリズム感、Jonh ColtraneとBen Websterの融合とも言えるダークでエッジー、コクがあって極太のテナーサウンド…カリスマ・テナー奏者としてジャズ界知らぬ者は無い存在になりました。そして何と言ってもGrossmanこの時まだ21歳!無限の可能性を秘めた若者、その将来を嘱望されていました。

 

 

 

 

 

 

73年以降の活動:同年自身の初リーダー作”Some Shapes To Come”

74年録音Elvin Jones Quartet”Mr. Thunder”

75年Gene Perla(b)Don Alias(perc,dr)とのグループ”Stone Alliance”

75, 76年録音自身のリーダー作”Terra Firma”

そして本作77年Born At The Same Timeに繋がりますが、早熟の天才プレイヤーにありがちな破天荒な行いが次第に目立ち始めます。大量の飲酒行為、ドラッグの使用での人格破綻、奇行、晩年のJaco Pastoriusを思わせる状況が見られるようになります。

Stone Allianceのヨーロッパツアー中にGrossmanが1人暴走(他メンバーのGene Perla、Don Aliasは温厚なタイプのミュージシャンでしたが)のため空中分解しツアーを途中でキャンセル、Elvin JonesはGrossmanの演奏をいたく気に入っていましたが、マネージャーを務めるElvinの奥様ケイコ夫人に素行の悪さからかなり嫌われていたようです。Grossmanは体力的にも強靭なものがあり、「25歳までは1週間徹夜しても平気だった」と発言していましたが、かなりドラッグの摂取も頻繁で「新しいクスリのやり方が流行ったとしたらそれを考えたのはSteveに違いない」とまで周囲から言われていました。

Grossman自身の発案か、レコード会社のアイデアか分かりませんが、それまでのGrossmanの集大成と言える”Born At The Same Time”が77年11月25日Parisで録音されました。

前述のStone Allianceのヨーロッパツアーが77年8月27日Austria Wiesenを皮切りに10月29日英国Londonまで挙行されました。その最後のLondon Ronnie Scott’s公演中でまさに空中分解したのです。

何とこの事件の1ヶ月後にヨーロッパの精鋭たちを集めてBorn At The Same Timeは録音されました。そのままヨーロッパに滞在していたかも知れません。

全9曲Grossmanのオリジナルで構成されています。CD再発時にはピアニストGeorge CablesのオリジナルLord Jesus Think On Me(Think On Meという曲名で作曲者が録音しています)が追加されていますが、アルバムのコンセプト、演奏のクオリティからオクラ入りしたのはうなずけます。

とにかく楽器の音色が凄まじいのです。テナーマウスピースはデビュー時から使用しているOtto Linkのメタル最初期(30~40年代)のモデル”Master”を使っています。それこそBen Websterもこのマウスピースを生涯使っていましたがチェンバーの広い、ダークでメロウなサウンドのマウスピースを使ってGrossmanはどうしてあんな凄まじい音がするのかは謎です。オープニングは多分5★か6番、リードはリコの4番を使っていたそうです。1970年代中頃来日した時に一緒に演奏した土岐英史氏から聞きましたがGrossmanのマウスピースにはボディに穴が空いていて、そこにマッチ棒を入れて遊んでいたそうです。もちろん内部に貫通はしていなかったでしょうが、かなり「へたった」状態のマウスピースには違いありません。テナー本体はSelmer MarkⅥの恐らく14~16万番台、ソプラノもSelmerでマウスピースもSelmerメタルのDかEを使っていたようです。ソプラノの録音された音色が生々しいのはベルを直接マイクに当てて演奏しているからです。

このアルバムの音色は80年代の演奏に比べると深さが全く違います。デビュー時から使っている自分の楽器、マウスピースで演奏したのは間違いないでしょう。

80年代に入ってからの話ですが、金策のためにテナーを質屋に入れて楽器が流れてしまったり、自分の弟子に楽器を借り、在ろうことかその他人の楽器を質屋に入れてしまったり(Charlie Parkerに同様の逸話がありますね)、自分のソプラノをNew Yorkでタクシーに置き忘れそのまま出てこなかったり、来日時に楽器を持参せず日本人ミュージシャンに借りたり(実は僕もしばらくテナーを貸したことがあります)87年録音Our Old Frame / Steve Grossman With Masahiro Yoshida Trioの時には僕のソプラノでNew Moonや415C.P.W.を演奏しています。

 

それにしてもこの天才テナーサックス奏者、自己管理能力は明らかに欠如していますね。

80年代はとうとう自分の楽器やマウスピースを持っていない時期があり、ギグや録音がある時に弟子に借りていたようです。Jerry Vejmola、Jeff HittmanらがそのGrossmanを支えた弟子たちの名前です。

Grossmanのテナーの音色は奏法の勝利と言え、たいていの楽器でGrossmanの音がします。86年87年の来日時にセッションでステージを共にしましたがその音色の物凄さ、音圧感、タイムの素晴らしさ、スイング感、そして最も驚いたのがアンブシュアの緩さ、ルーズさです。演奏中マウスピースを咥えていても左右に動き、口に対して抜き差しされるのです!

Grossmanの特徴音の一つ、フラジオA音を「ギョエイイ〜」と出している時にもアンブシュアはゆるゆるです!本人に「マウスピースに歯は載せていないの?」と質問しましたが「ちゃんと乗せている」と答えが返ってきました。ダブルリップではなさそうです。

 

収録曲の演奏に触れて行きましょう。1曲目から6曲目がいわゆるレコードのA面、7曲目から9曲目がB面に該当します。全体的に組曲風なコンセプト・アルバム仕立てになっています。

1、4曲目のCapricorneは同じ曲でテンポも演奏時間もほとんど同じ、Daniel Humairのシャープなドラミングが各々のテイクに異なった彩りを添えています。2、4曲目のOhla Gracielaは若干テンポが異なり、別テイク的な関係にある演奏で、更に3曲目Plaza Franciaもほぼ同一曲、Patrice CaratiniのベースソロがフィーチャーされGrossmanはソプラノでソロを取ります。5曲目March Nineteenも傾向としては同じ曲ですが、Grossmanのオリジナル曲の独創的なメロディライン、ベースパターン、コード感が同一傾向曲が並ぶくどさよりもむしろ統一感を感じさせ、レコードのA面はGrossmanのオリジナル・サウンドを表現しています。

B面は一転してハードな演奏サイドです。7曲目A Chamadaはフランス語で「叫び」を意味します。エドヴァルド・ムンクの「叫び」、こちらは北欧ノルウェーですね。本作品の要の演奏で9分16秒にも及ぶGrossmanの叫びが延々と聴かれます。リズムセクションのテンションも尋常ではありません。テナーの演奏に完璧なまでに追随しています。ソロイストとリズムセクションのインタープレイの、ある種理想な形の名演と捉えています。何度聴いても背筋がゾクゾクするフレージングの連続、ソロの構成、4人一丸となったまさに絶叫!唯一残念なのは8’47″でテープが編集されている点です。恐らくGrossmanはまだ延々とソロを取り続けていたのでしょう。レコード収録時間の関係でカットされたに違いありません。いずれコンプリートな演奏を聴きたいものです。え?墓場荒らし?滅相もないことを言わないで下さい。僕は純粋にテナーサックスの名演を聞きたいだけです。

8曲目Pra Voceで叫びから癒しに場面転換を果たしています。この曲のサウンドもまさにGrossmanワールドそのものです。

アルバムの締めくくりはもう一つの白眉の演奏Giminis Moon。いつものGrossmanの作風とは異なるオリジナル、リディアン系のサウンドです。Grossmanの演奏は言わずもがな、この演奏でDaniel Humairの素晴らしさを再認識しました。ピアニストMichel Graillierも大変センスのあるプレイをしています。

 

以降80年代に入りGrossmanは全く第一線から遠ざかり、New Yorkでタクシーの運転手で生活したり(でもアブナイ彼の運転でタクシーには乗りたくありませんね)隠遁生活を送っていましたが、ドラマー吉田正広氏が再び彼をジャズシーンに引っ張り出しました。いずれその話もこのBlogで取り上げたいと考えています。

 

最後に、20年前にBorn At The Same Timeが東芝EMIから国内発売された時のCDライナーノーツ、僕が書いていました。自分自身すっかり忘れていましたがこのライナーを読んでしまうと20年前に書いた内容に捉われてしまうかもしれないと懸念し、敢えて読みませんでした。Blogが書き上がったのでこの後読んでみます。

 

 

2017.08.04 Fri

The Message / JR Monterose


前回投稿のJohn Coltrane海賊盤でもジャケ写が登場しましたが、今回はしっかりと取り上げたいと思います。

テナーサックス奏者JR Monteroseの代表作、The Message

ts)JR Monterose

p)Tommy Flanagan

b)Jimmy Garrison

ds)Pete La Roca

1959年11月24日 ニューヨーク録音

この作品自体大変レアですが、発売元のレーベルJaroも1950年代末に僅か5枚のレコードをリリースしただけで消滅してしまいました。

でもこの大名盤The Messageを世に出した功績は大きいです。

いわゆる幻の名盤という範疇の最右翼、Straight Aheadというタイトルで75年に再発されるまで、このアルバムの存在はマニアの間でしか知られていませんでした。

その後何度か再発され(タイトルも本来のThe Messageに)、現在では比較的容易に入手できる状態です。

僕はジャズ喫茶世代の出身ですが、行きつけのジャズ喫茶にこのレコードがあり、店のマスターに紹介されあまりの素晴らしさに貪るように何度も何度も聞いた覚えがあります。

また都内のとある廃盤専門のレコード店で、30何年か前に数十万円の値札と共に壁にディスプレイされていました。

「わっ!あった!!欲しい〜!」とゼロの数を一つ見誤りつつ購入を一瞬考えましたが、金もない貧乏な駆け出しミュージシャンがその価格で買える訳がありません。泣く泣く諦めました。

今でもレコードを自宅で聴く時があり、数枚持っているオリジナル盤でその音質や奥行き、空気感の素晴らしさにため息が出る時があります。この大好きなThe Messageをオリジナル盤レコードのゴージャスな音質で聴けたらさぞかし幸せだろうな、と想像する時があります。今ではオリジナル盤はその頃の何倍もするでしょう、叶わぬ夢を見つつ、本当に欲しいものはその時に借金をしてでも買わなければ後悔するぞ、と自分に言い聞かせています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここでJR Monteroseの演奏が聴かれるアルバムを何枚か挙げて見ましょう。

Charles Mingus / 直立猿人

Kenny Dorham and The Jazz Prophets Vol.1

J.R. Monterose

Rene Thomas Quintet / Guitar Groove

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実はいずれのアルバムでもJR Monteroseのプレイは凡庸なのです。Mingusの直立猿人ではリーダーの圧倒的な存在感に全く霞んでいますし、Kenny Dorham and The Jazz Prophetsはタイトル倒れの様を呈しています。Blue Noteに残されたリーダー作JR Monteroseでは別人かと見間違えるほど覇気が感じられませんし、ギタリストRene Thomasのアルバムでも気の毒なくらい自分を出し切れていません。

JR Monteroseにはまだ他にきっと名演奏があるに違いない、と一時探しましたが見事にありませんでした。The Messageの演奏が独立峰の如く燦然と輝いているのです。

 

さて大変前置きが長くなってしまいましたが、The Messageの内容に触れて行きたいと思います。

GIカットにスーツ姿、カッコ良いですね。楽器はセルマー・スーパー・バランスド・アクション・シルバープレート、マウスピースはOtto Link Metal Super Tone Masterとお見受けしました。

マウスピースのオープニングは6番7番くらい、リードはとっても硬めで4番か、もしかすると5番をお使いでしょう。でなければあの最低音域の爆発は得られません。

何と言ってもJRさん、本当に音色が素晴らしい!!僕の超×超好みです。John Coltrane流のエッジーなタイトネス、Otto Lomkの持つ臭み、ホゲホゲした音色にBen Webster張りのザワザワなサブトーン、豊かなビブラート、最低音域の「バッフン!」「ボギャン!」とまで聞こえる強烈なタンギング、発音、もう完璧な理想です。ホゲホゲ、ザワザワでバッフンですよ(笑)やっぱりテナーサックスは音色が命です。次に選曲が実に良いのです。

1) Straight Ahead (JR Monterose)

2) Violet For Your Furs (Matt Dennnis)

3) Green Street Scene (JR Monterose)

4) Chafic (JR Monterose)

5) You Know That (JR Monterose)

6) I Remember Clifford (Benny Golson)

7) Short Bridge (JR Monterose)

全7曲中5曲がJRのオリジナル、多くがハードバップの範疇にありますがその枠を超える新しいテイストを感じさせる曲想、構成のよく練られた楽曲、さすが1959年11月録音、翌60年からの匂いがプンプンとします。

名プレイヤーは間違いなくバラードの名手でもあります。Violet For Your Furs(コートにすみれを)はJohn Coltraneが57年に録音した彼の初リーダー作”Coltrane”でも演奏されていますが、僕はJR氏の演奏に何の躊躇もなく軍配を挙げます。やっぱりバラードはサブトーンとビブラートが表現の決め手ですよ。

そして本作品のハイライト、この演奏がアルバムの秀逸さを決定づけました。Benny Golson作の名曲、交通事故で夭逝した天才トランペッターに捧げたI Remember Clifford。何千何万回と聴いたことでしょうか。冒頭のピアノの和音に続くテナーのlow Dの音が「バフン!」、バラードでこの音出しってアリですか?アリですよね、かと思えばサブトーン駆使しつつビブラートしっとりロングトーンのメロディ奏、ハードボイルドとスイートネスの同居がたまらなく好きです♡

1曲目Straight Aheadに特筆すべき点があります。ピアノソロの後にテナーサックスとドラムスの2人だけのトレードが聴かれますが、これが素晴らしい!僕は予てからジャズはミュージシャン同士の会話だと考えています。気の合った仲間同士の楽しい会話と言い換えることもできます。お互いが演奏(発言)した事をしっかりと聞き合い、その演奏(会話)を豊かに膨らませて行く行為がジャズ演奏なのです。JR MonteroseとPete La Rocaのバトル演奏は僕にはある種の理想として聞こえます。

5曲目You Know Thatのテナーソロの構成もハンパないものがあります。モチーフを丁寧に、リズムセクションとの共同作業でしっかりと足並みを揃えて、ステップ・バイ・ステップで歌い上げて行くその様。実に、実に堅実でスポンテニアスなストーリーテラーと化しています。

ピアニストTommy Flanaganの邪魔にならない上に確実に音楽のツボを押さえたバッキング、ソロ、ベーシストJimmy Garrisonはリズムのスイートスポットをしっかりと押さえたラインでハードバップからの脱却の手助けをしています。そしてPete La RocaのドラミングのテイストがJR Monteroseの音楽性と全く合致していた点が、この名盤を生み出した一因となっています。

2017.07.24 Mon

John Coltrane Live at The Jazz Gallery 1960

2011年にRLR Recordsというレーベルからリリースされた、John Coltraneのいわゆる海賊盤です。

内容の素晴らしさとレア度からご紹介したいと思います。

John Coltrane Live at The Jazz Gallery 1960

<Musicians>

John Coltrane(ts,ss) McCoy Tyner(p) Steve Davis(b)Pete La Roca(ds)

<Song List>

1)Liberia 2)Every Time We Say Goodbye 3)The Night Has A Thousand Eyes / CD One

4)Summertime 5)I Can’t Get Started 6)Body And Soul 7)But Not For Me / CD Two

 

1960年6月27日New YorkのGreenwich VillageにあったThe Jazz Galleryでのライブ録音2枚組です。

正式な録音ではないので音質は決して良くありませんが、演奏内容は本当に素晴らしいです。

絶好調のColtraneとリズムセクションとの組んず解れつの演奏、ここには幾つか特筆すべき点があります。

まずピアニストMcCoy Tynerが正式にJohn Coltrane Quartetに加入した直後の演奏という点です。

ColtraneはMiles Davis Quintet脱退後自分のカルテットをスタートすべく、多くのピアニストを起用しました。

Wynton Kelly、Cedar Walton、Tommy Flanagan、意外なところでCecil Taylorとも1枚作品が残されています。

ギタリストWes Montgomeryも一時参加したという話を聞いたことがありますが、Coltraneの長いソロの最中バッキングを

止められ、ステージでぼーっとしているのが嫌だったのでしょう、すぐ辞めてしまったようです。

Steve Kuhnも同じThe Jazz Galleryで1960年1月2月3月とその間約8週間Coltraneと共演を果たし、音楽的恩恵をColtraneから被ったと

述べています。Coltraneへの慈しみの想いで録音されたSteve Kuhnの作品がこちらです。

Steve Kuhn Trio w/ Joe Lovano “Mostly Coltrane” (ECM)

このCDも名盤、そして愛聴盤です。Mostly Coltraneと名付けられただけに、収録13曲中11曲がColtraneのオリジナルやレパートリー、

2曲がSteve Kuhnのオリジナルです。この作品もいずれこのブログで紹介したいと考えています。

 

本題に戻りましょう。Steve Kuhnとの共演3ヶ月後、以降65年まで行動を共にする音楽的パートナーMcCoy Tynerが遂に入団しました。

ここでは既にMcCoyの個性が存分に発揮された演奏を聞くことが出来ます。リリカルで明快なタッチ、Coltraneの音楽に欠かすことの

出来ない”Sus4″ のサウンドが随所で聴かれます。何よりColtraneの長いソロの間、バッキングを弾かずじっと我慢出来る忍耐強さを持った

ピアニストの登場なのです(笑) パズルのピースが一つ揃いました。この後暫くして最重要ピースであるドラマーElvin Jonesの加入、そして

程なくしてベーシストJimmy Garrisonが加わり、黄金のカルテットが出来上がる訳です。

 

ドラマーPete La Roca。Coltraneとの正式な録音は残されていないと記憶していますが、ここではハードバップから一歩飛び出た

素晴らしいドラミングを聴かせています。

60年録音Coltraneの作品”Coltrane Plays The Blues”にMr.Symsという曲が収録されています。

この作品にはBlues To Elvinという、盟友Elvinに捧げたナンバーが入っています。Pete La Rocaの本名はPete Sims、もしかしたら

Mr.SymsとはPete Simsの事かも知れません。

Pete La Rocaの名演が以下の2枚で聴く事が出来ます。

Jackie McLean “New Soil”  (Blue Note)

JR Montrose “The Message” (Jaro)

この2枚も大好きな作品です。じっくりと取り上げて行きたいですね。

 

演奏曲にも触れてみましょう。

1曲目Liberia、Dizzy GillespieのA Night In Tunisiaにどこか似ているこの曲、アフリカのTunisiaではなく近くのLiberiaで辺りで

済ませたようです(笑)。しかしこの曲の演奏時間が凄いです、30分強!!長い!時は60年ですよ!

63年以降の欧州ツアーでImpressionsを40分、Live In JapanでMy Favorite Thingsを1時間演奏したColtrane、さすがに

そこまでは行かずとも、ここでは20分近くテーマ〜ソロを吹き続けていますが、全く中弛みすることなくテンションと

パワーを湛えた演奏を展開しています。その後ピアノ〜ドラム・ソロと繋がります。

60年当時で1曲の演奏時間が30分という例をColtrane以外(でも一体外の誰がそんなに長く演奏するでしょうか?)でも僕は聞いたことがありません。

でもオーディエンスは大喜び、お客様もしっかりColtraneの演奏について行ったようです。

 

もう1曲特筆すべきは5曲目のI Can’t Get Started、Coltrane自身がこの曲を演奏し、世に出ているのは恐らくこのテイクだけでしょう。

ソプラノサックスで演奏されていますが、驚くべきはコルトレーン・チェンジが施された構成で演奏されている点です。

Coltraneは60年当時、短3度と4度進行からなるコルトレーン・チェンジを数多くの曲に用いていました。代表作がGiant Stepsで

スタンダード・ナンバー、例えばこのライブ録音に収録されているThe Night Has A Thousand Eyes、Body And Soul、But Not For Me、

他にもSatellite (How High The Moonのコード進行がベース。月に引っ掛けた衛星のシャレですね)、Fifth House (Hot Houseのコード進行、構成がベース)、

Count Down (Tune Upのコード進行、構成がベース。チューニングとカウントを引っ掛けてます) 、26-2 (Confirmationのコード進行がベース)。

推測するに当時Coltraneは片っ端からスタンダード・ナンバーをコルトレーン・チェンジ化をしていました。その中で上手く行った曲をレコーディングし、

世に出していたのでしょう。実際26-2はColtraneの死後に未発表テイクとしてリリースされました。演奏や曲の構成にもやや無理があるように

聞こえます。このI Can’t Get Startedも内容としては今ひとつの感を拭えません。

 

Coltraneファンとしては彼の未発表演奏の発掘をまだまだ心待ちにしています。前述のWes Montgomeryの共演を筆頭にお宝はきっとある筈です。

聴いてみたいものです。

2017.07.14 Fri

Pete Christlieb〜Warne Marsh Quintet / Apogee

昔からの愛聴盤、今でもちょくちょく引っ張り出して聴いているCDがこれ、

Pete Christlieb(ts) 〜 Warne Marsh(ts) Quintet / Apogee (Warner Bros.)

1978年録音&リリース、CDではボーナストラックが3曲追加されて2003年に再発されています。

Pete Christlieb、Warne Marshと言う全くタイプの違うテナーサックス奏者のテナーマッドネス、本当に素晴らしい作品です。

Sonny Rollins ~ John Coltrane、Gene Ammons ~ Sonny Sitt、Sonny Stitt ~ Sonny Rollins、Johnny Griffin ~ Eddie Lockjaw Davis、

Al Cohn ~Zoot Sims、 Dave Liebman ~ Steve Grossman、Michael Brecker ~ Bob Mintzer…

ジャズ史上多くのテナー・バトル・チームが存在しましたが、Pete ChristliebとWarne Marshほど毛色の違うテナーサックス・バトルは聞いた事がありません。

極論を言うならばあまりのスタイルの違いから水と油の2人、テナー・チームとしてタッグを組むにはとても距離感があると言わざるを得ませんが、

彼等の界面活性剤的役割を果たしたのが本作のプロデューサー、Donald FagentとWalter Beckerの2人、言わずと知れたロック・グループSteely Danのリーダー。

テナー奏者を2人フィーチャーしたアルバムを制作するくらいですからテナー奏者好きは間違い無いでしょう。

Steely Danのアルバム”Aja”ではWayne ShorterをSteve Gaddのドラミングと共に大フィーチャー、Donald Fagenは自身のソロアルバム”The Nightly”で

Michael Beckerの華麗なソロプレイを巧みに演出させていました。他にもJerome Richardson、Ernie Watts、Plas Johnson、Chris Potter等

スタジオミュージシャン・テナー奏者を起用、ここまでのテナー奏者との関わりは通常の範囲内ですが、Steely Danのコンサート演奏活動に

この2人のプロデューサーのテナー奏者フェチが表れています。1994年の来日公演の際のホーンセクション、Cornelius Bumpus、Chris Potter、Bob Sheppardという

個性派テナー奏者3人衆!!Donald Fagen、Walter Beckerの2人は一体何を考えいるのでしょうか?テナー奏者好きにも程があります(笑)

この2人のマジックにより2大テナーの演奏が見事に融合と相成りました。

 

Pete Christliebはアメリカ西海岸を中心としたスタジオミュージシャン、音色も明るめで何しろタンギングの達人、フレージングの滑舌の小気味良いこと。

明確なメッセージを湛えたアドリブ・ラインを聴かせてくれます。

Warne Marshも西海岸ロサンゼルス出身ですが、師レニー・トリスターノと共に東海岸ニューヨークで活動、クール・ジャズと呼ばれるスタイルで演奏し、

「ホゲホゲ」「モグモグ」「ガサガサ」を感じさせるダークなトーンと独自のアドリブラインで、ワン・アンド・オンリーなテナー奏者です。

サックスの音色やフレージングの滑舌はその人の喋り方が確実に反映されます。Pete Christliebはさぞかし明朗快活な分かり易い話しっぷり、

更に彼のニュアンスやフレージングから感じるのですが、冗談好きでおちゃめな雰囲気も併せ持っているかも知れません。

対するWarne Marshは「ぼそぼそ」とした喋り方でシニカルに物を言い、知的な話が好きですが人に自分の話を聞いて貰わなくても構わない、

委細かまわず好きな事を好きに話す、ちょっと偏屈なタイプの人かも知れませんね。

1曲目Magna-Tism(コード進行はスタンダード・ナンバーJust Friends)に2人のスタイルの好対照振りが表れています。

ハイライトはWarne Marashの後に続く2人の同時進行ソロ〜オーバーダビングによる多重奏(4重奏?)〜

絶妙な場所に訪れる不協和音のエグいハーモニー!何度聞いてもカッコいいです!!

続くピアノソロの後にはラスト・テーマが演奏されずそのままFine、とってもヒップ!この辺がプロデューサーたちの意向でテナーフェチのなせる技でしょう。

2曲目レニー・トリスターノ作の317 E. 32ndのエンディングも素晴らしい!トリスターノが聴いたらさぞかしビックリした事でしょう。

3曲目はプロデューサー2人のオリジナルRapunzel。さすがにポップな雰囲気のジャズチューンですね。Peteさんの芸風にはぴったりですが

Warneさんにはどうでしょうか?意外に楽しげに演奏しているように聞こえますが。

4曲目はアルバムのもう一つのハイライト、アップテンポのその名もTenor Of The Time。こう言い早い曲ではPeteさんまさしく本領発揮、

バキバキとゴキゲンにスイングしています。タイムは良い、音符が長い、明瞭な話し方、バッチリなタンギングで音符がプリプリしている、

そしてアドリブカッコ良いと来れば言うこと無しです。で、ここでテナー演奏が彼1人で終わってしまえばありきたりのごく普通の凄い演奏ですが(笑)、

この後にホゲホゲのカリスマWarneさんの演奏が入る事により、全く普通では無い演奏に化学変化しています。テナーバトルって面白いですね。

5曲目はご存知Charlie Parkerの名曲Donna Lee。しかし何ですかこのテーマ演奏は?輪唱とはまた異なる、拍をずらしてのメロディ演奏、

アンビリバボーなアイデアによるこの曲の代表的な演奏が生まれました。

6曲目はPeteさんのワン・ホーン・カルテットによるJerome Kernの名曲I’m Old Fashioned。もう、大好きな演奏で何度聴いても堪りません。

これだけ唄っていればテナー1人で完結しています。

2017.06.19 Mon

リコ・リード・アルト木製箱‼️

以前eBayで落札したリコ・リード・アルト3番、木製の箱をご紹介します。

何年頃のものかは資料がないので分かりませんが、リコ・リードは1928年創業なのでもしかしたらその頃のものかも知れません。

奇跡的なコンディションで残っていました。

大変凝った造りで思わず見入ってしまいます。

蓋には印刷ではなくしっかりとレリーフで文字が刻まれています。

ちょっとオシャレなアンティーク小物入れと、見紛うばかりのクオリティです。

箱の四隅にも丁寧に組み継ぎが施されています。

当時の職人の情熱や意欲を感じさせてくれます。

箱にこれだけの手間を掛けているので、当然収納されているリードも優れているに違いありません。

何枚か入っていました。

リード自体の木の質が現代のものとは根本的に異なっているように感じます。「しっかり」感が半端ないです。

左側が現代のリコ・リード、木製の箱に入っていたリードの方が「木製」っぽいです。現代のものは白っぽく、比較するとまるで紙のようです。木製の方は幾分長さが短いですが(リコ・リード歴代短い場合があります)、かなり長いカットの仕上げです。こちらの方が手間が掛かりますが、リード全体が良くしなるので豊かな響き、倍音が得られます。

リード裏側の字体、ロゴも異なります。恐らく25枚中殆んどバッチリ使えたのではないでしょうか?

さすがに手間が掛かり過ぎたのでしょう、いつの頃からか木製の箱をディフォルメした、紙製木目調の箱、通称「リコの茶箱」に変わりました。僕もこの箱のリコには大変お世話になりました(当たりのリードの数もまだかなり多かったです)。下の箱はリコ・ロイヤル・リードのもの、こちらのデザインも木製をイメージさせるので、ひょっとしたらリコ・ロイヤルも昔は木製の箱であったのかも知れません。

因みにこのリコ・ロイヤル・バリトン・リード、硬さが1番と珍しいのでニューヨークの楽器屋でアウトレットで買って来ました。

こちらは1980〜90年代のリコ、リコ・ロイヤルの紙箱です。品格、風格が箱のデザインからめっきり感じられなくなりました。当然のようにリードの質も低下し始めました。

この当時の箱に同封されていた”THANK YOU”と題された説明書きが僕の引き出しに残っていました。

各国の言葉で書かれており、もちろん日本語でも日頃のご愛顧に感謝の旨が書かれています。

この説明書きが入っていた頃はリコも少し改心したのか、リードのクオリティがやや持ち直したのを覚えています。

2017.06.14 Wed

Eddie Daniels CD ”First Prize! ”

最近ハマっているCDがテナーサックス、クラリネット奏者Eddie Danielsの初リーダー作”First Prize! ”

 

1966年録音でEddie Danielsの誕生日直前、まだ24歳です。

当時ウィーンで行なわれていたInternational Jazz Compensationで一等賞を受賞した栄誉に掛けて”First Prize! ”というタイトルになりました。ちなみにChick CoreaトリオやWeather Reportの初代ベース奏者だったMiroslav Vitousも1966年僅か18歳で同コンペティションに優勝しています。

Eddie Danielsが当時所属していた伝説の名ビッグバンド、Thad Jones〜Mel Lewis Big BandのリズムセクションであるRoland Hanna(p) Richard Davis(b) Mel Lewis(ds)を雇い録音しています。

この作品はレーベルが名門Prestige、レコーディング・エンジニアが名手Rudy Van Gelderとジャズ名盤の王道を行っています。

そして内容ですが、イヤ〜全く素晴らしい!!

現在ではジャズ・クラリネットの第一人者として君臨しており、一時は全くサックスを演奏しなかったようですが、最近ボチボチ吹いているようです。

CDジャケット写真を見る限り楽器はセルマー・スーパー・バランスド・アクション(low BとB♭のキーガードがセパレートではないので中後期のモデルです)、マウスピースもリガチャーは替えていますがオットーリンク・メタルと、こちらもジャズテナーの王道真っしぐらです。

僕好みのエグみのあるテナーサックスの音色、端整なタイム感、コード進行に対して常に抑揚を失わない知的なフレージング、そして極端なまでのテナーの音量のダイナミクス〜ppからffまでの完璧なコントロール!!

これが僅か24歳の演奏とは思えません。

この時点で確固たる自分のスタイルを築き上げています。

僕の尊敬するサックス奏者たち、Stan Getz、Lee Konitz、Warne Marsh、Steve Grossman、Dave Liebman、Mike Brecker、Bob Berg、Bob Mintzerがそうであるように、Eddie Danielsもユダヤ系アメリカ人だそうです。

ところでMike Breckerから直接聞いた話ですが、1977〜78年頃、The Brecker Brothers Bandの代表作Heavy Metal Be-BopやBlue Montreuxをはじめ、Mikeさんがスタジオの仕事をやり倒していた頃に使っていたマウスピースはOtto Link Double Ringの6番で、なんとEddie Danielsから貰ったものだそうです。このCDで使っていたマウスピースがそのままMikeさんに渡ったのかも知れませんね。

2017.06.06 Tue

リガチャーネジ交換〜ウッドストーン篇〜

リガチャーのネジを交換する事でサウンドが変化し、吹奏感がアップします。

ウッドストーン・リガチャーで試してみました。

こちらは素材がシルバー、銀無垢です。

こちらは真鍮の地金に金メッキを施したもの。

左側2本がウッドストーンのネジ、やはり銀無垢です。

右側の2本は先日eBayで落札したリガチャーネジ60本の中のものです。

以下は以前のブログに掲載した写真です。

ツマミがとても大きく、ウッドストーンのネジの倍近い重さがありそうです。

ネジピッチが細かいネジで、インチ仕様やセルマーには合いません。

素材は多分真鍮でシルバープレートだと思います。

本来のネジと取り替えてマウスピースに装着してみました。

かなりネジが大きくて目立ちます。

こちらも左側2本ウッドストーン真鍮ゴールドプレートネジと、同じくeBay落札60本ネジの中の金色ネジ。多分ラッカー仕上げです。やはりツマミ部分がとても大きく、重量感があります。

こちらも取り替えてマウスピースに装着しました。

こちらもかなりのデカブツです。

 

さて結果です。

シルバーのリガチャーを特大ネジに交換、大成功!!

幾分抵抗感が増しますがエアーが強力に入るようになります。レスポンスもぐっと向上し音の立ち上がりが早くなり、音のクリアーさ、輪郭の太さが強調され、テナーらしさ、豪快さが際立ちます。リガチャー自体の銀無垢素材の良さが存分に発揮されている感じです。ウッドストーンのネジがやや小振りだったのに較べ、特大ネジに取り替えた事で重量が増した事が要因ですが、ここまでの変化は想定外でした。

真鍮ゴールドプレートもシルバーほどではありませんがバージョンがアップした吹奏感、サウンドになりました。

ウワサを聞きつけて石森楽器でウッドストーン・リガチャーの取り替えネジ、ヘビータイプ、ウルトラヘビータイプが発売される日が来るかも知れません。

2017.06.05 Mon

セルマー・ベニー・グッドマン・リガチャー

セルマー・ベニー・グッドマン・リガチャー・クラリネット用です。

セルマー数ある種類のリガチャーの中で個人名、アーティストの名を冠したリガチャーは恐らくこのベニー・グッドマン・リガチャーだけです。

普通のセルマー・リガチャーでMADE IN FRANCEのロゴがあるべき所に燦然とBENNY GOODMANの名前が!!

MADE IN FRANCEはリガチャーの裏側に刻印されています。

随分と凝った作り、仕様です。このリガチャーも矢張り1958年の製品と考えられます。総じて芸術的とも言えるセンス、美学、気品を感じ取る事が出来ます。

この頃のキャップには幅調整のためのスリットが設けられていません。

以前取り上げたセルマー・シングル・スクリュー・リガチャーとは同じコンセプトの下締めタイプですが、リードにあたるプレートのシステムがかなり異なります。

プレートの両側を下向きに折り曲げています。プレートを止める鋲、シングルスクリュー・リガチャーはマイナスのネジ止めになっていました。

以下はベニー・グッドマン・リガチャーのスクリューと台座の接写です。

以下はテナーサックス用シングル・スクリューリガチャーの台座、スクリュー部接写です。

サックス用にもこのプレート・システムを採用しても面白いと感じました。

肝心の吹奏感、サウンドですが、これだけこだわって作っているだけの事がある実に素晴らしい吹き心地、豊かな響き、音色です。

実はこのリガチャーをベニー・グッドマン自身が吹いている、若しくは装着している写真、映像を僕は目にした事が有りません。

どなたかご存知ありませんでしょうか?

それともグッドマン自身このリガチャーを作製依頼したのか、セルマー社が企画してベニー・グッドマンの名前を借用したのか、いずれにせよグッドマンは気に入らず使わなかったのかも知れません。

ほとんどの製品のモニター、エンドーサーは契約上積極的にその製品を使うのが常ですが。

2017.05.27 Sat

マーチン・リガチャー袋入り合計100個‼️

3年近く前になりますが、マーチンのテナー・ハードラバー用のリガチャーをeBayで落札しました。

こちらも以前落札したリガチャーのネジ60本と同様で誰も入札者がおらず、開始価格での落札でした。

個数が半端ではありません。袋入り合計100個です。

 ふ

アメリカ国内の何処かの楽器屋倉庫に眠っていたのでしょう。断捨離?閉店のため在庫処分?よく分かりませんが、テナーのリガチャーとして出品されていましたがアルトのリガチャーも含まれており、テナー用が約70個、アルト用が約30個でした。

以下の値札が入っていました。

リガチャー1個2ドル25セントと言う事でしょうね、現代のリガチャーの価格からすると信じられない安さです。

値札の裏面です。

Wurlitzer社が親会社で何処かにOEMでリガチャーを作らせ、Martinに卸しているのでしょうか。

リガチャー自体には何もメーカー等の刻印はありません。

テナー用

アルト用

肝心のサウンド、吹奏感ですが、これが本当に素晴らしいです。

ダークで豊かな倍音成分を含み、確実な素早いレスポンス、Otto  Link等のラバーマウスピースにバッチリとフィットします。

削り出しのネジの使用、リガチャー本体のバリ取り等の仕上げ、ラッカーのクオリティも高く、多分アメリカでこのレベルの仕事が出来るのは60年代以前なので、この頃の商品と考えられます。

リガチャーネジ60本の中のインチ・ピッチのネジの中で、古そうな物と付け替えて吹いて見ましたが、その違いがかなりあるので面白いです。

もっとも練習もしないでグッズ弄りばかりしているのはオススメ出来ませんが(爆)

最後にテナーのリガチャーを全て机の上に並べてみました。

凄い数でした。

 

2017.05.25 Thu

セルマー・マグニトーン・リガチャー

今回取り上げるのはセルマー・マグニトーン・リガチャーです。

こちらも前回のセルマー・シングルスクリュー・リガチャーと同様に1950年代に発売されていましたが、シングルスクリュー・リガチャーがフランス・セルマー社の製品に対してアメリカ・セルマー社の製品になります。

リガチャーの素材は洋白(洋銀)です。

以下は珍しい銅製のマグニトーンです。

アルトからテナー、バリトンまで、主にラバーですがサイズが合えばどのマウスピースにも使用できると言う、いかにも西洋的な合理主義の産物です。

とはいえ、マウスピースの大きさ、テーパー(相対する面が対称的に傾斜している円錐状の部分。また円錐のように、先細りの形になっていること)が合って、マウスピースの形にぴったりとフィットすると、効率良く鳴るようになります。

逆に言えばマウスピースの形に合わないとマグニトーンの特性が発揮されません。

以下はマグニトーンをコピーして現代に再現した、イタリアのBorgani社製のリガチャーです。

テナー奏者Joe Lovanoが使用した事で有名になったリガチャーですが、ご覧の通り縦のスリットがマグニトーンよりも細かく設けられていて、マウスピースの微妙な太さに更に合致します。実はこのスリットはサウンド面や見ため的な要素もあるかも知れませんが、大きさを調整するツメを入れるためのものなのです。

マグニトーンの肝心のサウンド、吹奏感ですが、薄くて華奢な形状からは想像出来ない、タイトでしっかりとした音色、豊かな倍音成分、素早いレスポンスです。

銅製は洋白よりも丸い、幾分木管的なサウンドです。どちらかと言えば洋白の方がマグニトーンらしさが出ています。

難点としてはチューニングの際にズレ易い、マウスピースに傷が付く場合がある、前述の通りしっかりフィットするマウスピースが限られる、です。

じゃあスリットの多いBorgani社のリガチャーが良いのでは、と言う事になりますが、これが素材の違いなのか、Borganiの方が幾分厚く作られているからなのか、マグニトーンの音色、吹奏感に明らかに軍配が上がります。

現行のセルマー社サックスとビンテージ・セルマーの違いと言ったところでしょうか。

 

2017.05.21 Sun

シングルスクリュー・リガチャー第2弾‼️

セルマー・シングルスクリュー・リガチャーに続く別のリガチャーです。

作りや形状は前回のセルマー社のリガチャーにそっくりです。リードにあたるプレートが厚めでそこは独自の形をしています。ブランドやメーカー名は何処にも記載されていませんが、Pageというメーカーのリガチャー、いやKeilwerth社の物だという話を聞いた事があります。

全体的に少し大振りな仕上がりです。

メッキもしっかりかかっており、マウスピースの装着感もタイトでリードの固定感もバッチリです。印象としては「これはイケそうだ!」と予感させますが実際の使用感は、と言うと、

これがひたすら「重い」んですね。

最初に息を入れた感じは悪くありませんが、更に入れようとすると入りません。まるで背後から羽交い締めされているかのようです。振動が止まり倍音成分も希薄な感じで「硬い」サウンドです。この個体の個性なのかと思い更に同じリガチャーを2個、合計3個試してみましたが、いずれも殆ど同じ吹奏感でした。リードの番程を下げる、違うタイプの物に変える等試してみましたが印象は殆ど変わりません。

思うに「こう言う形のリガチャーを作ろう」(セルマーの事ですが)、このunknownメーカーはそれがまず始めにありきでの作成、プレイヤーサイドの要望、意見を取り入れず「作れば何とかなるだろう」的などんぶり勘定が支配したのでは、と感じられます。

実際eBayに出品されているこのリガチャーは重くて使いきれなかったのか、美品がとても多いです。

 

2017.05.20 Sat

セルマー・シングルスクリュー・リガチャー・シルバープレート‼️

先日eBayでリガチャーネジ60本落札を報告しましたが、今回はリガチャーです。

セルマー・シングルスクリュー・リガチャー・シルバープレート・テナーラバー用。

 

Theo WanneのサイトにあるMouthpiece Museumによると、このタイプのリガチャーは1958年に発売されたそうです。

オットーリンク・メタルのリガチャーと同じ、大きなシングルスクリューで下からプレートをリードに圧着させて押さえるシステムが採用されており、リードとマウスピースの関係としては理想的だと思います。因みにセルマー・メタルマウスピース用はこちら。

両方とも実にしっかりとした作りで当時のセルマー社の職人の意気込み、情熱を感じます。さすが歴史ある楽器メーカー、憎いほどネジの作りが確実でアソビが有りません。そして分厚いプレートが特徴的、効果的です。

肝心のサウンド、吹奏感ですが、セルマー2本ネジ下締めに比べ、幾分抵抗感は増しますがレスポンスの素早さ、吹奏感の安定度、倍音成分の豊富さ、雑味のゴージャスさ、フラジオ音域の確実さ、自分の好みですが全て申し分有りません。

 

こちらは同じタイプでラッカー仕上げのもの。

全く同じ作りですが、こちらはとても良く使い込まれており、プレート部分のラッカーが完全に取れています。

ビンテージ・セルマー・マークⅥやスーパー・バランスのラッカーが剥げた楽器のような渋い味わいのあるサウンドですが、金属疲労とまでは行かずともレスポンスの速さは結構落ちます。

今回落札したこのシルバーのリガチャーは奇跡的に殆ど使われておらず、新品に近いクオリティを維持しています。

出品者の話によりますとセルマー・エアーフロウ・モデルのマウスピースに付属した状態で入手、マウスピースはこのモデルを探していた友人に譲り、リガチャーのみを出品したそうです。

1958年ごろエアーフロウ・モデルのマウスピースを購入すると、このリガチャーが付属で付いてきたのかも知れません。

大変丁寧な作り、仕上げのリガチャーで、ゼヒ現代のテクノロジーで再現して発売して貰いたいですが、間違い無くかなりの価格になりそうです。

 

2017.05.10 Wed

逆転裁判15周年記念オーケストラコンサート無事終了‼️

異議あり‼️

 

このセリフでお馴染みです。アニメやゲームで大人気の逆転裁判。

2017年5月6日「逆転裁判15周年記念オーケストラコンサート」

出演:東京フィルハーモニー交響楽団

佐藤達哉(as,ts)

会場:上野・東京文化会館

無事終える事が出来ました。

2,300人収容の大ホール、昼夜2部とも5階席まで満席、ステージではアニメの映像もスクリーンに映され、普段は打ち込みで演奏される名曲の数々も華麗なオーケストラでの文字通り生演奏‼️

観て聴いて、ファンの皆さんとても喜んでおられました。

東フィルに入って2曲演奏させて頂きました。当日のコンサートはレコーディングされ、いずれCDやネット配信での販売を考えているそうです。

演目のうち1曲はテナーサックスをフィーチャーした美しいメロディのバラード。リリカルでゴージャスなストリングス、ウッドウインズ、ブラスを配したオーケストラをバックにメロディを吹いていると、名盤Claus Ogerman / Michael BreckerのCityscapesでの名演を思い浮かべてしまいます。

いずれ全曲オーケストラをバックに自分のコンサートを開いてみたいと心から思いました(^_^)v

2017.05.05 Fri

リガチャーネジ60本‼️

先日eBayのオークションでリガチャーネジ60本セットを落札しました。

と言っても他に誰も入札する人がおらず、開始価格での落札でした。落札する僕も僕ですが(笑)

ネジ無しのリガチャー本体30個(ネジ2本づつ使用のため)が出品される日がいつか来るかも知れません(爆)

日頃からネジによる楽器の振動の違いに興味があり、カドソンの輸入元の中島楽器にサックスのネジ全てを全て洋白(洋銀とも言います)で作って貰いました。これは好評につき製品化されています。

ネジの中でも特に興味があるのがリガチャーのネジです。最近(と言っても随分と前からですが)鋳物で作られた、リガチャーの様なリードの振動を伝える、コントロールするパーツに全く不向きなネジを用いての物を見かけますが、やはり削り出しのネジに勝るものはありません。

今回落札した60本は全て削り出しのネジで、モノによってはその形状から1940〜50年代と推測される物も何本か含まれています。比較的新しいネジも実にしっかりした個体ばかりです。一体どんな人が出品したのかにも興味がありますが、その点はまた後日に回しましょう。60本のネジはしっかり3種類のネジピッチに分類されました。

 

 

①セルマー

②ウッドストーン

③ハリソンやマーチン等のアメリカン(インチ仕様)

インチ仕様に40〜50年代のビンテージネジが多かったです。

 

後期ハリソンや現行品のメーカー違いハリソン形状のリガチャーには鋳物ネジが使われていますが、これに削り出しネジを使うとあまりの鳴り、音色の違いに驚きます。

倍音が多く含まれ吹奏感がアップし、幾分抵抗感が増えますがよりエアーが入るようになり、むしろコントローラブルになります。

またセルマーやウッドストーンに交換可能なネジの中には通常の物より質量重め、形状もしっかりした物があり、こちらに交換するとやはり吹奏感がとても変わり、タイトな吹き心地になります。

 

2017.05.05 Fri

Stan Getz Live At Newport 1964

最近良く聞いているのがStan Getzです。

学生の頃はGetzのテナーの音色があまりにもシューシュー、ガサガサと聞こえてその本当の良さが分かりませんでした。

酒の好みが20代はビールやサワー等の飲み易いものから、加齢を重ねてバーボン、紹興酒、芋焼酎等の「臭い」酒に移り変わったのと同様に(笑)、Getzの音色が堪らなく好きになりました。

特に好みがオットーリンク・スラントを使っている頃の1960年代の演奏です。

50年代末からヨーロッパに移住し、地元のリズムセクションと共演を重ね、60年頃にアメリカに戻った時から音色がグッと逞しく太くなり、フレージングも一層淀みない安定したものになりました。何よりタイム感が完璧と言って良いほどの境地に達しました。

そんな彼の絶好調な時期の演奏を収録したCDがStan Getz Live At Newport 1964

未発表作品とは信じられないクオリティの演奏、そして録音状態が素晴らしいです。

ts) Stan Getz vib)Gary Burton b)Gene Cherico ds)Joe Hunt

、そしてスペシャルゲストに米国のジャズフェスティバルに初出演のvo)Astrud Gilberto、加えてtp)Chet Baker。

当時のレギュラーメンバーにゲストを加えた形です。

Phil WoodsのWaltz For A Lovely Wife、EllingtonのTonight I Shall Sleep、Michael GibbsのSweet Rain等の選曲もマニアの好みを擽ります。GetzのMCにもメチャ毒があって大変楽しいです。