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2018.07

jazz/music 

2018.07.13 Fri

The Gene Harris Trio Plus One

今回はピアニストGene Harrisのリーダー作「The Gene Harris Trio Plus One」を取り上げてみましょう。Recorded Live At The Blue Note, NYC  November/December 1985  Recording Engineer : Jim Anderson, David Baker, Jon Bobenko Concord Label  Produced By Ray Brown And Bennett Rubin p)Gene Harris b)Ray Brown ds)Mickey Roker  Plus One: ts)Stanley Turrentine 1)Gene’s Lament 2)Misty 3)Uptown Sop 4)Things Ain’t What They Used To Be 5)Yours Is My Heart Alone 6)Battle Hymn Of The Republic ジャズ史上最も「そのまんま」のジャケット・デザインでしょう(笑) 。きっとご本人の人柄も同様に愛すべきキャラクターに違いありません。Gene HarrisはErroll GarnerやOscar Petersonの流れを汲むスイング・スタイルのピアニスト、加えてR&Bや隠し味にゴスペル、ポップスのテイストを持ちつつ、明るく美しい音色、タイトで端正なリズム感を武器に猛烈にスイングする演奏を信条とするプレイヤーで、敢えてカテゴライズするならばモダン・スイングでしょうか。僕にはPetersonの演奏よりもジャズテイストを感じる事が出来、Spainが産んだ盲目のピアニストTete MontoliuやJamaica出身の素晴らしいピアニストMonty Alexanderと同系列のスタイリストと捉えています。 1950年代半ばからHarrisの他、b)Andrew Simpkins, ds)Bill Dowdyとのレギュラー・トリオ編成によるThe Three Soundsでの活動でその名が知られるようになりました。彼らはBlue NoteやVerve, Mercury等のレーベルから実に多くの作品をリリースしています。ビバップ、ハードバップやモード、新主流派ばかりがジャズではありません。いわゆるメインストリームはリラクゼーションを最大の武器にして、多くの聴衆を惹きつけています。ある意味本場米国ではこちらの方が文字通り主流なのかも知れません。 自分たちトリオでの演奏の他、Lou Donaldson, Stanley Turrentineら管楽器奏者を加えた作品、Anita O’DayやNancy Wilson達の歌伴作品など幅広くエンターテイメントを演出しているのは日常的にコンサートやフェスティバル、TVやラジオのプログラム、ホテルギグをトリオやゲストを迎えて忙しくこなしていたからと推測されます。因みに日本でも70~80年代にちょうど同じ立ち位置で世良譲(p)トリオが存在し、僕も度々共演させて頂き大変お世話になりました。 The 3 Soundsは56年から73年まで継続的に活動を展開しました。元は56年に結成した4人編成のThe Four Soundsが前身で、サックス奏者が抜け3人編成になったためThe 3 Soundsと改名したそうです。お笑いグループ「チャンバラトリオ」は結成時3人組だったので名前をトリオとしましたが、ほどなくメンバーが入院、療養中に代役を立て、復帰後も代役はそのまま残留し4人組になり、更に最末期生存メンバーが2人となった後も一貫して名前は変更せずトリオで通しました。名前が定着してしまいましたからね(爆) The 3 Sounds解散後Gene Harrisはフリーランスとして動き始めましたが、70年代半ばから米国で徐々にジャズが衰退し始め、一方The 3 Soundsでの活動がひたすら中心だった彼は他のミュージシャンとの人脈をあまり有せず、次第にシーンから離れ、70年代後半からはアイダホ州ボイズに居を構え、地元のアイダンハ・ホテル(写真 : 1901年に建てられたホテル。米国にはこの手の歴史ある格式高いホテルが本当に多いです)で定期的に演奏を行なうだけの状態でした。このホテルのラウンジをたまたま訪れたのかどうかまではわかりませんが、Ray Brownが半隠居状態の彼を見つけ出し、80年代初頭から彼を自己のトリオに招き入れ、シーンに再び担ぎ出すべくツアーを開始しました。およそ第一線から退いたミュージシャンは目的を失わずとも情熱が覚め、演奏の質が落ちるのが常です。仕事の無い状況下でもGene Harrisはくさらず、自己鍛錬を怠らず、しっかりと演奏のクオリティの維持、向上、更なる高みを目指していたに違いありません。The 3 Soundsの頃よりも演奏は間違いなく上達しています。でなければ間違いなくRay Brownに発掘されたりはしません。 Ray BrownはOscar Petersonのパートナーとして永年演奏を共にし、二人の素晴らしいコンビネーションは名演奏を数多く残しました。彼らにドラマーEd Thigpenが加わりThe Oscar Peterson Trioになります。多くのベーシスト、ドラマーが去来しましたがこのメンバーが最強だと思っています。Ray Brownがリーダーになった場合も本人のベースプレイが何しろストロングなので、共演のピアニストは同様の豪快かつ繊細な演奏スタイルでなければバランスを保てません。ここでのGene Harrisはまさにうってつけの人選、適材適所とはこの事を言います。Gene Harris脱退後もMonty Alexander, Benny Green, Geoff Keezer, Larry Fullerといったピアニスト達が順番に彼のベースの伴奏者(笑)を勤めました。 因みに以前当ブログで取り上げた「Moore Makes 4」はGene Harris参加のRay Brown Trioに、テナーサックス奏者Ralph Mooreを大々的にフィーチャーした名盤です。 本作ではRay Brownが影のリーダーとして存在しており、仕切りたがりの(笑)彼は大好きなGene Harrisのために一肌脱ぎました。元々Concord Labelに彼を紹介したのもRay Brownですが、プロデューサーとしてクレジットされている他、2曲自身のオリジナルを提供、ライブレコーディング中のMCは全てRay Brownが担当し、音楽的にも彼のベースが要となって演奏を展開しています(その割にベースソロが1曲もありませんが)。ドラマーMickey Rokerとのコンビネーションも抜群で、このトリオにPlus One、テナーサックスの名手Stanley Turrentineが参加し、カルテット編成となります。85年11月〜12月の録音、この作品自体の収録時間がレコード時代の最末期なので48分と短いですが、この頃のBlue Note NYは1週間単位で同一ミュージシャンが出演し、仮に連日録音したのならばおそらくかなりの量の未発表、別テイクが存在すると思われます。 それでは作品の内容について触れて行きましょう。まず録音エンジニアに名手Jim Anderson、アシスタント・エンジニアにDavid Bakerが起用されているとなれば、録音状態が悪かろう筈がありません。ライブ録音にも関わらず楽器のセパレーション、音の輪郭、解像度、オーディエンスのアンビエント感も申し分ありません。1曲目Ray Brown作Gene’s Lament、テーマらしいテーマは聴かれませんがキーB♭のブルース・ナンバーです。フェードインして曲が始まるのは作品のオープニングには珍しい形です。曲冒頭部に何か不都合があったのでしょう。聴衆のアプラウズに混じりRay Brownの掛け声も随所にはっきりと聞こえます。Turrentineのテナーソロが始まりました。彼とGene Harrisの共演は60年12月録音の「Blue Hour / Stanley Turrentine With The 3 Sound」以来だそうです。(写真は後年リリースされたComplete Take集) なんて素晴らしいテナーサックスの音色でしょう!一音吹いただけでその世界が確定してしまいます!このトリオにはこのレベルの豪快さんが不可欠です!リズムセクションにのタイトさに比べてTurrentineのリズムは良い意味でも悪い意味でもルーズさを感じます。この人は音色の素晴らしさに加えフレーズの語尾のビブラートに色気があり、いつ聴いても堪りません。ここではBen Webster直系のホンカーぶりがプレビュー程度に披露されていますが、まだまだこんな物ではありません。Turrentineソロ終了後のRay Brownの掛け声「Alright ! 」がとても印象的です。続くGene  Harrisのピアノの良く鳴っていること!音量のダイナミクスを駆使したソロには思わず聴き入ってしまいます。再び豪快さんのテナーが先ほどのソロの補足を行っているかの如く聴かれます。エンディングに向けての音量調整も実に的確です。 2曲目はご存知Erroll Garnerの名曲Misty、何のアレンジも施されず全くストレートに演奏されていますが、これがまた素晴らしい!素材の美味しさと必要最小限の調理、盛り付け具合のセンスで勝負する高級自然食レストランのディナーの如き様相を呈しています。Ray Brownのベースのプッシュぶりが凄いです。ピアノソロは無くテナーの吹きっきり状態、独壇場で演奏が繰り広げられており、Turrentineのバラード演奏のエッセンスが凝縮されているテイクになりました。 3曲目は再びRay Brownのオリジナル・ブルースUptown Sop、今度のキーはCです。こちらもテーマらしいメロディを特に感じる事は出来ないナンバーですが、Ray Brownワールドてんこ盛りのリズムの世界です。ピアノのバッキングがメッチャいけてます!Turrentineの先発ソロ、小出しにしていたホンカーぶりがここでは発揮されています!ブレークタイムを含むリズムセクションがソロをどんどん煽ります!High F音のオルタネート音連発がムードを高めホンキング状態です!Gene Harrisもあとを受け継ぎゴージャスに、まるでラスベガスのショウ仕立ての様にサウンドを構築しています!その後メゾピアノでのTurrentineのソロがストーリーの起承転結にしっかりと落とし前を付けています。 4曲目はDuke Ellingtonの息子MercerのペンによるThings Ain’t What They Used To Be、こちらも何とブルース、キーはE♭。このバンド、実はブルースバンドなのでしょうか?Turrentineこちらでは中音域F音のオルタネート音を用いてホンキング、フレーズの間を生かした大人のホンカーを演じています。Gene Harrisは容赦無くブルージーにブロックコードを多用してリズミックに盛り上がっています。Ray Brownが曲のエンディングに「Stanley Turrentine !」とシャウトするのがライブの臨場感を出しています。 5曲目はアップテンポ・スイングのスタンダード・ナンバーYours Is My Heart Alone、こんな小粋な選曲が聴けるのはブルースバンドではない証拠です(笑)ベースとドラムスが実に小気味好いビートを繰り出していますが、今回Mickey Rokerの素晴らしさを再認識しました。数多くのレコーディングを経験したセッションマンで、意外なところではHerbie Hancockの「Speak Like A Child」でホーンセクションのアンサンブルを生かすべく、ステディなドラミングを聴かせています。Turrentineとは彼のリーダー2作「 Rough ‘n’ Tumble」「The Spoiler」、いずれも名盤のリズムセクションの中核をなしています。ピアノのイントロからテーマのメロディに入るところで一瞬、ひやっとさせられました。Turrentineのアウフタクト音がリズム的に微妙な位置だったのをリズムセクションが柔らかく的確に受け止めて着地させ、音楽的に正しい方向に導きました。 6曲目Battle Hymn Of The Republic、リパブリック賛歌と邦訳されている米国の1856年作曲のナンバー、南北戦争で北軍の行進曲に使われました。イントロで誰かがハミングしているのが聞こえますが、これまたRay Brownに違いありません。テーマメロディをピアノが華麗に演奏し、そのままソロに突入、こんなカッコいい演奏をライブで目の当たりにしたらさぞかしエキサイトする事でしょう!続くTurrentineのソロもピアノソロに影響を受け、絶好調ぶりを遺憾無く発揮しています!そしてTurrentineが率先して音量を小さく、ディクレッシェンドしています!音楽で最も効果的な表現方法は音量の大小です。リズムセクションも実にナチュラルにダイナミックに対応しています。この後にラストテーマを演奏するのは無粋かも知れませんね。案の定テーマは無しで大団円を迎えます。

2018.06

jazz/music 

2018.06.22 Fri

Franco Ambrosetti / Wings

今回はトランペット奏者Franco Ambrosettiのリーダー作「Wings」を取り上げてみましょう。録音1983年12月1, 2日at Skyline Studios, NYC  Recorded By David Baker  Produced By Horst Weber & Matthias Winckelmann  Enja Records  84年リリース tp, flg-h)Franco Ambrosetti  ts)Mike Brecker  fr-horn)John Clark  p)Kenny Kirkland  b)Buster Williams  ds)Daniel Humair 1)Miss, Your Quelque Shows  2)Gin And Pentatonic  3)Atisiul  4)More Wings For Wheeler まず最初にリーダーFranco Ambrosettiのバイオグラフィーをご紹介しましょう。スイスのLuganoで41年12月10日に生まれたイタリア系スイス人、明朗で快活、よく通るブライトなトランペットの音色はどこかイタリア・オペラをイメージさせます。父親のFlavioがヨーロッパのジャズシーンで40年代アルトサックス奏者、バンドリーダーとして活躍したミュージシャンで、その血を受け継いで9歳頃からクラシック・ピアノのレッスンを開始、トランペットは17歳から独学で始めたそうです。父のバンドやPhil Woods European Rhythm Machineのピアニストとして名高いGeorge Gruntzとの共演で腕を磨き24歳、トランペットを始めて僅か7年余り、66年ウイーンで開催されたFriedrich Gulda主催の国際ジャズ・コンペティションでトランペット部門の首位の座に輝きました。因みにこの時ベーシストMiroslav Vitousも18歳にしてベース部門でウイナーを取得(この年は人材豊作で2位がGeorge Mrazでした!)。Vitousの演奏に審査員の一人Cannonball Adderleyがそのあまりの物凄さに椅子から転げんばかりに驚いた、という逸話が残されていますが、あの巨漢なので椅子から転げ落ちなくて良かったです(笑)。ヨーロッパのジャズシーンが当時からどれだけ盛んなのかが、Ambrosettiの早熟ぶり、本作での演奏の素晴らしさ、そしてその完璧な独習による楽器のマスターぶりからも窺うことが出来ます。トランペットがメチャメチャ上手く、美しくて深い音色を湛え、色気があってたっぷりとした余裕を感じさせつつ、リズムのツボを確実に押さえた驚異的なタイム感、スイング感、フレージングの独創性、構成力、ユーモアのセンス、また本作で演奏されている彼のオリジナル曲のユニークさとカッコ良さ、全てにバランスが取れたジャズプレイヤーです。実は彼は一族が様々な会社経営を行っていた裕福な家庭環境に育ち、本人もBasel大学の経済学修士を取得していて親族が経営していた会社の社長を務めるなど、ジャズミュージシャンと会社経営の両方を、こちらもバランス良くこなしているようです。イタリア系の血がなせる技でしょうが、Ambrosettiは社交的で周囲のミュージシャンに対する気配り、配慮がなされた人物で、実際のレコーディング時もスタジオ内で笑いが絶えず、ウイットに富んだ会話にさぞかし満ちていた事でしょう。これはMichael Breckerの演奏の絶好調ぶりから十二分に感じる事が出来るのです。特に1曲目Miss, Your Quelque Showsと2曲目Gin And Pentatonicでの爆発的なブローイング、それでいて知的で緻密な構成力を併せ持ち、音楽の深部に更にぐっと入り込もうとするクリエイティヴネス、その具現化、インプロヴィゼーションの神が降臨したかの如きです。常に安定したクオリティの演奏を繰り広げるMichaelですが、周囲の雰囲気がリラックス出来る状況、彼に対して好意的であればあるほど、演奏に更にターボがかかり、とんでもない次元にまで演奏が飛翔して行くのです。これほどに演奏の充実ぶりが聴けるのは他の共演者との相性や演奏曲目へのチャレンジのし甲斐も間違いなくあった事でしょうが、何と言ってもAmbrosettiの人間的魅力にMichaelがノックアウトされたのでしょう、MichaelもAmbrosettiの演奏と人柄を絶賛していました。 同様に95年Helsinkiでのライブ録音「UMO  Jazz Orchestra With Michael Brecker」での名演奏はリラックスして何の躊躇もなく、只管演奏に集中するMichaelを感じ取る事が出来ます。彼との共演、客演を心から待ち望んでいたビッグバンドのメンバー、スタッフ、オーディエンス全員が彼自身を確実にプッシュしたのです! 「Wings」のディストリビュートは旧西ドイツの名門レーベルEnja、レコーディングは数々の名盤を産み出したNYC、MidtownにあるSkylineスタジオ、エンジニアはDavid Baker、プロデュースはEnjaのオーナーHorst Weber(一度Horstに会った事がありますが、評論家の竹村健一氏によく似た風貌、人柄の方で、さすがジャズレーベルを持つだけに強い意志を感じる人物でした。奥方が日本人だったので日本人ミュージシャンに興味、理解があったようです)。参加メンバーはヨーロッパ勢代表として、盟友Daniel Humair、彼のコンテンポラリーにして独自のグルーヴとカラーリングのセンスを持ち合わせたドラミングがこの作品の価値を一層高めています。アメリカ側からはベースBuster Williams、ピアノKenny Kirkland、フレンチホルンJohn Clark、そしてテナーサックスに我らがMichael Breckerを従えてのSextet編成です。それにしても本作はレコーディング・スタジオ、エンジニアが優れているにも関わらず録音状態がどうもいただけません。実はEnjaの作品全般に言えるのですが、ドンシャリ気味で奥行きのない詰まった感じの音質は一貫したものを感じる事が出来、この音質こそがEnja Labelの個性と言える程です。 「Wings」と次作85年録音Michaelとの再演「Tentets」の2枚をカップリングさせたCDが92年「Gin And Pentatonic」と言うタイトルで発売されました。Ambrosettiのリーダー作には違いないのですが、Michaelとの連名がクレジットされています。1曲目Miss, Your Quelque Showsが「Gin And ~」ではMiss, Your Quelque Chose、ShowsがChoseと表示されているのは単なる誤植か、タイトルを変更したのか、何事も微に入り細に入り細かい事で有名なドイツ人の主宰するレーベルなので、何か意味があるのでは、とつい深読みしてしまいます。余談ですが今から25年以上前、僕が早坂紗知Stir Upでドイツ・メールス・ジャズ・フェスティバルに出演した時の出来事です。演奏が終わって小腹が空き、大きなサーカスのテントのような会場を出て軽く何か食べようと、フランクフルト・ソーセージのぶつ切りにカレー粉をふりかけたカリーヴルスト(ちょうど日本のお好み焼きやたこ焼きのような存在の、ドイツでは最もポピュラーな食べ物です)を屋台に買いに行きました。紙の皿と陶器の皿に盛られた2種類があり、陶器の方はデポジット料金が掛かりますがフランスパンが付いてくるのでそちらにして、食べ終わって皿を返却しました。当然デポジット金を受け取れるものと思っていましたが梨の礫、観たいステージがあるので仕方ないと思いながらその場を立ち去ろうとすると、隣にいた男性に腕を掴まれました。「何か?」異国の地で見知らぬ男性に引き止められたのには驚きましたが、その彼が僕に話しかけます。「ちょっと待て、お前は金を受け取る権利がある」「えっ?」「皿を返したお前は金を受け取れるんだ」更に彼は店員に向かって「何でこいつに金を返さないんだ?ずるい事はよせ」店員は渋々と僕に返金し、事は丸く収まりました。彼は一部始終を見ていた訳なのです。丁寧にお礼を言いましたが、その時の「当然の事をしたまでさ」と言わんばかりの笑顔が忘れられません。人に対して無関心でいられない観察力と正義感、細かい事に対するこだわりが半端ない国民性、そうそう、ドイツ人は本当によく信号を守り、歩道と自転車道を厳格に区別します。 「Gin And Pentatonic」に「Wings」の4曲は全て収録されていますが、「Tentets」の方は全5曲中残念ながら2曲カットされています。「Tentets」収録Wayne Shorterの名曲Yes Or NoやGeorge Gruntzのオリジナルでの10人編成ラージアンサンブルのゴージャスさ、AmbrosettiワンホーンAutumn Leavesの素晴らしさ、これら3曲が「Wings」に追加されてのリリースという形です。 それでは収録曲に触れて行きましょう。1曲目AmbrosettiのオリジナルMiss, Your Quelque Shows、何でしょうこの曲のカッコ良さは!コンテンポラリー、ストレートアヘッド、そしてハードバップの匂いも感じさせる曲調ですが、聴いたことのない類のメロディラインです。曲の随所に聴かれるドラムスのカラーリングが実に素晴らしいです!ソロの先発Ambrosettiのフレージングの合間に聴かれるフィルイン、例えば0’57″のフレーズ、何ですかこれは?笑っちゃうくらいに狙っている、意外性のあるオカズです!Humairのたっぷりとしたグルーヴ、それでいてシャープなビート、レスポンスが素早く、スネアのアクセントの入り具合が自由自在で、他では考えられないセンスです。4’34″頃から始まるMichaelのソロに対応すべく繰り出すスネア、皮モノの連打、イヤー物凄くカッコいいです!間違いなくSteve Gaddに負けずとも劣らない変態系ドラマーの一人でしょう。Kenny Kirklandは大好きなピアニストの一人ですが、ここでも実にネバリのある、ビートに纏わりつくスウィンギーなタイム感を聴かせています。バッキングも決して出しゃばらず、しかし随所にヒラメキを感じさせるフィルインを聴かせ、その場毎に俯瞰しながらシーンを活性化させています。1’05″で聴かれる単音のフィル、イケてます!Buster Williamsの独特の音色、ベースライン、アプローチ、On TopのビートがHumairのドラミングと一心同体化しています。Ambrosettiのソロ、トランペットをここまで吹けたらさぞかし気持ち良いでしょうね!もはや上手い、という次元ではなく、楽器を媒体として確固たる自分のメッセージを高らかに、朗々と語っています。話すべき内容が実にたくさん有り、自分自身たまたまトランペットを吹いていて、豊富な内容の話をオーディエンスにただ聴かせるために鼻唄感覚で演奏する、Ambrosettiの超絶テクニックは表現するものがまずありき、テクニックをテクニックとして身に付けたのではなく、表現するものが明確に見えていて具体化すべく、その結果楽器が上手くなった、と僕は解釈しています。トランペットソロを実に嬉しそうに聴いていたMichael(その場に居合わせたわけではありませんが、これだけの演奏を聴くとその場の情景がくっきりと目に浮かんでしまいます!)、彼のソロが続きますが、これこそ神降臨!Ambrosettiのプレイに徹底的にインスパイアされ、彼と同じく表現すべき事柄が全てこの瞬間に確実に見えています。物凄いテクニックの嵐なのですが、ストーリーを語るためのテクニックの使用、しっかりと唄が聴こえて来ます。2ndリフが演奏されソロが終了と思いきやもう一場面繰り広げられており、ユニークな構成です。Kirklandのソロがまた素晴らしい!フレージングやタイムもさる事ながら、ピアノの音色がとても美しいのです!Busterも的確に対応しています!ここでのKirklandとの出会いがMichaelの初リーダー作「Michael Brecker」の人選に繋がったに違いありません。ピアノソロにもテナーソロと同様にオマケが付いています。その後のドラムスとのバース、ソロイスト各々とのやり取り、全ての音にムダがなく、発した音に互いに責任を持ちつつ、さらに話題を提供し合いながら高尚な会話が継続されました。ラストテーマを迎え大団円状態でのFineです。 2曲目はタイトル曲のGin And Pentatonic、Michaelのソロが大々的にフィーチャーされています。この時のMichaelの使用楽器はお馴染みAmerican Selmer Mark6 No.86351、マウスピースはBobby Dukoff D9(翌84年からDave GuardalaにスイッチするのでDukoff使用最後の頃です)、リードはLa Voz Medium、ダークでいてブライト、エグさがハンパない音色、最低音からフラジオまで自由自在のコントロールです。Miss, Your Quelque Showsのテーマではフレンチホルンの存在が希薄でしたがこの曲のアンサンブルでは、はっきりと聴くことが出来ます。この曲調もまた大変ユニークですが、ソロの先発Michaelがまた大変なことになっています!ここまでイキまくっているソロはMichael史上そうはありません!しかもごく自然体で。ストーリーの起承転結、展開の仕方、ダイナミクス、超絶技が連続のフレージング、イキまくっているにも関わらず全てが完璧な構成、ある図形が内側の複雑な図形を理路整然と収納して、もとの図形を成り立たせている様子、熊本城の石垣〜武者返しの石積みとでも例えましょうか。リズムセクションも一丸となってMichaelのソロをサポートしています。Ambrosetti、Buster、 Kirklandといずれも素晴らしいソロが続きます。以上レコードのSide Aでした。 3曲目はFrancoの父親Flavioのオリジナル、Atisiul。これはFlavioの奥様、Francoの母親でもあるLuisitaに捧げたナンバー、Luisitaを逆から綴ってタイトルにしています。日本でも引っくり返して逆から読む事をバンド用語と言いましたが、最近の若いミュージシャンはあまり使わなくなりました。昔のドンバは全世界共通のセンスを持っているのです。 Michaelのルパートのメロディ奏はいつ聴いてもドラマチックで、彼流の美学に満ちています。その後インテンポで全員によるテーマが演奏されますが、コンテンポラリーなテイストを湛えたナンバー。ストイックさも感じさせるメロディ、コード進行、 Flavioの奥様は一体どんな方なのでしょう?ソロの先発Michaelには前2曲に較べてある種の演奏上の躊躇を感じます。タイムもやや滑りがちで、語り口も辿々しい時があります。何か気になることがあったのでしょうか?「行ってしまえ〜!」感が無くなりました。続くJohn Clarkのフレンチホルンのソロ、途中でテンポのなくなるフリー状態に突入します。ピアノやドラムスのパーカッシヴなバッキング、ベースのアルコでのフィルイン、短いドラムソロを経てア・テンポでトランペットのミュート・ソロになります。ミュートを外したソロで再びリズムが無くなり、フリー状態が一瞬訪れますがドラムソロを経てラストテーマへ。この演奏は全体的にラフさを感じてしまうテイクです。 4曲目はGeorge GruntzのオリジナルMore Wings For Wheelers。トランペット奏者Kenny Wheelerに捧げられている美しいバラード。テナーとフレンチホルンのアンサンブルが効果的に用いられており、Francoをフィーチャーしてのナンバーです。Side BはSide Aの2曲の素晴らしさに比べて物足りなさを感じてしまいました。

jazz/music 

2018.06.11 Mon

Joe Henderson Big Band

今回はテナーサックス奏者Joe Hendersonの集大成的な作品、1997年リリース「Joe Henderson Big Band」を取り上げてみましょう。 1)Without A Song 2)Isotope 3)Inner Urge 4)Black Narcissus 5)A Shade Of Jade 6)Step Lightly 7)Serenity 8)Chelsea Bridge 9)Recordame(Recuerdame) On 1, 5, 8 recorded at Power Station, Studio C, March 16, 1992 On 2, 4,  7,  recorded at The Hit Factory, Studio 1, June 24,  1996   On 3, 6, 9, Same Location, June 26, 1996   Verve Label ts, arr)Joe Henderson   ss, as)Dick Oatts  as)Pete Yellin, Steve Wilson, Bobby Porcelli  ts)Craig Handy, Rich Perry, Tim Ries, Charles Pillow  bs)Joe Temperley, Gary Smulyan  tp)Freddie Hubbard, Raymond Vega, Idrees Sulieman, Jimmy Owens, Jon Faddis, Lew Soloff, Marcus Belgrave, Nicholas Payton, Tony Padlock, Michael Mossman, Virgil Jones, Earl Gardner, Byron Stripling  tb)Conrad Herwig, Jimmy Knepper, Robin Eubanks, Keith O’Quinn, Larry Farrell, Diane Zawadi  b-tb)David Taylor, Doug Purviance  p)Chick Corea, Helio Alves, Ronnie Mathews  b)Christian McBride  ds)Joe Chambers, Al Foster, Lewis Nash, Paulinho Braga  cond, arr)Slide Hampton  arr)Michael Mossman  prod)Bob Belden(track 2~4, 6, 7, 9 )  prod)Don Sickler(track 1, 5, 8) 今までにも当BlogにてJoe Henはリーダー作、サイドマンでしばしば取り上げて来ましたが、今回はまた違った側面から彼の事を論ずる事が出来そうです。 作品収録全9曲はJoe Henのオリジナル7曲、かつて自身の作品で取り上げた事のあるスタンダード・ナンバー2曲から成ります。オリジナルは大変ユニークな曲構成を持ったものから、崇高な美学を湛えたナンバー、Joe Henのフレージングをそのまま曲のメロディラインにした如き変態系(?)楽曲まで幅の広い音楽性を有しています。スタンダード・ナンバーもJoe Henならではのセンスが光るチョイスです。これらのナンバーの音楽性を最大限に発揮させるべく、アメリカを代表するアンサンブル・ワークの精鋭達に集合を掛け、更にはJoe Hen所縁のジャズ・リジェンド、ジャイアンツから成る超豪華なゲスト・ミュージシャンを各セクションの要所に配した特別編成のビッグバンドを組織し、何曲かにはこれまたトップクラスのアレンジャーを採用し(Joe Hen本人も素晴らしいアレンジを共作も含め何と5曲も提供しています)、63年録音の初リーダー作「Page One」から始まる約30年に及ぶJoe Henワールドの集大成をビッグバンドで表現しようというVerve Labelのプロジェクトが企画されたのです。何よりリーダーJoe Hen自身の全く的確なビッグバンド・アレンジの提供、そこから感じる音楽表現に対する強靭な意志、さらには凄味さえも感じさせるアドリブ・ソロから意気込みがひしひしと伝わって来ます。 個人的にはCaribbean Fire Dance、Mode For Joe、In’n Out、The Kicker、If、Mo’ Jo等Joeの他のユニークなオリジナルや、オハコのスタンダード・ナンバーInvitationもビッグバンド・バージョンで聴いてみたかったところです。 ビッグバンドという形態はジャズという音楽でありながらパッケージ的な要素が強いために、スポンテニアスなアドリブやジャズの醍醐味であるインタープレイがどうしても制約されてしまう傾向にあります。66年から継続的に演奏活動を行なっているThad Jones Mel Lewis Big Band(現在でもThe Vanguard Jazz Orchestraとして活動中)は、アンサンブルとアドリブのバランスがかなりの次元まで表現されていた事で有名なビッグバンドでしたが、本作もJoe Henのアドリブがサイズ的にコンパクトな中にもコンボジャズのテイストがしっかりと織り込まれており、Joe Hen自身も一時参加していたThad – Melに引けを取らない、寧ろジャズ史上に残る緻密でハイパーなアンサンブルを従えた、ビッグバンド〜コンボ、文武両道のジャズ名盤に仕上がっています。 この作品でJoe Henがビッグバンドのアレンジを手掛けているのは意外な感じがするかも知れません。実は彼は60年代に自己のビッグバンドを組織していました 。時系列として、65年末Thad – Mel Big Bandが結成されるとテナー奏者Frank Foster、ピアニストDuke Pearsonも彼らに続きビッグバンドを立ち上げ、Joe Henは半年遅れの66年夏頃に、彼にとっての指導者的立場にあるトランペッターKenny Dorhamと双頭バンドという形でビッグバンドをスタートさせました。 Joe HenはDetroitのWayne State Universityで、クラスメイトのBarry Harris、Donald Byrd、Yusef LateefやPepper Adams達に囲まれて音楽を学び、Bartok、Stravinsky等のクラッシックも学びました。それ以前の高校時代にはStan Kenton Orchestraに興味を持っていたそうで、他のアレンジャーではBill Holmanにご執心、またテナーサックス奏者ではLester Youngを随分と研究しており、Youngのソロの完全コピーを暗譜して吹いていたそうです。その頃から曲作りやビッグバンドのオーケストレーションにもかなりの興味があった事が本作に繋がりますが、彼の演奏が構築を重ねてドラマチックに盛り上がり同時にストーリー性を有しているのは、Youngのアドリブ・スタイルのフォーマットにオーケストレーションを勉強していた事が加わって成り立っている可能性があります。 63年にBlue Note Label(BN)からアルバムデビューを飾ったJoe Henですが、作曲の才能を開花させるのはBNの彼の作品群で可能になりましたが、ビッグバンドのアレンジを披露する場には恵まれませんでした。BNではビッグバンドのレコーディングにはさほど積極的では無かったので、Dorham、Pepper Adamsら志を同じくする仲間達でリハーサル・オーケストラを組織しましたが、ライブハウスやコンサートへの出演機会もほとんど無かった中でただひたすら、黙々と練習を重ねました。どうやらその頃のリハーサル模様を録音したテープが複数存在するらしいのですが、未だ日の目を見ていません。ぜひ発掘して貰いたいものです。当時のリハーサルに参加したメンバーとしては、Lew Soloff、Jimmy Knepper、Curtis Fuller、Chick Corea、Ron Carter、Joe Chambers達の名前が挙げられますが、本作参加メンバーにも彼らの名前を見る事が出来ます。他にも参加ミュージシャンでPete Yellin、Virgil Jones、Idrees Sulieman、Jimmy Owens、Ronnie Mathews、Dick Oatts達もリハーサル参加経験者ではないかと想像しています。しかし、バンド活動は人前での演奏行為あっての継続性です。ギグがなければ練習にも身が入らなくなり、1年後にはDorhamが退団、その後数年でバンドはフェードアウト状態に陥ってしまいました。「メンバーには苦労させちゃったから恩返しをしないとね、ビッグバンドの録音には必ず彼らを呼ばないといけないね」とJoe Henは考えた事でしょう、後年実現したわけですが、我々は作品の人選の裏話を垣間見ています。 その後69年前任者のSeldon Powellが抜けたThad – Melに後釜としてJoe Henが加入、短い間でしたが熱い演奏を繰り広げました。自己のビッグバンドでの無念を晴らすべく、と言う側面もあった事でしょう。70年代に入りCrossover、Fusionの台頭によりメインストリーム、モダンジャズに活況が見られなくなり、ビッグバンドも当然勢いがなくなって行きました。Joe Hen自身も仕事が少なくなり拠点としていたNew Yorkを離れ比較的スタジオ・ギグの多かったSan Franciscoに71年移住しました。同時期にロックバンドBlood, Sweat & Tearsに参加という離れ技(?)も披露してくれました。 70年代はMilestone Labelにコンスタントに作品を残しており、以降80年代から徐々に60年代の往年の活躍ぶりを取り戻し、以前当Blogで取り上げた91年の「The Standard Joe」から本格的再始動が始まります。同年録音「Lush Life: The Music Of Billy Strayhorn」でのGrammy Award受賞がきっかけとなり再ブレークしたわけですが、この翌92年に本作のレコーディングを開始、Without A Song、A Shade Of Jade、Chelsea Bridgeの3曲を自身のアレンジで録音しています。臥薪嘗胆、虎視眈々とはまさにこの事、ビッグバンドのレコーディング・プロジェクトを狙っていたのでしょう、今がその時期だ、とばかりに録音しましたが、この後96年まで更なるレコーディングは行われておりません。Verveと何らかの契約があったのか、第2作目にビッグバンドの作品を制作する事が叶わず93年第2作目「So Near, So Far(Musings For Miles)」、94年第3作目「Double Rainbow: The Music Of Antonio Carlos Jobim」のコンボ編成2作をリリースしたのち、96年に一挙に6曲のビッグバンド録音を行い、合計9曲を収録したVerve第4作目として97年リリースとなります。文字通り満を持してのJoe Henderson Big Band、それでは収録曲について触れて行きたいと思います。 1曲目スタンダードナンバーWithout A Song、Milestone67年録音のアルバム「The Kicker」に収録されています。ここではJoe Henによるビッグバンド・アレンジ、92年録音。60年代にSonny RollinsやFreddie Hubbard達も取り上げていたナンバーです。イントロなしでいきなりJoe Henのテーマから始まります。自身のアレンジで自分をフィーチャーしてビッグバンドをバックに演奏する、こんなサックス奏者冥利に尽きるシチュエーションはありません!テーマを含め計5コーラス演奏していますが、ソロ3コーラス目からのバックリフ、続くシャウト・コーラスの何てカッコイイ事!オープニングに相応しくJoe Henの独壇場、吹きっきりでの演奏です。 2曲目オリジナルIsotope、Blue Note 64年録音の「Inner Urge」収録、Joe Henのアレンジで96年録音。初めのテーマから既に大騒ぎ状態です!ソロの先発、切り込み隊長はChick Corea、さあJoe、雰囲気を作って場を温めておきましたよ、どうぞ存分にブロウして下さい、と言わんばかりの的確なソロに続きJoe Henの登場です。曲のアレンジ構成を最も分かっている本人ならではの、アンサンブルとのやり取りが素晴らしいソロです。続く4コーラスにも及ぶシャウトコーラスの凄まじさ!本作殆ど孤軍奮闘のChristian McBrideのベースソロを経て更に、一層大騒ぎ、成層圏まで届きそうなJon Faddisのリード・トランペットのハートーンが聴けるラストテーマに繋がります。こんなラインやアレンジを書けるJoe Henって何て凄いミュージシャンだろう、と再認識させられます。 3曲目オリジナルInner Urge、前曲と同じ同名アルバム収録になります。 96年録音、トロンボーン奏者 Slide Hamptonのアレンジです。これから展開されるであろう音の壮大な構築を予感させる、問題提起感満載の妖しいイントロから、Joe Henとベースのユニゾンのメロディ、テーマ2コーラス目はアンサンブルです。タダでさえカッコイイ曲が超絶カッコ良くアレンジされています!先発Joe Henのソロは作曲者ならではのサウンド・アプローチが聴かれます。2番手Coreaのソロのまた素晴らしいこと!Joe、貴方の演奏の後をしっかり締めておきましたよ、とばかりの展開です!ピアノソロ後のルパートのアンサンブルを経てLewis Nashの短いドラムソロ、そしてアレンジャーHamptonの美学が冴えるチュッティ、シャウトコーラスのエグい程のゴージャスさ!最後は再びJoe Henとベースのユニゾンのテーマ、終わったかに見せかけてのエンディングの、これまたえげつない位に素晴らしいダメ押し。ため息が出るほどに聴き応えがある演奏です。 4曲目オリジナルBlack Narcissus74年録音の同名作に収録、そして遡ること5年、69年録音の「Power To The People」(いずれもMilestone)で初演されています。Bob Beldenアレンジ96年録音。耽美的な美しさを湛えたワルツ・ナンバー、Joe Henも再録音するほどのお気に入りの曲です。ソロの先発Corea、リズムセクションとのインタープレイが素晴らしいです。ドラマーのアプローチが前曲とは異なると思いきや、やはりAl Fosterに変わっていました。アンサンブルを含めたFosterのドラミングによるカラーリングが、実に曲の場面を設定させています。 5曲目オリジナルA Shade Of Jade、Blue Note66年録音「Mode For Joe」収録。 92年Joe Henのアレンジで録音されています。バリトンサックスのフィルイン・メロディが印象的なテーマのアレンジ、これまたメチャイケてます!Joe Henのソロも絶好調、96年録音時よりも92年の方がソロに一層の冴えを感じます。続くトランペットはFreddie Hubbard、この時彼は病み上がりで万全のコンディションではありませんでした。確かにいつもの神がかったインスピレーションやタイムの素晴らしさに今一つ翳りを感じます。再びJoe Henのソロが登場、アイデアが尽きません!アンサンブルとのやり取り、その後のこれでもか、とばかりのシャウトコーラスの充実ぶりにJoe Henのアレンジにかける執念を感じました。 6曲目オリジナルStep Lightlyはトランペット奏者Blue Mitchell63年8月録音の同名作と、同年12月録音ビブラフォン奏者Bobby Hutchersonの「The Kicker」両方に収録されているナンバー。良い作品にも関わらず、いずれも何故かオクラ入りしていたために、Mitchellは88年、Hutchersonの方は99年にリリースされました。96年録音Bob Belden、Joe Hen共作によるアレンジ。 唯一Joe Henのリーダー作以外からのナンバーです。軽やかなステップ、リラックスした雰囲気の変形ブルースです。先発ソロイストはNicholas Payton、正統派然とした素晴らしいソロが聴けます。何気にバックのアンサンブルのテンションが凄まじいです。こちらもドラムがFoster、さすが晩年のJoe Hen御用達ドラマー、Joe Henのソロにとても的確なアプローチを聴かせています。続くCoreaもJoe Henの音楽性をしっかりと意識した演奏を展開しています。 7曲目オリジナルSerenityは64年録音、Blue Note「In’n Out」収録。 BNを代表する秀逸なレコード・ジャケットの1枚です。96年録音、Slide Hamptonアレンジです。Serenityとは「静けさ、平穏」の意味ですが、イントロでは既に静寂が破られています(笑)。ここでのテーマ提示感が素晴らしく、続くテーマ本編への繋がりにワクワクしてしまいます!この曲ではJoe Henのテナーサックスの音が他曲よりも前に出ているように感じます。テナーソロ導入部のバックグラウンド、Coreaのソロ後、アカペラから始まるチュッティ、アンサンブルのソプラノリードが印象的だったり、随所に聴きどころを作った凝り凝りのアレンジで、アレンジと言う枠組み、その内部に収納されている演奏の密度の濃さはとてつもないレベルです。 8曲目Billy Strayhornのオリジナル・バラードChelsea Bridgeは1曲目と同様「The Kicker」に収録されています。 92年録音、Joe Henアレンジです。個人的にはバックのアンサンブルの音量が大きすぎて、Joe Henがしっとりとppで吹いている部分が消えがちなのが残念です。バラードでのテーマ演奏後、すぐに倍テンポのスイングになるのは然もありなん、かなり元気の良いバラード演奏です。コード進行を変えつつ、各セクションのアンサンブルが綴れ織りのように交錯するするアレンジは見事です。 9曲目アルバム最後を飾るのはオリジナルRecordame、「Page One」収録。96年録音、トランペッターMichael Philip Mossmanアレンジ。この名曲は一時日本でもずいぶん流行り、どこに行っても演奏した覚えがあります。この曲のみリズムセクションのメンバーが変わり、p)Helio Alves b)Nilson Matta ds)Paulo Braga、ドラマーのBragaはJoe Henの前作「Double Rainbow」にも参加しているブラジル出身のミュージシャンで、ピアニスト、ベーシストいずれもブラジル出身者です。ボサノバ・ナンバーを本格的なブラジル・テイストのリズムで演奏したかったのでしょう。Mossmanのアレンジは洒落たセンスの中にもある種の毒気を感じさせるものが多く、ここでもそのセンスを遺憾なく発揮しています。Joe Hen、Payton、Alvesがソロをとっています。

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2018.06.01 Fri

King Of The Tenors / Ben Webster

今回はテナーサックス奏者Ben Websterの代表作「King Of The Tenors」を取り上げてみましょう。1953年5月21日、12月8日LA録音 Producer : Norman Granz ts)Ben Webster as)Benny Carter(track 1~4, 7) tp)Harry “Sweets” Edison(track 1~4, 7) p)Oscar Peterson g)Herb Ellis(track 1~4, 6) g)Barney Kessel(track 5, 7, 8) b)Ray Brown ds)Alvin Stoller(track 5, 7, 8), J. C. Heard(track 1~4, 6) 1)Tenderly 2)Jive At Six 3)Don’t Get Around Much Anymore 4)That’s All 5)Bounce Blues 6)Pennies From Heaven 7)Cotton Tail 8)Danny Boy 54年当初発売時は「The Consummate Artistry Of Ben Webster」というタイトルでNorman GranzのNorgran Labelからリリースされましたが、56年にGranzが新たにVerve Labelを興し、翌57年に同じ内容でタイトルを「King Of The Tenors」に変えて同レーベルよりリリースされました。どちらのタイトルもWebsterには相応しいと思いますが、「 King ~」の方がより的確に彼自身を表していると思います。Sonny Rollinsの代表作「Saxophone Colossus」(Prestige Label)に匹敵する、その名前を汚す事のないクオリティの演奏をするプレイヤー以外は決して使う事が許されない物凄いネーミングですが、「Saxophone ~」の方が前年56年リリースですので、Norman GranzがPrestigeのBob Weinstockに対抗して、あちらが「Colossus ~ 巨人」ならこちらは「王様」で、という具合にKingをタイトルに用いたのではないかと推測されます。 以前どこかの雑誌にもこの作品の事を挙げ、自分自身音楽的な迷いが生じたときにこのアルバムを聴くようにしていると書きましたが、未だにその作業を行う時があります。特にテナーサックスの音色に関しての迷いの場合には彼のセクシーで魅力的なトーンを浴びるほど聴き、演奏の細部にまで入り込み、そのニュアンス付け、イントネーション、音の強弱〜ダイナミクスの処理、ベンド、ポルタメント、グリッサンド、ビブラートのかけ方とバリエーション、音が消え入る時のカサカサ感、グロウトーン、音色のカラーリング、サブトーンの充実感などの再認識作業を行います。Websterはそのサウンドの全てに於いて、規範となりうる演奏者です。楽器の上手さとは、特にサックスに於いては運指的に早く正確に吹ける、フレーズの持ち札が沢山あり、適材適所で使用可能である、フラジオ音を確実にヒットさせる、等の超絶テクニカルな面が偏重される傾向にありますが、彼の場合はテナーサックスでメロディを歌い上げることが最重要事項であり、そのことに付随する奏法が誰よりも的確で充実していることを考えると大変に楽器が上手い、テクニシャンと言えます。楽器演奏に於けるテクニックとは奏者がその場でイメージした事柄を瞬時に確実に表現するための手段であります。Websterは熟練した歌唱力を持ったボーカリストの境地、マエストロと言えます。 ジャズテナーサックスの開祖と言われる3人、Coleman Hawkins、Lester Young、Ben Websterいずれもがツワモノですが、とりわけWebsterが僕の好みです。Hawkinsはトツトツとした語り口と音色が個性的でこの3人の中で一番年長、この人がジャズテナーサックスを始めた張本人です。Youngはスイートでハスキーな音色が魅力、フレージングにも独特の美学があり、その一風変わった人柄が物議を醸し出しましたが実に多くのフォロワーを有しています。 僕が以前在籍したビッグバンド、原信夫とシャープス&フラッツのリーダーでテナーサックス奏者の原信夫さんが大のWebsterファン、僕自身も以前からWebsterの演奏が好きでしたがシャープス在団中に随分と原さんに仕込まれました。「ユーさ」、原さんくらいの年代のプレイヤーの方は若手に対しこのように話し掛けていました。「ミーの事ですか?」とは流石に答えられませんでしたが(笑)、「これ聴いておいてよ」と度々レコードやCDをカセットテープにダビングしたものを渡されましたが、Websterが一番多かったです。「今の若いテナーには面白い奴がいないけど、Branford Marsalisは別格だね。あれはBen Webster直系だからさ」とは原さんの弁、テナーサックス・プレイヤーの良し悪しをWebsterに影響を受けたか否かを基準にして考えています。Arnette Cobb、Buddy Tate、Stanley Turrentine等Webster直系のテナー奏者のテープやCDも原さんから頂きましたし、シャープスは実際彼らとも共演の経験がありました(残念ながら僕が入団する前の出来事ですが)。男の色気をムンムンと感じさせ、低音域をメインにした大胆な語り口の中にもきめ細やかさ、デリケートな表情付けが実に巧みなWebster、後続のテナーサックス奏者に多大な影響を与えました。彼の楽器のセッティングですが、マウスピースはOtto Link Master Model オープニング5番をリフェイスして8番に広げたもの、リガチャーは初期の頃はマウスピース・テーブル裏の溝に嵌める最初期のオリジナル・タイプのものでしたが、後年はFour Star Modelのリガチャーを使っていました。リードはRico 3半、楽器本体は1937年製Selmer Balanced Action No.25418 黒人テナーサックス奏者はJohn Coltrane、Dexter Gordonに代表されるようにアゴを引き、うつむき加減にマウスピースを咥えて演奏するプレイヤーが多いですが、「The Consummate Artistry 〜」のジャケ写で顕著に写っているようにWebsterは寧ろアゴをかなり上げて演奏しています。40年代〜50年代にこの奏法のプレイヤーは珍しいです。Clifford Jordanもかなり顔を上げて吹く奏法のプレイヤーですが、Websterほどではありません。アゴを上げた方がノドが解放されてリラックスするのでよく共鳴し、奏法的には良い筈です。話し声、スピーチも下を向いて原稿を見ながら話すよりも前を向いて自分のイメージでの方がよく通りますから。彼のワンアンドオンリーなサックスの響き、音色、ビブラートはもしかしたらこの奏法の良さに起因しているのかも知れません。ただ50年代後半頃から次第にアゴが落ちて行き、比較的普通の角度での奏法に変わっていきました。アゴを引いて演奏しているColtrane、Dexter二人とも素晴らしい音色じゃないか、と言われると全くその通りなのですが(爆) 因みに写真は順番にColtrane、Dexter、Cliffordです。 演奏曲に触れて行きましょう。1曲目Tenderly、Granzお抱えVerve専属の名ピアニストOscar Petersonの美しい、これから繰り広げられるであろう美の世界を十分に予感させるイントロからWebsterのメロディ奏が始まります。それにしても何でしょう、このテナーサックスの音色は!音の深度が他のプレイヤーとは全く違います!蕩けんばかりに甘く、切なさを感じさせながらも渋さを湛えたビタースイート・テイスト、一音への入魂振り、発する音全てに対して責任を持つかの如き的確なニュアンス付け、メロディ・フェイクの巧みさ、大胆に語ったかと思えば囁くように呟く信じられない程の音量のダイナミクス、歌詞をなぞらえながらサックスを吹いているかの如しです。この1コーラス半の演奏にジャズ・バラードの森羅万象が存在すると言っても決して過言ではありません。そしてこのバラードプレイを超えるものは未だ存在しないのです。 2曲目はアルトサックスBenny Carter、トランペットHarry “Sweets” Edisonが加わったEdisonのナンバーJive At Six。ソロの先発Carter、続くEdisonもさすが良い味を出しています。その後のWebsterのソロ、この人はある程度のテンポ以上になるとトーンにグロウをかけ始め、ブロウするいわゆる”ホンカー”に変身し始めます。個人的にはバラード時よりも大味な演奏になるように聴こえるのがちょっとばかり不満です。 3曲目はDuke Ellington作曲のDon’t Get Around Much Any More、Websterもかつて彼のビッグバンドに在団していました。この位のテンポのスイング・ナンバーはバラードの延長線上で演奏しているように聴こえます。いや、何とメロウな吹き方でしょう!Carter、Edisonが後テーマでバックリフを演奏しています。 4曲目はスタンダードナンバーからThat’s All、やはりこの人の真髄はバラードにありますね、待ってましたとばかりに聴き入ってしまいます。ここでは比較的ストレートにメロディを奏でています。同様にここでもCarter、Edisonのハーモニーを後半に聴く事が出来ます。 5曲目はWebster自身のペンによるBounce Blues、レイドバックしたメロディの後Peterson、Barney Kesselのギターソロが聴かれ、Websterの登場になります。ソロ前半はバラード演奏に準じているのですが、次第にホンカーに豹変してそのままのスタイルでのメロディ・プレイでFineです。 6曲目は50年代当時流行のナンバーの一曲Pennies From Heaven、ピアノのイントロが印象的です。Websterメロディフェイクも巧みにテーマを演奏、Edisonのソロも素敵です!tp、asのバックリフに煽られたのかホンカーが再び降臨しています。 7曲目、再びEllingtonのナンバーCotton Tail、ここでのソロは実に有名なもので、ビッグバンドのソリでソロが採譜されたものを演奏したことが何度もあります。ある程度のテンポの曲なのでご多分に漏れず、グロウトーンで演奏しています。 8曲目、レコードのラストを飾るのはアイルランド民謡がベースになった名曲Danny Boy、テナーサックスでしっとりとメロディを奏でる際の定番曲の一曲です。日本でも故松本英彦さんの名演が忘れられないですが、Sam TaylorやSil Austinが残した演奏も素晴らしいです。でもここでのWebsterの演奏が全ての発端、実に朗々と歌っています。ここでのキーはDメジャーですが、松本さんはE♭メジャーで演奏していたのを覚えています。円熟、枯淡の境地が聴かれるWebster65年Denmarkでの演奏がyoutubeにアップされていますので、クリックしてご覧になって下さい。https://www.youtube.com/watch?v=pwFiLuYFiZ0

2018.05

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2018.05.23 Wed

The Cape Verdean Blues / The Horace Silver Quintet Plus J. J. Johnson

今回はピアニスト、作曲家、バンドリーダーHorace Silver1965年録音の作品「The Cape Verdean Blues」を取り上げてみましょう。65年10月1日、22日Rudy Van Gelder Studio、Engineer : Rudy Van Gelder  Producer : Alfred Lion  Blue Note Label tp)Woody Shaw ts)Joe Henderson tb)J. J. Johnson p)Horace Silver b)Bob Cranshaw ds)Roger Humphries 1)The Cape Verdean Blues 2)The African Queen 3)Pretty Eyes 4)Nutville 5)Bonita 6)Mo’ Joe 多作家Horace Silver、その中でも60年代を代表する傑作アルバムです。大ヒットした「Song For My Father」の次作になりますが、そのヒットを音楽的に払拭して良くぞここまでの斬新な作品を作り上げました!参加メンバー、収録曲ともに大変充実したモダンジャズの名盤の一枚に数えられる作品です。基本的にはトランペット、テナーサックスをフロントに擁したクインテット編成ですが、レコードのB面、4曲目から6曲目はJ. J. Johnsonのトロンボーンを加えたセクステット編成になり、より重厚なアンサンブル、密度の濃い演奏を聴くことができます。 Horaceの父親(「Song For My Father」のジャケ写の方です)がアフリカ大陸北西沖に浮かぶ旧ポルトガル領カーボベルデ(ケープベルデ、僕が高校の地理で習った時にはカポベルデと表記されていました)諸島出身です。レコードのライナーノーツ冒頭に記載されていますが、①Horaceの幼少時代によく父親がポルトガル語でカーボベルデの民謡を歌ってくれた ②ブラジルのリオ・デ・ジャネイロを訪れた際、友人のドラマーDon Um Romao(パーカッション奏者としてWeather Reportに72~74年在籍していました)にサンバのリズムを習った ③アメリカの古き良きファンキーなブルースを愛して止まない、以上3点にHorace自身がインスパイアされてCape Verdean Bluesを書いたそうです。2曲目のThe African Queenもアフリカ西海岸Ivory Coast出身のミュージシャンPierre Billonに紹介されたアフリカの幾つかの民謡にインスパイアされて書かれました。この作品の楽曲はハード・バップの延長線上にありますが、独特のエキゾチックさと相俟って他の作品には無いエスニック・フレーバーがちりばめられているのはこのためです。 メンバーにも触れてみましょう。トランペッターWoody Shaw、この録音当時若干20歳!この作品では既に知的かつオリジナリティに溢れ、アグレッシブでありながらリリカル、デリカシーさを痛感させる素晴らしいプレイ、個性的な音色を聴かせています。大物の風格を湛えたニューカマーの登場です。同世代のトランペッターFreddie HubbardやRandy Brecker、Charles Tolliver、Eddie Hendersonらと一線を画する独自のスタイルをこの時点で確立させていたのは驚異的です。Horaceとはこの作品が初共演となります。テナーサックスJoe Hendersonは前作からの留任になりますが、本作に於いても最重要キーパーソン、彼の演奏無しにはこの作品のずば抜けたクオリティはあり得ません。絶好調ぶりを本作中遺憾なく発揮しています。WoodyとJoe Henのコンビによる演奏はこの後ほかでも聴かれ、例えば本作の2日間に渡る録音65年10月1日と22日の直後、11月10日にオルガン奏者Larry Youngの名作、Elvin Jonesを擁したカルテット編成での「Unity」(因にBlue Noteカタログ番号も一つ次の4221)が同じくBlue Note Labelで録音されています。僕個人もこの二人がフロントの作品を目にしたら思わず手に取ってしまうでしょう。彼らの参加作にハズレはありません。両者の演奏が互いに化学反応を起こし、各々一人づつの演奏時に比べて何倍ものスイング感をバンド全体を巻き込みながら引き出すのです。のちにJoe Henのリーダー作、Woodyの諸作にお互い参加し合い、当時の混沌としたジャズシーンの最先端を行く超個性的な演奏スタイルの二人、さぞかし気が合い切磋琢磨しつつ、陽気でハイテンションのJoe Hen、寡黙で思考型Woodyのコンビで演奏していたのではないでしょうか。 トロンボーン奏者J. J. Johnsonは既に大御所的な存在感での客演、レコードのタイトルにも敬意を表されたクレジットがなされています。60年代一世を風靡していたArt Blakey And The Jazz Messengersの3管編成がトランペットFreddie Hubbard、テナーサックスWayne Shorter、そしてトロンボーンCurtis Fullerに対抗するにはJ. J.の参加を仰ぐしかなかったでしょう。多かれ少なかれ人選にはその意識があったと思います。J. J.の豪快な音色とソロ、的確なアンサンブル・ワークで本作レコードのB面はJazz Messengersに引けを取らないどころか、むしろ凌ぐ内容を聴かせています。「僕はずっとJ. J.を自分のバンドに使いたかったけれど、なかなかスケジュールが合わなかったんだ。」とはHoraceの発言。更に「今回彼と一緒に演奏出来たのは良かった。彼は素晴らしいミュージシャンだけでなく、仕事を共にする上でとても協力的な人物だった。我々バンドのメンバーはとんでもない刺激を彼から受けたよ」と手放しで褒めちぎっています。共演の念願叶ったのがこの作品の成功の一因でもあると思います。 ベーシストBob Cranshawは堅実でステディなベースワークから数多くのミュージシャンのサポートを務め、本作でも実に素晴らしいOn Topなプレイを聴かせています。後年交通事故により背中を痛めアップライトベースを弾くことが困難になり、エレクトリックベースにスイッチしましたが継続的に演奏活動を行い、知られるところではかのSonny Rollinsのレギュラー・ベーシストとして永年その存在感をアピールしました。ドラマーRoger Humphriesも前作からのHoraceとの付き合い、スイングビートも素晴らしいですが、ラテンがまた実に的確、リズムの美味しいポイントでビートを繰り出しグルーヴしています。職人技ドラマーの代表格の一人です。リーダーHorace Silverは自身のオリジナルを5曲提供し作曲の才能をますます開花させ、ピアノプレイも相変わらずのマイペースぶりを披露し、転びそうな、つんのめった独特のリズム感により一聴彼だと分かる個性を十二分に発揮しています。 ところでレコードジャケットに写っているアフリカ系の美女は一体誰でしょう?前作「Song For My Father」に自分の父親の写真を掲載したくらいですから、今回もかなり近しい存在の女性だと思われます。緑豊かな広葉樹の中に佇む女性本人も緑色の服装、おまけに緑色っぽい帽子まで着用しています。ひょっとしたら収録曲The African Queenに肖っているのかも知れませんね。 1曲目表題曲のThe Cape Verdean Blues、何とオリジナリティに溢れた曲でしょう!管楽器のメロディがピアノのバッキングとコール・アンド・レスポンス形式になっています。サンバのような、カリプソのようなリズムはカーボベルデとブラジル、アメリカの古典的なブルースが合わさったものなのでしょうが、Horace独自のセンスが光っています。ピアノ奏者Don Grolnickのアルバム「Medianoche」でも取り上げられ、Michael Breckerがソロを取っていますが、リズムセクションの醸し出す雰囲気からか、Grolnick自身のコンセプトなのか、原曲でのおどろおどろしい感じはなく、寧ろスッキリした明快な演奏に仕上がっています。 2曲目The African Queen、メロディ自体はペンタトニック・スケールから出来ているシンプルなものですが、ダイナミクスが半端ではありません!これだけの構成、一体どのようなアフリカの民謡に影響を受けたのか、原曲を聴いてみたいものです。ソロの先発Joe Hen、フォルテシモ時にオーヴァー・トーンやフリーク・トーンを駆使して盛り上げていますが、最後はBen Websterばりの低音のサブトーンでうまくまとめています。現代の耳ではこれらの特殊奏法は比較的当たり前に聴こえますが、65年当時では驚異的なテクニックでした。Joe Henの斬新さを改めて感じます。Woodyもお得意の4度のインターバル・フレーズやハイノートでバッチリ対応しています。 3曲目Pretty Eyes、伝統的なジャズワルツですが後半にグルーヴが8分の6拍子っぽく変わるのがドラマチックです。フロントの二人、Horace共々良いソロを取っています。 4曲目Nutville、いよいよJ. J.を加えた3管編成での演奏開始です!そしてこの曲の演奏は本作のメインイベントでしょう。ベースパターンも印象的なアップテンポの変形マイナーブルース、斬新なホーンのハーモニー、ラテンとスイングが交互に入れ替わる実にカッコ良い曲です。端正なリズム、グルーヴで演奏が繰り広げられています。先発はJ. J.、極太でコクのあるトロンボーンの音色は他の人では絶対に真似できません!後半2コーラスにバックグラウンドのアンサンブルが入り、合計4コーラス演奏しています。続くWoody、スネークインしてソロが始まります。2コーラス目の冒頭でMichael Breckerお得意のフレーズに良く似たラインが出てきますが、Michaelもこのソロがひょっとしたらヒントになっているかも知れません。と言うのも実は兄のRandy BreckerはWoodyのソロをコピーして研究していたそうで、The Brecker Brothers Bandのレパートリーである「Return Of The Brecker Brothers」収録のAbove And Belowという彼のオリジナルでは、曲のメロディラインにWoodyのフレーズのアイデアを用いたと言われています。バックグラウンドのアンサンブルなしで3コーラス演奏しています。20歳の若者が取るクオリティのソロではありませんね。構造的なアドリブの中にも豊かなニュアンス、色気も感じさせつつ、クールさの中にも物凄いテンションです!続くJoe HenはJ. J.と同様に4コーラスソロをとっていますが、いや〜本当に素晴らしい内容です!Joe Henフレーズのオンパレードですが、何しろ彼のストーリーテラーぶりに感動してしまいます。ソロの構築の仕方、意外性、ダイナミクス、3〜4コーラス目に出てくるバックグラウンド・アンサンブルにもソロが呼応しているように聴こえます。そしてテナーサックスのエグエグな音色の素晴らしさ!この頃の彼の楽器のセットアップですがテナー本体はSelmer Mark6、56,000番台。マウスピースは同じくSelmer Soloist、オープニングはDかE、リードは多分La Voz Mediumです。映像や写真を見るとマウスピースSelmer SoloistはShort Shank、Long Shank両方使っていました。Van Gelderの巧みな録音技術でJoe Hen、その素晴らしい音色が一層輝いています。Horace節炸裂のピアノソロの際のバックグラウンド・アンサンブルでJoe Henのテナーが3管の中で一番良く聴こえています。小気味よいほどに巧みなドラムソロの後にラストテーマ、コーダを経てFine、大団円で演奏終了です。 5曲目BonitaはPretty Eyesと何処か似た曲、エキゾチックなムード満載です。Horace56年録音の作品「Six Pieces Of Silver」収録曲のEnchantmentを発展させた曲、と本人解説しています。確認してみましたがそう聴けば聴こえない事もない、程度の感じです。ピアノソロ後のJoe Henのソロが実に曲想に合致していますが、続くJ. J.のソロもJoe Henの意思を受け継いだかの如き素晴らしい展開を聴かせ、Woodyのソロでしっかりと3管のソロリレーを終結させています。 6曲目作品ラストを飾るのはJoe HenのオリジナルMo’ Joe。ここでは管楽器3人の個性がよく表れたソロのオーダー、更にピアノ、ベースとハードバップ・セッション的にソロが繰り広げられています。Horaceは前作でも同様に彼のオリジナル曲The Kickerを取り上げていましたが、Joe Henのソングライティングに敬意を表していたのでしょう。ここでは3管編成のアンサンブル、ハーモニーがとても生きています。Mo’ Joe、The Kickerの2曲とも約2年後67年8月10日に同じくtp, ts, tbの3管編成で、改めてJoe Hen自身のリーダー作に於いて録音しています。「The Kicker」Milestone Label  68年1月リリース  

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2018.05.13 Sun

The Cat And The Hat / Ben Sidran

今回はピアニスト、作曲家、アレンジャー、ボーカリストBen Sidranの1979年リリース作品「The Cat And The Hat」を取り上げてみましょう。 Produced By Mike Mainieri and Ben Sidran  Recorded and Mixed By Al Schmitt  Horizon Records & Tapes 1)Hi-Fly 2)Ask Me Now 3)Like Sonny 4)Give It To The Kids 5)Minority 6)Blue Daniel 7)Ballin’ The Jack 8)Girl Talk 9)Seven Steps To Heaven p, vo)Ben Sidran ds)Steve Gadd b)Abraham Laboriel vib, key)Mike Mainieri g)Lee Ritenour, Buzzy Feiten ts)Michael Brecker, Joe Henderson tp)Tom Harrell pec)Paulinho Da Costa org)Don Grolnick sax)Tom Scott, Pete Christlieb, Jim Horn tp)Jerry Hey, Gary Grant tb)Dick “Slyde” Hyde v0)Frank Floyd, Luther Van Dross, Gordon Gordy, Claude Brooks, Mike Finnegan, Max Gronanthal 当時のジャズ、スタジオ・シーンを代表する大変豪華なミュージシャンによる作品です。 LAのCapitolとSanta MonicaのCrimsonスタジオでレコーディングし、NYのThe Power StationとLAの The Sound LabでMixしています。演奏曲によってうわ物のメンバーはかなり異なりますが、ベイシックなリズムセクション=ドラムス、ベース、ギター、キーボードは不動、この辺にプロデューサー二人の拘りを感じます。 実に良く練られた構成、アレンジ、選曲、メンバーの人選、演奏、フィーチャリング・ソロイストの全く的確なアドリブ、ぐうの音も出ないとはこのレベルの音楽を指すのだ、という位完璧な音楽性を有する作品です。僕の中ではジャズ、フュージョン、AORシーンでもっと取り上げられても良いと常々思っている作品中、筆頭に位置しています。 この作品はSidranの第9作目にあたりますが、前8作目「Live At Montreux」は78年7月23日Montreux Jazz Festivalでのライブを収録した作品でRandy、MichaelのBreckersをフィーチャーしています。 こちらもライブ録音にも関わらずSidran独自の個性、スタンダード・ナンバーへの捻りのある解釈が良く表れた名作で、次作「The Cat And The Hat」に通ずるテイストが遺憾無く発揮されています。いずれもが佳曲のオリジナルの他、John LennonのCome Together、そして白眉がスタンダード・ナンバーSomeday My Prince Will Comeでのユニークな8ビート・アレンジ!ここでのMichaelの歌心100%の華麗なソロはファン必聴のテイクです!ここでは途中(3chorus目)からソロがカットされている事が後日発掘された映像から判明しました。完全版の長いソロも素晴らしいのですが、レコードの収録時間のために短く編集されたソロとはいえ、とても上手くコンパクトに収められています。ひょっとしたら予め「長く演奏してもレコードには全部入り切らないからね」とディレクターに言われていて、当日Michaelは「収録されるのはこの辺りまでだろう」とそこまでしっかり考えてソロの構成を練っていたかも知れません(カットされた3chorus目からのソロがそれまでとはアプローチの雰囲気が異なることからも想像できます)。彼だったらそこまでやる人、出来る人間です。 当時彼らが在籍していたArista Labelのアーティスト、Arista All Starsによる「Blue Montreux Ⅰ, Ⅱ」はこの前日、前々日に録音されました。 このコンサート演奏時日本ではTV放映とFMの同時生放送という、当時としては画期的な方法でライブを中継していました。現代ではTVの音質も飛躍的に向上したのでこのような形を取る必要も有りませんが、FM放送のHi-Fi(死語の世界でしょうか?)具合とTV画像のリンクを目の当たりにした僕は興奮しまくったのを覚えています。そしてこれは同年9月に来日を果たすNew York All Stars、演奏鑑賞の格好の予習になったのです。こちらも後日別テイクの映像が発掘され、両日全く違う演奏アプローチを行っていたArista All Starsメンバー全員のジャズ・スピリットにも感動しました。 それでは「The Cat And The Hat」の収録曲に触れていきましょう。大勢のゲスト陣を巧みに振り分けてカラーリングし、曲毎のアレンジに適材適所を得ている作品ですが、ベイシックにあるリズムセクションの演奏が何より素晴らしいのです。ギタリストLee Ritenourのカッティング、バッキング、Abraham Laborielの重厚で堅実なベースライン、そしてそして、この人のドラミング無しには当作品の完成度は有りえません、Steve Gaddの神がかった演奏が全体のカラーリングに更なる色合い、グラデーションを施しているのです。この当時、70年代後半にリリースされたアルバムの実に多くにSteve Gaddの名前を見つける事が出来ます。演奏の露出度は他のドラマー誰よりも高かったので彼のドラミングのスタイル、華麗なテクニック、演奏から感じる唄心を我々よく耳にしており、ナチュラルに耳に入って来ますが、今回改めて聴いてみると実は物凄い変態ドラムです(笑)。グルーヴ感、フィルインの構造、フレージングの仕組み、アイデア、構成力、ソロイストに対するアプローチ、力の抜け具合、以上全てが普通ではない次元、別格、他の追随を許さないオリジナリティに溢れています。「一体何処からこんな発想が…」「奇想天外な技のデパート」「超絶技巧で有りながら全くtoo muchを感じさせないテクニック」さぞかし現代音楽や難解な音楽理論を駆使した音楽性を有すると思っていましたが、以前何かの雑誌でのGaddのインタビュー(多分70年代後半)、「あなたのフェイバリット・アルバムを1枚紹介して下さい」の回答がCount Basieの「This Time By Basie!」でした。「Steve GaddがCount Basie?」その当時の僕の感性ではこの作品がGaddのお気に入りになり得るとは全く理解出来ませんでしたが、今現在しっかりと納得出来るようになりました。僕もやっと大人の音楽の聴き方が出来るようになったのでしょう(笑)。そしてGaddはドラムを叩かず音楽を奏でていると再認識しました。 1曲目ピアニストRandy WestonのオリジナルHi-Fly、オープニングを飾るに相応しいアレンジが施され、原曲のメロディは聴こえるものの全く別な曲に再構築されています。Sidranはボーカリストとしての歌唱力はさほどでは有りませんが、個性的なメッセージ性を湛えています。歌詞はボーカリスト、Jon Hendricksのバージョンが採用されています。そしてここでのMichaelのテナーソロの素晴らしさといったら!アレンジに全く同化していつつ、自身の個性が見事に表出しています。想像するに、間奏に感してプロデューサーの的確なディレクションが有り、それを基にソロを構築したのではないでしょうか。Michaelのサイドマンでのプレイは常に一定したハイ・クオリティさを感じますが、ここでのソロには更に突っ込んだプラスワンがあるからです。テナーの音色はOtto Link Metal使用と聴こえるので、79年頃からBobby Dukoffを使い始める直前、78年末から79年初頭に録音されたと推測できます。(本作は録音年月日に関するデータが未掲載です) 2曲目もやはりピアニストThelonious Monk のAsk Me Now、歌詞はSidran自らによるものです。MainieriのFender Rhodes、Ritenourのアコースティックギター、良い味わいのサポートを聴かせています。Gaddのブラシワークがムードを高めています。 3曲目John ColtraneのオリジナルLike Sonny、この曲のみボーカルが入らずインストで演奏されています。しかしこの選曲とアレンジの意外性には尋常ではないセンスを感じます。ラテンのリズムでのメロディ奏の後、一転して印象的なベースパターンのファンクに変わり、ギターのカッティングも絶妙です。バンドのグルーヴを聴かせつつ、リズムやメロディが変わって行き、Sidranのピアノソロを経てエンディングに向かいます。結果何とも不思議なLike Sonnyに仕上がりました。 4曲目本作中唯一のオリジナルGive It To The Kids、SidranとMainieriの共作、ここまでがレコードのSide Aです。後半に聴かれる子供達のコーラスを交えたナイスなナンバーです。Michaelのソロもぶっちぎりです!ここではギタリストSteve KhanのオリジナルSome Punk Funk(アルバム「Tightrope」収録)のメロディの一節がフラジオ音のHigh C等を交えつつ引用されています。 5曲目アルトサックス奏者Gigi Gryce53年のオリジナルMinority、歌詞をSidranが手がけました。原曲はコード進行がどんどん転調していく、なかなか手強い一曲ですが、ホーンセクション、フルートが効果的に使われたヘヴィなファンクナンバーにアレンジされています。ここでのMichaelのソロはリズムセクションとのトレードという形でスリリングに進行し、自在に歌い上げています。 6曲目はトロンボーン奏者Frank Rosolino作曲のワルツBlue Daniel、ここでもSidranが作詞を行っています。ベースをフィーチャーしたルパートのイントロからTom Harrellのトランペットのフィル、その後のSidranの歌とトランペットソロを活かすべく施されたゴージャスなアレンジがLAの気候のように気持ち良いです。 7曲目は1913年作曲の大変古いナンバーBallin’ The Jack、Chris Smith作詞作曲、歌詞をSidranが加筆して軽快なロックナンバーに仕上げています。Gaddのロックンロールもカッコいいですね、Eric Claptonのバンドを長年やるくらいですから当然ですが。Buzzy Feitenのギターソロも流石で効果的に用いられています。 8曲目Neil Hefti作曲、Bobby Troupe作詞のナンバー Girl Talk、やはりSidranが歌詞に加筆しています。こんなに原曲に相応しい、その後の演奏を聴くことを楽しみにさせてしまうイントロはそうはありません。ストリングスも実にムードを高めるに役割を果たしています。Gaddのフィルインはビッグバンド然としていて、曲の場面を的確に転換させています。アウトロには再びイントロが用いられ、余韻を残しつつ曲が去って行きます。 9曲目作品の最後を飾るのはVictor Feldman作曲の名曲、Seven Steps To Heaven。作詞担当はSidranですが、One, Two, Three, Four, Five, Six, Seven, Steps To Heavenと言う歌詞を思いついた時はSidran自身、自分で相当ウケた事でしょう!余りにも語呂が良過ぎです!これはジャズ界の嘉門達夫状態ですね(笑)そしてここでの演奏が本作の目玉といってよいでしょう。ソロイストにJoe Hendersonを迎えたのも素晴らしいチョイス、アレンジにも原曲のコード進行を用いず別な進行を用いたのもこの演奏が炸裂した要素の一つかも知れません。Gaddはまさに水を得た魚のように巧みなドラミングを聴かせ、彼の名演奏の一つに挙げる事が出来ます。イントロのソロドラムからして聴き手を引きつけるフェロモンを発しています。テーマの最中のドラムソロもカッコイイです!インタールード後にJoe Henのソロが始まりますが、イヤ〜なんじゃこれは?Joe Henフレーズの洪水、猛烈なテンションと凄まじい集中力、構成力、さらに意外性も加わり独壇場!Gaddとのインタープレイも壮絶!空前絶後!Joe Hen自身も彼の名演奏の一つに数えられるに違いありません。後奏のJoe HenとGaddのやり取り、なんでFade Outするのかな〜もっと聴きたかった〜!

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2018.05.02 Wed

New Bottle Old Wine / Gil Evans

今回はアレンジャー、ピアニスト、作曲家Gil Evansの1958年作品、アルトサックス奏者Cannonball Adderleyをフィーチャーした名盤「New Bottle Old Wine」を取り上げたいと思います。 58年4月9日(tracks 1, 2, 5 & 6),5月2日(track 3), 21日 (track 4), 26日(tracks 7 & 8)NYC録音 Label : World Pacific  Producer : George Avakian p, arr, cond)Gil Evans as)Cannonball Adderley tp)Johnny Coles, Louis Mucci, Ernie Royal(tracks 1~3, 5 & 6), Clyde Reasinger(tracks 4, 7 & 8) tb)Joe Bennet, Frank Rehak, Tom Mitchell fr-horn)Julius Watkins tuba)Harvey Philips(tracks 1, 2, 5, & 6), Bill Barber(tracks 3, 4, 7 & 8) reeds)Jerry Sanfino(tracks 1, 2, 5 & 6), Phil Bodner(tracks 3, 4, 7 & 8) g)Chuck Wayne b)Paul Chambers ds)Art Blakey(tracks 1, 2, & 4~8), Philly Joe Jones(track 3) 1)St. Louis Blues 2)King Porter Stomp 3)Willow Tree 4)Struttin’ With Some Barbeque 5)Lester Leaps In 6)Round Midnight 7)Manteca! 8)Bird Feathers 通常のビッグバンド編成とは異なるtubaやfrench hornを配したGil独特のアレンジ、ゴージャスで知的、細部に至るまで徹底的に配慮された気品溢れるサウンド、それらを活かすべく厳選して取り上げられたモダンジャズの名曲の数々、そして当時売り出し中のアルト奏者Julian “Cannonball” Adderleyをフィーチャリング・ソロイストに迎え、爽快感すら感じさせるほどに思う存分演奏させているエヴァーグリーンの名盤です。58年=モダンジャズ全盛期、演奏者、アレンジャー、編曲、選曲、プロデュースとパズルの全てのパーツが完璧に揃った、文句なしの1枚です。 本作のプロデューサー、ロシア出身のGeorge AvakianはColumbia Labelに於いてMiles Davisの55年録音「Round About Midnight」と58年録音「Milestones」のプロデュース、またMilesとGil Evansのコラボレーション作品57年録音「Miles Ahead」のプロデュースも手掛けました。ジャズ史に残る3枚の名盤の製作を行った訳ですが、続くやはりMilesとGilのコラボ作「Porgy And Bess」は以降のMilesの諸作をColumbia時代ずっと手掛ける事になる名プロデューサー、Teo Maceroに取って代わりました。Avakianは58年に在籍12年間に渡るあまりの多忙さからColumbiaを離職、その直後レコード会社としてはずっと小規模のWorld Pacificに招かれて移籍しました。しかし離れてはみたものの、Miles〜Gilのコラボレーションによる作品を再び製作したいと願っていたのかも知れません、レーベルが変わってしまえばそれは見果てぬ夢、レコード会社的にはフリーランス状態だったGilのアレンジメントは残しつつ誰か他のミュージシャンと組ませて作品を、ということで自らプロデュースした「Milestones」に参加していたCannonballに白羽の矢を立て、Avakianはこのアルバムを製作したのではないでしょうか。もしかしたら同じく参加していたJohn Coltraneにもオファーがあったかも知れません。 この作品はGilにとって2枚目のリーダー作、記念すべき第1作目は57年10月録音「Gil Evans & Ten」Prestige Label 文字通り11人編成のアンサンブル、既にfrench hornが起用され他にもbassoonやSteve Lacyのソプラノサックスが参加し、8管編成ながらユニークな楽器構成による豊潤なGil Evansハーモニー、サウンドが聴かれます。「New Bottle ~ 」の方もCannonballを含めて10管編成ですが通常ビッグバンド編成〜管楽器13本に引けを取らない豊かで、むしろ個性的なサウンドが鳴っています。 フィーチャリングのCannonballも58年には「 Cannonball’s Sharpshooters」「Something’ Else – with Miles Davis」「Portrait Of Cannonball」「 Jump For Joy」「Things Are Getting Better – with Milt Jackson」と、何と5作もリーダー作を録音しており、まさしく破竹の勢いでした。CannonballはCharlie Parker系のアルト奏者とイメージされており、50年代から活動を続けているアルト奏者であればParkerの影響を免れることは難しい筈なのですが、彼の場合、むしろBenny Carterの音色やフレージング、センスに影響を受けていると思います。Parker没55年、その直後にCannonballがデビューしたので、Parkerの後を継ぐアルト奏者としてイメージ的に同系列と捉えられたのでしょう。特にフレージングにはParkerのテイストを殆ど感じません。 ところでCannonballの音色の艶っぽさ、極太感は一体どこから来ているのでしょうか?良く抜けた明るい解放的な音色の中にも陰りやダークさを併せ持ち、音の立ち上がりの早い、楽器を自在に操る事の出来るテクニシャンにしてメロディを吹かせれば右に出るものはない歌心の持ち主。Coltraneと2管での演奏59年3月録音「Cannonball In Chicago」収録、ワンホーンでのバラードStars Fell On Alabama、ここでの演奏がCannonballの真骨頂なのです。 最低音部でのサブトーンを駆使しているので、テナーでの演奏と錯覚してしまうほどの低音の充実ぶり。多くのアルト奏者が中音域から高音域を中心にメロディ、アドリブを吹奏しているのに対し、Cannonballは低音域がメインのプレイヤーであることを確実に印象付ける素晴らしい演奏です。低音域重視のプレイヤーなので自ずと音色に極太感が伴い、サブトーンが充実しているので音の成分に艶っぽさが加味されるのです。この頃のCannonballのセッティング、マウスピースはMeyer Bros. New Yorkの5番、リードはRicoかLa Voz、硬さは2半とかMed. Softあたりではないでしょうか。楽器本体はKing Super 20 Silversonic。生音が相当大きそうに聞こえますが、Joe Hendersonと同じく生音は意外に小さくてガサガサ鳴っているタイプです。いわゆるマイク乗りの良い音、黒人プレイヤーに多いスタイルです。何十年か前に日本でCannonball、Charlie Mariano、渡辺貞夫さんの3アルトによるコンサートが開催されたそうです。前評判として「そりゃあCannonballの音が一番デカイに決まっているじゃないか、次がMarianoでサダオさんが一番小さいだろうね。」音量コンテストでもあるまいし、音の大きさでプレイヤーを評価するのはどうかと思いますが、レコードで聴いたCannonballの「鳴ってる」感、ジャケ写の巨漢ぶり、そのまんまが一人歩きしていたのでしょう。しかしいざ蓋を開けてみると、ダントツにサダオさんの音が大きく、次がMariano、演奏中に良く動くCannnonballはマイクからちょっとでも離れようものなら全く音が聴こえなかったそうです。Joe Henも演奏中良く動くプレイヤーだったので、全く同じです。 Stars Fell On Alabamaのライブヴァージョンがこちらに収録されています。67 or 68年録音「Cannonball Adderley Radio Nights」。In Chicagoから10年を経てCannonball、音色がブライトになり、操る音域が若干上がったように聴こえます。Mercy, Mercy, Mercyの大ヒットでロック路線を歩み始め、バンドの音量が大きくなり、自身の音を良く聴くためにも自然と音域が上がって行ったのでしょう。 もう一つ面白いエピソードが、2009年にColumbiaからリリースされたMilesの59年録音「Kind Of Blue」50周年記念のボックスセット(大変豪華で充実した内容のセットです)に、未発表のスタジオ内でのミュージシャン同士のやり取りが収録されていますが、歴史的なレコーディング(演奏している最中はそんなことになるとはメンバー全員微塵も考えなかったでしょうが)で、何と言ってもMilesがリーダーのセッション、張り詰めた空気が漂い、緊張感が半端ないはずですが、Cannonballは何とSo Whatのテーマの何かに引っ掛けて「With A Song In My Heart」の冒頭のメロディを歌詞付き歌っているのです!根っからのハッピー・ガイ、サウンドや演奏に確実に表れています。 「New Bottle Old Wine」の意味するところは新しいボトル(アレンジ)に入った古いワイン(曲目)、Gilの素晴らしいアレンジ、Cannonballの実に的確な演奏により昔の曲が全く新しく再生されています。その収録曲について触れて行きたいと思います。1曲目St. Louis Blues、W.C.Handy作詞作曲による名曲、多くのミュージシャンにカヴァーされています。Cannonballのアカペラによるイントロから始まりますが一体何という音色でしょうか!まさしく正統派アルトサックスそのものの音色なのですが、一聴してすぐCannonballと分かる、音の成分が全て洗練され、雑味の入り具合、配合、バランスが絶妙に整い、あたかもオールド・ワインの如き味わいです!スローテンポになるとアンサンブルが加わり、Cannonballが早めのテンポで吹き始めて曲の本編が開始されます。ソロのフレージングの合間に、うまい具合にアンサンブルが入り、ソロと呼応しているかの如くです。エンディングのギターをフィーチャーしたフェードアウトもオシャレです。 2曲目King Porter StompはピアニストJelly Roll Mortonのナンバー、1905年作曲、23年に本人により初めてレコーディングされました。Cannonballの持ち味と合致した明るい雰囲気のナンバーです。ラグタイム風のテイストを随所に入れながらのアンサンブル、その後Cannonballのソロが進み、引き続いて1’54″から今度はCannonballがアンサンブルのリードに回るのですが、この時の音色が堪りません!昔風のヴィブラートを深くかけながらニュアンスたっぷりにリード=主旋律を吹くこの部分が大好きです!その後アンサンブルをバックに再びソロを取ります。3’17″と言う短い演奏時間の中にあらゆる音楽的現象が凝縮されているかのような凄い演奏です。Gilの76年の作品「There Comes The Time」に於いてもDavid Sanbornをフィーチャーして再演しています。 3曲目はFats WallerのWillow Tree、アンサンブルのダイナミクスが素晴らしいです!この日のCannonballは絶好調で、ミディアムスローのテンポでもスインギーな演奏を聴かせます。続くJohnny Colesの味わいのあるトランペットソロもイケてます。最後までとことんサウンドの強弱が徹底した演奏です。因みにこの曲のみドラマーがPhilly Joe Jonesに変わっています。ひょっとしたらPhillyのドラミングによるダイナミクス付け、Gilに買われて呼ばれたのかも知れませんね。 4曲目Louis Armstrong作になるStruttin’ With Some Barbecue、tubaに冒頭のメロディを吹かせるアイデアは流石です。Frank Rehakのトロンボーンソロの後、アンサンブルによるテーマ奏、その後のブレークから4小節のCannonballのピックアップソロが始まりますが、ブレーク前は曲のキーがFでしたがピックアップソロの最中に短3度キーが上がり、A♭に転調しているのです!Cannonball実に巧みにフレージングしています!これにはやられました!何とさりげにスリリングなのでしょう!On Green Dolphin Streetの引用フレーズの後、トロンボーン・セクションによるlow A♭のペダルトーンが50秒近く演奏されます。3人で順繰りにブレスをしながら音を継続させていましたが、演奏終了後トロンボーン奏者たちは「まったくGilは人遣いが荒いな〜」と話していたに違いありません(笑) 以上がレコードのSide A、5曲目はLester Youngの名曲Lester Leaps In、Art Blakeyは水を得た魚のように素晴らしいドラミングを聴かせています。ドラムのフィルインでは感極まってBlakey声を発しながら叩いています。この曲は他の収録曲に較べて比較的ストレートに演奏されていますが、ブラスのアンサンブルはかなり難易度が高そうに聴こえます。Chuck Wayneのギターソロ、再びRehakのソロも聴かれます。Gilのアレンジは細部にまで気配られていますが、エンディングの処理の仕方に特に音楽に対する情熱、愛情を感じます。 6曲目はThelonious Monkの代表曲バラード’Round Midnight、冒頭Gil自身がピアノでテーマを演奏する意外性、アンサンブルによるメロディのサポート、その後Cannonballのソロ、アンサンブルでは随所にTubaが活躍します。 7曲目は曲続きでDizzy GillespieのManteca、本作中白眉の名演、名アレンジです。フルートやギターのトレモロがサビのメロディを演奏して曲開始のムードを高めます。アンサンブルによるストロングなテーマ奏、対比するかのようにサビのメロディをCannonball実にスイートに吹いています。ここで聴かれるCannonballのソロは、そのクリエイティヴさからジャズのスピリットが降臨したかの如き、手のつけられない程の素晴らしさを提示しています。アンサンブルとのコール・アンド・レスポンス、テーマでは再びフルート奏によるサビのメロディ、その上でベースソロが聴かれます。エンディングには超絶技巧が要求されるアンサンブルが待っていました。当時は録音上の間違いを訂正するパンチイン、パンチアウトなどのレコーディング・テクニックは有りませんでしたから、一切間違いは許されません。とてつもないアンサンブル能力、技術、集中力が要求されました。そう言った意味で昔のミュージシャンの方がスキルが高かったかも知れません。 8曲目ラストを飾るのはブルース・ナンバー、 Charlie Parkerの名曲Bird Feathers、こちらも凝りに凝ったアレンジです!Blakeyによるブラシによるメロディ奏後、各楽器が次第に参加し、更にトロンボーンとベースのアンサンブルがサウンドに深みを加えます。Cannonballのソロの後半からアンサンブルが始まり、Rehakのトロンボーンソロでも随所にアンサンブル、Parkerのソロフレーズによるソリまで聴かれ、てっきりRehakのソロフレーズかと思いきやそのままトロンボーン・アンサンブルに突入、Colesのトランペットソロに続き、その後ドラムソロ、ここでもアンサンブルとのやり取りが有り、ベースのアルコソロ、もちろんここでもアンサンブルが鳴っています。最後にCannonballのソロがあってテーマの断片を組み合わせながら進行し、ラストテーマ、そして最後は冒頭に行われたドラムのブラシワークによるメロディに戻り、大団円となります。それにしてもこれだけ情報量の詰まったアレンジ、譜面にして一体どれだけの枚数の勧進帳になるのでしょう?! 久しぶりにこの作品をしっかり鑑賞しましたが、何と素晴らしいアルバムでしょう!何十年もジャズを聴いているとジャズに対する鑑賞力、とでも言うべき聴く事に対しての的確な判断力が身に付いて来るものです。①「昔よく聴いていたけれど、久しぶりに聴いてみると以前ほどの感動がなくなった」②「昔は内容がよく分からずピンと来なかったけれど、全く印象が変わり実に楽しめる」③「よく聴いていて随分と内容を楽しんだけれど、久しぶりに聴いてみて聴こえなかった部分をしっかり聴き取ることが出来るようになり、以前よりも増して更に楽しめるようになった」この作品は自分にとって③の最たるものになりました。

2018.04

jazz/music 

2018.04.25 Wed

Wayne Shorter / Atlantis

今回はWayne Shorter1985年の作品「Atlantis」を取り上げたいと思います。85年Crystal Studios, Hollywood録音 Produced by Wayne Shorter,  On Endangered Species,  produced by Wayne Shorter & Joseph Vitarelli ts,ss)Wayne Shorter fl,alt-fi,picc)Jim Walker p)Yaron Gershovsky p)Michiko Hill synth,p)Joseph Vitarelli synth-prog)Michael Hoenig e-b)Larry Klein ds)Ralph Humphrey ds)Alex Acuna per)Lenny Castro vo)Diana Acuna, Dee Dee Bellson, Nani Brunel, Trove Davenport, Sanaa Larhan, Edgy Lee, Kathy Lucien 1)Endangered Species 2)The Three Marias 3)The Last Silk Hat 4)When You Dream 5)Who Goes There! 6)Atlantis 7)Shere Khan, The Tiger 8)Criancas 9)On The Eve Of Departure 85年はCDが世の中に流布し始めた頃でしたが、当時はぎりぎりレコードの方が主役でした。ですので本作の収録時間もレコードサイズの42’21″で収まっています。この後から録音媒体はCDに主役を明け渡し、収録時間がCDサイズの60分前後〜最長70分強に伸びて行く事になります。本作品を改めて聴いてみると、コンパクトなサイズにむしろ新鮮さを感じます。この長さもアリですね。 本作のレコード内袋(CDと違って大きいです)にはおそらくWayneの直筆(写譜ペン使ってます!)による本作収録のThe Three MariasとOn The Eve Of Departureのスコアがレイアウトされています。作曲した本人でなければ書けない書体や注釈からその事を推測する事ができます。大変几帳面な書き方の譜面で、そもそもミュージシャン几帳面さを併せ持っていないと人に感銘を与える演奏は出来ません。ジャケットの表面のWayneの肖像画は俳優Billy Dee Williamsの描いたパステル画が使われていますが、裏ジャケットには譜面と同じ文字、書体で曲目、ミュージシャンのクレジット、録音の詳細等が書かれており、更に一番下の段には「I dedicated this album to my daughters, Iska, Miyako.」とあるので裏面はWayne自身がイラストも含め書いていると思われます。 因みにWayneの娘Iskaは作品「Odyssey Of Iska」やWayneの著作権のパブリッシャーIska Musicにその名が登場し、Miyakoの方は彼の60年代作のオリジナル・バラードにその名前があります。 Joe Zawinulとのco-leaderバンド、Weather Report(WR)の86年2月ZawinulのWR一時活動休止発表(事実上の解散宣言)の前年録音、リリースで、Wayneの16枚目の作品になります。この前作が11年前74年録音、翌75年リリース、ブラジルが生んだ素晴らしいギタリスト、ボーカリスト、作曲家のMilton Nascimentoをフィーチャリングした、彼とのコラボレーションによる名作「Native Dancer」です。 この作品はNascimentoとWayneの音楽性が密に合わさり、単にブラジル音楽とアメリカ東海岸のジャズの融合という形に終わらず、音楽性を互いに引き立て合いながら全く新次元の音楽を創り上げています。別の言い方をすればあまりに強烈で個性的なWayneの音楽性がやはり独創的なNascimentoの個性と衝突しつつもブレンドし、結果Wayne色が相方の色を引き出す触媒になっているのです。両者共にご存命ですので願わくば「Native Dancer 2」等の続編を聴きたいものです。WRの諸作もZawinulの音楽性とのバランスで成り立っていました。アカデミックなZawinulに対する黒魔術のWayne、更にJaco Pastoriusが在団していた時期には危ないエレガントさのJacoのテイストが加わり、ジャズ史上に残る個性の三つ巴を擁したWRの黄金期を迎えることが出来ました。Miles Davis QuintetではMilesはWayneの使い方を熟知しており(彼に限らずMilesは共演者の使い方に長けています)、自身の音楽を表現するためにWayneを自由に泳がせ、バンドがWayne色に占拠されているかのようでいて実はMilesの掌の上で転がされていました。Wayneの音楽はその独自性に比べて意外にフレキシブルさを持ち合わせ、他の異なる音楽や個性と柔軟に歩調を合わせることが出来る、懐の深さを持っていると捉えています。 さて本作はco-leaderやfeaturing artistも不在、ほぼ純粋にWayne Shorterの音楽が演奏されています。いわば60年代Blue Noteの諸作「JuJu」「Speak No Evil」の80年代ヴァージョンです。全曲オリジナル、スイング・ビートは一切登場しないフュージョン、ファンク系のリズム、サウンド、そして何よりインプロヴィゼーション部分が少ないアンサンブルが主体の作品ですので、作曲家、アレンジャーとしてのWayneの側面を強調しているとも受け取ることが出来ます。WR時代はライブ演奏で再現出来ない曲は収録、演奏しないとした、ライブステージをメインとしたバンド活動でした。本作ではサックスの多重録音やシンセベース等の打ち込みもなされており、85年10月からこの作品での内容を発表するべくWayneはカルテットで全米ツアー、86年1月から日本でのツアーを行いましたがもちろんWRとは異なり、作品をそのまま再現はせず(出来ず)、収録曲を素材として演奏しており、本作は作品集としての側面が更に浮かび上がる形になります。 1曲目Endangered Species、「絶滅危惧種」の意味です。我々くらいの年齢のミュージシャンも既に絶滅危惧種扱いかもしれませんが(笑)。それにしても物凄いポテンシャルを湛えた曲です!Wayneの音楽性が凝縮された、難解さの中にもポップなセンスを感じさせる名曲です。初めて聴いた時には鳥肌モノでした!アルバム中この曲のみキーボード奏者の Joseph Vitarelliとの共同プロデュースになっており、Michael Hoenigのプログラミングによるシンセサイザーの打ち込みベースラインが聴かれます。そしてここで聴かれるソプラノサックスの音色の素晴らしいこと!この時の楽器のセッティングですが、マウスピースはOtto Link Slant 10番、リードはRico 4番、楽器本体はYAMAHA YSS 875 Customです。因みにマウスピース、リードはテナーサックスでも同じセッティングです。しかし一体この音色を何と言葉で形容したら良いのでしょうか?仮にWayneのソプラノサックスが、音質の良くないドンシャリAMラジオのスピーカーから聴こえてきたとしても、直ぐにWayneの音だと分かる事でしょう。Ben WebsterやStan Getz、Sonny Rollins、John Coltrane、Stanley  Turrentineの音色にも同様の事が言え、鳴っている音の成分がそもそも違うのです。打ち込みのベースラインをライブ演奏では人間(ベーシスト)が弾いていますが、高度なテクニックが要求されるチャレンジャブルなパート、ミュージシャンはハードルが上がるほど燃える稼業です。Wayneのバンドのベース奏者Gary Willis、 Alphonso Johnsonはさぞかし練習したに違いない事でしょう。 2012年にベーシスト、ボーカリストのEsperanza Spaldingが自身の作品「Radio Music Society」でこの曲を取り上げています。youtubeでの演奏を以下のURLで見られますのでクリックして下さい。https://www.google.com/search?client=safari&rls=en&q=endangered+species+esperanza+spalding&ie=UTF-8&oe=UTF-8 WayneのソプラノサックスのメロディをEsperanzaが歌っています。黒人の華奢な女の子がテクニカルにエレクトリックベースを弾きながらこの複雑なメロディを歌うのには圧倒されますが、Wayneの難解な楽曲を取り上げる姿勢にも驚いてしまいます。 2曲目The Three Marias、ユニークな曲名です。Wayneの周りには3人Mariaという名前の女性が居るそうで、曲自体のリズムが3拍子(実際には倍の6拍子です)と掛けてのタイトルです。これまた類を見ないドラマチックでとんでもなくカッコいい曲、Wayne world以外の何物でもありません!ソプラノと部分的にテナー、フルートがオーバーダビングされていてメロディが厚くなっています。ここでは曲中全くソロがありませんが、ライブではテンポも早目に設定され、バンド一丸となって盛り上がっています。https://www.youtube.com/watch?v=DzOAr3MKjPsそれにしてもどうしたらこんな個性的な曲を書くことが出来るのでしょう?メロディもそうですがリズムセクションに指定しているアンサンブル部分がとても緻密で込み入った構成になっており、この曲自体も演奏者にはハードルの高い一曲です。 3曲目The Last Silk Hat、ソプラノのメロディに対するテナーの対旋律、オーバーダビングによるソプラノとテナーのハーモニー、それらをバックにソロをとるソプラノ、よく練られた構成ファンクナンバー、ライブで再現するには複数のサックス奏者、少なくとも4名を配する必要があります。 4曲目When You Dream、ソプラノ、テナーのメロディを受け継ぐように、おそらく若い女の子たちによる印象的なコーラスが効果的に用いられ、広がりを感じさせる、タイトル通りの美しいナンバーです。こちらも実に細やかなアレンジが施されています。以上がレコードのSide Aになります。 5曲目Who Goes There、Jim Walkerのフルート・メロディを生かすべくWayneのサックスアンサンブルが活躍します。モチーフを繰り返しつつ、途中シャッフルのリズムになることで高揚感がハンパありません!Wayneのソプラノのサイドキー、高音部のシャウト感の素晴らしさは一体どう言う事でしょう?高揚感に更に拍車がかかります。 6曲目はタイトル曲Atlantis、 McCoy Tynerにも同名曲がありますが、やはり大西洋に存在した幻の大陸の事でしょうか。本作中最もミステリアスな雰囲気のナンバーです。 7曲目Shere Khan, The TigerはDisneyのThe Jungle Bookに登場するキャラクター、ベンガル虎の名前で、80年録音のCarlos Santanaの作品「The Swing Of Delight」にも収録されている独自の美学を湛えたナンバーです。Santanaのヴァージョンでは彼自身によるギタープレイの他、Herbie Hancock、Ron Carter、Harvey Masonも参加しています。   8曲目Criançasは再びシンセサイザーの打ち込みのベースラインが聴かれるファンクナンバー、ソプラノのメロディが多重録音され更にテナーも重ねられる事でWayne sound全開です!Alex Acunaのドラミングが印象的ですが、WayneはAcunaやAlphonso JohnsonたちWR卒業生を積極的に起用しています。 9曲目アルバムラストを飾るのはOn The Eve Of Departure、サックスの多重録音、ハーモニーを生かしたこの上なく美しいイントロ、導入部から一転してヘヴィなファンクへと変わります。フルートのメロディ、ベースラインとテナーのユニゾン、効果的なスラップ、ハーモニーの豊かさ、こちらも凝りに凝ったアンサンブルを聴かせています。 本作はWayneのソロアルバムの中でも彼の音楽性を語る上で欠かせない重要な一枚に仕上がっています。僕個人の意見として、他の追従を許さない、ジャズ史上誰も表現することが出来ない優れて抜きん出たWayneの個性ではありますが、あまりにも強過ぎるように聴こえます。WRや「 Native Dancer」、Miles Davis Quintet、Art Blakey And The Jazz Messengersの様に音楽的パートナーを迎えて、優れたミュージシャンとのコラボレーションを取る、サイドマンとしてリーダーの元で使える、これらの形態を取る事により丁度良い具合にWayneの個性が薄まり、バランスが取れた演奏を聴く事が出来、優れた作品を残せるのではと、この作品を聴いて強く感じました。

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2018.04.19 Thu

Patti Austin / Live At The Bottom Line

今回はボーカリストPatti Austinの1979年リリース作品「Live At The Bottom Line」を取り上げましょう。78年8月19日The Bottom Line In Greenwich Village, NYC録音 David Palmer, David Hewitt, Engineers Mixed At Van Gelder Recording Studios, Rudy Van Gelder, Engineer  CTI Label  Produced By Creed Taylor vo)Patti Austin ts)Michael Brecker key)Pat Rebillot leader, key, arr)Leon Pendarvis Jr. g)David Spinozza b)Will Lee ds)Charles Collins per)Erroll “Crusher” Bennett chorus)Babi Floyd, Frank Floyd, Ullanda McCullough arr)Dave Grusin, Arthur Jenkins, Jr 1)Jump For Joy 2)Let It Ride 3)One More Night 4)Wait A Little While 5)Rider In The Rain 6)You’re The One That I Want 7)Love Me By Name 8)You Fooled Me 9)Spoken Introductions 10)Let’s All Live And Give Together Patti Austinの名唱、素晴らしいサポートメンバー、そしてPattiを愛する熱狂的オーディエンスによるアプラウズ、彼女の代表的ライブアルバムです。91年CDでのリリースに際して未発表1曲とPatti自身によるメンバー紹介のスピーチが追加され、曲順もレコードとは大幅に変更されました。おそらくライブでのオーダー通りだと思われます。またライブの録音自体はNYのスタジオ系ミュージシャン達のホームグラウンド的ライブハウス、The Bottom Lineで8月18日、19日の2日間に渡り2ステージづつ行われました。両晩全く同じ曲を演奏しましたが初日18日はミュージシャンやレコーディング・スタッフ達のためのwarm up的に行われ、にも関わらずクオリティとしては両日殆ど同じでしたが(さすがNY第一線のプロフェッショナル集団です!)19日の方が若干スムースに演奏されたという事で、当夜の2nd setのテイクが採用されました。ファンとしては2日間のレコーディングの全貌を是非とも聴いてみたいものです。可能ならば「The Complete Patti Austin Live At The Bottom Line ’78」の様な形で。演奏のクオリティが両日殆ど同じだとしても、演奏の中身は随分と異なる筈ですから。 Pattiは76年にCTIより初リーダー作「End Of A Rainbow」、2作目「Havana Candy」77年と立て続けにリリースし、本作が3作目になります。クロスオーバー、フュージョン真っ盛りの時代に脚光を浴びました。CTI Creed Taylorの名プロデュース、充実した共演者、アレンジャー、そして何と言ってもPattiの抜群の歌唱力が聞き手に訴えかけました。同世代の黒人女性ボーカリスト、例えばDonna Summer、Brenda Russellたちよりも頭一つジャズ度を感じさせるセンスは共演者をインスパイアさせ、本作ではライブ録音という事もあり、さらにオーディエンスを巻き込み、素晴らしいパフォーマンスを繰り広げました。 この作品はレコードで発売当時から愛聴しています。ギターDavid Spinozzaのバッキング、Will Leeのタイトで都会的センス溢れるベースワーク、そして何より我らがMichael Breckerの参加です!「Hello Michael、今までのCTI 2作ではお世話さま。殆どソロが無いかも知れないけど、ボトムラインでの私の3作目のライブレコーディングに付き合ってくれるかしら?」というPattiからのオファーに「もちろんだとも!Pattiのレコーディングに呼んでもらえて嬉しいよ。ソロが無くても全く構わないからさ、君と一緒に演奏が出来るのを楽しみにしているね。」と言うやり取りがあったかまでは分かりませんが(笑)、Michaelの参加作で本作のように徹底したオブリガード、アルバムサイズの短いソロだけでの使われ方、参加の仕方のライブレコーディングと言う例は少ないです。しかし随所に、PattiがMCでも述べているMichael流の隠し味、スパイス的な演奏がこの作品のクオリティ、レベルを別次元にまで高めています。彼の参加無しではこのアルバムは成り立たず、仮に不在では凡演とまで行かずとも歴史に残る作品にはならなかった事でしょう。それにしてもMichaelの歌伴の演奏の上手さはどこから来ているのでしょうか?ここでの演奏から痛感してしまいます。自身がリーダーになり表に立つ場合と、裏方〜伴奏者に立場が変わった時のチャンネルの変え方が実に徹底しており、あくまで主体の音楽性を映えさせるのですが、実は自分自身のテイストもしっかりと表現していて、主体との化学反応、お互いの音楽のブレンド感、間合いを繊細に図りながら大胆に演奏をする、バランス感の権化と言えましょう。 それでは収録曲をCDの曲順ごとに触れて行きましょう。1曲目Jump For Joy、The Jacksonsの77年ヒット曲です。Michaelのサックスにはエフェクターがかけられています。この頃の彼の使用楽器、6万7千万台のAmerican Selmer Mark 6にはネックにピックアップ用の装着台が付けられ、ここにPZMというバウンダリー・マイクを装着します。ここからの電気的信号をミュートロンというエフェクター(今となっては伝説的なエフェクターです)に通すことにより、ワウがかけられた音色に変化します。 こちらは78年9月New York All Starsで来日時の写真で、まさしく同じセッティングによるものです。これに更にオクターヴァーを装着したサウンドをThe Brecker Brothers Band「Heavy Metal Be-Bop」のFuky Sea, Funky Dewでのカデンツァで聴くことが出来ます。 Charles Collins、Will Leeが繰り出すグルーヴがとても気持ち良いです。Frank、BabiのFloyd兄弟、Ullanda McCulloughのバックコーラスも曲にゴージャスさを加えています。 2曲目はJackson兄弟の三男でMichael Jacksonの兄、Jermaine Jackson78年のヒット曲Let It Ride。Spinozzaのギター、Michaelのワウ・テナーが良い味付けをしています。歯切れ良く吹いているテナーサウンドがワウの効果でホーンセクションにも聴こえます。ヘヴィな、ノリの良いファンクナンバーに仕上がっています。 3曲目Stephen Bishop76年のヒットナンバー、One More NightはAORファンにとっては堪らない選曲です。Pattiの歌いっぷりでこの曲に更に魂が込められました。 4曲目Kenny Loggins78年のヒット曲Wait A Little While、オリジナルのキメ、構成をまんまコピーして演奏しています。こちらもファンにはドンピシャなナンバー、ここでのMichaelのイントロ・メロディの吹き方、テナーの音色、そして間奏のソロが素晴らしいのです!ソロの後半、High E音の割れ具合のカッコよさ!僕にとって完璧なMichael Breckerの演奏、ソロの一つです。実はこの曲も雑誌Jazz Lifeの取材でMichael本人に聴かせ、コメントを貰った中の1曲です。こちらもご紹介したいと思います。 次は、パティ・オースティン(vo)の「ウェイト・ア・リトル・ホワイル」(ケニー・ロギンス作曲)。これはNYボトム・ラインでのライヴ・ヴァージョンです。〜曲をプレイ〜MB: ドラムは誰?ーチャールズ・コリンズです。MB: お〜っ!彼のことはすっかり忘れていたよ(笑)。でもこのギグのことはよく覚えている。バンドもオーディエンスも最高でね、パティも言うまでもなく素晴らしかった。本当に偉大なミュージシャンであり、素晴らしい女性だね。このライブをやるまでは、彼女がこれほど偉大なエンタテイナーとは知らなかった。自分のプレイに関しては、ずいぶん内向的に感じるね。この雰囲気に合わせようとしていると同時に、自分の個性を織り交ぜようとしているね。レコードの音はかなり酷いものだね(笑)。多分これは持っていないんじゃないかな。極めてドライな音だね。彼女の歌だけではなく、ソウルとエレガンスは本当にすごい。改めて彼女の歌声を聴くことができて嬉しいよ。自分のプレイに関しては、これも別人のような気がするよ(笑) 演奏を聴きながらこのコメントを改めて読むと感慨深いものがあります。とても彼の言うような、内向的な演奏には感じませんが、演奏している本人には気になる所なのかも知れません。 5曲目はPattiの長いトークから始まり、「黒人女性がカントリー&ウェスタン音楽なんて歌えないと思ってない?」と言いながらRandy Newmanの77年のヒット曲Rider In The Rainを歌い始めます。後ろで奏でているSpinozzaのカントリー&ウェスタン調のギターが実に良い雰囲気を醸し出しています。 6曲目はレコード未収録のナンバー、78年の映画Greaseのヒットした挿入曲You’re The One That I Want、原曲は映画出演のJohn TravoltaとOlivia Newton-Johnのデュエットで歌われています。 7曲目はPatti自身のナンバーにして代表曲、78年Quincy Jonesの大ヒットアルバム「Sounds…And Stuff Like That!!」に収録されているLove Me By Name。オリジナルではEric Galeがストリングスをバックに良い味を出していますが、ここではMichaelのむせび泣くテナーソロが聴け、フラジオB音の確実なヒットにさすが、と感じてしまいます。 8曲目はJeffrey Osborneが在籍していたバンド、L.T.Dの78年ヒット曲You Fooled Me。こちらもオリジナルのアレンジを踏襲して演奏しています。コーラスやギターとテナーのユニゾン、効果的なパーカッション、メチャイケナンバーです! 9曲目に該当するのはPatti自身によるメンバー全員の丁寧な紹介、楽しげに悪戯っぽくしながらも一人一人に対する尊敬の念、思いやり、愛情をとても感じます。特にMichaelには別格な紹介がなされており、「ここにいるのは本物のMichael Breckerです!どうぞお立ちください!」彼はきっとその時、はにかみながら、椅子から立ち上がって深々と挨拶をしたことでしょう。 10曲目ラストを飾るのは8曲目と同じくL.T.D.の78年ヒット曲Let’s All Live And Give Together、当夜はもうかなりの曲数を歌っているにも関わらず、しかも2nd set最終曲、ここに来てPattiはますます喉の調子が良くなったのでしょう、信じられないほど高い声を確実に、見事にヒットさせています!凄いです! こうやって見ると本作の収録曲は76年から78年の間にリリースされたヒット曲ばかりで構成されている事になります。そしていずれの曲でもオリジナルの歌よりもPattiのボーカルの方に表現力を強く感じ、ライブレコーディングでありながらも彼女の歌唱力の実力をまざまざと見せつけられました。

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2018.04.15 Sun

The Phil Woods Six “Live” From The Showboat

今回はアルトサックス奏者Phil Woods、1976年の2枚組ライブ作品「 The Phil Woods Six “Live” From The Showboat」を取り上げてみましょう。76年11月2日録音 The Sowboat Lounge, Silver Spring, Maryland as,ss)Phil Woods g)Harry Leahey p)Mike Melillo b)Steve Gilmore ds)Bill Goodwin perc)Alyrio Lima Disc 1 : 1)A Sleeping’ Bee 2)Rain Dance 3)Bye Bye Baby 4)Django’s Castle 5)Cheek To Cheek 6)Lady J 7)Little Niles  Disc 2 : 1)A Little Peace 2)Brazilian Affair : Prelude~Love Song~Wedding Dance~Joy 3)I’m Late 4)Superwoman 5)High Clouds 6)How’s Mama(Phil’s Theme) Phil Woods(PW)が当時率いていたレギュラーグループによる、名門ライブハウスThe Showboat Loungeでのライブです。よく練られた選曲と曲順、加えてPW自身によるアレンジが大変素晴らしく、聴き易さの中にもしっかりとジャズの本質を織り込んである構成で、アメリカのエンターテイメントの真髄を感じます。 レコードでも2枚組でリリースされていました。1枚目Side Aのウラ面がSide C、2枚目のオモテ面がSide B、ウラ面がSide Dになっています。2台のターンテーブルを使って順繰りに聴けるような配慮の様ですが、日本では定着しなかったシステムです。 収録曲を見ていく前にPWのバイオグラフィー、活動、この作品に至るまでの流れに触れてみましょう。31年11月2日マサチューセッツ州スプリングフィールドで生まれ、マンハッタン音楽院やジュリアード音楽院で、多くの門下生を輩出したLennie Tristanoに師事し、多大な影響を受けました。PW自身、彼のインタビューを読むとかなり物事をはっきりと、歯に衣着せぬ、時としてシニカルな物言いをしています。「月にロケットを飛ばすくらいの先端技術があるのなら、良いリードくらい作れるだろうに」とは彼のよく知られている発言です。同じアルト奏者でやはりTristano門下生Lee Konitzも毒舌家として知られており、例えばサックス奏者Anthony Braxtonの演奏を聴いた後にインタビューアーに意見を求められ、「こんな酷い演奏は今まで聴いた事がないね」とまで発言しています。僕のイメージとして多くのアルト奏者の物言いにこの傾向があるように感じますが、どうでしょうか。その楽器を演奏しているうちにその楽器奏者特有の性格に変わって行くのかもしれませんし、その楽器を選択する時点で個人の性格が楽器を選択させているのかも知れません。PWは卒業後に自己のバンドでの活動を開始、Quincy JonesやDizzy Gillespie、Benny Golson達と共にワールドツアーに参加しました。多忙な音楽活動を経験し60年代中頃には学生のためのサマーキャンプRamblernyを主宰し、そこからはMichael BreckerやRichie Cole、Rodger Rosenbergなどのサックス奏者が巣立ちました。しかし本国の音楽シーンの状況を憂慮したPW(仕事が無かったわけではありません)、68年にフランスに移住し、p)George Gruntz b)Henri Texier ds)Daniel Humairという欧州を代表するプレーヤーによるリズムセクションを擁したバンドPhil Woods & His European Rythm Machineでの活動を開始しました(合計5作品を発表)。Charlie Parkerの未亡人Chanと結婚する程にParkerを敬愛するPW、いわゆるパーカー派のアルト奏者からの脱却、モーダルでアグレッシヴ、アヴァンギャルドなまでに演奏が変化して行きました。時代のなせる技でしょう、John ColtraneやOrnette Colemanらの台頭が影響していたに違いありません。しかしその後、あれほど吹いた嵐が次第に収まり、PWは4年間の欧州生活にピリオドを打ち72年に帰国することになりました。帰国後74年1月録音、PWの代表作「 Musique Du Bois」では欧州での活動をしっかりと踏まえつつも、ハードバップへの回帰を高らかに宣言しています。 この2年後に本作「The Showboat」の録音に至るわけですが、この間にも更に芸風に変化が生じ、方向性としては尖っていた渡欧期よりもずっと丸さを感じさせ(人間年を取ると誰でも丸くなるものです)、聴衆との融合を図るべく選曲、アレンジ、自身の演奏全てに於いて「お客様あっての演奏」という境地を感じさせるようになりました。 本作の共演者にも触れてみましょう。ベース奏者Steve Gilmore、ドラム奏者Bill GoodwinはPWのレギュラーを長年務め、多くの作品を録音しています。PWの作品に限らずこの2人のリズムセクションで他のミュージシャンの作品にも数多く客演しています。ステディでタイトなビート、スイング感、サポート感には手堅いものがあり、決してでしゃばらず、寄り添い、リーダーの音楽性の中で巧みな盛り上げ方を聴かせる職人タイプの伴奏者です。一方PWの吹く8分音符は強烈にスイングしてビートが明確でこの作品の演奏者中誰よりもリズムが出ており、バンドのリズム、ビートの司令塔的役割を担っていて他のメンバーのソロになると急に勢いが止まったように聴こえます。仮にベーシスト、ドラマーが強力にビートを出すタイプ、音楽をある種の仕切る方向に持って行くタイプのプレイヤーだとするとPWとリズム、演奏、ソロがぶつかり、彼の存在感が希薄になり目立たなくなってしまいます。「とにかく俺の言う事を聞け、お前らはついて来れば良い。俺のやる事を邪魔するような目立つ演奏はするな」と言う楽屋でのPWの共演者に対する要望が聴こえて来そうです(かなり誇張しています〜汗)。本作のピアノ奏者Mike MelilloをはじめPWが雇うピアニストは一貫してどうも納得の行かない人選で、ハーモニー感、コード感が不明瞭、リズム感もいただけません。それはギター奏者にも言えることで、本作Harry Leaheyの演奏も同様にパッとしません。よく言えば無難な共演者、立場的にはPWの引き立て役、自分よりも目立つサウンドのコード楽器プレイヤーは雇いません。PWのラインから明確にコード感、ドミナントモーションも聴こえ、前述のリズムの司令塔的役割と言う事で、極論PW一人でジャズの醍醐味、スイング感を表現する事が可能だからです。リーダーがメンバーを雇うにあたり、良い演奏を共有出来るレベルであることは前提条件ですが、リーダー自身を引き立てるためにソコソコの演奏が出来るプレイヤー(このタイプのミュージシャンは大抵人柄も温厚でリーダーと衝突することはありません)を採用すると言う観点での人選もあり得るのです。 それでは収録曲を見て行きましょう。1曲目Harold ArlenのA Sleepin’ Bee、ギターとルパートの演奏から始まり、その後インテンポでテーマのメロディが演奏されます。なんとブリリアントで艶やか、サブトーンも美しく、コクのある音色でしょうか!この頃のPWのセッティング、楽器本体はFrance Selmer Mark 6の8万番台、この楽器はかのクラシックサックスの巨匠Marcel Muleに選定して貰ったそうです。マウスピースはNew York Meyer 5MM、リガチャーは多分Martin、リードはLa Voz Mediumです。テーマ部分のさりげないアレンジがオシャレです。そしてPWの素晴らしい、スイング感満載のソロ、他の追従を許さない独壇場です。ギター、ピアノソロと続きます。 2曲目はギタリストHarry LeaheyのオリジナルRain Dance、イントロのギター奏の後ろでパーカッションが面白いサウンドを鳴らしています。PWソプラノサックスに持ち替えマイナーブルースのメロディを取っています。テーマ部分では変拍子が用いられていますが、アドリブパートは普通に4拍子で行われています。PWのソプラノはアルトの時よりもOn Topで演奏しています。 3曲目Jule Styneの名曲Bye Bye Baby、ピアノのイントロ後テーマ奏、PWの音色によく合う美しいメロディ、アレンジも実に曲調に相応しいものに仕上がっています。PWやはりアルト演奏の時の方がリズムのノリが素晴らしく、的確なLaid Backを聴かせています。 4曲目ギターのメロディ奏をフィーチャーしたDjango Reinhardtの名曲Django’s Castle、こんな美しい曲を書けるなんてDjango自身もきっとロマンティックなミュージシャンだったのでしょう。PW朗々と美しいソロを聴かせています。 5曲目Irving Berlinの名曲Cheek To Cheek、クラシックのエチュードと見紛うばかりのイントロからルパートのメロディ、一転して4度進行のリフを用いたアレンジ、とってもカッコいいスイングナンバーに仕上がっています。ここでのPWのソロを聴けばこのバンドのビート、リズムの司令塔という意味が良く分かると思います。猛烈にスイングしまくりです!この人ソロのラインが上昇する際、結構グロウする時があります。 6曲目はPWのオリジナルLady J、ボサノヴァのリズムが心地よい美しいナンバーです。この人のサブトーンでのメロディ奏はテナー奏者的なアプローチに聞こえます。PW8分音符がかなりイーヴンに近い吹き方なので、こう言ったリズムの曲ではさらに気持ち良いグルーヴを聴かせてくれます。大ヒットしたBilly JoelのJust The Way You AreでのPWのソロは彼の音色、センス、イメージ、そして何よりリズムのグルーヴが曲想に合致したのだと思います。 7曲目ピアニストRandy WestonのオリジナルLittle Niles、かのMiles Davisも才能を認めただけあってユニークな曲想、この雰囲気を継続させて演奏が展開されます。でもリズムセクションにもっとチャチャを入れて貰いたいと感じるのは僕だけではないと思います。特にドラムにはガツンと行って貰いたいです。 以上がCD1枚目、2枚目の1曲目今度はピアニストMike MelilloのオリジナルA Little Peace。メロディらしいメロディを特に感じない、マイナーの雰囲気一発の曲です。ベースのアルコをフィーチャーし、PW情熱的に歌い上げています。 2曲目はこの作品のハイライト、21′ 32’にも及ぶ組曲Brazilian Affair。ジャズ屋の演奏するラテンやブラジリアンは独特なテイストがあって、僕は嫌いではありません。そしてこの組曲のためにパーカッション奏者Alyrio Limaが参加していると行っても過言ではありません。随所にカラフルなテイストを聴かせています。 3曲目はI’m Late、再びソプラノの登場です。アルト奏者のソプラノはテナー奏者の持ち替えとはまた違ったサウンドを聴かせています。アップテンポのスイングで軽快にソロを聴かせています。 4曲目はStevie WonderのSuperwoman、PWに相応しいチャーミングな曲です。それにしてもドレミファソ〜、ソファミレド〜のピアノ片手だけで弾けるメロディで曲を書いてしまうStevieはさすがです!PWのグルーヴはイーヴンのリズムで更に良さが発揮されるのを再認識しました。 5曲目はHigh Clouds、イケイケのサンバのリズムはコンサートのラストに相応しいチョイスです。PWのソロ、ここぞとばかりにハイスピードで吹きまくっています!Scrapple From The Appleのメロディが引用されています。やっぱりダジャレも言いたいんですね。 6曲目はコンサートのクロージングテーマでHow’s Your Mama(Phil’s Theme)、こういうハッピーな曲想はPWのサウンドによく合っています。

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2018.04.11 Wed

Stan Getz Quartet At Birdland 1961

今回はStan Getzのエアチェック録音をCD化した作品「Stan Getz Quartet At Birdland 1961」を取り上げてみましょう。 1961年11月11, 18日(#5~9)録音 Birdland, NYC.  Fresh Sound Records, Spain 2012年リリース ts)Stan Getz p)Steve Kuhn b)Jimmy Garrison ds)Roy Haynes mc)Symphony Sid Torin 1) Airegin 2)Wildwood 3)Where Do You Go? 4)Autumn Leaves 5)Jordu 6)Where The Sun Comes Out 7)Yesterday’s Gardenias 8)Woody’n You 9)Jumpin’ With Symphony Sid Getz絶好調、共演者の人選、演奏も素晴らしく、選曲もジャズファンを納得させるライブ盤です!58年頃から60年末までの欧州滞在を終えて帰国後音色やフレージングもたくましく成長し、翌62年から始まるBossa Novaへの参入の直前(実際は61年中に既にギタリストCharlie Byrdとのコラボレーションで「Jazz Samba」制作に向けてトライし初めていたようですが)、ジャズのスインガーとしての本領発揮時期です。当時のAMラジオのエアチェック録音にも関わらず、24 bit digital remasterで的確に音響処理され、かなりの音質、バランス、セパレーションにまで向上しています。昔のエアチェック録音をレコード、CD化したものの殆どは耳を凝らし、平面的でこもった音の塊の奥の方から、その演奏自体を引っ張り出すかのように抽出して聴く感じでした。本作のクオリティは技術の進歩か、エンジニアのセンス、腕前でしょうか、それら全てのなせる技なのかも知れません。digital remasterとは例えて言うならば音を平面的に捉え、不要な部分を消しゴムで消すように消去もしくは濃さを薄くし、逆に必要な部分の色彩を色濃く加筆したり色自体を変えたり、陰影部分を配置する作業です。エンジニアはその対象となる音楽の詳細、内容を技術的よりも音楽的、芸術的に把握しておく必要があり、手腕が問われる作業です。ディストリビュートしたスペインのFresh Sound Recordsは他にも未発表録音や長らく廃盤になっている作品を数多く再発し、またヨーロッパ、アメリカの若手ミュージシャンの新録音も積極的に制作している意欲的なレコード会社です。CDジャケットも本作は異なりますが、多くの作品にはデジパック(厚紙の台紙にプラスティック製のトレーを張り合わせた仕様)を採用し、昔のレコードジャケット風レトロ感、高級感を出しており、さらにジャズだけではなくオールディーズ・ポップスやロックの名盤の再発をも手がけているので、音楽全般に対する愛情、情熱、敬意を感じます。 当時おそらく週一度Birdlandからのライブをラジオで生放送していたのでしょう、録音が2週に分かれていて各々ほぼ30分づつの演奏時間になっています(当然30分番組だった事でしょう)。他にもたくさんの演奏が残されていると思いますが、61年のNYCでのライブ演奏ならば間違いなく宝の山、リリースを望みます。 Steve KuhnとGetzはこの頃よく共演しており、この作品の僅か4ヶ月前61年7月6日に交通事故で夭折したベーシストScott LaFaroを迎えた録音もあります。前年60年にはJohn Coltraneと同じNYCのJazz Gallaryで共演を果たし音楽的成長を感じさせる時期でのGetzとの共演です。Roy Haynesもこの後レギュラー・ドラマーとして何度かギグに迎えられる事になり、コンサートではGetzも敬意を払った紹介をHaynesにしています。Jimmy GarrisonはここでもOn Topの素晴らしいビートを聴かせており、短期間LaFaroの後釜を務めますがこの直後Coltraneカルテットのレギュラーに迎えられる事になります。Getz自身も楽器をSelmer Super Balanced ActionからMark 6に替え、マウスピースもOttoLink Slantにしています。音色が太く逞しくなったのは彼の奏法が一層洗練され、渡欧での経験を踏まえ音楽に対するイメージが変化した事と、更にハードウエアの変更に起因すると考えています。   それでは収録曲を見て行きましょう。1曲目Sonny Rollinsの名曲Airegin、ご存知Nigeriaの綴りを逆にしたタイトル、バンド用語ですね。フェードインして演奏が始まるのは司会のSymphony Sidのオープニングmcが入っていてそれを消去したためでしょう。この頃Getzがレパートリーとして度々取り上げていましたが、ここでの演奏が実に素晴らしいのです!61年の演奏とは思えないほどのフレージング、テンションの用い方、アイデア、スピード感、コンパクトなサイズの中に起承転結、意外性、またGetzのソロの前半のアグレッシヴな部分で一切バッキングを行わないKuhnの美学、これはColtraneとの共演から学び取ったに違いありません。ピアノソロ後のドラムとのバースにもGetzのクリエイティヴさは損なわれず、Haynesとの絶妙なやり取り、それにしてもここでの演奏内容のコンテンポラリー性は、数年後の世界からタイムマシンで時代を遡ったGetz自身が演奏しているかの如き閃きを聴かせています。 2曲目はアルト奏者Gigi GryceのナンバーWildwood。Art Farmerの「Work Of Art 」に収録されています。前曲とは一転してリラックスした演奏に終始しており、Getzの音色、メロディの吹き方も随分と異なります。   3曲目はAlec Wilder作のWhere Do You Go?、Getzはこういったミステリアスなムードを湛えたバラードを良く取り上げます。 4曲目はお馴染みAutumn Leaves、枯葉ですがGetzはいつもこの曲を原曲とは異なるCマイナーで演奏しています。ソロの先発のKuhnはいつもよりBill Evansのテイストを感じさせるスタイルで演奏しています。続くGetzは1曲目の好調さが引き続いている、61年らしからぬ数年後の近未来のテイストで演奏を行なっています。 以上が61年11月11金曜日のテイク、5曲目から1週間後の18日のテイクになります。番組のオープニングを飾るべくSidのmcが入り演奏が始まります。5曲目Duke JordanのJordu、こちらもバンド用語タイトルですね。Horace SilverのEcarohも同じセンスの曲名です。マイナーの曲調中、サビに7thコードの4度進行が用いられていますが、難易度の高いチェンジにも関わらずGetzはさすが巧みなアプローチを聴かせています。ベースソロの後ろでシンコペーションのリフをGetzが吹き、その後ドラムとのバースが始まりますが、かなりHaynesのドラミングのフレージングにインスパイアされているのではないかと推測され、斬新なアプローチが聴かれます。 6曲目Getz自身の曲紹介によるHarold ArlenのWhen The Sun Comes Out、こちらも3曲目のバラードに通じるテイストを感じさせます。いつもながらGetzのダイナミクスの素晴らしさに感銘を受けます。 7曲目Yesterday’s Gardenias、前曲の雰囲気を一掃する明るい曲調のミディアムスイングです。 8曲目Dizzy Gillespieの名曲、Woody’n Youは「Woodyと貴方」ですがWoodyとはクラリネットの名手にしてビッグバンドのリーダー、Woody Hermanの事だそうです。貴方とは誰の事なのかは判りません。この曲も当時のGetzのオハコの一曲です。難しいマイナー7th ♭5thのコード進行の処理の仕方が実に的確です。ここでは通常よりも早めのテンポで演奏され、毎度ながらいつもと違った語り口で見事にソロを展開させています。 9曲目はLester Youngの書いた、当夜の司会 Symphony Sidに捧げられたブルース・ナンバーJumping’ With Symphony Sid、Lester本人のバージョンよりも幾分早めに演奏されています。フィナーレにふさわしくGetz吹きまくっています!演奏はまだまだ続いたようですが放送時間の関係でアナウンスが入り、カットアウト?フェードアウト?で終了です。

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2018.04.09 Mon

Richard Tee / Strokin’

今回はピアニストRichard Teeの初リーダー作「Strokin’」を見て行きましょう。1978年NYC録音  Tappan Zee Records 1)First Love 2)Every Day 3)Strokin’ 4)I Wanted It Too 5)Virginia Sunday 6)Jesus Children Of America 7)Take The “A” Train The ”Guys”  key,vo)Richard Tee g)Eric Gale b)Chuck Rainey ds)Steve Gadd per)Ralph MacDonald harmonica)Hugh McCracken ts)Michael Brecker ts,lyricon)Tom Scott  何とゴージャスな音楽でしょう!素晴らしいリズム、ビート、芳醇なサウンド、アメリカの黒人がのみ成し得るグルーヴです!と言ってもいきなり参加ドラムスのSteve Gaddがユダヤ系白人ですが(汗)、TeeとGaddの抜群のコンビネーションはStuff、Gadd Gangなどのバンド共演で生涯継続していました。Gaddのグルーヴには肌の色は関係ありませんね。 Teeはニューヨーク州ブロンクスで生まれ育ち、教会音楽の洗礼を受け、子供の頃からの尊敬するアーティストがRay Charles、ピアノ奏者としてMotown Labelでの仕事を多数経験していると来れば表現するべき音楽の方向性はおのずと定まります。ピアノをこんな美しく煌びやかに鳴らせて、思わず腰が椅子から離れてリズムに合わせてしまうようなグルーヴ感の持ち主は他にはいません。どっしりしていてスピード感があるのです。そしてピアノソロ演奏も素晴らしいですが、バッキングのフィルインのテイストが半端なくカッコいいののです!初リーダー作Strokin’はTeeにとって満を持してのリリースになりました。この作品を含めTeeは生涯に5枚のリーダー作を発表しています。彼の膨大なレコーディングの量にしては少ないかも知れませんが、自分が前に出てリーダーを取るよりも、主体を映えさせるために演奏するサイドマン気質が強い脇役タイプのミュージシャンだと思います。水戸黄門の助さん格さんですね(笑)。Teeの生演奏を初めて聴いたのは78年のNew York All Stars、東京芝郵便貯金ホールのステージです。ホール鑑賞という、条件としては決して良く無い音響なのですが、ピアノの音がよく鳴り響いていたのを覚えています。前回のBlog「Zappa In New York」の時に抜粋、引用したMichael Breckerの雑誌Jazz Lifeへのコメント、このアルバムの表題曲Strokin’での彼のソロを聴かせ、やはりコメントを貰っていますがこれが実に端的にTeeの音楽性、人柄について発言していますので、今回も抜粋し注釈を加えて掲載したいと思います。 ー次は、リチャード・ティー(key)の「ストローキン」です。 〜曲をプレイ〜 MB:リチャードは教会でゴスペルをやっていただけあって、とてもファンキーなアプローチをとっているけど、それを彼は別の次元まで昇華させてしまっているんだ。あまりにも強烈なスタイルを持っていて誰にも真似をすることなどできないよ。(レコーディングに誘われ)彼が私とプレイしたいと思っていたことは、とても驚きであったと同時に、心から嬉しかったんだ。それは当時の私にはファンキーな部分が足りないと思っていたからさ。でも、彼が私とプレイしたいという気持ちを表現してくれたことによって、とても救われた気がしたね。この曲に関してのソロはとても気に入っている。こうやって聴く限り、リリカルかつ濃密なプレイをしようとしていたように思えるんだ。グルーヴの中にいるんだけど、完全にノってしまうのではない、という感じかな。いろいろな要素をブチ込んで成功したいい例だね。これらの曲はどれを聴いても驚きの連続だよ。というのはこの頃の私の考え方と今とでは完全に変わってしまっているからさ。ほとんど別人のようさ。 リチャードとは、いろいろなツアーに一緒に参加したんだ。ニューヨーク・オールスターズの時には一緒に来日している。あれは78年だったかな?その後、ポール・サイモン(vo,g)のツアーで1年半ほど一緒に過ごしたんだけど、その間に病気で倒れてしまったんだ。リチャードとの活動はすべて素晴らしい思い出だ。彼がツアーで使うために、初めてシンセサイザーを買った時のことを憶えているよ。ホテルの彼の部屋に行って、シーケンサー部分の使い方を教えたことがあるんだ。クォンタイズの設定なんだけど、(教えようとしたら)その時彼は私を変人を見るような目つきで見ていたよ(笑)。(何でオレにそんな機能が必要なんだよってね)でもこれまで会ってきたミュージシャンの中で彼だけだよ、その機能がまったく必要なかったのは。彼のリズム感は本当に正確だったからね。ドラム・トラックなんかでもね。もちろん私のプレイはすべてクォンタイズしているよ。そのままではあまりにもヒドいからね(笑)。 「絶対音感」があるのなら「絶対リズム」もありそうですね。Teeにはきっと備わっていたのでしょう。リズム・クォンタイズに関するMichael流ジョーク混じりの謙遜は実に可笑しく、彼らしさが出ています。 それでは曲毎に見て行きましょう。1曲目はChuck RaineyのオリジナルFirst Love。Teeのピアノのメロディに絡むストリングスが気持ち良いです。GaddのドラムとRalph MacDonaldのカウベルやタンバリンが重なり合い、絶妙なリズムを繰り出しています。Eric Galeのギター・カッティングが隠し味的に効いています。Tom Scottのテナーソロも曲想にマッチした語り口を披露しています。恐らくクリックを使わずに演奏していると思われますが、たっぷりどっしりとした安定感がハンパないです。 2曲目はTeeのオリジナルEvery Day。イントロのアルペジオを聴いただけでグッときてしまいます。ここではTeeのボーカルがフィーチャーされています。Galeのソロは音数少なめながら説得力のあるフレージングに仕上がっています。 3曲目表題曲Strokin’、前述のMichaelのコメントに補足する形で述べましょう。Teeの煌びやかなピアノ奏があくまでメインですが、曲自体同じモチーフを繰り返し徐々に盛り上がっていくドラマチックな構成に仕立てられ、後半のMichaelのソロ登場に至るまで、まだか、そろそろか、とワクワクしながら聴いてしまいます。Teeのピアノの合間に聴かれるストリングスが高揚感を煽り、一層ソロが楽しみになる仕組みです。それにしてもこの人のピアノは何でこんなに個性的な素晴らしい音がするのでしょう?そしてそして、いよいよGaddのフィルインに導かれてMichaelのソロが始まります!いきなりフラジオのG音、全音下のF音を引っ掛けて吹いていますが強烈なインパクト!!カッコイイ〜!端々にKing Curtisのフレージングの影響を感じますが、そこはMichaelの歌いっぷりで自分のものにしています。実は何度かソロを重ね、オイシイところを切り取り、レコーディング技術を用いてパッチワークのように貼り合わせたソロなのですが、そんな舞台裏事情は全くどうでも良い次元のハイクオリティーな演奏です。78年録音ですのでもちろん楽器はSelmer Mark6、6万7千番台、マウスピースはOtto Link Double Ring 6番、エッジーでコクのある音色です。この頃のMichaelはリズムがOn Top気味で演奏する時がありましたが、ここでは意識してか、否か結構On Topで吹いています。思わずクォンタイズしたくなってしまいます(笑) 以上がレコードのSide Aです。4曲目はMacDonaldのオリジナルI Wanted It Too、Scottのlyricon(うわっ、懐かしい!)Hugh McCrackenのハーモニカをフィーチャーしています。バックで鳴っているホーン・セクションはtp)Jon Faddis, Randy Brecker ts)Michael Brecker tb)Barry Rogersです。NYのスタジオ第一線らしいキレのあるセクション・ワークを聴かせています。 5曲目はTeeの蕩けるほどに美しいナンバーVirginia Sunday、Fernder Rhodesでメロディ、ソロ共に演奏しています。こちらの音色と曲想が良くマッチしています。先ほどのホーン・セクションにバリトンサックスでSeldon Powellが加わっています。良く鳴っていてセクションのサウンドをタイトに分厚くしています。Scottが再びlyriconでソロを取っておりアナログ・シンセサイザーの音らしく太い良い音色です。現代に於いてもはや使う人はいませんが。この曲はNew York All Starsでも取り上げられていました。そちらのRandy, MichaelにDavid Sanbornが加わった3管でのバージョンもとても素敵です。この曲を聴いていてVirginiaの日曜日はさぞかし優雅でメロウなのだろうな、と想像してしまいます。 6曲目はMotown仲間(?)Stevie WonderのオリジナルJesus Children Of America。前曲のホーン・セクションにさらにストリングスも加わり分厚く豪華なサウンドを聴くことが出来ます。Fender Rhodesにエフェクターを施したサウンドでTeeはソロを取っています。バックに生ピアノのバッキングも聴かれるので後からオーバーダビングしたものとなります。続くGaleのソロも味わいのある音色でFender Rhodesのエフェクター音と対になっています。 7曲目、レコードのラストを飾るのはTeeとGaddのDuetによるBill Strayhornの名曲Take The “A” Train。メチャクチャかっこいいです!グルーヴ、サウンド共に双生児のような2人です。ベースや他の楽器は全く不要です。この2人だけで幾らでも、延々と演奏する事が出来るでしょう。ソウルブラザーに乾杯! 余談ですが今から20数年前に演奏で名古屋に行った時の事です。街中にある鰻の老舗に昼間、名物ひつまぶしを食べに行きました。4人掛けのテーブルに僕が一人で座っていたところ、昼時で店が混雑してきたので従業員が相席をお願いします、という事で前に座ったのが黒人二人連れ。両名とも見たことのある顔なので確認したところRichard TeeとドラムのBuddy Williamsじゃあありませんか!もちろん初対面なので自己紹介をして「ところで何で名古屋に来ているの?」尋ねると新しく開店したライブハウスのこけら落としでの演奏、Cornell Dupreeのバンドでの来日でした。「Strokin’」やWilliamsの参加作の話などをしていると二人はひつまぶしを二人前づつ頼んでいます。結構な量のはずなので「二人前づつ食べるんだね」と聞くと「Yes, we love eel!!」と笑いながら答えてくれました。気さくな二人の人柄に触れられたのと同時に、素晴らしい演奏家は食欲も素晴らしいのだと実感しました。

2018.03

jazz/music 

2018.03.30 Fri

Stan Getz / Sweet Rain

今回はStan Getzの67年作品、Sweet Rainを取り上げてみましょう。1967年3月21日、30日録音、同年7月リリース。  Studio:Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey  Recording Engineer:Rudy Van Gelder  Producer:Creed Taylor ts)Stan Getz p)Chick Corea b)Ron Carter ds)Grady Tate   1)Litha(Chick Corea) 2)O Grande Amor(Antonio Carls Jobim) 3)Sweet Rain(Mike Gibbs) 4)Con Alma(Dizzy Gillespie) 5)Windows(Corea) メンバー良し、演奏良し、選曲良しと三拍子揃った名盤で、学生の頃からよく聴いています。多くの名盤には名録音も付き物なのですが、レコーディング・エンジニアがかのRudy Van Gelder(RVG)にも関わらず、いつもの彼らしいクリアネス、臨場感、サウンドの主張をここではあまり感じず、どちらかと言えば今ひとつピンとこない、音の抜けないこもったサウンド、そしてザラザラした質感の音質です。崇高なまでに素晴らしい演奏と、あたかも一枚ベールを被ったような録音のクオリティとが合わさり、むしろこの作品の印象をミステリアスなものに仕立てています。ですので昔から僕はSweet Rainを聴く度にこの作品の秘密を解き明かす感じで対峙しています。 この作品のディストリビュートはVerve Label、創設者のNorman Granz自身に寄るプロデュース作品が多かったのですが、この頃から後に名盤を数多くリリースしたレコード会社CTI(Creed Taylor Issue,  Creed Taylor Incorporated)の創設者Creed Taylorがプロデュースを担当しました。TaylorはVerveでの幾多の経験を生かしてCTIを創設したと言えるでしょう。そして録音はRVGが行うというパッケージになっており、良い録音で作品を聴いて頂こうというTaylorのこだわりが名匠RVGの起用を促しています。GrantzよりもTaylorはよりポピュラリティのある作品のプロデュースを心掛けており、ジャズの様な素晴らしい音楽〜反面難しい、取っ付きにくいという垣根を取り払うべく、様々な工夫を作品毎に施して聴衆にアピールしていた様に認識しています。実際CTIのカタログにはクロスオーバー〜フュージョンの作品が多いのは当然の成り行きでしょう。 ところでGetzは共演するリズムセクションの人選にかなりこだわりがあるように感じます。ミュージシャン、特にフロント楽器がリーダーともなれば当然の事ですが、その当時の精鋭プレイヤーを雇い、自分のカルテットのメンバーとして育て、特にピアニスト(Vibraphone奏者Gary Burtonが在籍した時期もあります)の楽曲を積極的に取り上げてバンドのレパートリーにしていました。本作に参加しているChick Coreaのオリジナル・ナンバーLitha、Windowsはエバーグリーンの名曲です。でも決して長きに渡り共演せず、せいぜい2~3年程度、そのミュージシャンの美味しいところを堪能出来たらまた別なミュージシャンを見つけて採用するというスタンスで共演していました。そのGetzにしては珍しく自分のバンドの出戻り(?)ピアニスト、Chick Coreaのオリジナルを殆ど全曲演奏したのが「Captain Marvel」。この作品単体でBlogに取り上げたいほどの名作です。1972年3月3日NYC録音 74年リリース  Columbia Label とても素敵なセンスのジャケットです!収録6曲中Billy StrayhornバラードのLush Life以外は5曲全てChickのオリジナル、メンバーもChick、Getzの他にb)Stanley Clarke、ds)Tony Williams、pec)Airto Moreira。この作品のライブ盤が同年Montreux Jazz Festivalにて録音の「Stan Getz At Montreux」77年リリース、DVDでも見る事が出来ます。Polydor Label これらのセッションはChickの72年傑作「Return To Forever」1972年2月2, 3日 録音NYC、のメンバーにTonyを加えたメンバー構成で、Return To Forever A La Getzとも言うべきバージョンです。ECM Label Return To Foreverの僅か1ヶ月後にCaptain Marvelは録音されているのですが、リリースは74年、録音してから2年経過してからの発売には何か意図があったのか、たまたまなのか、Return To Foreverの大ヒットが落ち着いてからのリリースを考えたのか、謎解きをするのも面白いです。 それではSweet Rainの収録曲を見て行きましょう。1曲目Chickの作品Litha、8分の6拍子のリズムとアップテンポのスイングからなるカッコいいナンバー、初期のChickの傑作曲です。8分の6拍子の1拍=8分音符が3つを1拍と捉えて倍のスイングで演奏する、タイムモジュレーションの走りです。ここでのGrady Tateのドラミングが実に素晴らしい!8分の6拍子での軽快さ、そして更にアップテンポのスイングになった時、ほんの少しOn Topで叩くシンバル・レガート、これによりリズムのフィギュアが変わった感が半端ないのです!Getzの演奏で他バージョンのLithaの演奏で比較して見ましょう。「Stan Getz My Foolish Heart “Live” At The Left Bank」 75年5月20日Maryland TheFamous Ballroom Baltimoreにてライブ録音、 2000年リリース Label M p)Richie Beirach b)Dave Holland ds)Jack DeJohnette 豪華なリズムセクションとの演奏です。因みにこのリズムセクションとDave Liebmanの共演が以前取り上げたことのあるLiebmanのリーダー作「First Visit」です。 このCDが発売された時にワクワクしながら購入した覚えがあります。 GetzのLithaの演奏をこのリズム隊で聴く事が出来るなんて!でも結論を先に言うと、ドラミングに関してSweet Rainでの演奏の方に軍配が上がります。 DeJohnetteのアップテンポのスイングが僕にはどうにも遅く聴こえるのです。メトロノーム的には全く正確に倍のスイングになっているのですが、TateのドラミングのようなOn Top感が無いので重い、スピード感の希薄なスイングになっています(とは言っても物凄い演奏ですが)。 ドラマーが代わりVinnie Colaiutaでの演奏にも同じ傾向があります。こちらはChick自身の演奏、93年1月3日 Blue Note NY、Chick Corea Quintet <b)John Patitucci ds)Vinnie Colaiuta ts)Bob Berg tp)Wallace Rooney> https://www.youtube.com/watch?v=cCa7SqwUgws(クリックすると演奏を聴く事が出来ます)。 ここでのColaiutaのドラミングはDeJohnetteよりも幾分On Topですが、Tateに比べるとまだ遅いです。Tateのドラミング・スタイルは黒人ドラマーとしてRoy Haynes〜Ben Rileyの流れを汲み、Frederick WaitsやVictor Lewis等に繋がって行きます。またGrady Tateのボーカルが素晴らしいのを皆さんご存知でしょうか?豊かなバリトンボイスを生かしたゴージャスな唄はドラミングと同等に、時としてそれを上回るほどです!Tateの74年リーダー作「Movie’ Day」、こちらは全曲ドラムを叩かず、ボーカリストとしての彼をフィーチャーした作品です。収録曲Van Morrisonの名曲Moon Dance、堪らない歌声です! Lithaの演奏にはもう1つ特記すべき点があります。8分の6拍子とアップテンポ・スイングが交互に入れ替わるこの曲、先発のGetzのソロ時には殆ど問題がなく合計4コーラス演奏されますが、Chickのソロの時にベースとドラムが曲の進行の探り合いを始めたのです。ピアノソロの1コーラス目、8分の6拍子からアップテンポ・スイングに移る際、ベースが1人先に行かず8小節してからアップテンポ・スイングになりました。ここからが2人の疑心暗鬼の始まりです。ソロの出鼻を挫かれたChick、しかし2コーラス目はベース、ドラム2人が持ち直したのでアドリブにエンジンが掛かり始めました。ところが3コーラス目に入った途端ドラムが8分の6拍子に一瞬戻らず、でもすかさず察知して態勢を立て直し8分の6拍子に戻りますが、その余波のためか何とベース、ドラム今度は2人して同時に8小節早くアップテンポ・スイングに移行してしまいました!コード進行も違うぞ!Chickは可哀想にバックの様子を伺いながらのソロプレイ、多分Getzと同じく4コーラスのソロを予定していたと思うのですが、邪魔が入り集中しきれずにソロをギブアップ状態の3コーラスで終了です。Getzがリーダーとしての後始末的にソロをコーラスの途中から取り、そのまま引き続いてラストテーマに入りました。こんなにアクシデントが起こった演奏にもかかわらず、プロデューサーはよくこのテイクを採用したと思うのですが。それにしてもトラブル続きの演奏でもタイムが一切揺れないのは流石です! 2曲目はAntonio Carlos JobimのO Grande Amor〜大いなる愛、Getzはライブでも当時よくこの曲を取り上げていたのでお手の物です。Chickの美しいソロも加わりこの曲の名演奏のひとつになりました。 3曲目は本作のタイトル曲Sweet Rain、南ローデシア生まれのイギリス人作曲家Michael Gibbsの崇高なまでに美しいバラード。この曲もGetzはライブで良く演奏していました。この曲の雰囲気と本作の録音状態が絶妙にマッチングしていると感じるのは僕だけでしょうか。1コーラス10小節から成る曲で、因みにMilesのBlue In Green、 Horace SilverのPeace、ColtraneのCentral Park Westいずれも10小節構成のバラードです。これらは10小節でストーリーを語り尽くしている名曲です。 4曲目はDizzy Gillespieの名曲Con Alma、スペイン語ですが英語に訳すとWith Soulだそうです。ホント良い曲ですね!Grady Tateの小気味好いラテンのリズムが曲の持ち味を最大限に引き出しています。Lithaと同様にスイングのリズムと交互に入れ替わりますが、ここでも丁度良いタイムのツボ、リズムのスイートスポットにハマって演奏しています。エンディングのドラマチックな事と言ったら! 5曲目は再びChickのナンバーWindows、対抗してMackintoshという曲を書いた人がいましたが(笑)、冗談はさて置き、これも何と美しいワルツでしょうか!ドラマチックでいて更に目紛しくコード進行が変わる難曲ですが、Getzは大変メロディアスなソロを聴かせています。学生時代よくジャズ喫茶でこの曲がかかっていましたが、皆んなでGetzのソロを口ずさんだものでした。テナーサックスに於いてストーリーテラー、メロディメイカーぶりでGetzの右に出る者はジャズ史上存在しません。Chickのソロもコンポーザーならではの、細部に至るまでとことん曲の構造を把握して、曲自体のテイストを最大限に引き出しています。Getzのソロのバッキングも全く的を得ています。ところでこの曲のキー、調性は何でしょう?いまだに僕自身分かりませんが、我々はこの曲を演奏する時に冒頭のコードを指して判断しています。このGetzバージョンは冒頭B minorですが、Phil Woodsの「Japanese Rhythm Machine」では半音上げてC minorで演奏していますが、実はこのキー設定でかなり演奏し易くなっているのです。PhilはFreedom Jazz DanceのキーをB♭からFに変えてEuropean Rhytm Machineの方でも演奏していました。

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2018.03.19 Mon

Pony’s Express / Pony Poindexter

今回はアルト、ソプラノサックス奏者Pony Poindexterの62年録音初リーダー作「Pony’s Express」を取り上げてみましょう。 1962年2月16日、4月18日、5月10日NYC録音 Producer : Teo Macero  Liner notes : Jon Hendricks Epic Label 1)Catin’ Latin 2)Salt Peanuts 3)Skylark 4)Struttin’ With Some Barbecue 5)Blue 6)”B” Frequency 7)Mickey Mouse March 8)Basin Street Blues 9)Pony’s Express 10)Lanyop 11)Artistry In Rhythm as,ss,vo)Pony Poindexter as)Eric Dolphy, Gene Quill, Sonny Redd, Phil Woods ts)Dexter Gordon, Jimmy Heath, Clifford Jordan, Billy Mitchell, Sal Nistico bs)Pepper Adams p)Tommy Flanagan, Gildo Mahones b)Ron Carter, Bill Yancy ds)Elvin Jones, Charlie Persip vo)Jon Hendricks 60年代初頭、当時のジャズシーンにおける精鋭サックス奏者がリーダー含めアルトサックス奏者5名、テナーサックス奏者5名、バリトンサックス奏者1名の総勢11人(!)がこの作品には参加しています。各人の素晴らしいソロ、バトルの他、ProducerのTeo Macero(この人自身もサック奏者です)アレンジによる重厚なサックス・アンサンブルも楽しめる、そうです、文字通り「サックス祭り」作品です!実際バックを務めるリズムセクションにもElvin Jones、Ron Carter、Tommy Flanagan等の豪華メンバーが参加していますが、彼らに一切ソロはありません。 アルトサックスを首から下げながらカウボーイ風の衣装で乗馬している小柄なPony Poindexterの写真がジャケットにレイアウトされています。最初のアメリカ大陸横断電信(鉄道ではありません)が開通する前の1860年代のいっとき、馬に乗った配達員が電報を運ぶ郵便配達サービスが行われ、その名前が「Pony Express」と言いました。アメリカ東海岸には電信網があり、途切れる中西部以降の荒野や砂漠、山岳地帯、その間のインディアンの襲撃を回避しつつ、1人の騎手が駅で馬を乗り継ぎながら西海岸までの間を最短10日間で配達したそうです。Pony Expressの騎手は厳しい仕事に就くため、タフで軽量(57kg未満)でなければならなず「求む、若く、痩せこけて針金のような男、18歳以上は不可。馬の騎乗に優れ毎日死を賭した危険に立ち向かわなければならない。孤児優遇」と書かれた有名な求人広告が残っているそうです。物凄い採用条件ですね(爆)、可愛らしい職業名とは裏腹に過酷で常に死と直面しているにも関わらず、Pony Express人気の職業だったそうです。フロンティアスピリットのなせる技でしょう。実際小柄なPony(ニックネームです) Poindexter、そこから取ったネーミング曲Pony’s Expressからアルバムタイトル付けされています。 リーダーPony Poindexter、ジャケ写からジャズ・ミュージシャンらしからぬ如何にも気の良い田舎のおじさん、と言った感じが滲み出ていますが、本人の演奏にもあまり細かいことにはこだわらない、良く言えばハッピーでラフな雰囲気の演奏を感じます。端的に言えば大雑把さ、奏法的にはピッチやリズムのルーズさ、リードミス寸前の発音(ちょっと痛い音の成分が鳴っています)、フレージングのアバウトさが気になる所ですが、参加サックス奏者達の好演、熱演、Teo Maceroのアレンジ、選曲、構成、プロデュースにサポートれてこの作品は成り立っていると言って過言ではありません。「周囲に助けられて成り立っている」のがジャズミュージシャン基本だと思うのですが(笑)、本人も周りのミュージシャンに愛されるキャラではなかったかと想像できます。「Ponyの初リーダー・レコーディングなんで皆んなでいっちょ盛り上げようぜ!」そんなノリで参加ミュージシャン達全員がベストを尽くしたのでしょう。Count Basie楽団のためにアレンジャー、作曲家のNeal HeftieがCharlie Parkerのモチーフを元に書いた名曲Little PonyはそんなPoindexterに捧げられており、その曲の歌詞もこのアルバムに参加し、更に本作にライナーノートを寄稿しているJon Hendricksが書いています。 60年代に多くのミュージシャンが仕事を求めてアメリカからヨーロッパに渡りましたがPoindexterもその一人です。この作品がリリースされた後64年に地中海の島に家族と移住し、以降ヨーロッパ各地のジャズフェスやミュンヘンのジャズクラブ「ドミシル」等への出演を中心に演奏活動を続けました。 Poindexterで特記すべきはソプラノサックスの使用です。60年初頭にジャズでソプラノサックスを演奏していたのはJohn Coltraneくらいですが、そのColtraneが彼の楽器をとても欲しがったそうです。Poindexterは何千ドル出したとしても譲らないと固辞したという逸話が残っています。ただ後にこの名器はクラブ「ドミシル」が原因不明の火災に見舞われた際消失(焼失)してしまったそうです。その後Poindexterはアルトサックスとボーカルに専念することになりました。 余談ですが僕の後輩サックス奏者のアパートがだいぶ前に火事になりました。本人サブの楽器を持ってリハーサルに出かけ、帰宅してみるとアパート全焼、ほとんどが灰になっていましたが、メインの楽器があった辺りを掘り起こしてみるとハンダ付け、ロウ付けが綺麗にバラバラになったサックス・パーツをネックのオクターブキー以外、全て発見する事が出来ました。それらを集め持って管楽器修理専門店に行き、あたかも新品の楽器を組み立てるように修理を依頼しました。その後リニューアルされた楽器は何と以前の状態よりも良く鳴るようになったそうです!負け惜しみではないと思いますが、「楽器は一度焼いてから組み立てた方が良いです」とは本人の弁、確かに楽器によってはキーポストや本体のハンダ付けが甘いものもあり、専門店でしっかりと確実に組み立てれば蘇るどころか、良く鳴る楽器に変身するのでしょう。 それでは作品の内容について1曲づつ見ていきましょう。本作3つのセッションから成り、全ての曲において3アルト、2テナー、1バリトンというサックス6管編成で構成されています。レコードのライナーには不親切なことにソロのオーダーは全く記載されていません。僕自身の耳でプレイヤーを判断しますので、もしかすると誤記があるかも知れない点をご容赦ください。 1曲目Pony Poindexter(P.P.)のオリジナル、ラテンナンバーCatin’ Latinです。何処かで聴いた事のありそうなメロディの断片を感じますが、P.P.らしいハッピーな曲調です。ソロの先発はP.P.のソプラノ。このブログでも度々登場するドラマーのCharlie Persipの軽快なラテンリズムと相まった小気味良いソロです。短いソリを挟んでDexter Gordon(D.G.)のテナーソロ、野太い音色でレイドバックが気持ち良いソロを聴かせます。続くPhil Woods(P.W.)も端正なリズム、8分音符、的確なタンギングで一聴彼と分かるスイング感を聴かせます。続くバリトンは本作で孤軍奮闘のPepper Adams(P.A.)、この人のエッジーな音の輪郭、タンギンングの正確さにはいつも感心ささられます。彼のMCをCDで聞いたことがありますが、バリトンの吹き方と同じ滑舌の良い話しっぷりに、話し方と吹き方は同じなのだと再認識しました。続いてP.P.とテナーBilly Mitchellのバトルが行われます。同じテナーでもD.G.とはまた音色、タイム感がかなり異なります。 2曲目お馴染みDizzy GillespieのSalt Peanuts、P.P.のボーカルが聴かれますがこの唄は彼のサックス演奏とは異なり、かなりレイドバックしています。61年から64年に渡欧するまでコーラスグループLambert, Hendricks, Ross(L.H.R.)の伴奏を務め、4人目のボーカリストとしても活躍しました。P.P.ボーカルの後に続いてすぐ自身のアルトソロになるので、多分唄は後からオーバーダビングしたのでは、と思われます。唄のリバーブ感もサックスのものとは異なる点からも推測されますし、これだけ唄ってから間髪入れずにすぐサックスを演奏するのはどんな達人でも無理だと思います。P.P.アルトソロに続くD.G.テナーソロ、アップテンポにも関わらずゆったりと聞こえるのは流石です。P.A.バリトンソロも素晴らしい!実に巧みなフレージング、音色、歯切れの良さ、バリトンサックスの第一人者として永年君臨するだけのことがあります。後テーマはインタールード後イントロに戻ってFine、オシャレな終わり方です。 3曲目Hoagy CarmichaelのSkylark、P.P.のアルトをフィーチャーし美しいサックスアンサンブルをたっぷり堪能できるバラードです。2’17″辺りでサックスの音が不自然に変わるので、テープ編集がなされているように思います。多分P.P.のソロ部分をカットしたのではないでしょうか。当時は現代ほど録音編集の技術が無かったので、唐突感を感じさせる場合がありました。僕自身としてはP.P.の音程が上ずる傾向にあるのがバラード演奏では顕著に表れ、微妙に感じます。 4曲目Struttin’ With Some BarbecueはD.G.とP.P.の2サックスの掛け合いから始まり、P.P.のテーマ演奏、その後ろでオブリガードを吹くD.G.。一曲通して彼ら2人のサックス演奏をフィーチャーし、ここではサックス・アンサンブルは聴かれません。二人のタイム感、8分音符の長さの違いが顕著です。多分せっかちな人柄のP.P.、常にのんびりと大きく構えるD.G.、対比が実に楽しく聴こえます。D.G.が自分のワイフに電話した時の話ですが、のんびりした旦那にはせっかちな奥方がペアになるものです。D.G.電話の話し方ものんびりしていて言葉の間が多いためでしょう、奥方はもうとっくに話が終わったと勘違いして一方的に電話を切ってしまったそうです(泣) 5曲目L.H.R.のピアニストで、この曲で伴奏を務めるGuildo Mahonesのオリジナル曲Blue、重厚なサックスアンサンブルをバックにP.P.朗々とまさにBluesyにテーマを歌い上げます。全体的に先ほどのSkylarkのソロをカット編集されない分程度の長さの演奏に仕上がっています。途中にOliver Nelsonの名曲Stolen Momentsのメロディが出てきます。よくあるメロディではありますがStolen Momentsが収録された「 The Blues And The Abstract Truth」が61年録音、同年リリースで大ヒットしたしたので、多分引用フレーズ扱いでしょう。 6曲目Teo Macero(T.M.)のオリジナル”B” Frequency、P.P.のソプラノをフィーチャーした小品です。P.P.のソプラノサックスはアルトサックスとは多少アドリブのアプローチが異なるように聞こえます。ここでのサックスセクションにはEric Dolphy(E.D.)がアルトサックスで参加していることになっていますが、ホーンセクションの一員として職人的な演奏をこなす事も出来るバランス感をたたえたミュージシャンと言えます。後ほど10曲目で聴かれるアドリブの嵐の前の静けさです。 以上がレコードのSide Aです。7曲目は何とディズニー映画Micky MouseのテーマソングMicky Mouse March。ソプラノサックスでの演奏が雰囲気にピッタリの超楽しい演奏です。バックのアンサンブルがまた強力です!採譜して自分でも演奏したいほどです。テーマ後P.P.が1コーラスソロを取った後にサックスセクション参加者のソロが始まります。最初のテナーは多分Sal Nistico、続くアルトはSonny Redd、次のテナーはClifford Jordan(C.J.)かD.G.なのですが、C.J.ではないかと思います。続くアルトは間違いなくP.W.、その後P.A.のバリトンと続き最後のアルトが微妙です。P.P.のように聞こえるのですが、その後ラストテーマで直ぐにP.P.がソプラノを吹いているので、アルトのラストソロはP.P.、ソプラノテーマはオーバーダビングではないかと思いますが如何でしょうか?エンディングのアンサンブルにリードミス音が聴こえるので、P.P.がアルトでアンサンブルに参加しているのかも知れません。 8曲目はJon Hendricks(J.H.)のボーカルをフィーチャーしたBasin Street Blues。素晴らしいアレンジ、優雅な雰囲気のアンサンブルをバックにJ.H.朗々と歌っています。P.P.のソロも快演です。やはりT.M.のプロデュース作品ともなれば、全体のバランス構成が巧みになされており一作を通しての聞き応えをしっかり熟考していると言えます。 9曲目はP.P.のオリジナルにして本作のタイトル曲、Pony’s Express。イントロ部分のソロ先発はP.A.のバリトン、1人目アルトがP.W.、2人目がP.P.、テーマ後P.P.が先発ソロを取り、1コーラスのサックスアンサンブル後D.G.のテナーソロ、再びサックスアンサンブルの後にエンディングテーマで締めくくられます。 10曲目は再びP.P.のオリジナルLanyop、9’36″と本作中最長のテイクでハイライトと言える演奏です。テーマ後サックスアンサンブルを経て先発がP.P.、続くテナーが多分Jimmy Heath、その後E.D.のアルトの登場です!それにしても何でしょうかこの存在感!それまでとはスタジオ内の空気感が明らかに一変しました!他のサックス奏者と楽器の鳴り方がメチャクチャ違います!多分かなりオープニングの広いマウスピースと硬めのリードを使っていると思われますが、個性的という言葉では片付けきれないユニークな音色と強烈な倍音、誰も真似のできないオリジナリティの塊のアドリブ・ライン、でも間違いなくジャズの伝統に確実に根ざしたスインギーなスタイルです。異端でありながらも正統派、これこそ僕の理想です。ソロの構成、ストーリー展開もアンビリバボーな位バッチリです!他のサックス奏者たちは演奏中のE.D.をさぞかしガン見していたに違いない事でしょう、「何だこのEricの演奏は?一体ここで何が起こっているのだろう?」と。ピアノのバッキングとの合わなさ加減も物凄いです!E.D.まだソロが続きそうな感じでしたがコーラス数が決まっていたのでしょう、バリトンソロが始まります。でもこんな演奏の後にソロを取るP.A.、とてもやりにくかったに違いありません。 11曲目ラストを飾るのはStan Kenton(S.K.)のオリジナルArtistry In Rhythm。「リズムの芸術」と訳されますが、S.K.の生涯にわたるテーマ、Artistry〜シリーズの1曲です。僕も原信夫とシャープス&フラッツのコンサートで、この曲のBenny Golsonアレンジを毎回演奏していました。P.P.は52年にS.K.のビッグバンドに参加していた事があるのでこの曲を取り上げたのでしょう、ユニークな選曲です。本作中最もビッグバンドに近いアレンジに聴こえます。P.P.の後にはD.G.が朗々とソロを取ります。

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2018.03.09 Fri

Ringo Starr / Sentimental Journey

今回はThe Beatlesのドラマー、Ringo StarrがThe Beatles解散後に初めて発表した作品「Sentimental Journey」を取り上げてみましょう。 1970年3月27日リリース Apple Label  Producer : George Martin 1)Sentimental Journey 2)Night And Day 3)Whispering Grass(Don’t Tell The Trees) 4)Bye Bye Blackbird 5)I’m A Fool To Care 6)Stardust 7)Blue, Turning Grey Over You 8)Love Is A Many Splendoured Thing 9)Dream 10)You Always Hurt The One You Love 11)Have I Told You Lately That I Love You? 12)Let The Rest Of The World Go By 全曲Ringo Starrのボーカルをフィーチャーしたスタンダード・ナンバー集です。本業のドラムスは一切演奏していません。今までこのBlogではジャズメンの作品しか取り上げなかったのに何故?しかもRingo Starr?と思われる方もいらっしゃると思います。確かにこの作品は純然たるジャズアルバムでは無いかもしれません。またRingoのボーカル自体も決して上手いとは言えず、1oo歩譲って味のある歌いっぷり、と言うのも難しいところです。The Beatles時代のBoys、I Wanna Be Your Man、Matchbox、Honey Don’t、Act Naturally、What Goes On、Yellow Submarine、With A Little Help From My Friends、Don’t Pass Me By、Good Night、 Octopus’s GardenこれらのRingoフィーチャー曲での微妙なピッチ、あまり声の出ていない、リズムが多少ルーズな、歌詞を棒読みする傾向のある、声の抑揚の希薄な歌い方は他のThe Beatlesのメンバーの圧倒的な歌唱力と比べてはいけないのかも知れませんが、人間の耳というのは適応力、慣れがあるものでRingoの歌には他のメンバーには無い「癒し」を見出して彼のボーカルを好意的に聴いているような気がします。 実は僕はThe Beatlesの大ファンです。小学校6年生の時に生まれて初めて買ったLPが「 Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」でした!数年前に全作品のデジタル・リマスター盤がリリースされて以来、その音質の素晴らしさ(レコードや従来のCDでは聞こえなかった音が聞こえるのです!しかもごく自然に!)にThe Beatlesのサウンドを再認識して日常的によく聴いているのですが、「Let It Be」以降解散してからの各メンバーのリーダー作品はこの「Sentimental Journey」を除いてあまり聴く機会がありません(とは言えたまには聴いていますが)。The Beatlesの諸作はJohn Lennon、Paul McCartney、George Harrison、Ringo Starr4人の個性が絶妙なバランス感、ブレンド感を伴って崖っぷちぎりぎりで成り立っている凄みを聴かせてくれますが(特にラストアルバム「Abbey Road」の素晴らしさは崩壊直前の美学!)、各々のリーダー作品にはどうしても物足りなさを感じてしまいます。作品の色が個人芸に由来するモノトーンなのが最大の原因でしょうか?人間の個性が合わさった相乗効果で1+1以上の効果をもたらす、The Beatlesの場合は4人の音楽性が時に計り知れない化学的反応をもたらしています。「Sentimental Journey」を贔屓にするにあたり、「お前は上手いプレイヤーか、味のある演奏が聴ける奏者の作品しか聴かないんじゃなかったのかい?」と言われるかも知れません、その傾向が無い訳ではありませんが、この「 Sentimental Journey」ではRingoの唄に癒しを見いだしつつ、バックを務めるGeorge Martin Orchestraの実に素晴らしい職人芸サポート演奏、そして何より全12曲各々アレンジャーが異なり(とってもお金が掛かっています!)、12人が腕によりを掛けてRingoをバックアップすべく素晴らしいビッグバンド・アレンジを競って提供している点に堪らなくワクワクしてしまうのです。 この作品のジャケット写真はRingoが少年時代住んでいたLiverpoolにあるThe Empress pubの建物写真にコラージュを施しています。 ジャケット写真と作品の内容の関わり具合が絶妙です。40~50年代のビッグバンドジャズが華やかし頃の雰囲気がほのぼのと伝わってきます。建物の写真がピサの斜塔のように若干斜めにレイアウトされているのもユーモラスです。そもそもがRingoのお母さんに「あんたは良い声をしてるんだからさ、私の好きなスタンダード・ナンバーばかり歌ったアルバムでも作ってみたら」と促されてのがきっかけでこの作品が録音されました。「気持ち良く歌えたので、この作品なら母親でも楽しめるだろうね」と発言しており、詰まるところ大好きなお母さんElsie Starkeyに捧げられた作品なのです。Ringoは子供時代に母親が良く聴いていたスタンダード・ナンバーを一緒に耳にしていたので、スタンダード・ナンバーは彼の音楽的ルーツなのでしょう。The Beatles解散直後に一度原点に戻った形です。 それでは収録曲を見て行きましょう。録音全体でRingoのボーカルが引っ込み気味なのは気のせいでしょうか。通常ボーカリストの作品はボーカルが全面的に前に出ているものです。エレクトリック・ベースのコーニーな音色がこの時代のサウンドを物語っていますが他の楽器の音色は現代でもさほど変わりません。ビッグバンド演奏はGeorge Martin 率いる彼のOrchestra、George MartinはThe Beatlesの諸作を殆ど全てアレンジしたバンドの立役者です。でも彼以外オーケストラ・メンバーのクレジットがジャケットに一切ない事にも時代を感じさせ、バックバンドはひたすら裏方感が半端ないです。そう言えばThe Beatles時代の「White Album」収録曲George Harrisonの名曲While My Guitar Gently Weepsで聴かれるEric Claptonの素晴らしいソロ、彼の名前はレコードジャケットの何処にもクレジットされていません。レコード発売当時はGeorge自身がソロを取っていると思われ、彼もギターが上手くなったな、と評判が立ったらしいです(爆)それとも英国という国は、作品のリーダーと重要なメンバー以外はクレジットしないことが常識なのでしょうか。米国の方は権利の国なので演奏者のクレジットは徹底して記載されています。 1曲目表題曲のSentimental Journey、アレンジは以降Ringoの「 Good Night Vienna」等をプロデュースする事になったRichard Perry、のどかな米国南部の雰囲気を醸し出しています。ストリングスの使い方、バスクラやバリトンサックスが効果的に用いられています。 2曲目Cole PorterのNight And Day、アレンジャーはキューバ出身のChico O’Farrill。ジャズテイスト満載の素晴らしいアレンジです。ブラスセクション良く鳴っています!ダイナミクスも徹底しています。ドラマーのグルーヴ、フィルインがBuddy Richを彷彿とさせるテイストでこちらもとってもグー!Ringoも気持ち良く歌っているのが伝わります。ピックアップから始まる間奏のテナーソロもご機嫌なのですが、明らかにフェイドアウトで強制終了されているので、こちらにも伴奏者の裏方感を感じてしまいます(泣)。 3曲目Whispering Grassのアレンジはご当地英国出身のRon Goodwin、ストリングスの使い方が絶妙でゴージャス、多分数々の映画音楽を手がけているのでしょう。この曲は米国のコーラスグループThe Plattersの演奏が有名ですが、Duke Ellingtonも取り上げているそうです。 4曲目Bye Bye Blackbirdのアレンジは英国出身の男性コーラスグループBee Geesのメンバー、Maurice Gibb。バンジョーを生かしたNew Orleans仕立てから始まり、ストリングスやブラスセクションを次第に重ねてサウンドに重厚感を持たせています。エンディングはキーを半音上げてドラマチックに終えています。 5曲目はカントリー&ウエスタンの名曲I’m A Fool To Care、アレンジャーはThe Beatlesとも馴染みの深いベーシストKlaus Voormann。ストリングスやブラスセクションの使い方もオシャレですが、どうもこの作品のストリングスとブラスセクションは同一人物がアレンジを施しているように感じます。ということはGeorge Martinが各曲のアレンジャーのアレンジの意向を踏まえ、最終的なアレンジのまとめ役を引き受けているのでは、と。 6曲目Hoagy Carmichaelの名曲Stardust、アレンジャーはPaul McCartneyとクレジットされていますが、EMIの資料ではGeorge Martinとなっており、Paulは何らかのアレンジのアイデアを提供し、George Martinが同様にまとめたと推測されます。星屑をイメージしたエンディングのグロッケン?の使い方辺りはPaulのアイデアではないかと想像していますが、実際のところはどうでしょうか。 レコードでは以上がSide A、B面に入った7曲目はこの作品中最もジャズ度の高いアレンジ曲、ハイライトと言えるBlue, Turning Grey Over You。アレンジャーは数々の名アレンジを世に送り出したOliver Nelson。素晴らしいアレンジにメンバー一同インスパイアされGeorge Martin Orchestra大熱演、張り切ってます!トランペットセクションのハイノート素晴らしい!後からボーカルをオーバーダビングしたRingoもバンドの演奏に惚れ込んでかスインギーな歌を聴かせています。この曲はGeorge Martinのアレンジが介入せずOliver Nelsonのアレンジ一本と思われ、当時の彼のアレンジの特色である8分の12拍子での低音パターンが聴かれます。ドラマーもグイグイとバンドを引っ張り(の割には演奏がだんだんと遅くなっていますが)、Buddy Richが現代的になったようなフレージングを叩きまくっています!エンディングにはRingoがご愛嬌でスキャットを聴かせています。 8曲目はLove Is A Many Splendoured Thing、「慕情」はアカデミックなQuincy Jonesのアレンジが光ります。全体的なサウンドの密度、アンサンブルでの楽器の使い方、重ね方にQuincyならではのマジックを感じます。この曲でもGeorge Martinはアレンジの介入はしていないように思います。Ringoの声よりもコーラスの声の方が大きくミックスされているので、Ringoを中心としたコーラス・アンサンブルのような聴かせ方になっており、Ringoの歌のウイークポイントをうまい具合にカモフラージュしています。 9曲目Dream、Johnny Mercerの名曲です。アレンジはGeorge Martin自身によるものです。こちらは曲のキーを低く設定してRingoの中音域〜低音域の声を多重録音しているので、濃密な囁き声という雰囲気でのボーカルを聴かせています。ブラスセクションの生かし方、鳴らし方がさすがGeorge Martin、良く分かってらっしゃる。 10曲目You Always Hurt The One You Love、アレンジは英国出身のサックス奏者John Dankoworth。間奏のアルトソロもアレンジャー自身によるものです。この曲でのホーンアレンジ、George Martinよりもジャジーなテイストを感じさせるので多分Dankoworthによるものでは、と推測されます。リズムのパターンがいかにも60~70年代風で懐かしいです。 11曲目Have I Told You Lately That I Love You? アレンジは米国出身の映画音楽作曲家Elmer Bernstein、Leonard Bernsteinとは同姓で同じユダヤ系移民出身ですが血縁関係はなかったそうです。でもお互い友人関係だったのは有名な話です。ポップで軽やかなアレンジは随所にスパイスを効かせており、聴いていて思わず笑みが溢れてしまいます。Ringoの声質によくマッチした曲想です。 12曲目Let The Rest Of The World Go Byは1919年の曲で、古き良き米国の雰囲気が伝わります。アレンジャーは英国出身の作編曲家のLes Reed。曲想に合致した優しい優雅なアレンジに仕上がっています。

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2018.03.05 Mon

Sonny Side Up / Dizzy Gillespie, Sonny Rollins, Sonny Stitt

今回はDizzy Gillespie、Sonny Rollins、Sonny Stitt3人の共同名義による作品「Sonny Side Up」を取り上げましょう。実質的なリーダーはGillespieですがテナー奏者2人に思いっきり演奏させています。 1957年12月19日Nola Recording Studio, NYC  tp,vo)Dizzy Gillespie ts)Sonny Rollins, Sonny Stitt p)Ray Bryant b)Tommy Bryant ds)Charlie Persip prod)Norman Granz  Verve Label 1)On The Sunny Side Of The Street 2)The Eternal Triangle 3)After Hours 4)I Know That You Know モダンジャズ黄金期の57年12月にニューヨークで録音されています。時期や場所的に悪いものが録音されるわけがないのですが、これは飛びっきり極上な出来栄えです!トランペット、テナーサックス2管、ピアノトリオのSextetでの演奏です。 この作品のレコーディング8日前、12月11日にやはりDizzy Gillespieが「Duets」という作品を録音しています。正式には「Dizzy Gillespie With Sonny Rollins And Sonny Stitt / Duets」というタイトルで、ジャケ写に3人並んでの演奏風景、リズムセクションのメンバーが同一な上に、国内盤のタイトルが上記とは若干異なり3人のクレジットが並列になっているので、てっきり「Sonny Side Up」同様にSonny2人の壮絶なバトルを聞くことが出来るアルバムかと思いきや(勿論レコード会社もそのあたりを狙ったのでしょうが)、2曲づつRollinsとStittを迎えてQuintetで演奏しており、残念なことに2人のSonnyの共演はありません。ですのでこのジャケ写は「Sunny Side Up」録音時撮影のものと推測されます。 このレコーディングの出来が思いのほか良かったので、Verve LabelのプロデューサーNorman GranzがGillespieに「Dizzy、じゃあ今度は2人のSonnyと一緒に演奏するのはどうだ?あいつらにバトルをやらせるんだよ!」と話を持ち掛け「ついでにSonny繋がりでOn The Sunny Side Of The Streetも演奏したらどうだろう?Dizzyのレパートリーにあるだろ?そう来ればアルバムのタイトルもSonny Side Upなんて面白そうだな!ダジャレだけどね!」そこまで具体的に提案したのかどうかまでは分かりませんし(笑)、逆にもともと2人の Sonnyとセクステットで録音する企画があり、そのリハーサルを兼ねたレコーディングが「Duets」だったのかも知れません。しかしジャズという音楽はメンバーの人選によりケミカルな作用が働くもので、2人のSonnyの壮絶なバトルがジャズ史上に残る名演を産み出しました。必ずしも「対抗意識」というのは良い結果を生み出すとは限りませんが、2人のSonnyの場合は見事に功を奏しました。 実は「Sonny Side Up」録音の前日、12月17日にもGillespieはスタジオ入りして彼名義のアルバムを録音しています。The Dizzy Gillespie Octet「The Greatest Trumpet Of Them All」 Verve Label 同じスタジオで同一メンバーのリズムセクション、音楽監督にBenny Golsonを迎えてtp,tb,as,ts,bsの5管編成から成るOctetでのレコーディングです。Benny Golsonのゴージャスで品格のあるアレンジにより美しいアンサンブル、リラックスした演奏を聴く事ができます。加えてミディアム・テンポが中心の演目が更に優雅な雰囲気を醸し出しています。翌18日に行われる火の出るような白熱したセッションの予感など微塵もありません。 Benny Golsonのアレンジですが、僕が在籍したビッグバンド「原信夫とシャープス&フラッツ」にかなりの曲数のGolsonアレンジによるビッグバンド譜面がありました。僕自身も随分とその譜面を元に演奏しましたが、何れにもGolson流の美意識が沸々と感じられ、同時にジャズの伝統に根ざしつつも何か新しいテイストを加味しようとするチャレンジ精神、情熱、それらを踏まえた上でのジャズへのリスペクト、愛情、シャープスで演奏していて毎回堪らなくワクワク感を抱かせてもらえました。 さて「Sonny Side Up」に話題を戻しましょう。57年12月はGillespieの仕事で忙しかったレギュラートリオのメンバー、ピアニストRayBryantとベーシストTommy Bryantは兄弟ですが( Tommyが兄)、この2人には更にドラマーのLen Bryantがいるそうです。兄弟でピアノトリオを組めるなんて楽しそうですね。更にギタリストKevin Eubanks、トランペッターDuanne Eubanks、トロンボーン奏者Robin Eubanksの3兄弟はRay Bryantの甥っ子達だそうです。優れたミュージシャンを大勢輩出したジャズ家系です。 「Duets」の2人のSonnyの演奏はいつもの彼らの水準値での演奏を聴くことが出来ます。言ってみれば並、例えれば松竹梅の「梅」の演奏ですが、「Sonny Side Up」での2人の演奏のクオリティは全く異なります。特上や「松」どころではない、全く別物と言える熾烈なインプロヴィゼーションの戦いが聴かれます。推測するに「Duets」録音時には2人のSonnyの共演は決まっていなかったという気がします。バトルが決まっていたのならその時点で2人のSonnyはお互いを意識して既に「松」クオリティの演奏を展開していたように思えるからです。 「Hi, Sonny, 12月18日火曜日にもDizzyのレコーディングを企画したので宜しく。リズムセクションのメンバーは同じだけど2人のバトルを予定しているからね、盛り上がってくれよ、僕も楽しみにしているから」とプロデューサーのNorman Granzが「Duets」の録音後に口頭で2人に伝えたのかどうか知る由もありませんが、2人のSonnyはどんな気持ちで18日レコーディング当日まで過ごしたのかを想像するのも面白いです。Stittの方がかなりナーバスに過ごしたのではないかと感じてしまうのは、対抗意識を剥き出しにしてレコーディングに臨んでいるからです。Stittは24年2月2日生まれでこの時33歳、一方のRollinsは30年9月7日生まれで27歳、しかもRollinsは56年「Saxophone Colossus」以降57年「Sonny Rollins, Vol.2」「Newk’s Time」「A Night At The Village Vanguard」と名盤を量産していた時期でまさに飛ぶ鳥を落とす勢い、Stittの方もコンスタントに作品をリリースしていましたが何しろ6歳年下の若造に負けるわけにはいかない意地を感じさせます。Rollinsは先輩格のStittとのおそらく本格的な共演は初めてなので、身の引き締まる思いでレコーディングに参加しましたが委細構わず、処処に臆する事無く、泰然と構えて演奏しています。この当時神がかったかの如くジャズのスピリットの化身のような演奏を繰り広げる時がありましたが、ここでは間違いなくジャズの神が降臨しています! 2人の演奏スタイルについてですが、基本的に2人共Charlie Parkerの影響下にあり、Stittはそれを貫き通しつつも自己の語法を確立しています。ただ僕には彼の吹く内容が全てフレーズに感じてしまうのです。端的に述べるならばフレーズという手持ちのパズルのピース、断片を組み合わせてアドリブをしている、Stittの所有するパズルのピースは半端ない数なのでそれはバリエーションに富んでいるのですが、結局のところ全てが予定調和で終わってしまっているように聴こえます。箱庭の中での造作を楽しんでいると言うか、ジャズという音楽の様々な要素の中で「意外性」は特に大切だと思うのですが、Stittの演奏には破天荒さは期待できず、なのでハズレはないのですが大当たりもありません。僕は些かStittに対し厳しすぎる評価を下しているかもしれませんが。一方RollinrsはParkerの他テナーサックスの先達Ben Websterや Coleman Hawkinsにも多大な影響を受けつつ自己のスタイルを確立させています。メロディを発展させることをアドリブの基本に、極太でコクのある倍音豊かなテナーサックスの王道を行く音色で、ジャズ史上最も1拍の長い音符で演奏する奏者の1人として豪快に、スポンテニアスさを根底に、型にはまらなさを最大の武器としてソロを展開させ、Rollins向かう所敵なしを印象付けています。 1曲目On The Sunny Side Of The Street、明るいハッピーな曲想はオープニングに相応しいかもしれませんが、2人のSonnyは水面下で既に火花が散っています。ソロの先発はStitt、軽快なフレージングで切り込み隊長を務めます。Stittはアルトサックスも演奏しますが、アンブシュアが両方の中庸を行っているようで、アルトがそのまま低くなったテナーの音色に近く聴こえます。タイム感も少し前気味で1拍の長さがRollinsに比べると少し詰まり気味です。それでも巧みなジャズフレージングのショウケース、舞の海関状態のフレーズのデパートの観を呈しているので聴き手に訴えかけます。Gillespieのミュート・トランペットによるソロを経てRollinsの出番です。この圧倒的な存在感、腰の据わり方、ゴージャスさ、ソロの構成の巧みさ、フレージングの始まる位置のジャズっぽさ。Stittは4小節単位のアタマからフレージングが始まっていますがRollinsは必ずアウフタクト(弱拍、弱起)から始まっています。ラストはGillespieのボーカルをフィーチャーして大団円でFineになります。 2曲目が本作のハイライト、アップテンポ♩=300でサビのコード進行が変則的なStitt作曲のリズムチェンジ・The Eternal Triangle、「永遠の三角関係」ではないですね、2人のSonnyのタイマン対決です!ソロの先発今回はRollinsから。Rollinsが5コーラス、続くStittが8コーラス(長い!)、4小節交換が3コーラス、8小節交換が3コーラスの合計19コーラスをテナー奏者たちが演奏しています。イヤー何度聴いても凄いです!聴く度に凄さが身体に沁み入って笑いさえ出てしまいます!テンポが早いほどRollinsのリズムのたっぷり感が浮き出てきており、Stittもon topですがタイムに対して安定感を伴ったリズムで吹いています。テーマが終わった後トランペットの吹き伸ばしがあり、暫くしてからRolinsのソロが始まっているのは誰が先発かを決めていなかったからなのかも知れません。ソロの3コーラス目にGillespieとStittによるバックグラウンド・リフが演奏され、その後4コーラス目の最後あたりにGillespieが発する、Rollinsの素晴らしいソロに対しての感極まった声を聴くことができます。大変な集中力を伴ってはいますがRollinsとしては6~7割の余裕の力で演奏している感じです。Stittに変わった途端にタンギングの滑舌、音符の長さ、タイム感が一変します。音色がRollinsよりもホゲホゲした成分を感じるのはStitt頬を膨らませて吹いているので、こもった成分が音色成分に混じるためでしょう。Stan Getzの音色にも同様の事柄を見出すことができます。ソロの4コーラス目にバックリフが入りますがその後もStittソロを4コーラス続けており、終わりません!まるで意地になって「オレはこいつには負けんぞ!」と言っているかのようです。 Stittのソロ後Rollins先発で4小節バースが始まります。出だしの部分Rollinsがスネークインして入って来るのはマイクロフォンから離れていたのでしょう、Stittのロングソロにすっかり待たされました。しかし丁々発止とはまさにこの事、とんでもないやり取りの連続です!4小節バース2コーラス目から3コーラス目に入る時のスムースさがまるで1人で吹いているように聴こえます。そしてここからがStittの負けず嫌いの本領発揮なのですが、ごく自然にバースの主導権を握るべく先発に入れ替わり、倍の長さの8小節交換を始めます。この後さらにヒートアップ、StittはRollinsのフレージングにとことん対応していますがRollinsは自分のペースをキープしています。こういうバトルの時にフレーズをたくさん持っているプレイヤーは飛び道具に事欠かないので、対応しつつRollinsに仕掛けています。8小節交換の2コーラス目で一瞬終わりかけの雰囲気になりましたが、主導権を握るStittまだ続けます。いよいよ3コーラス目の最後にRollinsが「Sonny、もう止めようよ、だってこの録音はDizzyのじゃないか、Sonnyは自分のソロでもさっきずいぶん長くやってるんだよ、バースまでオレらがこんなに長く演奏してはマズイよ」と言わんばかりにオシマイのフレーズを吹き、やっと戦いは終わりました。リズムセクションも大変な長丁場、さぞかしホッとしたことでしょう、お疲れ様でした(笑)。

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2018.03.01 Thu

Joe Carroll / Joe Carroll

今回は男性ボーカリストJoe Carrollの1956年録音のリーダー作「Joe Carroll 」を紹介しましょう。日本盤(Epic/Sony)では「Joe Carroll with Ray Bryant(Quintet)」というタイトルで発売されました。恐らくJoe Carrollという名前だけでリリースするにはリーダーの知名度が低かったために参加有名プレイヤーの名前を抱き合わせした形でのリリースですが、残念なことにRay Bryantは伴奏に徹しており、同じピアニストHank Jonesと演奏を分け合った事もあって本作中、冠を記すほど特別な存在ではありません。この作品が国内発売されたのが74年、Ray Bryantの名ソロピアノ作品「Alone At Montreux」が72年7月録音、同年末に発表され翌73年には大ヒットしているのでその翌年、当時の絶大なBryant人気に肖り柳の下のドジョウをアテにしたタイトル付けなのでしょう。でも米本国の制作者サイドとは異なるタイトル付けに「余計なことを…」とジャズファンとしては感じてしまいます。 何はともあれ、最高にハッピーなボーカル作品です。元気の無いときに聴くべき精力剤のようなアルバムです(笑) 1)Between The Devil And The Deep Blue Sea 2)Qu’est-Que-Ce 3)It Don’t Mean A Thing If It Ain’t Got That Swing 4)Route 66! 5)St. Louis Blues 6)School Days 7)Jump Ditty 8)Jeepers Creepers 9)Oo-Shoo-Bee-Doo-Bee 10)Oh, Lady Be Good 11)One Is Never Too Old To Swing 12)Honey Suckle Rose vo)Joe Carroll p)Ray Bryant, Hank Jones b)James Rowser, Milt Hinton, Oscar Pettiford ds)Charles Blackwell, Osie Johnson ts)Jim Oliver tb)Jimmy Cleveland, Urbie Green 1956年4月6日、5月1日、18日NYC録音 Epic Label Joe Carrollは素晴らしいジャズシンガーです。歌唱力はもちろんのことタイム感、スイング感、声質、スキャット、そして何よりユーモア、エンターテイナーとしてサービス精神が旺盛で聴き手をしっかりと捉えて離しません。実はこのアルバム、僕が尊敬するボーカリストの一人、チャカ(安則眞美)に紹介して貰いました。Joe Carrollは彼女の歌いっぷりに通じるところがあり、ボーカリストとはかくあるべきだ、と感じさせてくれて未だに愛聴しています。 Joe Carrollは「ジャズ面白叔父さん」(笑)トランペッター、ボーカリストDizzy Gillespieのバンドに49年から53年にかけて5年近く参加していた経緯があり、Gillespie譲りのユーモア精神、スキャットの巧みさをここで徹底的に学んだのでしょう、特にスキャットのフレージングにGillespieライクなBe-Bop的節回しが感じられます。56年とは時代的に俄かには信じられないようなグルーブがとても心地よいボーカルのスイング感を聴かせ、本人これだけリズムが良ければダンス、タップダンスもさぞかし上手かったのではないか、ともイメージさせますがyoutube映像(クリックして下さい)を見る限り特にその芸風はないようです。男性ジャズボーカリストの第一人者、Jon Hendricksもスキャットや自身でインストルメンタル・ナンバーに歌詞をつけて歌うボーカリーズも手がけ、その巧みな技には感服してしまいますが、スキャットのフレージングのボキャブラリー、意外性、グルーブ感、スピード感は本作のJoe Carrollに軍配が上がります。またエンターテイメント系ボーカリストとしてMinnie The Moocher(映像が見られます)で有名なCab Callowayの存在も見逃すわけにはいきませんが、Cab Callowayはボーカリストというよりもよりエンターテイナーとしてステージングをこなしているようですし、Frank Sinatraや未だ現役最高峰のMel Tormeらは特にスキャットは行わず(というかスキャットを行わなくてもストレートな歌いっぷりだけで完璧に自己を表現しています)、声質、歌い回し、スキャット、その滑舌の良さ、タイム&グルーブ感、エンターテイメント性それらをトータルとして僕自身が最も好みの男性ボーカルの一人、そしてその作品としてこの「Joe Carroll」が不動のものになっています。 Joe Carrollは1919年11月25日Philadelphia生まれ、このレコーディング時は36歳で地元のクラブやローカルバンドでの演奏を経てその後Gene Krupa楽団、前述のGillespieバンドでの経験を生かしてこの初リーダー作に臨みました。 彼は生涯3作自分の名前を冠した作品をリリースしているらしいのですが(3作目については詳細不明です)、「Joe Carroll」の恐らく次作が「Man With A Happy Sound」 62年リリース Charlie Parker Label org)Specs Williams g)Grant Green p)Ray Bryant ts)Connie Lester ds)Lee Ausley 1)Get Your Kicks On Route 66 2)Oh Lady Be Good 3)Don’t Mess Around With My Love 4)Wha Wha Blues 5)Oo-Shoo-Be-Doo-Be 6)Honey Suckle Rose 7)I Got Rhythm 8)Bluest Blues 9)Have You Got A Penny Benny 10)New School Days 11)On The Sunny Side Of The Street 12)The Land Of Ooh Bla Dee 収録曲を見てお気付きになった方もいらっしゃるかも知れません。収録12曲中5曲が前作と同一です。それらに全く新しいアレンジを施しているのならともかく、聴いてみると若干手直しした程度で雰囲気は同じです。一体どう言う事でしょうか?考えられるのはアルバム「 Joe Carroll」がヒットしたためにオーディエンスはまた同じ曲を聴きたがる、例えばドラマー&ボーカリストつのだ☆ひろさんが自己のバンドのライブ時に自身の作曲にして名曲、大ヒットナンバーMary Janeを聴くまではお客様が絶対に帰らない(笑)、この事とは違いますね、失礼しました(爆)。もう1つ考えられるのは前作発表後自身のレパートリーを増やしておらず、レコーディングと言う美味い話が舞い込んだにも関わらず「曲が無いから前に吹き込んだ曲をやっちゃおうぜ!」と言う安易なノリでレコーディングに臨んだのではないかと言う点です。今回参加のオルガンの音色がアルバム全編に支配的でどの曲も同じような単調さを感じさせているのも頂けません。60年代半ば頃から急速に彼の人気が下落したらしいのでそのことからも十分に考えられるのですが、お客様を大切にしない芸人から人は離れて行きます。初リーダー作の成功に甘んじず更なる精進を重ねてこそのジャズミュージシャンです。アルバム「Joe Carroll」のフレッシュさ、勢いを「 Man With 〜」に感じることは出来ません。逆に言えばそれだけ「Joe Carroll」の素晴らしさが際立っています。 本作を曲ごとに見ていきましょう。1曲目Between The Devil And The Deep Blue Sea、邦題を絶体絶命、Joe Carrollの先輩格Cab Calloway、Louis Armstrongがレコーディングしてヒットさせました。Jimmy Cleveland、Urbie Greenのテクニシャン2人からなるトロンボーンのアンサンブル、ソロバトルが実に小気味良さを聴かせてくれます。Joe Carrollの滑舌の良さとトロンボーン奏者達のリップコントロール、タンギングの正確さに共通点を感じます。一体誰がこのカッコイイアレンジをしたのでしょうか?そして何よりJoe Carrollのドライブ感が堪りません! 2曲目Qu’est-Que-Ceはきっと随分嘘臭いフランス語で歌っているのでしょうね、Joe Carroll自分で歌って自分でウケています(爆)Joe Carrollのトークのお相手はテナー奏者のJim Oliverでしょうか。僕自身の話ですが、昔20代の駆け出しの頃に銀座のデパートの屋上でアゴ&キンゾー(皆さんご存知ですか?)ショウの伴奏を務めた時に、二人のトークのあまりの可笑しさに笑い過ぎて楽器を吹く事が出来なかった事を思い出しました。 3曲目It Don’t Mean A Thing If Ain’t Got That Swing、ご存知スイングしなけりゃ意味ないね、こちら2トロンボーン・プラス・テナーサックスのアンサンブル、それに絡むボーカルが堪りません!スピード感満点のBe-Bopスキャット、テナーサックス、ピアノ(Ray Bryant)、トロンボーンのソロバトル、アレンジ、どれも秀逸です。 4曲目Route 66!、多分Joe Carrollが歌いながらフィンガースナップや手拍子をしています。それにしてもスキャットをこんなに巧みに出来たらさぞかし楽しいでしょうね!16分音符満載の早口言葉ショウケースです! 5曲目St. Louis Blues、再び2トロンボーンのアンサンブルが大活躍のアンサンブル、Joe Carrollのスキャットも更に熱いです!途中It Might As Well Be Springのメロディを引用して高速でサラッと歌っている辺り、仕事人ですね!作品中2トロンボーンを生かしたアンサンブルによる素晴らしいアレンジ、僕の推測ですがトロンボーン奏者2人のどちらかが、さもなくば2人共同でのアレンジのような気がします。 6曲目School Days、Dizzy Gillespieの演奏でお馴染みのBoogieナンバー、大ヒットしたGillespieのこちらのアルバムにはJoe Carrollも参加しています。因みにかのJohn Coltraneも別曲で参加しています。イヤイヤ、本当にJoe Carroll良く声が出ています。 7曲目Jump Ditty、ミディアムテンポのブルースナンバー。2トロンボーンのリズミックなバックリフがムードを高めています。トロンボーン2人のソロが続き、エンディングでもトロンボーン・アンサンブルが効果的に使われています。 8曲目Jeepers Creepersはお馴染みJohnny Mercer~Harry Warren、映画音楽の作詞作曲、名コンビによるナンバー、この曲が収録された映画ではLouis Armstrongが歌いました。スキャットソロの後に更に各楽器とソロトレードを取っておりJoe Carrollのスキャットを存分に堪能できます。 9曲目Oo-Shoo-Bee-Doo-Beeは個人的に特にお気に入りのナンバーです。歌詞は「ある日公園を散歩していて恋人たちの会話を耳にしたんだけれど、今時の恋人たちは”I love you”なんて言わずに”Oo-Shoo-Bee-Doo-Bee”ってお互いに囁き合うんだよ」ワオ!面白過ぎです!Shoo-Bee-Doo-Bee means that I love you、ゴキゲンです!Joe Carrollの歌にハーモニーを付けて歌っているJim Oliver、コーラスの後すぐにソロをとっていますが多分、笑いを堪えていたためか1’32″辺りでテナーの音がひっくり返っています。 11曲目One Is Never Too Old To Swingってとっても良いタイトルですね。自分の演奏にしっかりと当て嵌めたいです(笑)。リズムセクションのアレンジもイカしています。 12曲目Honeysuckle Rose、テーマの歌の後ろでコード進行が同じためかScrapple From The Appleのメロディを2トロンボーンのユニゾンで吹いています。音量を控えめに吹いているのでバックリフのようにも聴こえ、うまい具合にブレンドしています。これも多分トロンボーン奏者たちの発案でしょう、面白いです。  

2018.02

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2018.02.15 Thu

Omerta / Richie Beirach and Dave Liebman

今回はピアニストRichie Beirachとテナー、ソプラノ・サックス、フルート奏者Dave LiebmanのDuo作品「Omerta」を取り上げたいと思います。 p)Richie Beirach ts,ss,alt-fl)Dave Liebman recording engineer)Dave Baker 1978年6月9, 10日録音 at Onkio Haus, Tokyo, Japan 日本のTrio labelから同年リリース、94年にデンマークのStoryville labelからCDで再発されました。 1)Omerta 2)On Green Dolphin Street 3)3rd Visit 4)Eden 5)Spring Is Here 6)Cadaques 7)To A Spirit Once Known 8)In A Sentimental Mood Richie Beirach、Dave Liebmanの2人は60年代末からコンスタントに、時折付かず離れずの距離を置きつつも演奏活動を継続的に行っています。50年近くも音楽的時間を共有出来ると言うのは今どき夫婦間でも(であればこそ?)難しい長さに違いありません。Duoの他にもDave Liebman Band、Look Out Farm、Questと言うバンド活動も並行して行っています。同じくピアノ、サックス奏者でHerbie Hancock、Wayne Shorterの2人は更に長い55年以上の共演歴になりますが、永きに渡り共演者としての関係を保持するにはそれなりの条件が必要です。2人のパーソナリティの相性、人間性のリスペクト度合い、どれだけ価値観の共有を保てるか、お互いの演奏に音楽的な魅力を感じ続けることが出来るか、そして音楽的成長が同期しているか、です。Beirach、Liebmanの2人は初期から高い音楽性と以後一貫する音楽的会話の語法、方法論を聴くことが出来ます。Liebmanのリーダー作「First Visit」1973年6月20,21日東京録音 ts,ss,fl)Dave Liebman p)Richie Beirach b)Dave Holland ds)Jack DeJohnette 同年日本フォノグラムよりリリース。 この作品に収録されているRound About Midnightが彼らDuoの初録音、そして以降の演奏の萌芽を聴く事が出来ます。Liebmanのダークで豊富な倍音を含んだトーンによる危ない変態系(?)メロディラインに対して、Beirachは他の追従を許さない美しいタッチによる複雑にして緻密なコードワークで、瞬時に対応し続けるのが特徴です。因みにこの時LiebmanはMiles Davis Band(アルバムOn The Cornerの頃です)で、Beirach、Holland、DeJohnetteのリズムセクションはStan Getz Quartetでの演奏のために来日中でレコーディングが実現したそうです。 91年にドイツからCDで再発されましたが、その際のジャケットのセンスがあまりに酷いです。この当時の(ひょっとしたら現在も)欧米人は日本と中国、台湾(多分韓国も含む)の区別がついていません。 「Omerta」もBeirachは初ソロコンサートのために3度目の来日、Liebmanは何とChick Corea Bandに参加してのやはり3度目の来日で録音が実現しました(余談ですがCoreaとの共演はこの時のツアーのみで最後は険悪な雰囲気で決別したと、彼の自伝に書かれています)。70~80年代にはこのような形で多くの海外ミュージシャンによる国内レコーディングが行われていたようです。この作品を素晴らしいクオリティで録音した2人の盟友にして名エンジニアDave Bakerは、このレコーディングのためだけにアメリカから来日したのかどうか定かではありません。 二人は現在までに7枚以上のDuo作品をリリースしています。「Omerta」は第2作目、 第1作目は75年11月18~20日NY録音、翌76年リリース「Forgotten Fantasies」Horizon label 裏ジャケ写真の2人の笑顔からレコーディングの出来栄えの充実ぶりが伺えます。僕自身この作品未だに愛聴盤です。それにしてもBeirach若くて可愛いですね。セーターは彼女からのプレゼントでしょうか?(笑)彼がその音楽性に反して意外とお茶目に映ったのは82年10月Quest来日のよみうりホールでのコンサート時、Liebmanが「次の曲はRichieの新曲、Dr. Coldです」と紹介した時に彼が両腕を組んで小刻みに上下に揺らし「寒い寒い!」というポーズを決めていました(笑)。Liebmanの方はあまりジョークを言わない生真面目な人と聞いています。 彼らの音楽は聴いていてハッピーになる、思わずメロディを口ずさんでリズムを身体で取ってしまう、そんなジャズのエンターテインメント性とは対極にあります。明るいか暗いかと言えばひたすら暗い音楽ですし、分かり易いかと言えば難解の極み、決してファミレスや居酒屋のBGMとして流れる事のない音楽です(笑)。聴き手自らが彼らの音楽に入って行かない限りその緻密な構造、コードの響き、美の世界を享受することは出来ません。絵画や彫刻をしっかり鑑賞したいのなら美術館に足を運び、はたまた映画館に赴き新作映画を大画面で鑑賞する能動的な姿勢が必要なように。このDuoの演奏には聴き手に「強いる」側面が前面に出ていますが、例えば二人の驚異的なタイム感の良さ、ハーモニックセンスの卓越した表現、ストイックなまでに無駄を削ぎ落としたサウンド、フレージング、ダイナミクス、そして楽器の熟練したマエストロぶり、音色の素晴らしさから「我々の音楽は分かる人にだけ聴いて貰えれば良い」とまさか面と向かっては言わないでしょうが、プライドを持って真摯に音楽に取り組む姿勢が痛烈に伝わってきます。 この作品の白眉は6曲目13’18″にも及ぶ(しかもDuoですよ)大作Obsidian Mirrors(黒曜石の鏡)。Beirachの作品、タイトルと曲想が実に合致していますね。ドラマチックな構成で時間が経つのも忘れてしまいます。この演奏を一体何度聴いたことでしょうか!Liebmanテナーのエグエグな音色、フリークトーン、必ず割れているフラジオ音(爆)、ピアニシモ時の低音サブトーンの豊かさ、一方のBeirachの聞き惚れてしまうほどのタッチの美しさ、音の粒立ちとサウンドのクリアーさ、エンディング低音域の爆発的な鳴らしっぷり!こんな風にピアノが弾けたらさぞかし気持ちが良いでしょうね、と痛感させる演奏、そして何より二人の息の合いっぷりが本当に見事です! 話を「Omerta」に戻しましょう。Beirachの解説によりこの作品、曲ごとにミュージシャンや知人、市井の人物に捧げられています。またレコード会社との契約の関係かBeirachの名前が表記上先に来ていますがいつもの対等な関係での演奏が繰り広げられています。この頃のLiebmanのセッティング、ソプラノマウスピースはBobby Dukoff D7にSelmer Metal用リガチャー、リードはSelmer Omega、番号は分かりません。楽器は多分Selmer Mark6。テナーマウスピースはOtto Link Florida Metalを9番から9 ★程度にオープニングを広げたもの、リガチャーは同じくSelmer Metal用、リードはLa Voz Med.HardかHardをトクサを使って調整していました。テナー本体は基本的にはCouf〜Keilwerthを使っていますが、海外ツアーの時にLiebmanテナーは重くて荷物になるので(汗)、渡航先で借りるというスタンスで乗り切っています。本人曰く「ピアニストはそこの店にあるどんな調整、状態のピアノでも弾かなければならないだろ?サックスも同じ事で構わないじゃないか」という、にわかには頷けない理由付けをしていますが、確かにLiebmanの映像を見るとテナーはいつも違う楽器を吹いています。彼ほど楽器を習得しているとどんな楽器、状態のものでも吹きこなせるようですね、僕には到底無理ですが(汗)。ある時はネックが緩かったのでしょう、管体との間に紙片を挟んで演奏していました。多分この時はYAMAHAから普通のラッカーの楽器を借りていたように記憶しています。 この作品が録音された78年6月に、Liebmanのサックスセミナーが故松本英彦氏が主宰するジャズスクール、ラブリーで開催されました。取るものもとりあえず学生だった僕は参加したのですが、未だにそこで受けたカルチャーショックを忘れることができません。大勢の若いミュージシャンの中に混じって松本さんも受講していましたが、終わってから「あんなに秘密を喋っちゃって大丈夫なのかな〜?」と仰っていたのが印象的でした。松本さんの物言いは可愛らしかったですから。リズムセクションは松本さんのレギュラーバンドの皆さんで、ブルースやスタンダードナンバーを演奏していましたが、テナーでキーがGのブルースにも関わらず、アドリブソロ中side keyのD#音(オーギュメント)をずっとロングトーンで吹き伸ばしているのです、しかもあのエグエグの音色で!気持ち悪いったらありませんでしたが、だんだんと耳が慣れてくると痛痒い感じから快感に変わってきました!Liebmanはとても楽器を良く鳴らしていますがラウドな感じはしません。そしてハイライトは音色を良くする、作っていくための練習として効果的なのがOver Tone(倍音)と力説し、そのデモ演奏を間近で聴くことが出来たのです。これはまさしく日本テナーサックス界に於る黒船来航です!!間違いなくセミナー参加者全員、日本人が日本で初めて触れる当時としては驚異的な奏法〜Over Tone Series(倍音列)の連続!その後僕はジャズ研の部室でOver Toneの練習を開始したのですが全然出ません!「ギャー、ボヒャー、ギョエー」という濁音系の耳に痛い音の連発です。「お前その練習うるさいからあっち行ってやってくれよ」と大不評でした(涙) Liebmanサックスセミナーの最後に彼が受講者に捧げると言う事で、無伴奏でMy One And Only Love(確か)を演奏してくれましたが、その美しさに「あ、これが本物なんだ」と体感できました。曲名はうろ覚えでもサウンド感は心に残ります。「Omerta」でもラストにSonny Rollins に捧げるべくIn A Sentimental Moodをアカペラで演奏していますが、冒頭アウフタクトでソラシレミソラ〜と行くところが何と音が裏返って上のE音が出ているじゃありませんか!もちろん故意に倍音を使って裏返しているのですが、初めて耳にした時は乗り物酔いに近い違和感を感じました。これも同様に慣れてくると無しでは済まなくなります。 Beirach、Liebmanの2人は近年立て続けにDuo作品をリリースしていますが、円熟どころの騒ぎではない境地の演奏に発展しています。久しぶりに来日公演で聴いてみたいものです。

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2018.02.02 Fri

Ella And Louis / Ella Fitzgerald & Louis Armstrong

今回はボーカリストElla Fitzgeraldとボーカル、トランペット奏者Louis Armstrongの共演アルバム「Ella And Louis」を取り上げてみましょう。1956年8月16日Hollywood Capitol Studioにて録音。Verve Records  Produced by Norman Granz vo)Ella Fitzgerald vo,tp)Louis Armstrong p)Oscar Peterson g)Herb Ellis b)Ray Brown ds)Buddy Rich 1)Ca’t We Be Friends? 2)Isn’t This A Lovely Day? 3)Moonlight In Vermont 4)They Can’t Take That Away From Me 5)Under A Blanket Of Blue 6)Tenderly 7)A Foggy Day 8)Stars Fell On Alabama 9)Cheek To Cheek 10)The Nearness Of You 11)April In Paris 記念写真のような、飾り気のないシンプルなジャケット写真です。多分レコーディングを終えた後に撮影されたのでしょう、Louis Armstrong(サッチモ)の屈託のない笑顔とオシャレな靴下の折り方が可愛いです(笑)。Ella Fitzgeraldの表情は尊敬する先輩たちとのレコーディングを無事に終えた安堵感に満ちています。 照明による二人の影とサッチモのズボン、靴の黒色。茶色い床、背景と二人の肌の色。スカートと丈の短いズボンから覗く二人の足。真夏のレコーディングなのでエラの半袖ワンピースとネックレス、サッチモのシャツ、彼の笑みから溢れる白い歯、二人の座る椅子の足の白色がさりげなく色合いの統一感を表現していますが、多分偶然の産物でしょう。茶色を基調として白と黒色、そして二人の水色がアクセントになっている事からリラックスした楽しげな雰囲気を感じさせます。 この作品ではVerve Labelの創設者でありプロデューサーのNorman Granzが11の収録曲全てを選曲しました。おそらくバックを務めるOscar Peterson Quartetの人選も彼によるものでしょう、Verve Records All Starsです。バラードとミディアム・テンポを中心とした作品ではありますが、それにしても普段はあれだけ饒舌でテクニカルな演奏を聴かせるOscar Peterson、Herb Ellis、Ray Brown、Buddy Rich4人のこの作品での徹底した伴奏者ぶりにはとても敬服してしまいます!二人の主役を的確にバックアップするべく必要最小限にして厳選された音使い、音の間を生かしたバッキング、演奏の連続。いわば完璧な引き立て役、特にRay Brown、Buddy Rich二人の「何もやらなさ振り」(よく聴けばかなり細かい事をさり気なくやっていますが)は感動的ですらあります!!プロの伴奏者はこうでなくてはいけませんね。 このアルバムが成功を収めたことにより、続編として翌57年に今度はレコード2枚組で「Ella And Louis Again」を録音し、同年発表しました。伴奏のメンバーもBuddy RichがLouis Bellsonに変わった以外は留任しています。前作を踏まえ更にバージョンアップした主役二人の演奏を聴くことが出来ます。 「Ella And Louis Again」も大成功を収めたことで、二人のコラボレーション第3作目としてGeorge & Ira Gershwinの「Porgy And Bess」を57年に録音しました。アレンジ、指揮Russell Garcia、30名以上による大編成での演奏が実現したのは前2作がさぞかしヒットしたのでしょう、翌58年8月にリリースされました。そして後年、この作品は2001年にグラミー賞の名声の殿堂入りを果たすという栄誉にも輝いています。 97年にはこの3作をCD3枚組に全てまとめ、更に2曲Hollywood Bowlでのライブ演奏を追加した「The Complete Ella Fitzgerald & Louis Armstrong on Verve 」がリリースされました。こちらは大変に凝った仕様、デザインのブックレットタイプのジャケット、丁寧な作りのライナーノートから成り、「Ella And Louis」3部作、エラとサッチモの音楽性を愛して止まないスタッフがその想いをリリースに際ししっかりと込めた感じが、痛切に伝わってきます。まるでヨーロッパのレコード会社が制作したかのような丁寧さ、細やかさです(本国アメリカのCD製作のラフさ加減には凄い時があります)CD化に際しても的確なデジタル・リマスタリング処理が行われており、ジャズ、音楽の事を良く分かったエンジニアによる、いわゆる「良い音質」で鑑賞することが出来る内容に仕上がりました。 さて話を「Ella And Louis」に戻しましょう。作品全体を通して僕が感じる事の一つに、大好きなサッチモとの共演でエラが彼を立てるべくいつもより何処か遠慮気味に歌っているという点です。普段の歌唱力よりもレベルが落ちているというのではなく、サッチモよりも自分が出ないように、目立たないように、必ず一歩退いて後からサッチモを追うかの如きスタンスで歌っている感が漂っています。そんなことをしてもエラは強力に上手いシンガーです。目立たない訳がないのですが、彼女なりのサッチモに対する敬意の表れなのでしょう。この事を僕は続編「Ell And Louis Again」「Porgy And Bess」にも感じてしまうのですが、皆さん如何でしょうか。 1曲目にCan’t We Be Friends?とはまた言い得て妙な選曲です。女性と男性の声域は通常4度違いなのですが、ここでは二人同じキーで歌っています。歌った後にトランペットを直ぐ吹くのは結構大変な作業ですが、サッチモは難なく「弾き語り」ならぬ「吹き語り」を行っています。管楽器の演奏はその人の喋り方が反映されますが、ここまで演奏と歌い方が同じ(1オクターブの違いはありますが)なのは笑ってしまうくらいに凄いです。喋っているようなトランペット、楽器を吹いているかのようなボーカルです。 2曲目Isn’t This A Lovely Day?、エラの歌はラブリー、チャーミングでいて歌唱力が優れており器楽的にピッチやタイムが完璧、更に強弱のダイナミクスを伴った安定感で聴き手にグッときます。 かなり高い音域でサッチモがミュートトランペットでソロを取ります。彼の歌による合いの手、またエラの主旋律に対するハーモニーと大活躍です。 その時代に特に流行った曲というのがあります。3曲目Moonlight In Vermont、4曲目They Can’t Take That Away From Meの2曲は50年代〜60年代初頭にかけて様々なミュージシャンに取り上げられました。They Can’t Take That Awy From Meはエラが始めに歌い、サッチモがミュートトランペットでオブリを吹いています。その後いきなりアカペラでサッチモが違うキーで歌い始めまます。ちなみにこの曲を含め作品全体を通してのイントロ、エンディングや曲の構成はVerve Records専属アレンジャー、指揮者のBuddy Bregmanが行っており、彼のさりげないアレンジがどの曲でも光っています。「Swing it, boys」とサッチモが掛け声をかけて自らソロを取り始めます。良く聴くとミュートトランペットのソロの合間にピストンを空押しする「カシャカシャ」という音が聴こえます。彼の癖なのでしょうね、きっと。この空押しの最中に次に何を吹くべきかイメージしているのです。フレージングの間にほぼ必ず聴こえるので皆さん確認してみてください。 6曲目Tenderly、7曲目(レコードではB面1曲目)A Foggy Day、8曲目Stars Fell On Alabamaもこのころ流行った曲です。Tenderlyのミュートトランペットによるメロディ奏の朴訥とした味わいから少しテンポがアッチェル(テンポアップ)してキーが変わりエラの歌になります。その後同じキーでサッチモの歌にスイッチ、引き続きリタルダンド(テンポダウン)して再びサッチモのミュートメロディ奏、その後は何とエラがサッチモを真似した歌い方でのエンディング!考え得る全てのパーツを用いた構成、演出、こんなところにもアメリカのエンターテインメントの真髄を感じてしまいます。 9曲目Irving Berlin作曲のCheek To Cheekは大好きな曲です。ここでの興味深い事柄をぜひ挙げてみたいのです。印象的なイントロとそのパターンが継続しサッチモが1コーラス丸々歌います。New Orleans生まれの彼は南部訛りがしっかり残っており、例えば2’16″に出てくるseekという単語を「ジーク」と発音しています。1コーラス丸々歌った後、エラに選手交代すべく2’25″から「Take it Ella, swimg it」と掛け声を掛けるのですが、訛っているためにそうは聴こえません。これが何とタモリ倶楽部の空耳アワーに取り上げられました!(残念ながら僕の投稿ではありません)。画像としては初老の紳士がバーでお酒と一緒に出てきたお通しのピーナッツを見て、右手で拒否の仕草をしながら「出来れば、スパゲティ」と言っているのです(笑)。ジャズ好きのタモリさんにはかなり受けていましたが、大変残念なことに最高賞のジャンパーまでには僅かに届かず、次点のTシャツに参加賞の手ぬぐいを付けるという異例の対応になりました(爆)。「Take it Ella」は「出来れば」に聴こえないことはないのですが、「swing it」はどうして「スパゲティ」に聴こえるのでしょうか。そう言えば4曲目They Can’t Take〜の「Swing it, boys」の「Swing it」も微妙な発音でしたね。 他にもサッチモの発音による空耳ネタはたくさんあるのですが、また別の機会に紹介したいと思います。

2018.01

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2018.01.30 Tue

Joe Henderson / Double Rainbow – The Music Of Antonio Carlos Jobim

今回はテナーサックス奏者Joe Hendersonの95年リリース作品「 Double Rainbow – The Music Of Antonio Carlos Jobim」を取り上げて見ましょう。 Suite  Ⅰ JOE/BRAZ/JOBIM 1.Felicidade 2.Dreamer(Vivo Sonhando) 3.Boto 4.Ligia 5.Once I Loved(Amor Em Paz) Suite  Ⅱ JOE/JAZZ/JOBIM 6.Triste 7.Photograph 8.Portrait In Black And White[A.K.A. Zingaro] 9.No More Blues(Chega De Saudade) 10.Happy Madness 11.Passarim 12.Modinha Track1~5 1994年11月5、6日Clinton Recording Studio NYC録音 ts)Joe Henderson p)Eliane Elias g)Oscar Castro-Neves b)Nico Assumpcao ds)Paulo Braga Track6~12 1994年9月19、20日Oceanway Recording LA録音 ts)Joe Henderson p)Herbie Hancock b)Christian McBride ds)Jack DeJohnette Joe Henは91年Verve Labelに移籍し、翌92年に発表した第1作目「Lush Life: The Music Of Billy Strayhorn」が同年グラミー賞を受賞し、陽の当たり辛いカルト・テナー急先鋒から太陽光燦々のメジャー路線を歩み始めました。この作品はVerve Label企画モノ+ Joe Henの第3作目にあたります。前作はMiles Davisに因んだ93年発表「So Near, So Far (Musings For Miles)」です。 こちらの作品も素晴らしい内容で、60年代Milesのバンドに一時期参加していたJoe Henならではのトリビュートです。大手レコード会社が有する企画力、その企画を推進するスタッフ、市場のニーズに対する情報収集力を駆使し、Joe Henをフィーチャーした優れた作品を製作しようと言う情熱がこの作品を含めたVerveの一連のシリーズから伝わってきます。この他の作品も挙げておきましょう。 97年リリース「Joe Henderson Big Band」 Joe Henの一連の個性的なオリジナルや、かつて録音した「Without A Song」「Chelsea Bridge」等のスタンダード・ナンバーをジャズの伝統に根ざしつつもsomething newを加味したゴージャスなアレンジ、ビッグバンドの精鋭達やJoe Hen所縁のChick Corea、Freddie Hubbard、Al Foster等の超豪華なメンバーを迎えて緻密に、大胆に演奏しており、彼のテナーサックスのエッセンスが凝縮された演奏になっています。Joe Henファンのみならずビッグバンドファンをも唸らせる内容の作品に仕上がっています。 同じく97年リリースでVerve最終作にして彼の最後のリーダー作「Porgy And Bess」 過去様々なミュージシャンがGeorge Gershwinの書いたこのオペラを取り上げていますが、ここではギターにJohn Scofield、Chaka KhanとStingをボーカルに迎え、Joe Henしか成し得ない歌劇を聴かせています。 「Double Rainbow」に話を戻しましょう。実はリリースされる前にJoe HenがBossa Novaを、Jobimの曲を演奏すると言う触れ込みを耳にし、違和感を感じました。「Bossa NovaってStan Getzのオハコでしょ?あの音色でないと雰囲気が出ないのでは…」こちらの作品のGetzの音色が僕には支配的でした。64年リリース「Getz / Giberto」、因みにこの作品からBossa Novaが始まりました。 「ガサガサ、シューシュー、ホゲホゲ」と付帯音の宝庫Stan Getzのテナーサックス、この音色がBossa Novaの雰囲気を決定付けました。Joe Henの音色でのBossa Novaは一体どうなるのだろう?興味津々で本作CDを聴きましたが、いやいや、全くの杞憂でした(汗)。Joe Henの音色、タイム感、フレージング、音楽性でまた新たなBossa Novaが構築されているのです! この作品はちょうどレコードのA面B面の様に2つに分かれており、A面=SuiteⅠ はブラジルのミュージシャンとのコラボレーション、本場ブラジルのグルーヴで演奏を繰り広げています。Oscar Castro-Nevesのアコースティック・ギターの気持ち良さといったら!そしてEliane Eliasのピアノ演奏がブラジル一色に終わらせず、ジャジーなテイストを加味させているのがポイントです。Suite Ⅰのラストを飾るのが5曲目Oscar Castro-NevesとDuoで演奏しているOnce I Loved、この曲の新たな名演が生まれました。 B面=Suite ⅡはHerbie Hancock、Christian McBride、Jack DeJohnette達とのカルテット、ジャズメンによるBossa  Novaですがこれがいずれも強力な演奏です!それにしてもMcBride、DeJohnette2人のタイム感、一拍の長さ、ビート感いずれもが酷似していて、何千年もの間地中深く何百何千メートルも根を生やしている縄文杉のような安定感です。6曲目TristeのJoe Henのソロは些か遠慮気味に聴こえたのですが、「さあHerbie、この後の落とし前を頼むよ」とばかりにJoe Henに肩を叩かれたのか、続くHerbieのソロがとことんイってます!「Herbie Hancockの演奏の後にはペンペン草も生えない」とは誰かの名言ですが、言い得て妙、まさしくその通りの演奏です!人のバンドでこんなに盛り上がった凄い演奏をしても良いのでしょうか??このHerbieのソロで思い出したのがヴィブラフォン奏者Bobby Hutcherson66年録音のリーダー作「Happenings」の1曲目、Aquarian MoonでのHerbieのソロです。 こちらも他人の作品でリーダーを喰ってしまう演奏の最たるものですが、メチャメチャかっこ良いソロです。こんなことが許されるのも、きっと演奏の素晴らしさ以上にHerbieの人柄が皆んなに愛されているからなのでしょう。 9曲目No More BluesはBossa Novaならぬ、なんとスイングのリズムで演奏されています!これには驚きました。それにしても名曲はどんなリズムで演奏しても名曲です。通常キーはD minorですが全音下のC Minorで、曲の前半部分のマイナーキーの部分をオープンにしてソロを取っています。 アルバムのラストに演奏されるのはChristian McBrideのベースと全編スイングのリズムで演奏するModinha。哀愁を帯びたメロディがエピローグに相応しい雰囲気を醸し出しています。

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2018.01.20 Sat

Yellowjackets / Mint Jam

今回はYellowjacketsのライブ2枚組CD、Mint Jamを取り上げてみましょう。2001年7月24日、25日Los Angels、The Mintにて録音。Heads Up Label [Disc 1]1.Les Is Mo 2.Boomtown 3.Motet 4.Mofongo 5.Blues For KJ 6.Runforyerlife [Disc 2]1.Song For Carla 2.Tortoise And The Hare 3.Mosaic 4.New Jig 5.Statue Of Liberty 6.Evening News ts,EWI)Bob Mintzer key)Russell Ferrante b)Jimmy Haslip ds)Marcus Baylor 全曲メンバーによるオリジナルで構成されています。 大変素晴らしいクオリティのライブレコーディング、2日間に渡りライブが行われているので演奏テイクを厳選しているかも知れませんが、バンドの一体感、グルーヴが気持ち良いです。それにしても楽曲上の間違いや曖昧な点が全12曲中ライブにも関わらず殆ど感じられないのは驚異的です。また後からPro Toolsを使って編集作業が行われ、小さなミスは修正されているとは思いますが、徹底的にリハーサルを重ねて演目を確実に自分たちのものにしよう、パーマネント・バンドとしての自負、プライドを持ちつつ自分達の音楽を作り上げていこうと言う事を、文章の行間を読むように演奏の奥、向こう側から垣間見る事が出来ます。彼等がライブ演奏中一切譜面を見ずに曲をメモリーして演奏している点からも感じ取る事が出来ます。Weather Reportも同様に暗譜して演奏していました。 Yellowjackets(アメリカ本国ではJacketsと略して呼ばれています)は自分たちの楽曲の譜面を販売しています。「Music From Yellowjackets Mint Jam」by Russell Ferrante このCD収録曲の全ての楽曲スコアが完璧に掲載されており、この譜面を元に演奏することが可能です。実際僕もこのスコアにはお世話になり、自分のバンドでも演奏した事が有ります。このスコアを見ながらCD演奏を聴けば曲の構造とメロディ、リズムの関係、コード進行との絡み具合が一目瞭然です。少し音楽を突っ込んで、楽理的にいささかマニアックな聴き方をして見たい方にオススメします。このように昨今はCDでオリジナルを演奏し、その譜面をJacketsのように曲集として販売したり、HP等で一曲づつダウンロード販売するのが当たり前になっています。楽器を演奏する人が増えているからこそですが、ジャズの楽しみ方として生演奏を聴きに行くよりも自分たちで演奏して楽しむ方に比重が傾いていると思います。ライブへのお客様の足が遠のくのも頷けます。30年以上前の例えば新宿、六本木、銀座、青山辺りのジャズクラブでは夜な夜な「ジャズを聴きたいぞ!」「聴かせてくれ!」と言うお客様が行列をなして待っていたほどですが。 JacketsはピアニストRussell Ferrante、Jimmy Haslipを中心にギタリストRobben Fordの1978年発表のアルバムThe Inside Storyで伴奏を勤めたのがきっかけで結成されました。初期にはアルト奏者Mark RussoやドラマーRicky Lawsonが参加し、いわゆる西海岸系のブライトでメロウなサウンドを聴かせていましたが、90年からテナー奏者Bob MintzerがMark Russoの代わりに参加した事でぐっとジャズ度が上がりました。ドラマーにもPeter Erskineが一時参加した事が有ります。その時の演奏を収録した海賊盤が「Erskine’s Tape」です。99年5月24日Sweden Lundにてライブ録音。 Weather ReportやSteps Aheadのドラマーとして名を馳せただけあって、このライブ盤でも素晴らしい演奏を聴かせています。グルーヴ感、楽曲のカラーリング、サウンド付け、フィルインの巧みさ、ソロイストに対する寄り添い方の繊細さ、大胆さ、ドラムソロの色気、僕としてはここでのメンバーts)Bob Mintzer key)Russell Ferrante b)Jimmy Haslip ds)Peter ErskineがJackets史上最強だと思いますが、Erskineは多忙さから加入を断念したようです。 実は僕も一度Erskineと共演の機会を持つことが出来ましたが、彼のミュージシャンシップには感銘を受けました。Erskine「やあ、こんにちは。君の名前は?僕は君のことを何と呼べば良いかな?」「Tatsuya Satoと言います、今日は宜しくお願いします。」Erskine「オッケーTatsuya、宜しくね。今日は皆んなで演奏を楽しもうじゃないか」スーパードラマーに対等に接して貰えて、僕自身もリラックスして演奏に臨むことが出来たのを覚えています。 Jacketsの曲は口ずさめるメロディアスなナンバーから、複雑で幾何学模様的な構造の曲、澄み切った青空のような美しいバラードまで、幅広いカラーのサウンドを聴かせてくれますが個人的にはMintzerのナンバーに心惹かれます。現在まで20枚以上の作品をリリースしていますが、Mintzerが参加し彼のオリジナルを演奏したアルバムはどれも優れたバランス感を保っています。西海岸と東海岸のサウンドの融合と言うべきか、ジャズ寄りのポップフュージョン、さらにそれを超えたJackets Musicと言えるかも知れません。 Jacketsでクリスマスソングを特集した作品があります。「Peace Round: A Christmas Celebration」2003年リリース Jacketsのふくよかで優しく、上品なサウンド表現とアメリカ人がクリスマスに馳せる思いとが融合して他のクリスマスソング集にはないゴージャスさを感じさせます。最後に収録されているIn A Silent Night、Joe Zawinull作曲でMiles Davisのアルバムタイトルにもなっている「In A Silent Way」とクリスマスソングの代表曲Silent Nightの融合!早い話In A Silent Wayの曲想でSilent Nightを演奏しているのですが、やはりアメリカ人もダジャレ好きなのですね(笑) 一度Jacketsの生演奏を聴きに横浜のライブハウスに行ったのは、同じく03年リリースTime SquaredのCD発売記念ツアーでした。こちらも素晴らしい内容で前作Mint Jamを凌駕する出来映えです。 その日はちょうど自分の所属するビッグバンドのコンサートが同じく横浜であり、夕方のギグを終えてからすぐそばのライブハウスに赴く事にしていました。昼間そのビッグバンドの本番前のリハーサルも順調に進み休憩時間にメンバーと近所のユニクロを覗きに行きました。別に何を買うと言うわけでもなかったのですが、ユニクロ店内に外人が何人かいる事に気付きました。「どこかで見たことのある外人だけど…あっJimmy Haslipじゃないか!」と言う訳で彼のそばにはRussell Ferrante、Marcus Baylor、そしてBob Mintzer、Jacketsのメンバー全員を発見!Mintzerには面識が無かったのですが「Hello Bob, 僕はTatsuya Satoです。僕もテナーサックスを演奏していて、今夜Jacketsのライブを聴きに行く事にしています」「Tatsuya, nice to meet you. 今夜の演奏を楽しみにしていて下さい」とやり取りをする事が出来ました。ところでJacketsメンバー全員何をしていたかと言うと、1枚¥1,000のTシャツを物色していたのですが、案の定当夜のライブでは全員ユニクロの黒いTシャツをユニフォームのように着用していました。アメリカの超一流バンドでも現地調達でステージ衣装を格安購入する事に親近感を覚え、とても嬉しくなりました。

2017.12

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2017.12.30 Sat

The Ray Draper Quintet featuring John Coltrane

今回はtuba奏者Ray Draperのリーダー作「The Ray Draper Quintet featuring John Coltrane」を取り上げてみましょう。1957年12月20日Hackensack, New Jersey Van Gelder Studioにて録音 Recorded by Rudy Van Gelder Produced by Bob Weinstock 1)Clifford’s Kappa 2)Filide 3)Two Sons 4)Paul’s Pal 5)Under The Paris Skies 6)I Hadn’t Anyone Till You tuba)Ray Draper ts)John Coltrane p)Gil Coggins b)Spanky DeBrest ds)Larry Ritchie Prestigeの傍系レーベルNew Jazzから58年にリリースされました。 1950年代にtubaでモダンジャズを演奏したのは、Miles Davisの50年代ラージアンサンブル共演で有名なBill Barber(クリックして下さい)と本作のRay Draperくらいでしょう。ニューオリンズ、デキシーランドジャズで低音のベースラインを奏でる楽器としての役割を担っていましたが、ソロ楽器奏者としてかつてシーンで活躍したのはこの2人くらいです。今回取り上げたRay Draperはこのレコーディング時に僅か17歳、さぞかし将来を嘱望された事でしょう。あらゆる時代、洋の東西を問わず、若くして現れたニューカマーには期待をするものです。でもtubaという特殊楽器、年齢を考慮してもこの作品での彼のプレイには魅力を感じる事は出来ません。よく言えば重厚な、端的に言えば重苦しさを拭うことの出来ない滑舌の悪さ、フレージングやアドリブ構成の未熟さから管楽器奏者としての良さを汲み取ることは困難です。そんなプレーヤーの作品を今回何故取り上げたかと言えば、ひとえに1957年上り調子、絶好調のこのアルバムの共演者John Coltraneのプレイが凄すぎるからです!何とテクニカルにして流暢な唄いっぷり、素晴らしい音色、確実に「何か」を掴んだ芸術家の誰も止めることの出来ない表現の発露が迸っています。57年12月のColtramneは凄いです!逆に言えばこの作品、Coltrane不在ではリズムセクションの演奏の凡演も相俟って、殆ど何の主張も無い駄作に成り下がるところでした。Coltraneのクリエイティヴな熱演をリズムセクションは殆ど受け入れることが出来ず、ただ傍観してる場面が殆どですが、その点とRay Draperの演奏、Coltraneの凄まじさの対比が皮肉にもむしろこのアルバムの聞き所と言えます。 ColtraneとRay Draperは意外とウマが合ったのか、もう一枚共演作をリリースしています。「A Tuba Jazz」Late1958年録音 2種類のジャケット写真があるので掲載しておきます。1枚目はJosie、2枚目はJubileeレーベルのもので同一作品です。参加メンバーもピアニスト以外は同じです。 前作から約1年を経たこの作品で、Coltraneの更なる成熟度を聴くことができますが、前作ほどのtubaとtenor saxの演奏のギャップは感じなくなっています。単に耳が慣れてしまったのか、それともRay Draperにも上達を感じるのでそのためなのか、ぜひ皆さんもこの2作を聴き比べてみて下さい。 Ray Draperは両方の作品でSonny Rollinsのナンバーを取り上げています。1作目でPaul’s Pal、2作目でDoxyとOleoの2曲ですが、全くのColtraneの語り口でRollinsのナンバーを聴くことが出来るのも両作の魅力です。ちなみにPaul’s PalはRollinsとColtrane唯一の共演作56年5月24日録音「Tenor Madness」に於いて、Rollinsのワンホーン・カルテットで演奏されていますが、ひょっとしたらColtraneはその時の演奏をスタジオのコンソール・ルームで聴いていたかも知れません。またPaul’s PalとはRollinsと50年代共演の多かった名ベーシストPaul Chambersに捧げられたナンバーです。一方ColtraneもChambersとの共演の機会が大変多かったので、自身の名作59年5月5日録音「Giant Steps」にてMr. P.C.をChambersに捧げています。さぞかしPaul ChambersはRollins、Coltraneの両テナー巨頭から曲を捧げられるほどの演奏家、そして魅力的な素晴らしい人柄だったのでしょうね。 1曲目Clifford’s Kappa、Ray Draperのオリジナル曲です。ほのぼのとした雰囲気の曲で、ソロの先発はTubaが取ります。楽器の構造上、音の立ち上がりを的確に行うには困難を伴います。コントラバス発音の立ち上がりよりも更なる難易度を感じますが、案の定ゾウガメが陸地を歩く様を想像してしまう演奏です。でもソロの2番手のColtraneで世界が一転します。テナー奏者でもColtraneは上の方の音域を多用するのでtubaとは2オクターブ以上の音域差でのアドリブです。4’14″位からドラムスがColtraneの凄まじいスピード感のある16分音符にインスパイアされて暫くの間(8小節間)ダブルテンポでプレイしていますが、その後また直ぐに元のスイングに戻ります。アルバム全編を通して、リズムセクション全員に関して、Coltraneの演奏に反応しているのは何とこの部分だけです。Ray Draperとの演奏の格差、Coltraneの演奏から生じるエネルギーの凄まじさ、保守的な伴奏者達はColtraneのアドリブのあまりに高度な内容、インパクトに傍観せざるを得なかったのでしょう。 57年5月31日録音初リーダー作「Coltrane」に於いて前年から急成長を遂げた彼はフレッシュな素晴らしい演奏を聴かせていますが、そこから僅か半年足らずの間に更に音色、フレージング、アドリブの構成、アイデア等全てバージョンアップしているのです。特にこのレコーディング時Coltraneは何物もにも制約が無いかの如く、ただ只管、無心に演奏に集中しています。 2曲目もRay DraperのペンによるFilide、マイナー調でラテンのリズムのテーマが魅力的で多くの日本人の心をくすぐると思います。アドリブに入ると直ぐにスイングのリズムに変わるのが残念ですが。1曲目でのソロが長目だったのを踏まえてかColtrane短めに演奏を終わらせています。tubaソロの3’09″辺りでドラマーが珍しくソロイストを煽るべくフィルインを入れているのが微笑ましく聴こえます。 3曲目もRay DraperのオリジナルTwo Sons、彼のオリジナル3曲とも佳曲です。ソロの先発はGil Coggins、彼は50年代初頭にMilesとの共演経験もあるピアニストですが、何ともリズムがバタバタした拙い演奏です。Ray Draperは後年ドラッグで捕まった経歴があるので、Gil Cogginsも彼のドラッグ仲間、この演奏中もキマっていたのでは、と考えてしまいましたが、WikipediaによればCoggins gave up playing jazz professionally in 1954 and took up a career in real estate, playing music only occasionally. とありますのでこのレコーディング時は不動産業を営み、ほとんど演奏活動をしていなかったと言う事になります。ここでの演奏のクオリティは然もありなんと言う事でした。 4曲目が前述のPaul’s Pal、ほのぼのとした曲想でRollinsフリークのSteve Grossmanも取り上げています。ここでのColtraneは実に確信に満ちた演奏を繰り広げており、圧倒的な存在感を聴かせています。同様にリズムセクションはリズムマシンの如く、ただビートを刻む演奏に徹していますが。 5曲目が本作のもう1つの目玉、シャンソンの名曲Under The Paris Skies。Parisを題材にした名曲は多いですね。April In Paris、Afternoon In Paris、I Love Paris、An American In Paris…さぞかし魅力的な街なのでしょう。ここでのアレンジが素晴らしいのです。実に意外性のある選曲ですがラテンリズムでの印象的なメロディをtenor 、tubaの2オクターブユニゾンでの演奏の後、組曲形式でビゼー作曲アルルの女のメロディの断片が奏でられます。フランス繋がりなのでしょうか、その後スイングのリズムでアドリブが始まります。 「John Coltrane The Complete Prestige Recordings」のライナーノーツに興味深い記述がありますのでご紹介しましょう。A most unusual “front line” graces Coltrane’s last Prestige (actually New Jazz) session of the year: tuba and tenor sax. The young leader, tubaist Ray Draper, reportedly had met Coltrane while still in high school and had received help from Trane in preparing his compositions for recording. The  arrangements show an attempt to elicit as much variety as possible from a potentially dark and weighty instrumentation.(tubaistの記述は原文のまま) 実際このレコーディング時は17歳だったので、退学していなければRay Draperはまだ高校生だったはずでその時にColtraneに出会い、彼からこの録音のための曲の準備を手伝って貰っています。ここでのアレンジはtubaとtenor saxと言う楽器構成から生じる重苦しさを排除してなるべく多くのバラエティを引き出そうとする試みが見られる、とあるのでひょっとしたらかなりの所までColtraneに曲のアレンジを委ねていたのかも知れません。と言うのはUnder The Paris Skiesのアレンジが実に緻密で高い音楽性を感じさせるので、Ray DraperよりもColtraneの役割が大きかったように思えます。またもしかしたら本作でのPaul’s Pal、次作のDoxyとOleoもColtraneの発案での選曲だったかも知れません。Rollinsには敬意を抱いており機会があれば彼のオリジナルを演奏してその思いを現したい気持ちがあり、たまたまそのチャンスに恵まれてここでのオリジナル採用に至ったとも考えられます。後年Like Sonnyと言うオリジナルを作曲して演奏もしています。 それにしてもColtraneの音色でポピュラーなナンバーを演奏するのはメロディがとても魅力的に響きますね。後年Stan GertzやStanley TurrentineがBurt Bacharachのナンバーを取り上げた作品をリリースしていますが、美しいメロディと素晴らしいテナーの音色がブレンドして、いずれも心に響く唄いっぷりを聴く事ができます。 What The World Needs Now / Stan Getz Plays Bacharach And David Stanley Turrentine / The Look Of Love 歴史に「もしか」は禁物ですが、Coltraneが現在でも存命で音楽活動を続けていたら間違いなく「John Coltrane Plays〜」をリリースしていた事でしょう。それこそColtraneのBacharach特集なんて是非とも聴いてみたかったものです。  

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2017.12.19 Tue

The Ray Brown Trio With Ralph Moore / Moore Makes 4

今回はベース奏者Ray Brownのリーダー作The Ray Brown Trio With Ralph Moore / Moore Makes 4を取り上げましょう。1990年5月22日San Francisco録音 Produced By Carl Jefferson  Concord Label b)Ray Brown p)Gene Harris ds)Jeff Hamilton ts)Ralph Moore 1)S.O.S 2)Bye Bye Blackbird 3)Stars Fell On Alabama 4)Ralph’s Bounce 5)Quasimodo 6)Like Someone In Love 7)Polka Dots And Moonbeams 8)Squatty Roo 9)Everything I Love 10)My Romance 11)The Champ   ベース奏者のリーダー作は2種類に分かれます。ベースという楽器をふんだんにアピールし、ピチカートやアルコでのソロが中心で共演者に伴奏をさせるタイプ。もう一方はフロント楽器やピアニスト、ドラムスに思う存分演奏させてベーシスト本来の伴奏、アンサンブル、グルーヴを裏方に回って聴かせるタイプ。このアルバムはまさしく後者で、リーダーのソロ自体あまり無く、サイドマン、特にRalph Mooreに思う存分ブロウさせています。Ray Brownのレギュラー・トリオとRalph Mooreの相性が大変良いのでしょう、アルバム全編素晴らしいスイング感で強烈にグルーヴしています! 相性という点ではベーシスト、ドラマーの関係が最も重要なのですが、この作品でのRay Brown、Jeff Hamiltonのコンビネーションもとても素晴らしく、高速で走行する自動車の両輪の如く2人がスピード感を伴って正確にビートを繰り出しています。実は常々感じている事ですが、ベースとドラムの2人が同じリズムのポイントで演奏するよりも、ベースが少しだけ早く、ビートがほんのちょっと前に存在した方がバンドは的確にスイングします。1950年代のMiles Davis QuintetのリズムセクションPaul Chambers〜Philly Joe Jonesが正にその例で、極端に言えば曲を演奏する際に1, 2, 3, 4,とカウント後、次の曲アタマでまず最初にベースの音が立ち上がり、その直後にシンバルが鳴る訳です。その観点でMilesのマラソンセッション4部作「Cookin’」「Relaxin’」「Workin’」「Steamin’」を聴いてみて下さい。いずれの演奏でもベースが曲アタマに「プンっ!」と立ち上がり曲が始まります。ベースのビート、タイム感が遅い、重いプレイではバンド演奏はスイングせず停滞してしまいます。ほんのちょっとした微妙な、些細な事ですが音楽は如何に重箱の隅をつつく事ができるか、どれだけ細やかにこだわれるかに掛かっていると言って過言ではありません。神は細部に宿ります。Paul Chambersのリズムのポイントの位置がバンドのグルーヴの要と言って良いでしょう。因みにコントラバスという木製の巨大な箱、でも自分で持ち運びができるギリギリ限界の大きさの楽器を鳴らして、極めて立ち上がりの良い音符を指で弾くには猛烈な鍛錬が必要とされます。50年代の名盤の実に多くがPaul Chambersのベース・プレイに支えられている事からも、彼の演奏の素晴らしさをミュージシャンが把握し、時代が彼の演奏を必要としていたと言えます。Oscar Pettifordを源流としたモダンジャズ・ベースのパイオニアがPaul Chambersなのです。 Paul Chambers57年のリーダー作「Bass On Top」は彼の演奏の真髄を捉えた作品ですが、タイトルの意味するところは「リズムが先ノリ(on top)のベース」です。彼の演奏の本質を端的に表現しています。 東の横綱がPaul Chambersならば西の横綱が本作のRay Brownです。本作で聴かれるようにon topのリズムで強力にビートを繰り出し、ベースこそがジャズバンドの牽引役とばかりにぐいぐいとバンドをリードしています。50年代以降ベース界はRay Brown、Paul Chambersの2人の存在があったからこそ後続のベーシストに優れた人材を多く輩出出来たと感じています。Ray BrownはピアニストOscar PetersonのTrioで59年から65年まで演奏し、多くの名演奏を残しました。Oscar Peterson Trio3人のリズムの構図がまた独特で、Ray BrownとOscar Peterson2人がまるで一卵性双生児のようにぴったりと同じリズムで、2人して手を繋いで宇宙にまでも行きそうな勢いのon topで演奏するのに対し、ともすれば暴走に発展しそうな2人の演奏を後ろから羽交い締めにして確実に押さえる歯止め役のビートで演奏するのがドラマー、Ed Thigpenなのです。当時のOscar Peterson Trioがドラマーもon topなビートのプレイヤーだったら全く収集がつかなかった事でしょう。65年Oscar Peterson Trioの素晴らしいコンサート映像がこちらです。https://www.youtube.com/watch?v=M95UzNPfjhE 番外編ですが、Ray Brownと合わないのが意外にもグレート・ドラマーElvin Jonesです。2人の共演が聴けるのが「 Something For Lester」。Ray Brown自身のリーダー作で、ピアニストがCedar Waltonによるトリオ編成の作品です。2人ともリズムを自分に付けてくれる、ビートを合わせてくれるタイプの共演者を良しとするところがありますが、ここでは互いの歩み寄りは希薄で、横綱同士の取り組みの悪いところが出てしまった様で、演奏、リズム共々かなり合っていません(汗)。間に挟まれたCedar Waltonもさぞかし居心地が悪かった事と思います。この作品のレーベルContemporary のオーナーLester Koenig自身に捧げられた作品ですが、この内容ではむしろ有難迷惑であったかも知れません。 本作の話に戻りましょう。1曲目はお馴染みピンク・レディー・ミーちゃんケイちゃんのS.O.S.、いやもとい(笑)ギタリストWes Montgomeryのオリジナル、1962年6月25日 ライブ録音「Full House」に収録されています。そちらはあまりの早さにメンバーから本当にSOS信号が出ているような演奏ですが、本作では人情味のある(笑)テンポ♩=244で演奏されています。アップテンポでシンコペーションのキメが多く入る曲はカッコイイですね。曲想に合致した素晴らしい、聴き応えのある内容の演奏に仕上がっています。Ralph Mooreの端正な音符やスピード感、タイム感、コード進行に対するアプローチはテナーサックスの王道を行くものですが、同じ黒人テナー奏者とはどこかテイストが異なる気がしていました。白人のような、とはまた違うのですがそれもそのはず、彼はイギリスLondon生まれで16歳まで地元で過ごし、ジャズの素養を身につけてからアメリカに移住してBerklee音楽院で学び、その後プレイヤーとしてのキャリアを積み重ねました。氏より育ち、アメリカで生まれ育ったミュージシャンにはない気質、個性を身に付けているのは英国出身だからでしょう。今から20年以上前に国内のジャズフェスティバルで会って話をした事がありますが、小柄で華奢な感じ、フレンドリーな方でした。リーダー作も多くリリースしサイドマンとしても多くの活動、レコーディングを残しているのですが、ここ10年以上全く話を聞きません。どうしているのやら、ファンとしては気になるところです。 Ralph Mooreの使用楽器はテナーサックス本体がSelmer Mark6、マウスピースがOtto Link Florida6番か6★、リードがRico3番です。かなりライトなセッティングですが素晴らしい音色を聴かせています。黒人テナーサックス奏者はWayne Shorter、Joe Henderson、Sam Rivers、Benny Golson、Eddie Lockjaw Davis達に代表される自分独自のボキャブラリーで演奏を展開するプレイヤーが多いのですが、Ralph Mooreの演奏は実に主流派然としています。フレージングの間の取り方、音の選び方、歌い方、タイム感、それらのバランス感が尋常ではなく良いので、いつも聞き応えのある演奏を繰り広げています。      

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2017.12.01 Fri

Steve Kuhn Trio w/ Joe Lovano Mostly Coltrane

今回はSteve Kuhn Trio w/ Joe Lovano Mostly Coltarneを取り上げましょう。John Coltraneとの共演を1960年に果たしたピアニスト、Steve KuhnのColtraneに対するオマージュ作品ですが、単なるトリビュートに終わらず、それ以上のメッセージを感じさせる秀逸な作品です。2008年12月録音 NYC Avatar Studio Engineer: James A. Farber Produced by Manfred Eicher p)Steve Kuhn ts,tarogato)Joe Lovano b)David Finck ds)Joey Baron 1.Welcome 2.Song Of Praise 3.Crescent 4.I Want To Talk About You 5.The Night Has A Thousand Eyes 6.Living Space 7.Central Park West 8.Like Sonny 9.With Gratitude 10.Configuration 11.Jimmy’s Mode 12.Spiritual 13.Trance タイトル「Mostly Coltrane」とは収録曲13曲のうち11曲がColtraneのオリジナルもしくはレパートリーのスタンダード・ナンバー、残り2曲がSteve Kuhnのオリジナルで構成されている事から発案されたネーミングと考えられます。どうせなら全曲Coltraneナンバーを取り上げればよりオマージュ性が高まると思うのですが、どのような経緯で2曲自分のオリジナルを演奏・収録したのか知りたい所です。でも、もっと他の意味合いもありそうなタイトルとも感じます。Steve Kuhnはかなり洒落っ気のある人と聞いていますので。 Steve Kuhnは1938年3月24日New York City Brooklyn生まれ、Kenny Dorham等のバンドを経験した後、57年頃から急成長を遂げたJohn Coltraneが新しく自分のカルテットを組むに当たり、ピアニストを探していると言う話を聞きつけ、自分からColtraneに共演を申し込んだのだそうです。ミュージシャン売り込みは基本ですからね。60年1月から3月までの8週間、Steve KuhnはNYC East VillageにあったThe Jazz GalleryでJohn Coltrane Quartetのメンバーとして共演したと、このCDのライナーに自ら記載しています。ちなみにこちらのJazz Galleryは1959年から62年まで存在したジャズクラブで、現在NYCで営業している同名店とは異なり、新規店は95年からの営業になります。同じNYCのBirdland、Coltraneのライブ盤が収録された事で有名になったジャズクラブですが、こちらも現在営業している同名店とは異なります。 Steve Kuhn自身はこの8週間Coltraneと演奏出来た事を彼からの恩恵として感じ、大切な思い出と捉えているとも書いています。 みなさんはLewis Porterと言うアメリカ人の作家(ジャズピアニストとしても活動しています)をご存知でしょうか。彼の「John Coltrane: His Music and Life」(99年出版)は大変興味深い著書です。   Coltraneの音楽について草創期から最晩年までを理論的に分析し、奏法についてもかなり突っ込んだところまで研究したものを譜例やコピー譜、珍しい貴重な写真と共に掲載しています。日本語訳が出版されていないのが大変残念ですが、本書の圧巻はColtraneが演奏活動を開始した1945年から没67年までの23年間をchronologicalに、「Coltraneが何年何月何処で誰とどんな内容を、そこに至る経緯と手段についてを含めた」5W1Hを実に詳細に調べて記載している点で、現代のようにあらゆる情報が整然と容易に入手出来るのと違い、情報を掘り起こし確認するのに実に膨大な時間と労力を要したと思います。その中からSteve Kuhnと共演したとされる60年1月から3月までのColtraneのchronologyを紐解いてみましょう。1960年の記載冒頭にAll gigs with Davis except for those otherwise listed.とありますので、この年はMiles Davisとの共演が多かった、メインであった事を意味しています。ちなみにこの特記はColtraneがMiles Bandに在団していた56年から60年までを通して書かれています。 1月15日〜21日Manhattan Apollo Theater、2月11日〜21日Chicago Sutherland、2月22日〜26日Philadelphia Showboat(内24日はMilesが抜け、Coltrane Groupでの演奏)、2月27日Los Angeles Shrine Auditorium、3月3日San Jose unknown location、3月4日San Francisco Civic Center、3月5日Oakland Auditorium Arena、3月7日〜13日Philadelphia Showboat / John Coltrane Group unknown personnel、3月21日〜4月10日European Tour この間はほとんどMilesとのギグでかなりの本数こなしており、残念な事にこの間にはThe Jazz Galleryの名前を確認することは出来ません。若しかしたら7日〜13日Philadelphia ShowboatでSteve Kuhnと共演を果たしているかも知れませんね。また単に資料を発掘できなかっただけで、例えばColtraneがロードに出ずNYCにいる時にはいつもJazz Galleryで演奏していたかも知れません。同じNYCのThe 55 Barで現在もMike Sternがそうしているように。因みに同年6月10日、6月27日と7月1日にはManhattan. Jazz Gallery. Audience tapeの記述があり、そのうちの6月27日の演奏が以前このBlogで取り上げたことのある「John Coltrane Live at The Jazz Gallery 1960」としてリリースされています。ピアニストに以後65年まで不動のMcCoy Tynerを抜擢した直後の演奏と言われています。 このCDのライナーノートにBut Kuhn left about a month into the gig, which made him the transitional pianist in a transitional period. Coltrane expressed no complaints with his playing but wanted a different sound for the band, which he felt Tyner could best provide.と書かれており、ひょっとしたらSteve Kuhnの勘違いで実は1ヶ月程度しか共演していないのかも知れません。Steve Kuhnの初レコーディングがColtraneとの共演を経験する直前に行われています。「Jazz Contemporary / Kenny Dorham」 1960年2月11, 12日NYC録音、Steve Kuhn若干21歳です。ここで聴かれる彼の演奏はオーソドックスな雰囲気の中にも新しい萌芽を、そして同時に初レコーディングの緊張感も感じさせます。Coltraneとの共演時にどの程度の演奏をJazz Galleryで繰り広げ、その実力をColtraneの前で披露出来たかは全く分かりませんが、「Coltraneは彼の演奏に不満を漏らさなかったけれど、バンドには違ったサウンドが欲しく、Tynerの方が相応しいと感じていた」と前述されているように、この初レコーディング時のクオリティではColtraneは納得出来なかったのでしょう。そしてMcCoyに最終決定する前に彼と比較していたと言う事にもなります。更に僕が最も感じるのは、Coltraneの長いソロの後ろでバッキングをせずにじっと我慢できるような従順さがMcCoyの方にはあるように感じますが(実際後年5年間の演奏でじっと忍耐強くColtraneのアドリブ最中演奏しないで待っていました)、Steve Kuhnにはあまり感じ取る事が出来ません(何でお前にそんな事が分かるのか、と言われると弱いのですが、アメリカで彼に習っている日本人ピアニストから直接聞いた話ですが、彼の自宅にレッスンに行くと譜面を書いて消した後に床に落ちる消しゴムのカスを、必ず拾うらしいほど几帳面、神経質らしいのです)。バンドのメンバーの人選はもちろん演奏技術、音楽性が真っ先に問われますが、結局のところレコーディングやツアーで長時間生活を共にするに相応しい相性が求められると思います。McCoyの方がウマが合ったと言う事でしょうね。61年9月にMontertey Jazz FestivalでColtraneのバンドにゲスト参加したギタリストWes Montgomeryが、フロントの長いソロの最中にバッキングをせずにステージでぼーっとしていることが嫌だったのでColtraneに誘われたバンド加入を断った、という逸話がありますが、演奏的な事柄よりもWesはColtraneと性格が合わなかったのかも知れません。でも将来幻の共演演奏が発掘されたら絶対に聴きたいです。 Steve KuhnはColtarneとの共演約8ヶ月後に「Steve Kuhn, Scott La Faro, Pete La Roca – 1960」をレコーディングしています。1960年11月29日NYC録音 後年発掘され2005年10月にリリースされた作品ですが、翌61年7月交通事故で夭折する天才ベーシストScott La Faroの参加に目を惹かれます。実際Scott La Faroも素晴らしい演奏を聴かせていますが、Steve Kuhnの演奏は「Jazz Contemporary」時とは僅か8ヶ月間で見違える程の演奏を繰り広げています。Coltraneとの共演を経験し一皮も二皮も剥けた22歳の天才ピアニストの登場なのです。 「Steve Kuhn Trio w/ Joe Lovano Mostly Coltarne」は彼のレギュラー・トリオにColtarne役のJoe Lovanoを迎えて、Coltraneとの共演から約50年を経たSteve Kuhnが自己の音楽的蓄積と、Coltraneに対しずっと持ち続けている深い敬意を反映させて制作した作品で、我々が昔から耳にしているColtraneナンバーの数々が見事に再構築されています。ぜひこの作品を聴いてから元のColtraneの演奏も聴いてみて下さい。音楽、曲、コード進行、メロディの解釈いずれもが高次元で昇華されていることに気付くはずです。  

2017.11

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2017.11.29 Wed

McCoy Tyner Trio featuring Michael Brecker / Infinity

今回はMcCoy TynerのトリオにMichael Breckerがフィーチャーされた作品「McCoy Tyner Trio featuring Michael Brecker」を取り上げて行きましょう。タイトルの割には編成はカルテットないしはパーカッション奏者が曲により加わり、クインテット編成です。 1995年4月12~14日録音 Recorded and mastered by Rudy Van Gelder Recorded at the Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey p)McCoy Tyner ts)Michael Brecker b)Avery Sharpe ds)Aaron Scott perc)Valtinho Anastacio 1)Flying High 2)I Mean You 3)Where Is Love 4)Changes 5)Blues Stride 6)Happy Days 7)Impressions 8)Mellow Minor 9)Good Morning, Heartache この作品は1995年にリリースされ、1996年のグラミー賞Best Jazz Instrument Performanceに輝き、また収録されているJohn Coltraneの代表曲Impressionsの演奏でMichael Breckerが同じくグラミー賞Best Jazz Instrumental Soloの栄冠を獲得したという、大変な栄誉あるアルバムです。レーベルもColtraneの一連の作品をリリースしたあのImpulse!で、60年代当時McCoy自身の作品もImpulse!から6作リリース〜いずれも大変素晴らしい作品ですが1枚挙げるとすると「Reaching Force」でしょうか〜されており、古巣に戻った形です。そのためかどうか、本人かなり力が入っていて自筆で1曲ずつ丁寧に解説を書いたライナーノートが添付されています。結構癖のある文字であまり読み易くはありませんが(笑)、作品に賭ける情熱と意欲が文面から伝わってきます。 このレコーディング・メンバーでかなりの本数のワールド・ツアーを行いました。ただ残念な事に来日公演は果たしていません。youtubeにその映像が幾つかアップされているので、こちらで我慢しましょう。 ベーシストAvery Sharpeは80年代から90年代にかけてMcCoy Tyner Trioレギュラーを務めています。McCoyの70年代の名盤「Song Of  The New World」「Enlightenment」「Atlantis」でベースを弾いているJuni(もしくはJoony)Boothに実によく似たタイプのプレーヤーです。最初に聴いた時にはてっきりJuni Boothだと思うくらいにベースの音色やラインのウネウネ感がそっくりでした。50年代から活動していたアルト奏者Clarence Sharpe(同じ苗字ですが血縁ではないと思います)はCシャープと呼ばれていますが、Avery Sharpeも当然Aシャープとなりますが、B♭ではありませんね(爆)McCoyはこういうビート・タイプのベーシストをレギュラーとして起用するのが好みなのかも知れません。 この作品で素晴らしいドラミングを聞かせるAaron ScottはBerklee音楽院出身で89年から96年の本作まで計5作、McCoyの作品に参加しています。AaronとはBerklee同期だった僕の友人ドラマー曰く、見た目や顔の雰囲気から来ているのでしょうか彼は「ラクダ」と言うあだ名だったそうです。一卵性双生児の兄弟がいて母親が間違うほどソックリだそうですが、Michael Breckerが「Aaronは僕に対抗意識(competition)を持っている」と話していました。いつも会うたびにMichaelにちょっかいを出すらしく、多少のことには動じないMichaelも”うざったさ”を告白していました。同じ楽器を演奏する者同士なら対抗意識を持つのも分かりますが、逆に同じ傾向、同方向の物の考え方を持つもの同士なら楽器が違えど対抗意識を持つことがあるのでしょうか。そういえばSteve Grossmanが「Bob Bergはオレに対抗意識を持っているんだ。アイツは面倒臭い奴だよ」と言っていました。この事にはしっかりと頷くことが出来ます。18歳でWayne Shorterの後釜としてMiles Davisのバンドに大抜擢、一世を風靡した天才サックス奏者には努力の人Bob Bergは対抗意識むき出しで当然だと思います。Randy Breckerも「Bobはコンプレックスの塊だ」とも発言しているのを読んだ事が有ります。でもBob Bergは87年頃にMilesのバンドに参加、「You’re Under Arrest」をレコーディングしてロードにも出ました。New Yorkで60年代末から70年代初頭にかけて青春時代を過ごした、いわゆるロフトでジャムセッションを繰り広げ、お互いに切磋琢磨しあった間柄のColtraneスタイル・テナー奏者たちSteve Grossman、Dave Liebman、Bob Berg、 Michael Brecker、Bob Mintzer達は全員ユダヤ系アメリカ人です。特にGrossmanとLiebmanは2人とも70年代を代表するバンド、Miles Davis Groupの他Elvin Jones Groupにも参加、70年代にはその音楽性を見事に開花させました。Michaelは実はジャズジャイアントと共演の機会が少なかった事に引け目を感じていたように感じます。こんな話があるのですが、Charles Mingusのラストレコーディング、名盤「Me, Myself An Eye」のレコーディングについて僕がMichaelと話をしました。 膨大な人数のミュージシャンが参加したラージアンサンブルなのですが、僕の「レコーディンの時のことを覚えてる?」と言う質問に「あまり覚えていないけれど、Charlesの他Lee Konitzが居たのは覚えているよ 」Michaelと同じくジャズシーンだけではなくスタジオミュージシャンとしても活躍して居たバリトンサックス奏者Pepper Adamsの参加を思い出し、「確かPeppr Adamsも一緒だったはずだよ」と言うと急に色めき立ち「えっ、本当?Pepper Adamsがあの場に居たのかい?」「そうだよ。ライナーの写真にもPepperが写っているよ」自分が参加したアルバムにあまり興味のないMichael、当然ジャケ写も見ていない事でしょう。「僕はPepper Adams(何故かPepprではなくフルネームで呼んでいました)と共演していたんだ…」遠い所を見つめる様な感じの目付きをしながら呟いていたのが印象的でした。ジャズジャイアントとの共演歴が彼の中でその時もう1人増えた訳です。 盟友Grossman、Liebman達の華々しい活躍を尻目に彼自身はHorace Silverのバンドに参加したことがある位で、ひたすらスタジオミュージシャンとして活動を続けていました。多分MichaelもGrossman、Liebman2人にはcompetitionを持っていた事でしょう。でも外にその感情を出さずその分のエネルギーを自分がやるべき事の精進のために凝縮して費やす、むしろそう言うことが出来る事に長けている、いやその点に関しては天才的なのがMichael Breckerです。驚異的な楽器の習熟度、進歩、誰も成し得なかったサックスの奏法開発、まさに不言実行を絵に描いたような人でした。 Chick Corea、 Herbier Hancock、Elvin Jones達ジャズジャイアントと演奏を展開し、この作品でMcCoy Tynerとも共演を果たしました。さらに96年には自己の傑作アルバム「Tales From The Hudson」でMcCoyをゲストに迎えてPat MethenyのオリジナルSong For BilbaoとMichaelのオリジナルAfrican Skiesをレコーディングし、96年この自身の作品でもMichaelはBest Jazz Instrument Solo(収録曲Cabin Fever)とBest Jazz Instrument Album2つのグラミー賞2年連続受賞と言う快挙を成し遂げました。 「McCoyは僕にとても良くしてくれているんだ」と嬉しそうに話すMichaelの笑顔を忘れる事が出来ません。Milesとの共演だけは果たす事が出来ませんでしたが、Michaelはありとあらゆるジャズジャイアントとの共演を成し遂げました。 最後に「Infinity」のレコーディングの音質について触れて見ましょう。前述の通り名エンジニアRudy Van Gelderによる、彼のNew Jerseyのスタジオでの録音なので本来なら悪かろう筈がないのですが、実は僕にはあまりピンと来ていません。というかMichaelのテナーの音色が彼らしくないのです。96年の来日時Michaelに会い一緒に石森楽器に同行した時の話です。お店の従業員の方がMichaelが来店したので気を利かせてこの「Infinity」CDを掛けました。すると「うっ、このCDのテナーの音は苦手なんだよ」とMichael呻くように呟きました。「このレコーディングはRudyがエンジニアなのだけれど、どうしてなのかこんな音色で録音されたんだ。Tatsuyaはどう思う?」「確かに僕もこのMichaelの音色はいつもと違うと思っていましたよ」「そうなんだよ…」Rudy Van Gelderは既に何度もMichaelのレコーディンを経験していて、彼の音色の本質を把握している筈ですが、Rudyは常々レコーディングのクオリティを向上させるべく新しい事にチャレンジしていたようです。この作品はひょっとしたらチャレンジが裏目に出てしまった例なのかも知れません。

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2017.11.22 Wed

Sonny Rollins And The Contemporary Leaders

今回はテナータイタン、Sonny Rollinsの代表的なリーダー作「Sonny Rollins And The Contemporary Leaders」を取り上げて見ましょう。 Side A 1)I’ve Told Ev’ry Little Star 2)Rock-A-Bye Your Baby With A Dixie Melody 3)How High The Moon 4)You Side B 1)I’ve Found A New Baby 2)Alone Together 3)In The Chapel In The Moon Light 4)The Song Is You ts)Sonny Rollins g)Barney Kessel p)Hampton Hawes b)Leroy Vinnegar ds)Shelly Manne vib)Victor Feldman(On “You”only) 1958年10月20~22日LA録音 CDでは巻末に未発表別テイク3曲(You, I’ve Found A New Baby, The Song Is You)が追加されています。その関係で全体のバランスを考えてなのかどうか、本編の曲順が変えられており、このレコードの昔からのファンにとっては甚だ迷惑な話です。CDをお持ちの方はレコードの曲順で未発表テイクを省き、一度作品を鑑賞してみて下さい。印象が随分と違ってきます。もちろん僕はこの曲順が良いと思いますし、耳がしっかり慣らされています。作品をリリースする際にあらゆる事を考慮に入れて収録曲、テイク、曲順をアーティスト、プロデューサーは決定しています。未発表テイクを巻末に追加収録するのは良しとしても、曲順を変えるのはどうでしょうか。もしかしたらCDリリース時にRollins本人の承諾を得ているのかも知れませんが。 僕は1950年代のSonny Rollinsがとても好きです。ハードバップ黄金期をテナーの王道を行く素晴らしい音色、タイム感、センス、品格、ユーモア、構築するが如きストーリー性豊かなソロを引っさげて、自己の多くのリーダー作からMiles Davis、Bud Powell、Thelonious Monk、Dizzy Gillespie、MJQ、Clifford Brown~Max Roach達とモダンジャズの名盤を多産しました。と言うかハードバップの名盤にはRollinsの存在ことごとくありき、です。60年代を代表するテナーサックス奏者をJohn Coltraneとするならば、50年代の代表選手は間違いなくSonny Rollinsです。59年末から61年11月までの約2年間ジャズシーンを離れて自分の演奏を見つめ直すべく隠遁生活をしました。その後はその甲斐あってかどうか、良し悪しは別としてRollinsはそれまでとは表現するものを変えたように感じます。60年代に入って第1作目の作品「Bridge」(62年)以降から現在に至るRollinsも良いですが、50年代の演奏は格別にジャズ度をアピールしてくれます。誤解を恐れずに述べるならば50年はジャズを、60年代以降はSonny Rollins Musicを演奏していると思います。Coltraneの50年代後半からの急成長〜台頭ぶりが少なからずRollinsがジャズシーンからしばらく離れるきっかっけを作ったと考えるのは僕だけではないでしょう。ひょっとしたらコード進行に於けるテンションの使い方の限界をRollinsは感じ始め、特に57年以降のColtraneが自分とは全く異なる方法論での緻密なアドリブを急展開させ、「これは敵わないわ」と感じたかどうかまでは分かりませんが、ジャズ理論的に複雑な構成音を用いたアドリブは止めよう、もっとハナウタのようにメロディを奏でよう、この方が自分にとって自然体だ、と決心したのかも知れません。ちなみにRollinsとColtarneは仲が良く、一緒に練習をした仲間だったそうです。二人の唯一の共演作56年5月24日録音「Tenor Madness」、この時のColtraneの演奏はその後の劇的な変貌の片鱗すら感じさせません。 Rollinsは54年と69年にもシーンを離れました。彼に限らず他のミュージシャンも精神的、肉体的、家族の問題、経済的な事情でシーンを離れることが多々あります。Rollinsばかりが騒がれるのは第一線で走り続けるアスリートならでは、なのでしょうか。もしくは「しばらくリタイアします」のようなメッセージをわざわざ発しているのかもしれませんね。律儀な人だという話を聞いたことがあります。次に挙げるエピソードがRollinsの人柄を良く物語っています。僕の所属していたジャズ研の先輩が30数年前、Sonny Rollins Japan Tourのローディ、Rollinsの付き人としてツアーに同行しました。茶目っ気のある、イタズラ好きな先輩は人に頼まれたり物を勧められても断ることのできない性格のRollinsに移動の車内であんころ餅を勧めたそうです。Rollinsは甘いものが苦手というのを知っていて。「Mr. Sonny、これをどうぞ召し上がって下さい」「どうも有難う、ところでこの食べ物は何だい?」「日本の食べ物であんころ餅と言います、とっても甘くて美味しいんです!」「…Oh, thank you very much…」と言って暫くしてから素知らぬ顔でポトリと床にあんころ餅を落としたそうです(笑) 58年録音「Contemporary Leaders」は文字通り50年代最後の作品、Los AngelesにRollins単身赴き、西海岸を代表する名門レーベルContemporary Records所属のアーティスト達をリズム・セクションに迎え、小粋なブロードウェイ・ミュージカル・ナンバーを中心に、実に熟れた素晴らしい演奏を聴かせています。Barney Kesselのギター、ちょっとピッキングがバタバタして発音がナマっているように聞こえますが、とても味のあるアドリブを聞かせます。Hampton Hawesは大好きなピアニスト、明快なタッチ、演奏でタイトなリズムによるスインギーな演奏にグッときます。初リーダー作Hampton Hawes Trio, Vol.1はいまだに愛聴盤です。Leroy Vinnegarは自分のソロ時もひたすらwalkingで通す職人肌なベースプレイを信条としています。シャープでグルーヴ感が素晴らしいドラマーShelly Manne、西海岸きってのテクニシャンで後続のプレイヤーに多大な影響を与えました。Miles Davisのバンドにピアニストとして参加したことのあるヴァイブ奏者、名曲Seven Steps To HeavenやJoshuaの作曲者でもあるVictor FeldmanはRollinsとのバトルで丁々発止のソロを聴かせます。 レーベルContemporary Recordsの録音エンジニアはRoy DuNann。この人の録音はBlue Note LabelのRudy Van Gelderとはある意味正反対のナチュラルさが特徴で、西海岸らしい明るめの音質です。以下がこのアルバムのレコーディング時の写真ですが、倉庫のようなスタジオに現代のようなパーテーションのためのついたて等一切なく、ドラムやサックスのような音の大きな楽器が他の楽器に干渉するのを防ぐため別なブースに入って演奏する事もなしに、メンバー全員が一つの部屋でまとまった密な状態で録音しています。それでこれだけ各々の楽器の分離、解像度、臨場感、バランスが取れているのはマジックです。 写真の左下、白い布の上には我々テナー奏者お馴染みOtto Link Metal Mouthpiece用のキャップ、そしてその横にはレコードジャケットでRollinsが左手に持っているマッチらしき物も写っています。想像するに、レコーディング終了後ないしは休憩時間にカメラマンが一服している(ジャケ写でタバコを右手に挟んでいます)Rollinsを捕まえてポートレートを撮影したのでしょう。当日の情景を思い浮かべるのはとても楽しいですね。 この作品のRollinsの演奏はどれも全て完璧、と言って良いほど素晴らしいのですが特に僕が好きな部分、いつ聴いてもゾクゾクしてしまうのがバラードIn The Chapel In The Moonlightの最初のテーマのサビ後、メロディのアウフタクト部分に出て来るLow B♭音のサブトーンです。この音のインパクトの凄さたるや百凡のテナー奏者の及ぶところではありません。そして何よりこれだけ最低音B♭が的確に出るに際しての楽器調整の確実さと、調整を施したリペア職人の巧みな技、Rollinsの楽器を身体の一部のように扱える奏法の素晴らしさを、たった1音からそこまで感じさせてしまうのです。 「Contemporary Leaders」が50年代のRollins最後の演奏とずっと認識していましたが、1984年にスウェーデンのレーベルDragonから突如として59年3月録音のレコードがリリースされました。これには50年代Rollinsマニアの僕も驚きました。 St.Thomas / Sonny Rollins Trio in Stockholm 1959 b)Henry Grimes ds)Pete La Rocaを従えて、お得意のテナートリオでの演奏です。これがまた素晴らしい演奏です!ここでは「Contemporary Leaders」の延長線上にある演奏を聴くことができます。「実に熟れた演奏」を超えた「熟れきった演奏」がこの作品の特徴です。 Side A 1)St.Thomas 2)There Will Never Be Another You 3)Stay As Sweet As You Are 4)I’ve Told Every Little Star Side B 1)How High The Moon 2)Oleo 3)Paul’s Pal 1曲目St. Thomasのみライブ録音、他はラジオ放送音源から収録されています。因みにこの頃のRollinsの楽器セッティングですがテナー本体はKing Super20 Silversonic、マウスピースはOtto Link Super Tone Master Double Ring 10★、リードは Rico3番です。 57年3月7日録音「Way Out West」、同年11月3日録音「 A Night At The Village Vanguard」2作ともテナートリオでのRollins代表作ですが、これらに全く引けを取らないクオリティの演奏です。 Rollinsをこよなく敬愛するSteve Grossmanが自身の作品、同じテナートリオでタイトルにあやかった「 Way Out East」をリリースしています。 GrossmanのRollinsフリーク振りは80年代以降の彼の演奏を聴けば一目瞭然ですが、こんな事を話していました。「ある日空港でばったりSonnyに会ったんだよ!なんと俺と同じシャツを着て、同じスニーカーを履いていたんだ!凄いだろ?」ここまで来れば本格的です(笑)。またGrossmanは「Sonnyの演奏は50年代にしか興味がないね。それ以降はI don’t care!」この辺りのテイストはまさしく彼の演奏に反映されています。 in StockholmではContemporary Leaders1曲目に収録したナンバーを再演しています。I’ve Told Every Little Star、ここではテーマ演奏の際に曲中の印象的な2小節のメロディをわざと毎回オフマイクにして音色の変化をつけています。ユーモラスなRollinsならではのワザですね。

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2017.11.18 Sat

Weather Report / The Legendary Live Tapes: 1978-1981

今回はWeather Reportのライブ音源を集めた作品Weather Report / The Legendary Live Tapes: 1978-1981(Columbia)を取り上げてみましょう。CD4枚組の大変充実した内容です。(2015年リリース) CD 1 – The Quintet: 1980 + 1981  1.8:30 2.Sightseeing 3.Brown Street 4.The Orphan 5.Forlorn 6.Three Views Of A Secret 7.Badia / Boogie Woogie Waltz 9.Jaco Solo (Osaka 1980) CD 2 – The Quartet: 1978  1. Joe And Wayne Duet 2.Birdland 3.Peter’s Solo (“Drum Solo”) 4.A Remark You Made 5.Continuum / River People 6.Gibraltar CD 3 – The Quintet: 1980 + 1981  1.Fast City 2.Madagascar 3.Night Passage 4.Dream Clock 5.Rockin’ In Rhythm 6. Port Of Entry CD 4 – The Quartet: 1978  1.Elegant People 2.Scarlet Woman 3.Black Market 4.Jaco Solo 5.Teen Town 6.Peter’s Drum Solo 7.Directions 1978年、80年、81年のWeather Report黄金期、Jaco PastoriusとPeter Erskineが在籍していた時代の演奏で、Erskineが個人的にカセットテープで録音していたものを編集しデジタル化しリリースしました。プロデュースもErskine自らがつとめています。すべての作品の録音やクオリティに徹底的にこだわったWeather Reportにしてはカセット音源だけに録音の音質〜かなり巧みにデジタル・マスタリングを施してありますがヒスノイズやドンシャリ感〜、臨場感の粗さ、アルバム構成に際してのラフさは否めませんが、それらを補って余りある演奏のクオリティの高さが驚異的、改めてWeather Reportは本質的にライブバンドであった事を認識させてくれます。Jacoの絶頂期を捉えたドキュメンタリーと言う側面もある作品です。 78年の演奏はJoe Zawinul(key) Wayne Shorter(ts,ss) Jaco Patorius(b) Peter Erskine(ds)のカルテット、80年81年はRobert Thomas, Jr.(perc)が加わりクインテット編成での演奏になっています。 こちらは2002年にリリースされたオフィシャルな未発表ライブ音源を集めた2枚組CD「 Weather Report Live & Unreleased」。Joe Zawinul~Wayne Shorterの双頭を軸に75年のAlphonso Johnson(b)、Alex Acuna(ds,perc)、Chester Thompson(ds)、Manolo Badrena(perd)、そして78年〜80年Jaco~Erskineのコンビはもちろん、それ以降83年Omar Hakim(ds)~Victor Bailey(b)のリズムセクションでの演奏も収録されており、集大成的な作品です。 「The Legendary Live Tapes」と同じカルテット編成で78年にライブ録音、翌79年にリリースされたWeather Reportの代表作「8:30」、同年のグラミー賞を受賞しました。おそらくベストテイクを厳選し曲順や構成を徹底的に練っています。ちなみにプロデュースはZawinulとJacoの2人でShorterは加わっていません。 上記2作のライブ盤はフォーマルな作品としてリリースされているので、ライブ演奏でも「おめかしした」「デコレーションされた」表情を見せていますが、「The Legendary Live Tapes」の方は「すっぴんの」「生身の」「ライブ演奏の赤裸々な面」をとことん聴かせてくれています。このCDがリリースされたお陰でWeather Reportのヒューマンな側面をしっかりと感じ取ることが出来ました。スタジオ録音やオフィシャル・ライブ演奏では聴くことの出来ないギラギラ感、崩壊寸前にまで達する演奏のテンション、インタープレイ、先鋭的な音楽をクリエイトしようとする容赦なき創造意欲、チャレンジ精神。間違いなくJacoの演奏がバンドの推進力となり、他のメンバーを強力にインスパイアし、恐ろしいまでに美しくエネルギーに満ちた前人未到の音楽を演奏しています。 JacoがZawinulに初めて出会った時に「俺の名前はジョン・フランシス・パストリアス3世で、世界最高のエレクトリック・ベース・プレイヤーなんだ」といきなり自己紹介した話は有名です。始めは相手にしていなかったZawinulも次第に彼に興味を持ち始め、当時Weather Reportに在籍していたAlphonso Johnsonが抜けることになった際、後釜でJacoを参加させることにしました。Alphonso Johnsonも素晴らしいベース奏者ですが、Jacoの演奏は更なる境地へ進まんとしていたWeather Reportに全く相応しい音楽的な起爆剤となりました。適材適所とはまさしくこのことです。それにしてもJacoがジャズ界に出現してから40年強、実際のところ彼を超えるベーシストは未だ現れていません。 ところでCDの78年のカルテット演奏で6月28日のテイクが4曲収録されていますが、実はたまたまその場に居合わせていました。場所は今はなき新宿厚生年金会館、当時の外国人ジャズミュージシャン生演奏の殿堂です。現在進行形の最先端を行っていたフュージョンバンドWeather Report、未だ見ぬ生Jaco Pastoriusを体験しに、動くWayne Shorter、Joe ZawinulとPeter Erskineを拝みに行くべく、聴く気満々で会場入りしました。 超満員の新宿厚生年金会館大ホール、今か今かとWeather Reportの登場を待ちわびています。幕が開く前から開演の狼煙を上げるべくシンセサイザーのSEが厳かに鳴り響き始めました。そして開幕です!会場割れんばかりの拍手を受け、4人のメンバーの登場です!印象的なベースのパターンからすぐに演目はShorterのElegant Peopleと分かりました。作曲者本人のエグくて極太の個性的なテナーのメロディ演奏、物凄い音色です!あれ???でも何か変です??何かが足りないのです?それは開幕前には鳴っていたはずのZawinulのシンセサイザーがコンサートが始まっているにも関わらず全く音無しなのです!!Zawinul周囲の膨大なシンセサイザー、キーボード、フェンダーローズ類をスタッフが慌てて取り囲み始め、懸命に対処していますが一向に機材が音を出す気配はありません!それに反するかのようにZawinulの怒号が聞こえます!この騒ぎを尻目に何とShorter、Jaco、Erskineの3人の演奏はめちゃくちゃ盛り上がっています!一般的にミュージシャンはイレギュラー、ハプニングがあればあるほど燃える人種です!当然の出来事でしょう、本気でハプニングを楽しんでいます!「うわー、カッコいい!」この機材トラブルによる思いがけないプレゼントに僕自身も興奮し、束の間このZawinul不在Weather Report Trioを楽しむことが出来ました。しかし無粋なことに盛り上がりに反してステージの幕がゆっくりと降り始めます。「えっ、なんで?どうして?」聴衆全員が感じたことと思いますが、完全に幕が閉まってからも3人は演奏を続けています。会場の手拍子もいちだんと激しくなっています。聴衆から笑い声さえ発せられています。「だったら幕を開けてちゃんと聴かせてよ!」と感じ始めた頃に次第に演奏が静かになりフェードアウト〜無音状態、ついに幕内で行われていたスペシャル・コンサートも終演となりました。しばしの沈黙の後、アナウンス嬢による案内が流れ始めました。舞台裏もさぞかし取っ散らかっていたのでしょう、伝説的なメッセージがこちらです。「ご来場のお客様にお詫び申し上げます。只今機械の故障が悪いため、もう暫くお待ちくださいませ」そうか、機械の故障が悪いのなら仕方ないか、と妙な納得をしたのを覚えています(笑)。 それからどのくらい経ったでしょうか、ステージ再開の運びとなり開幕し再度Elegant Peopleが、今度はもちろんシンセサイザー、キーボードのサウンド付きで(笑)演奏されました。でも先ほどまでのバンドのテンションは何処に行ってしまったのでしょう?と感じたオーディエンスは僕だけではないと思います。 そりゃあそうですよね、機材トラブルで中断したコンサートをまた当初予定の1曲めから演奏してもプレイヤー自身気持ちは入り難いですよね。当夜はクオリティ的には何ら問題のない通常のWeather Report Concertでしたが、冒頭のトラブルが無ければ更に充実した内容のコンサートになったのでは無いでしょうか。(我々はこの事を「羽黒山・月山・湯殿山=出羽三山〜出は散々」と呼んでいます…失礼しました!)

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2017.11.03 Fri

The Saxophone featuring Two T’s

今回はThe Saxophone featuring Two T’sを取り上げてみましょう。 作品の実質的なリーダーはBob Mintzer、彼が率いるカルテットにMichael Breckerが3曲ゲスト参加している形になります。 1992年11月29, 30日NYC Skyline Studioで録音。 ts)Bob Mintzer ts)Michael Brecker p)Don Grolnick b)Michael Formanek ds)Peter Erskine 1)The Saxophone 2)Giant Steps (Version 1) 3)Three Pieces 4)Two T’s 5)Sonny 6)Body And Soul ~ Everything Happens To Me 7)Three Little Words 8)Giant Steps (Version 2) この作品は日本制作によるもので、「先達の偉大なテナーサックス奏者たちに捧げる作品」をコンセプトとしています。目玉はやはりJohn ColtraneのGiant StepsをMichael Brecker、Bob Mintzerの2人が演奏している点です。特にBreckerの演奏に期待が寄せられます。テナーサックス奏者にとって永遠の課題曲Giant Steps、彼は一体どのように料理しているのでしょうか。 その前にJohn Coltrane自身のGiant Steps演奏に触れておきましょう。 こちらは1995年にリリースされたColtraneのAtlantic Labelへのレコーディングをオルターネート・テイクを含め、現存する全てのテイクが収録された7枚組Box Set、その名も「The Heavy Weight Champion John Coltrane」。Giant Steps全11テイクを聴くことができます。それにしても言い得て妙なCDタイトルですね(笑)。 メンバー p)Tommy Flanagan b)Paul Chambers ds)Art Taylorとの演奏でColtraneの完璧なアドリブ・ソロが聴けるオリジナル・テイク「Giant Steps」が1959年5月5日録音。 これに先立つオルタネート・テイクが59年3月26日(以前は4月1日と表記されていましたがこちらの日付が正確です)にリズムセクションが違うメンバーで録音されています。p)Cedar Walton b)Paul Chambers ds)Lex Humphries。 オルタネート・テイクはまずテンポがオリジナル(♩=290前後)よりもぐっと遅く(♩=240~250)、ドラマーに負うところが大だと思いますがスピード感がありません。Coltrane自身のソロも精彩を欠いていて音色もいつもよりややこもりがちです。ピアニストCedar Waltonに至ってはソロを取らせて貰えていません。false start、incompleteを含めて計8テイクが残されており、オルタネート・オリジナル・テイクはラストの8テイク目が採用されました。8回トライしましたが団栗の背比べ、と言うか最後まで通して演奏できたのがTake5とこのTake8でした。Coltraneにも迷いを感じさせる瞬間があり、これ以上テイクを重ねても代わり映えしないと判断した(された)のでその日はとりあえず終了。しかしColtraneの頭の中には「オレのGiant Stepsはこんなもんじゃ無いぞ!!」と言う意識が強力にあったと思います。ベーシストPaul Chambersは留任、ピアニストにTommy Flanagan、ドラムスにタイトさとスピード感が定評のArt Taylorを迎えて約1ヶ月後の5月5日に再びスタジオ入りしました。イヤ〜、大正解の人選、再チャレンジです!!人間諦めてはいけませんね!さぞかしカルテットでも、当然Coltrane自身も1ヶ月間猛練習を重ねたことだと思います。オリジナル・テイクはテンポがぐっと早くなり、曲の複雑なコードチェンジが一層スリリングになりました。Paul ChambersとArt Taylorの鉄壁リズムセクションに鼓舞されてか、Coltrane実に絶好調の演奏です。音色もぐっと深まったいつものスピード感、重厚感のある彼です。順調に演奏が進み、Take5がオリジナル・テイクに採用されました。「いやいや、もっと良いTakeが録れそうだ」とばかりに、多分Coltrane自身の発案でOne More Take、Take6まで録音しましたが、Take5を凌ぐ程ではなく、それまでに演奏したフレーズに捉われたりリズムセクションとのコンビネーションに不具合も聞かれ始め、Tommy Flanaganも「Johnもういいだろう?」と言わんばかりにソロをTake5よりも短くあっさり済ませています。(残念なことにTake1, 2, 4の録音は残されていません)。 ジャズ史に残るJohn Coltraneの名演Giant Stepsはこうした試行錯誤の末に生まれました。表現者たるものその舞台裏を容易く見せたくはありませんが、Coltraneの死後未発表Takeが発掘され、誰もが知りたい名演奏誕生に至るプロセスが白日の下に晒されました。Coltraneも天国で「まったくもう、勝手に墓場を暴くなよな」と言っている事と思います(笑)。 この完璧なJohn Coltrane / Giant Stepsの演奏、「神聖にして侵すべからず」と言う暗黙の了承のもと(笑)、多くのミュージシャンがこの曲の演奏を控えていましたが(?)、恐れを知らぬサックス奏者たちによるGiant Steps演奏を幾つか聴く事が出来ます。 Eddie Harris / Sings The Blues / 1972年録音 電気サックスやユニークなオリジナル曲が際立つテナー奏者Eddie Harrisのオーソドックスな演奏。 The Return of the 5000 Lb. Man / Roland Kirk / 1975年NYC録音 盲目のマルチリード奏者Roland Kirkの演奏はコーラスの起用やColtraneのソロをディフォルメしたアンサンブルが聴ける意欲作です。 Roland Prince / Color Visions / 1976年 Elvin Jonesのバンドへの参加でその名を轟かせたギタリストRoland Princeのリーダー作で、テナーサックス奏者Frank Fosterをフィーチャーしての演奏。 Kenny Garrett / Triology / 1995年 サックス・トリオでの大熱演です。Kenny Garrettの音色だからこそ成り立つアルトサックスでのGiant Steps演奏です。 作品としては残されていませんが、Branford Marsalisがライブ演奏で度々Giant Stepsを取り上げていました。こちらは87年8月26日New Port Jazz Festivalにての演奏。BranfordはColtraneの代表作「A Love Supreme」を自己のカルテットでレコーディング、ライブDVDもリリースしています。神をも恐れぬ所業の数々ですね(笑) いずれの演奏もクオリティとしては悪くありませんが、Coltrane本人の演奏には足元にも及びません。またどの演奏もどこか余興的な雰囲気〜Coltraneの演奏にはどうやっても敵わないから〜を持ちつつ行われている気がします。 話をThe Saxophone featuring Two T’sに戻しましょう。 Michael BreckerのGiant Steps演奏は1977年の2度目の来日時(初来日はYoko Onoのバンドで郡山ロックフェスティバル出演74年です!)に未確認ですがなされています。6月3, 4両日東京西武劇場にて行われたJun Fukamachi Triangle Session、そのアフターアワーズのジャムセッションで演奏されました。あまりの凄さにその場にいた全員がとても驚いたそうです。録音が残っていると良いのですが。 Michaelの演奏はコード進行に対するアプローチが他のサックス奏者誰よりも微に入り細に入り、テンションの使い方が巧みです。Giant Stepsのようなアップテンポで2拍づつコードやトーナリティが変わる曲ではさぞかし物凄いソロを取るのでは、とイメージしていました。それが93年にとうとう聴けたのです。 実はTwo T’sではMichaelによるGiant Steps演奏は当初予定されていませんでした。MintzerワンホーンによるテイクVersion2が録音を終えていましたが、2テナーでやってみては?と言う話が何となく持ち上がり、ラフなジャムセッション形式で演奏が始まったようです。 さてさて、MichaelのGiant Steps演奏は如何様なものでしょうか?それは僕の期待を遥に超えたフレージング、アプローチ、アイデアの数々です!!早いテンポで2拍づつの転調感を出すにはコードの分散和音か、Coltraneが行なっているようなコードのドレミソを用いるしかないと思っていましたが、Michaelは2拍のスペースでオルタード・テンションを用い、いわゆるColtraneのリックを用いずにMichael独自のGiant Stepsに対するリックを考案してフレージングしています。実に新鮮、斬新なアプローチです!本当に素晴らしい!! ただ気になることが一点あります。どんなにテンポが早くとも性格無比なリズムを、いかなる時にも聴かせるMichaelがいつになくRushしています。逆にここまでリズムが揺れている、走っている演奏はそうは聴いたことがありません。演奏内容がとても素晴らしいだけに不思議に思いました。このCDがリリースされた翌94年、The Brecker Brothers Bandで来日したMichaelに会った際に話をしました。「Two T’sのGiant Stepsを聴いたよ」、と言うとMichaelさっと表情が変わり「えっ、聴いたの?」と言いながら何となくそわそわし始め、「あのレコーディングの直前まで家族旅行があって1週間楽器を吹いていなかったんだ」と弁解めいたことまで言い始めました。「いや、素晴らしい演奏だと思うよ」「じゃあ大丈夫だったか?」「何も問題ないと思うよ」「オッケー、分かったよ」やっと落ち着きを取り戻したようでしたが、リズムのラッシュした演奏を残したことが本人も気になっていたようです。でも1週間楽器を吹いていなかった割には他の曲、Two T’sやBody And Soulの演奏はいつもの素晴らしさを聞かせていますので、MichaelにもGiant Stepsは手強いナンバーなのでしょう。 彼に正式なGiant Stepsのレコーディングの機会があったら、さぞかし完璧な演奏を残したことでしょう。同じColtraneのオリジナルMoment’s Noticeはレコーディングを残しています。 トランペット奏者Arturo Sandovalのリーダー作「Swingin’」96年1月NYC録音 こちらはもはや余裕の演奏です。このクオリティでGiant Stepsを演奏したらどんなテイクが残されたでしょう?

2017.10

jazz/music 

2017.10.29 Sun

John McNeil / Faun

今回はトランペッターJohn McNeilの作品「 Faun」を取り上げてみましょう。 1979年4月16日録音 tp)John McNeil ts,ss,fl)Dave Liebman p)Richie Beirach b)Buster Williams ds)Billy Hart, Mike Hyman(on Iron Horse) 1)Down Sunday 2)C.J. 3)Faun 4)Iron Horse 5)Samba De Beach 6)Ruari デンマークの名門ジャズレーベルSteepleChaseから1979年にリリースされました。サイドメンの演奏も素晴らしい大変充実した内容のアルバムです。 John McNeil自身は1948年3月23日カリフォルニア生まれのアメリカ人で、78年から現在までに15枚のリーダー作を精力的にリリースしていますが、そのうち7作品がSteepleChaseからリリースされているので、僕自身てっきりJohn McNeilはヨーロッパ人、もしくはアメリカ人でヨーロッパをベースに活動しているミュージシャンと認識していました。アメリカ国内のジャズレーベルから作品をリリースするのは70年代(当時はレコード全盛時代ですが)はメジャーアーティスト以外なかなか難しい状況で、ヨーロッパや日本のジャズレーベルに活路を見出すミュージシャンも少なくなかったように思います。CDに切り替わってからはアメリカ国内にも小回りの効くジャズレーベルが随分と誕生しました。 ところでSteepleChaseレーベルは72年にまだコペンハーゲン大学の学生だったNils Wintherが設立しました。当初はコペンハーゲンのライブハウスJazzhus Montmartreでライブ録音した音源をレコード化しており、記念すべき第1作レーベル番号1001はアルト奏者Jackie McLeanの「Live at Montmartre」です。 McLeanはそれまで在籍していたBlue Noteレーベルを離れ(ラスト作は名盤Demon’s Dance)、しばらく音沙汰のなかった彼が発表したこの作品、我々の間では海賊盤なのでは?と噂が立ちました。ヨーロッパは海賊の本拠地ですし。誰も知らないレーベル名(第1作目ですから当たり前ですね)、手作り感満載のモノクロ・レコードジャケット(裏面ライナーノートはタイプライターで書かれています!)、録音もラフな状態でしたから当然でしたが。この作品個人的には大好きなレコードです。僕は最初に持ったサックスがアルトで、その時の筆頭アイドルが Jackie McLeanでした。彼はBlue Note時代、とことん自己変革に没頭して数々の名盤、問題作を発表しました。僕はそれらを聴き捲りました。いずれその辺りにも触れたいと思いますが、Demon’s Danceで行き着くところまで行き、小休止的に発表した作品がこのMontmartreのライブ盤です。物事をある所までやり遂げた男の余裕を感じさせる作品だと思います。またJackieの息子、同じサックス奏者のRene McLeanに何度か会った事があり、僕は彼とも共演していますが父親に対するリスペクトが半端ではありませんでした。ReneはJackieが15歳の時の子供(!)、親子と言うより兄弟に近い関係かも知れませんが、父親の音楽的な苦悩、葛藤、努力、変遷を全て目の当たりにしていて父親を心底尊敬しています。 ReneもSteepleChaseからリーダー作をリリースしています。 「Watch out」1975年7月9日録音同年リリース。収録曲ReneのオリジナルBilad As SudanをJackieが気に入って度々演奏していました。 Reneの音色は父親によく似ています。プレイもかなりの影響を受けていますが、自分の個性も十分発揮しています。顔つきも父親似ですが、母親譲りなのか、かなり長身で肌の色も濃い感じです。 SteepleChaseはKenny Drew、Duke Jordan、Dexter Gordonたちアメリカからの渡欧組ミュージシャンの作品を大量にリリース、いずれもかなりのヒットを記録し、レーベルとして安定した状態になりました。同時にTete Montoliu、Niels Pedersenら欧州ミュージシャンの作品も続々とリリース、現在までになんと800枚以上のリリースカタログを有する一大ジャズレーベルに発展しました。今年で設立45年、ざっと計算しても年間20枚近くを制作している事になります。トータルに見れば実は玉石混交感がない事はありませんが。 主流派ばかりではなくフリージャズ系サックス奏者Anthony BraxtonやBrecker兄弟をフィーチャーしたピアニストHal Galperのコンテンポラリーな作品、新録音以外にもBud Powell、Kenny Dorham達の60年代のヨーロッパでの録音を発掘した作品など、バラエティに富んだラインナップを誇っています。ひとえにプロデューサーNils Wintherのおよそ半世紀に渡る継続したジャズに対する情熱、愛情のなせる技です。ヨーロッパ各国や、そして日本はアメリカのジャズを、ひょっとしたら本国よりも大切にして愛しているかも知れません。 話をFaunに戻しましょう。演奏曲は全てMcNeilのオリジナル、いずれもがオリジナリティ溢れる意欲的な素晴らしい楽曲です。同じトランペット奏者Woody ShawやFreddie Hubbardもジャズ史に残るような名オリジナル曲をたくさん書いています。そして彼らはトランペット奏者としても実に光り輝いています。McNeilはどちらかと言えばトランペットの演奏では自己主張は控え目で、共演者に自分のオリジナルを自由に演奏させて自己の音楽性を発揮するタイプです。 そしてこの作品のメンバー、人選が僕にとってまさにビンゴ!なのです。まずDave Liebman、この79年頃にテナーの演奏を休止してソプラノサックスに専念することになりました。テナーサックス演奏の調子が悪くなった、体力的にきつくなったという状況ではなく、むしろ絶頂期にテナーを封印し、思うところがあってソプラノサックスに自分のメイン楽器をあえて絞った形です。「桃は熟れて腐りかけが一番美味しい」とはよく言ったもので、ここで聴かれるLiebmanのテナーは熟れた桃、腐りかけ寸前の成熟した音色を聴くことができます。本当に素晴らしい音色です。このころのLiebmanのセッティングはマウスピースはりフェイスされたOtto Link Florida、9番から9★くらいのオープニング、リードはLa Voz Med.HardかHard、リガチャーはSelmer Metal用、楽器本体はKeilwerth、この当時アメリカではCoufというブランド名で販売されていました。ソプラノ・マウスピースはBobby DukoffのD7番、リードは現在廃番のSelmerリードOmegaを使っていました。楽器本体はSelmerかCoufどちらか微妙なところです。78年〜79年のLiebmanのテナーサウンドに一時期嵌り、彼のHPディスコグラフィーを元にかなりの作品を聴きました。4作品ご紹介しますが、いずれの作品でもLiebmanのテナーサウンドは”エグい”です。 The Opal Heart / Dave Liebman Bob Moses / Devotion   Yoshio “Chin” Suzuki / Matsuri All-In All-Out / Masahiko Sato ピアニストRichie BeirachはLiebmanの良き音楽的パートナー、LiebmanとのDuoアルバムを数多くリリースし、Questというカルテットでも断続的ですが活動しています。プレイヤー同士にも相性がありますが、この2人はとりわけ永年コンビネーションの良さを誇っています。そしてBeirachは何と言ってもそのピアノの音色が素晴らしく、とても美しく楽器を鳴らしています。Steinwayのエンドーサーでもあり、幾多のピアニストの中でも5本指に入る好みです。そして彼独特のコードワークが他の追従を許しません。Beirachのニックネームは”The Code”です。Richie “The Code” Beirach、どのピアニストも独自のコードワーク、サウンドを持って演奏していますが、とりわけBeirachのワンアンドオンリー、ハイパーでユニークなサウンドはニックネームに全く恥じず知的なサウンド使いの頂点に君臨しています。The Code’s Secret CodeというLiebmanのオリジナル曲をLiebmanとBeirachのDuoで演奏していますが、意味深なタイトルで思わず聴いてみたくなりませんか?アップしておきますのでどうぞお聴きください。 Billy HartはLiebman、Beirach御用達のドラマー、Questのレギュラードラマーを務めており、知的なユダヤ系プレイヤーのニーズを満足させるドラムワークを常に聴かせています。基本オーソドックでありながら適宜コンテンポラリーなテイストにスイッチ、アグレッシブにしてクールな対応が実に素晴らしい!Elvin Jonesに通じる音楽性を感じさせます。 ベーシストBuster Williamsも以前Blogで取り上げましたが深いベースの音色、ビート、存在感。共演者を的確にサポートするプレイはこの作品のクオリティを何倍も上げています。 1曲目Down Sunday、ソロの先発がLiebmanですがこのテナーの音色!基本枯れたハスキーさの中に太さ、ダークさ、エッジ感、隠し味に煌びやかさを交えたゴージャスな音、熟しきっています。 2曲目C.J.、アップテンポのブルース・ナンバー、ハードバップなテイストにコンテンポラリーさが加味されたカッコイイ曲です。McNeilに続くLiebmanソロ時のBeirachのバッキングに注目してください。この人のバッキングのセンスは尋常ではありませんが、途中でバッキングを暫く止めてから再開する場面、何度聴いてもワクワクしてしまいます。バッキングを止める、再開する各々の必然性を演奏から聴きとるのもジャズ鑑賞の醍醐味の一つだと思います。その後のBeirachのソロ、こんな素晴らしい音色でこのフレージング、コードワーク、堪りません!続くドラムとの1コーラスバース、Billy Hartのソロもドラムを叩いているという次元ではなく、しっかりとウタが聴こえてきます。 3曲目表題曲Faun「仔鹿」という意味ですが、McNeilのリリカルなソロが光っています。その後ろで聞こえるパーカッションはLiebman以外考えられませんが、よく聞くとかなり面白いことをやっています。 5曲目Samba De Beachは「浜辺のサンバ」と言う事になりますが、かなり波の激しい浜辺のようです(笑)。いやー、Liebman、Beirach、彼らのサポートをつとめるHart、Buster一丸となって強力に盛り上がっています!Jewish Soud祭りと銘打っても良さそうです。

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2017.10.23 Mon

Elvin Jones / Live At The Lighthouse

今回はElvin Jonesの代表作Elvin Jones Live At The Lighthouseを取り上げてみましょう。 1972年9月9日The Lighthouse, California ts,ss,fl)Dave Liebman ts,ss)Steve Grossman b)Gene Perla ds)Elvin Jones Volume 1: 1.Fancy Free 2.New Breed 3.Small One 4.Sambra 5.My Ship 6.Taurus People 7. For All Those Other Times/Announcement Volume 2: 1.Happy Birthday 2.Sweet Mama 3.I’m A Fool To Want You 4.The Children, Save The Children 5.Brite Piece 6.Childrern’s Merry-Go-Round 我々の間では「サカナ」と呼ばれ、Coltraneスタイルを信奉するテナーサックス奏者にとってバイブルのような存在のアルバムです。演奏内容もそうですが、こんなに個性的でエグいレコードジャケットを他に見た事はありません。 1973年にBlue Noteから2枚組レコードで発表され、1990年に計6曲の未発表テイクを加えてVolume1, 2の2枚のCDの形でリリースされました。この再発リリース時にDave Liebmanがプロデューサーとして関わり(CDに自身がライナーノートも書いています)、そのお陰か、レコードでは若干引っ込んでいたSteve Grossmanのサックスの音がCDではリマスタリングによりぐっと前に出て、むしろLiebmanよりも音像がはっきりしており、当日絶好調、神がかったGrossmanの演奏を一層明瞭に聴く事が出来るようになりました。ちなみにレコーディング当日はElvinの45歳の誕生日、メンバー全員演奏に気合が入るというものです。 Elvinは1966年John Coltrane Quartet退団後George Coleman、Joe Farrell、Pepper Adams、Frank Fosterらのサックス奏者たちとレコーディングをしていました。その後とうとう二人の若きテナー奏者を見つけたのです。Dave Liebmanは当時26歳、Steve Grossmanに至っては21歳!二人ともMiles Davis Bandに在籍し、すでに名前はジャズ界に知れ渡っていましたが、二人をフロントに迎えて2テナー・ピアノレス・カルテットとは素晴らしい人選、発想です。二人ともユダヤ系アメリカ人、頭の構造や幼少期からの教育環境が違います。楽器が上手いのは勿論ですが、イマジネーションに優れ、常にクリエイティブなのです。実はこのLighthouseの前年71年2月12日にElvinはLiebman-Grossmanの2テナーを配してレコーディングをしています。 Merry-Go -Round (Blue Note) 1曲目Round Town、2曲目Brite Piece、そして6曲目Chick Coreaと一緒にLa Fiesta(!)を、7曲目The Children’s Merry-Go-Roundを演奏しています。いずれの曲もコンパクトな演奏に仕上げており、各々のソロがない曲もありますが、逆にElvinの作品の中では比較的聴き易い作品になっています。それにしてもこちらのレコードジャケットも物凄いインパクトです(笑) 実はこのメンバーでの演奏がyoutubeに上がっています。 https://www.youtube.com/watch?v=F_SVp5QtuHI (上記URLをクリックして下さい) 1)The Children’s Merry-Go-Round 2)Yesterdays 3)Brite Piece 73年フランスでの演奏、テレビ放映の画像のようです。ぜひご覧になって下さい。映像が合わさるとCD以上に迫力があり、Lighthouseの演奏を凌ぐ勢いです。モノクロの画像、限られたアングルでの撮影が時代を感じさせますが、演奏内容は現代では考えられないスポンテニアスな印象を受けます。Elvinのドラムセットの斜め後ろからの撮影なので最前列にいるElvinの奥方、ケイコさんの姿を見る事が出来ます。彼女はElvinのマネージメントも手がけ、ドラムセットのセッティングからスネアのチューニングまで行っていました。Elvinはそれこそ一人では電車の切符も買う事ができない、というかそんな必要はないのですが(笑)、ケイコさんに全てを任せ自分は演奏だけをすれば良いという状態でした。Elvinは89年にKeikoさんの出身地長崎市にInternational Elvinというライブハウスを持っていました。そこではなんと毎夜Elvinが出演するのです!東京からミュージシャンを呼び、トリオやカルテットで演奏を繰り広げ、共演者が不在の時にはElvinが一夜ドラムスソロを演奏するのです!一晩Elvinのドラムソロを聴いた人はソロのインパクト以上にドラミングからメロディが聞こえてきた、と言っていました。 時代は日本がバブル絶頂期から崩壊に向かい始めた平成の初年度、ギリギリの時期に1年間だけInternational Elvinは存在したのです。実は僕も2晩そこでElvinと共演したことがあります。 その時のツーショットです。随分痩身ですがElvinと肩を組んでいるのは僕本人です(笑) どんなに素晴らしい、ジャズ界のリビング・リジェンドでも毎夜毎夜フルハウス、と言う訳には行かず、さらに一地方都市では集客も大変なことでした。加えて全てがElvinのためにという愛情深い奥方は、あまり演奏鑑賞に熱心ではないお客様に対して「貴方のジャズの聴き方は間違っている」とか、毎夜開演の前にお客様たちにかなり長い時間をかけて「平和のために祈りましょう」と説くのでお客様の足も遠のきがちになります。見かねたElvinの古くからの大親友ジョージ川口さんが自分のバンド「ジョージ川口とNew Big Four」を引き連れて応援に駆けつけることになりました。演奏のメインはElvinとジョージ川口さんのドラムバトルです。僕はそのメンバーとして長崎に向かいました。 International ElvinではElvinとKeikoさんが手弁当でわざわざ応援に来てくれたジョージさん一行を大歓迎で迎えてくれました。メンバー全員Elvinにきつくハグされ、当夜の演奏が盛り上がる気配を身を以て感じることが出来ました。 演奏はまずジョージ川口New Big Fourからスタートしました。スタンダードナンバーを軽快に演奏するジョージさん、Elvinの視線を意識してかいつになく飛ばしています。2曲演奏してその後ドラマーがElvinに変わります。あれ?この違いは何だろう?明らかに何かが違うのです。ドラマーが繰り出すリズム、音色やリズムの粘り方、最も感じたのが「1拍の長さ」です。僕が思うにジャズ界あらゆる器楽奏者の中でElvinが最も1拍が長く、目一杯たっぷりとしています。「拍」という枠の中に「音符」を入れるとするとElvinは拍に入りきらずはみ出てしまう程の長さを湛えたプレイをします。人間の繰り出すリズム、拍の長さがこんなに違うとは思いもよりませんでした。ステージの最後にElvinのオリジナル・ナンバーE.J.BluesをElvinとジョージ川口さんのツイン・ドラムで演奏しました。ミディアム・アップのブルースナンバー、テーマでのElvinのフィルインが物凄いです!超たっぷりとしているのにスピード感があってシャープ、ドラムの音色はまさにレコードで聴いたElvinそのものです!アドリブの際は二人のドラマーが同時に演奏しています。シンバルレガートも二種類聞こえてきます。1コーラス12小節に一度Elvinが大きくフィルインを入れるのですが、ジョージさんはすでに2拍以上早くなっています(汗)。長いものに勝てるわけがありません、1コーラスに一度2~3拍の調整をジョージさんその都度「あれれ?俺先に行っちゃたの?」という感じで慌てて行いつつ曲が進行していく、こんな不思議な演奏を体験したことはそれまでも、以降もありません。Elvinは大親友のジョージさんとの久しぶりの共演で満面の笑みを浮かべながら実に楽しそうに演奏しています。1回目のセットが終わるとElvinがジョージさんと固く握手、汗まみれの二人がハグをしています。その後休憩時間にジョージさんが僕に話をしにきました。ジャズファンの方々にはジョージさんのお人柄をご存知の方もいらっしゃると思います。大変に楽しい方で負けず嫌い、面白い話、経験談をよくしますが、尾ひれの他に背びれ、胸びれも付いているような話っぷりです。例えばバンドのメンバーに「先週の日曜日釣りに行ってきて、この位の魚を釣ったよ」と両手の人差し指で50cmほどの間隔を示します。メンバーの誰かが「ジョージさんそれってあまり大きくないじゃないですか?」と言おうものならジョージさんカチンと来て、「バカヤロウ!人の話は最後まで聞け、目と目の間がこの位ある魚をオレは釣ったんだ!」という具合です(爆)。「おい佐藤、エルビンのドラムはリズムが全く遅いだろ?音符が全部3連譜で早いテンポの曲なんて出来やしない。お前も大変だろうけど頑張ってくれ」ワオ!ジョージさん凄い!超負けず嫌い!一晩に物凄い2ステージを2夜に渡り繰り広げ、とても得難い経験をさせてもらいました。 いつもの悪い癖です、話がすっかり脇道に逸れてしまいました。本題のLighthouseに戻りましょう。 皆さんはThe Lighthouse Omnibookという本があるのをご存知ですか。 Charlie Parker Omnibookがあるように、このLighthouseのLiebman、Grossmanの演奏を全て採譜しオルタネイト・フィンガリングやフリークトーンの表記まで、事細かく記譜したコピー集です。こんな譜面集が出版されるなんて凄い時代になりましたね。僕も学生時代に結構Lighthouseはコピーしましたが、ここまで微に入り細に入りはやり遂げませんでした。 またLiebmanはPetter Wettreというノルウェーのテナー奏者、実は上記のThe Lighthouse Omnibookの著者ですが、その彼と2テナーカルテット、ベースが LighthouseのメンバーGene Perlaで「New Light / Live In Oslo」というCDを2006年に録音しています。Brite Piece、 Fancy Free、Sambra等のLighthouseのレパートリーを演奏しています。 学生の頃はこのLighthouseはColtrane Schoolのテナー奏者向けのマニアックなレコードと思っていましたが、現代のジャズ界ですっかり文化、ムーブメントとして定着しているように感じます。 Lighthouse Volume1の1曲目Fancy Free、トランペット奏者Donald Byrdのオリジナル曲です。Elvinのボサノバのリズムは切れ味が良くってたっぷり、強弱のダイナミクスが尋常ではありません。ここまで盛り上がるか!と言うfffからpppへの急降下、超人的コントロールが聴かれます。Liebmanのソプラノ、流暢でエグイです。Grossmanのテナー、嫌になるくらいに物凄い音をしています。この時の使用マウスピースは二人ともOtto Link Four Star Model(Otto Linkの2番目に古い30~40年代のモデル)、オープニング5番か6番位にリフェイスされています。リードはGrossmanがRico4番、Liebmanは分かりません。リガチャーはSelmer Metal用、楽器本体は二人ともSelmer Mark6、多分14万番代前後ではないでしょうか。数年前eBayにこの時Liebmanが使用していたマウスピースFour Star Modelが本人の解説映像付き!で出品されていました。よっぽど入札しようかと考えましたが、今の自分にはちょっと狭いオープニングなので断念しました。 2曲目LiebmanのオリジナルNew Breed、全編Elvinはブラシでドラミングしています。Liebmanのソロも素晴らしいですが続くGrossmanの出だしの音色に背筋がゾクゾクしてしまいます。 3曲目Small OneはCD追加曲ですが、興味深い点があります。Liebmanがフルートを吹き、Grossmanがソプラノを吹いていますが、当夜はGrossmanはLiebmanがフルートを吹いている時以外ではソプラノを演奏していません。上記のyoutubeでGrossmanがLiebmanのソプラノを受け取って吹いている光景が見られるのですが、ここでも間違いなくLiebmanからソプラノを借りて演奏していると思います。同じ楽器ですがGrossmanの方が深い音色のように聞こえます。 4曲目Gene PerlaのオリジナルSambra、可愛らしい曲ですが演奏はとんでもないことになっています!カリプソのリズムでのLiebmanのソロ、メチャメチャカッコいいです。続くGrossmanのスイングでのソロ、なんて素晴らしいタイム感、ノリでしょうか!誰よりも1拍の長いElvinに対し丁々発止と一糸乱れぬコンビネーションを聴かせます。同じElvinのドラミングで名演奏のSonny RollinsのVillage Vanguardでのライブを連想、いやひょっとして上回る演奏かもしれません。 6曲目Taurus Peopleはその後Grossman、PerlaとドラムスのDon Alias3人で結成したバンドStone Allianceの重要なレパートリーとなった曲です。ここではレコーディングを意識したと思われるコンパクトなサイズで演奏されていますが、多分Grossmanがテーマを間違えたのに加えソロが他の演奏と比べてラッシュしているのでレコード収録までには至らなかったと思います。 Volume2の2曲目PerlaのオリジナルSweet Mama、この作品のハイライトの一つです。テーマに続くPerlaのフリーソロ。きっとこの人はシャレの通じるタイプだとソロの内容から感じ取りました。今一度テーマ奏の後Grossmanが先にソロを取ります。学生の頃は二人のテナーの違いが余り分からなかったのでどちらだろう?と首をひねった覚えがあります。Grossmanの太くてダークで倍音豊富な音色、彼の完璧な奏法の賜物です。Liebmanも素晴らしい枯れた音色です。 4曲目The Children Save The Children、Elvinはシャッフルも素晴らしいです!深いビート感、シャープなシンバルレガート。Elvinのローディを長年やっていたドラマーの吉田正弘氏から聞きましたが、Elvinは膨大な数のジルジャン・シンバルを持っていたそうです。今は一体何処にあるのでしょう? 5曲目未発表曲LiebamnのBrite Piece。重厚なサウンドのオリジナルが多いLiebmanの作風の中で、楽しい雰囲気の曲想なのでBrite Pieceでしょうか?ぜひyoutubeの73年の演奏とも比較してみて下さい。 ラスト6曲目はやはり未発表曲のChildren’s Merry-Go-Round。演奏時間28:31は60年代のColtrane Quartetを彷彿とさせます。ここでもLiebman〜フルート、Grossman〜ソプラノの持ち替えが聴かれます。ソロの先発はLiebman。出だしの音色がとてもGrossmanっぽく聴こえます。フィナーレにふさわしく物凄いソロの応酬です!バンドメンバー全員体力勝負です。でも同時にとても知的な作業にも聴こえます。    

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2017.10.18 Wed

Don’t Mess With Mister T. / Stanley Turrentine

テナーサックス奏者Stanley Turrentineの作品「Don’t Mess With Mister T.」を取り上げてみましょう。 1973年6月7, 8日録音 ts)Stanley Turrentine g)Eric Gale el-p)Harold Mabern org)Richard Tee b)Ron Carter ds)Idris Muhammad perc)Rubens Bassini el.p,arr,cond)Bob James Recorded by Rudy Van Gelder Produced by Creed Taylor 1)Don’t Mess With Mister T. 2)Two For T 3)Too Blue 4)I Could Never Repay Your Love 2001年のCD化に際し1973年3月に録音された別テイク、未発表曲が計4曲追加されています。 この作品はあたかも大変声質が良い歌唱力のあるボーカリストが、お気に入りの曲を心ゆくまでの歌い上げた名唱集のようです。テナーサックスのインストルメンタル・アルバムという範疇を超えた説得力があります。 テナーサックスを志す者であれば一度はテナーらしい太い、豪快、男性的な益荒男ぶりを表現出来る、テナーサックスの王道を行く奏者を目指す時があると思います。Turrentineはまさにその憧れの頂点に座するテナーサックス奏者です。テナーサックスの魅力を箇条書きに挙げたとするならば、その全てがTurrentineの演奏に当てはまるはずです。 僕自身もTurrentineの音色を目標にした時期があります。特にこのアルバムの近辺、一連のCTIレーベルの作品での音色の素晴らしさには圧倒されました。この頃のTurrentineの使用マウスピースはOtto Link Florida Metalのオープニング9番にリードはLa Voz Med. Hard、楽器本体はSelmer Mark6 Gold Plateです。数字的に少しオープニングの狭いOtto Link8番、8★と9番、実は結構な吹奏感の違いがあり、峠一つ越える感じです。僕自身良い個体を手に入れようと、かつてかなりの額をこの辺りのオープニングのマウスピースに投資した覚えがあります(笑) Turrentineの音色の秘密を探るべくデビュー当時から晩年までの使用マウスピース、楽器を調べましたが一貫してOtto Link Metal、Selmerで、テナーサック奏者の標準的セッティングです。他に例えば身体的特徴が影響しているのではないかと、よくよく見ればTurrentineは首がかなり短いのです。ガタイが良くて手脚が長いにも関わらずなので際立ちますが、この短さが音色に影響しているのでは??とまで考えてしまいましたが、まさか。でも見回しても彼ほど首の短いテナーサック奏者はいませんので、首の短い奏者は良いサウンドが出せる論、あながち間違いではないかも知れません。 Turrentineの演奏スタイルはいわゆるTexas Tenorにカテゴライズされますが、他のTexas Tenor達、Arnette Cobb、Buddy Tate、Illinois Jacquet、Eddie “Lockjaw” Davis、Willis Jackson、Big Jay McNeely、Herschel Evans、David “Fathead” Newman、James Clay、Don Wilkerson、King Curtis、Wilton Felder、Sam Taylorとは根底にあるサウンドに同傾向のものを感じさせますが、表現力やジャズ的要素の深さ、風格で明らかに一線を画しています。本人もかなりプライドの高さを感じさせる人物で、「あなたのようなテナーサックスの音色を出すにはどうすれば良いのでしょう?」という質問に対し「僕のような音を出すのは他の人ではちょっと無理だろうね」と答えています。かつて雑誌の取材でTurrentineとMichael Breckerの二人に僕がインタビューするという企画がありました。この二人をアイドルとする僕は嬉しさ楽しさ反面、かなり緊張気味にその場に赴きました。Turrentineはあの強面で僕にコイツは誰だ?と睨みつける感じで椅子に座っています。その隣のMichaelが空気を察知し「Stanley、彼は僕の友人で素晴らしいテナー奏者のTatsuyaだ」と助け船を出してくれ、「おぉ、そうか」と言う感じでTurrentineがたちまち破顔し、雰囲気が和らぎました。実はMichaelもTurrentineの大ファン、彼を尊敬し、彼の演奏にも多大な影響を受けています。2人はインタビューの最中、終始和やかな感じでお互いをリスペクトしながら丁寧に質問に受け答え、互いの話題に談笑していました。このツーショットによるやり取りははあたかも横綱相撲を観るようでした(笑) MichaelはTurrentineにアメリカからのフライト前に自分のリーダー作をプレゼントしたらしく、「飛行機の中でMichaelのCDを聴いてきたよ。素晴らしかったね!」と言っていました。このインタビューが1989年、時期的にはMichael「Don’t Try This At Home」がリリースされた後ですが、その前年にリリースされた初リーダー作「Michael Brecker」を渡した可能性もありますね。   89年7月はSelect Live Under The SkyにてSELECT LIVE”SAXOPHONE WORKSHOP”が企画され、出演しました。ts)Michael Brecker ts,ss)Bill Evans ts)Stanley Turrentine ts,as)Ernie Watts  p,direction)Don Grolnick b)鈴木良雄 ds)Adam Nussbaumというオールスター・セッション。そうなんです、インタビューはこの時に実現しました。この4テナーの人選、実はMichaelにオファーがあったのです。彼曰くTurrentine、Bill Evansの他にJoe Hendersonを推薦したそうですが、Ernie Wattsは他のバンドで当日出演が決まっており、主催者側としてはどうしても起用して欲しかったようでやむなくJoe Hen案はボツになりました。またこの前年にMichaelに会った時「Tatsuya、誰かベーシストを知らないか?来年日本でSummer Jazz Festivalに出演する予定なんだ」と尋ねるので、Chin Suzukiと言う素晴らしいプレーヤーがいるけれど、と答えました。当時僕は彼のバンドに参加させて貰っていました。I know his name. と言うやり取りがあった関係かどうかまでは分かりませんが、チンさん鈴木良雄氏の出演が決まりました。何のフェスティバル?とまでは聞かなかったのですが、まさかこのLive Under The Skyの4テナーとは思いもよりませんでした。そして89年7月29日よみうりランドEastのステージでSaxophone Workshopの演奏が行われたのですが、コンサート前日のリハーサル時にErnie Wattsがトラブルを起こしたのです。 Michaelに招待して貰い、都内某所のリハーサルスタジオでその全てを見聞きすることができました。Don Grolnickのオリジナル曲やLive Under The Sky’89のコンセプトであるDuke Ellingtonの作品スイングしなけりゃ意味がない、等をGrolnickの素晴らしいアレンジ、超豪華なミュージシャン達で楽しく綿密にリハーサル…と思いきや、何となくリハーサルの進行が思わしくありません。いちいち口を挟む輩のお陰で円滑に進行していないのです。それが誰あろうErnie Watts、エキセントリックな性格の彼は自分がリーダーでもないのにバンドを取り仕切ろうとしています。自分がいつも中心に居ないと気が済まない人っていますよね。リハーサルが終盤に差し掛かろうとした頃、ついに熱血漢のAdam Nussbaumがブチ切れてドラムスから立ち上がり、Ernie Wattsに殴り掛かろうとしたのです!!そこをGrolnickとMichaelがすぐさま「まあまあ、Adam、ここはひとつ落ち着いてくれよ」と間に入りました。暫くAdam NussbaumとErnie Wattsの睨み合いが続きましたが、機嫌を損ねた方のErnie Wattsはすぐさま楽器をケースに仕舞い込み、スタジオをそそくさと出てしまいました。TurrentineやBill Evans、チンさん 達は呆気にとられた感じで傍観しているのみでした。その後は当然、残された者達で早退した男の悪口大会になります。大会の終いには「Ernieはさ、あいつIndianの血が混じってるらしいぞ」出生にまで話が及んでいました。こんなトラブルがあった翌日のコンサート本番、演奏がバッチリと上手く行く訳がありません。更には事もあろうにErnie Wattsが曲の進行を取り仕切り、勝手に自分が司令塔となって指で4,3,2,1とCue出しをしています。当夜の演奏は出来が悪い訳ではありませんが、どこか空々しい雰囲気が漂う内容になってしまいました。翌日Michaelに会うと当然Ernie Wattsの話になり、「そもそもErnieは僕に強いライバル意識を持っていて、全然フレンドリーではなかったね」そして昨夜のErnie Wattsの所業の確認、それが一通り終われば今度は話の矛先がMichael Brecker Bandに主催者側の意向で参加したパーカッション奏者Airto Moreiraに向き、「オレはAirtoとは一緒に演奏したくなかったけれど、やっぱり酷かった。あの演奏じゃあまるでサーカスだ!」滅多に人の悪口を言わないMichaelですが、いつになく熱い語り口でした。   すっかり脱線してしまいました(汗)。話をDon’t Mess With Mister T.に戻しましょう。 1曲目表題曲Don’t Mess~はWhat’s Goin’ Onで有名なソウルシンガー、作曲家Marvin Gayeのオリジナル曲。72年の彼の大ヒット作「Troubled Man」に収録されている名曲です。Mister T.が当人Turrentineの事かどうかは定かではありませんが、彼のテナーサックス演奏のために書かれたかのようにその音楽性に合致した曲です。ここでのTurrentineの素晴らしい音色、歌い回しと言ったら!以前どこかの音楽誌に書いたことがありますが、自分の音色に迷いが生じた時には原点に戻るためにこのCDを聴くことにしています。確かにテナーサックスの録音に長けた、その腕前はジャズ界の至宝と言って良いRudy Van Gelderによるレコーディングですが、それにしてもこの音色には参りました。Turrentine自身も以降のライブでは重要なレパートリーの一曲になりました。 2曲目はTurrentineのオリジナル曲、Two For T。多分TはTurrentineで、もちろんVincent Yumans作曲、Doris Dayの唄でお馴染みのTea For Twoに引っ掛けた曲名ですが、アメリカ人もダジャレが好きなので安心しました(笑)スイングフィールのカッコいいナンバーで、Turrentineの唄心やリズムセクションとのインタープレイを存分に楽しめます。ソロの途中に出てくるHigh F音〜4度下のB♭音の色気とファンキーさに何度聴いてもグッと来てしまいます。 3曲目はTurrentineの大ヒット作Sugarと同傾向、似た雰囲気のマイナーのブルースナンバーToo Blue。一度大ヒットが出ると類似曲でも本人作ならば許される傾向は洋の東西を問わずあるものです。そう言えばSugarに纏わる逸話ですが、1973年8月CTIオールスターズで来日したTurrentine、楽屋でずっと練習をしていたそうですが一体何を吹いていたのか、何とSugarのメロディを延々と何十回も練習していたのです。大ヒットして既に何千回、何万回と演奏していたでしょう。でも多分自分自身はテーマ、メロディの唄い方に納得がいかず更に良く吹けるようにと暇さえあれば精進していたのです。見習わねば。 4曲目はTurrentineのサックスがまるでソウル・シンガーの歌いっぷりに聞こえてしまうゴスペル調のナンバーI Could Never Repay Your Love。Bob Jamesのアレンジも冴えています。Turrentineも録音された音色は轟音で生音が大きいように聴こえますが、Joe Hendersonと同じく意外と生音は小さいです。 この作品を最後にTurrentineは CTIレーベルを離れ、Fantasyへと移籍します。レーベルのカラーでしょう、作品はよりポップな芸風に変わって行きますがTurrentineはひたすらマイペースにそのサウンドを貫き通しています。個人的にはレコーディング・エンジニアが変わったためTurrentineの音色が物足りなくなりましたが。

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2017.10.11 Wed

The Standard Joe / Joe Henderson

今回取り上げるのはテナーサックス奏者Joe Hendersonのリーダーアルバム「The Standard Joe」 テナー、ベース、ドラムスのトリオ編成による演奏です。 ts)Joe Henderson b)Rufus Reid ds)Al Foster 1991年3月26日NY録音 イタリアのRedレーベルから同年にリリースされました。 Joe Hendersonにとって次なるステップへの足掛かりになった作品です。 1)Blue Bossa 2)Inner Urge 3)Body And Soul(Take1) 4)Take The A Train 5)Round Midnight 6)Blues In F (In’n Out) 7)Body And Soul(Take 2) 誤解を恐れずに言うならば、Jazz演奏に於いてその楽器の良さやプレイヤーの個性を存分に引き出す演奏フォーマットはベーシスト、ドラマーを従えたトリオ編成です。ピアノトリオに代表され、ギタートリオしかり。サックス奏者もトリオ編成が可能ですが、行うには十分な音楽性をたたえたプレイヤーでなければなりません。 何しろコード楽器が不在のためにサックスのラインからコード感を確実に出せるハーモニー感が備わっている、演奏するメロディラインからリズムをしっかり聴かせる事が出来る、ベーシストとドラマーを音楽的に牽引する能力がある、同時に両者のプレイを踏まえつつインタープレイが出来るセンスを持つ、あと個人的にはサックスの音色やニュアンスに魅力がある事が条件になります。 「The Standard Joe」を語る前にサックストリオの名盤を何枚か挙げてみましょう。 まずはSonny Rollinsの「A Night At The Village Vanguard」 1957年11月3日NYC  ts)Sonny Rollins b)Donald Bailey, Wilbur Ware ds)Pete La Roca, Elvin Jones 素晴らしいテナーの音色、これぞレイドバック!というリズム感、究極小粋な”鼻唄”感覚のスインギーなソロ、Rollins絶好調です。 John Coltraneの「Lush Life」A面3曲のトリオ編成も素晴らしいです。 1957年8月16日NYC ts)John Coltrane b)Earl May ds)Art Taylor Rollinsに比べると構築的なアドリブソロを展開していて、この頃から求道的なテイストを感じます。構築的であるからこそ後年Coltraneには幾多のフォロアーが現れたとも言えるでしょう。 ドラマーElvin Jonesのリーダー作でJoe Farrellをフィーチャーした「Puttin’ It Together」 1968年4月8日NYC ts,ss,fl)Joe Farrell b)Jimmy Garrison ds)Elvin Jones Elvinが盟友Coltrane没後に組んだテナートリオ、Coltrane役に選ばれたのは当時新進気鋭のマルチリード奏者Joe Farrellでした。Coltrane Likeではありますが独自のカラーを持ったプレイヤーです。以降の活躍には目覚しいものがありました。 サックストリオはテナー奏者だけの特権ではありません。アルトサックスの名手Lee Konitzの代表作でもある「Motion」 1961年8月29日NYC as)Lee Konitz b)Sonny Dallas ds)Elvin Jones クールな中にも大変にホットなジャズスピリットを湛えたKonitzの、ワンアンドオンリーなソロが聴けます。全曲有名なスタンダードナンバーが収録されていますが、いずれもが半世紀以上経過してもなおフレッシュさを失っていません。そしてどのソロも各々の曲目の代表的な演奏と言えます。Elvinの的確なサポートがこの作品の品位を高めています。 ベーシストDave Hollandのリーダー作でアルト奏者のSteve Colemanをフィーチャーした作品「Triplicate」 1988年3月NYC録音 as)Steve Coleman b)Dave Holland ds)Jack DeJohnette 個性的(変態的?)アルトのColemanをHolland、DeJohnetteの二人が驚異的なリズムでサポートしています。 現代ジャズシーンに欠かせないアルト奏者の一人、Kenny Garrettのサックストリオ作品「Triology」 1995年リリース as)Kenny Garrett b)Kiyoshi Kitagawa, Charnette Moffett ds)Brian Blade Sonny RollinsとJoe Hendersonに捧げた作品だけあってテナーと見紛うばかりの演奏。でもサックスの音色は超個性的ながら間違いなくアルトサックスそのものです!このバランス感にやられてしまいました。 もう一作番外編?としてThe Ornette Coleman Trio「At The “Golden Circle”Stockholm 1&2」 1965年12月3,4日 Stockholm as)Ornette Coleman b)David Izenzon ds)Charles Moffett 以前はさっぱりこの演奏がワカリマセンでした(汗) Ornetteだけが出せるアルトの音色、フレージングやソロの展開の自由さ、捉われのなさ加減、僕の耳は最近やっとこの演奏に追いつけるようになりました。 The Standard Joeに話を戻しましょう。 ジャズファンの方なら耳にしたことがある話かも知れません、「Joe Hendersonの生音は小さい」と。レコーディングされた彼のテナーの音はあれだけ太くてゴリゴリとしており、音の輪郭もはっきりしているのに本当?と思う方もいらっしゃるでしょう。この話は都市伝説ではなく真実、いわゆる「マイク乗りの良い音」の典型的なケースで、黒人サックス奏者に多いのですが、オープニングの狭いマウスピースに薄めのリードを使い、「フッ」と吹いてアンブシュアを極力ルーズにしてマウスピース、楽器の美味しい倍音成分をしっかりと鳴らしている奏法なのです。他に該当する代表的なサックス奏者がアルトのCannonball Adderleyです。Johnny Hodges、Benny Carterもまたしかり。 因みにJoe Henの楽器セッティングはマウスピースがSelmer Short Shank(Long Shank使用時も有り)オープニングEにリードはLa Voz Med.Soft、サックス本体はSelmer Mark6 シリアル5万6千番台です。アンブシュアですが、デビュー当時から口ひげあごひげをたっぷりとたたえた口まわりですので、その詳細は謎に包まれています(笑) この作品のドラマーは音量を小さくタイトに且つダイナミックに叩けるプレイヤーの代表選手Al Foster、Joe Henとのコンビネーションは完璧です。 以前ブルーノート東京にJoe Henderson Trioの演奏を聴きに行きました。メンバーはベーシストにGeorge Mratz、ドラマーにJeff ”Tain” Wattsでした。Jeff WattsはMarsalis兄弟やMichael Breckerと演奏できるストロング音量爆発タイプの演奏を信条としています。演奏中によく動くことでサックスのベルがマイクロフォンからしばしば離れてしまうJoe Hen、演奏が盛り上がれば盛り上がるほどオフマイクになり、Jeff Wattsも大暴れ状態、爆音にかき消されてテナーの音は全く聞こえませんでした(涙) ベーシストRufus Reidも大変にタイトなプレイ、音色も生音に近いサウンドなのでAl Foster同様Joe Henを小さな音で大きくサポートしています。 1曲目トランペッターKenny Dorhamの代表曲Blue Bossa、Joe Henは彼の初リーダー作「Page One」でやはり1曲目で演奏していますが、ここでの成熟ぶり、変貌ぶりと言ったら!! 自由奔放とはまさにこの事を指すのでしょう。リズミックなサックスアカペラのイントロから始まりますがシンコペーションを上手く活かしたメロディープレイです。ソロもメチャイケてます!ストーリーの意外性はWayne Shorterにも通じるところがありますが、Joe Henの方がより「ジャズ」を感じさせます。トリルを駆使した「Joe Henフレーズ」はとてもインパクトがあります。 今はなき六本木Pit Innに1987年、オルガン奏者のKankawa TrioフィーチャリングJoe Hendersonを聴きに行きました。ライブ終演後にJoe Henに話し掛けてみましたが、小柄なJoe Henとても高いテンションで早口に対応してくれました。「初めましてジョー、僕もテナーサックスを演奏しています」と話すと「ああそう、じゃあ今度僕にレッスンをしてくれるかい?」「?…あなたが僕にレッスンをしてくれるのではなく、僕があなたにですか?」「そうだよ!お願いします!」と彼流の初対面のジョークなのでしょう、やられました(笑) 2曲目はJoe HenのBlue Note Labelへの3作目のリーダー作の表題曲、ベースもメロディユニゾンの難曲Inner Urge。テーマ自体がJoe Henフレーズのオンパレードの名曲です。イヤ〜この演奏もカッコいいです! John McLaughlin Mahavishnu Orchestraに在籍していたベーシスト、Rick Lairdが自身のリーダー作「Soft Focus」でJoe Henを迎えて同名曲をOuter Surge(ダジャレの一種ですね)と言うタイトルで録音しています(1976年12月10.11日)。こちらは異種格闘技的なセッションですが、Joe Henはいつもの様にマイペースで素晴らしい演奏を繰り広げています。 それにしてもJoe Henのタンギング、タイムの素晴らしさ、楽器のコントロールの的確さ。人から聞いた話ですが、Joe Henが夜中ギグから家に帰ってくると演奏のままのハイテンション、休むことなくそのまま朝まで練習するそうです。きっと「ファック!今日はあそこがダメだった、出来なかった。悔しい!」とか言いながら。練習の鬼でないとこんなSuper Human Beingのような演奏が出来る訳がありません。 3曲目はスタンダードナンバー、テナー奏者のバラードプレイ・ショウケースBody And Soul。7曲目にTake2も収録するほどのお気に入り、もの凄いクオリティの演奏です。 4曲目はJoe Henが取り上げる事自体が意外なBilly Strayhornの名曲Take The A Train。これまた素晴らしい演奏です!「おいおい、君の褒め言葉のボキャブラリーには素晴らしいしか無いのかい?」と言われても仕方ありません、本当に素晴らしいのです!!曲という題材があってそれを元にストーリーを語って行く、落語のお題をしっかり膨らませて行く作業と同じ次元ですね。Joe Henフレーズ、ワールド、歌い回しがTake The A Trainの曲想と見事に有機的に反応しています。 推測するにここでの選曲が功を奏したことにより、Joe Henは1991年9月3~8日録音、翌1992年Verve LabelからBilly Strayhorn特集であるLush Life : The Music Of Billy Strayhornをリリース、同年Grammy賞Best Jazz Instrumental Performance, Soloistを受賞するという栄誉に輝き、「通好みのテナーサックス奏者」が一躍ジャズ界を代表するテナーサックス奏者に変貌しました。そしてその後Verveから名作を立て続けに発表する事になります。 5曲目はJoe Henオハコのバラード、Round Midnight。The Lighthouseのライブ盤や日本公演のライブでも演奏しています。 Joe Henの音色、吹き方とこのバラードが絶妙にマッチしていると思います。こちらでもまた名演奏が生まれました。 6曲目は自身のBlue Note2作目のリーダー作「In’n Out」からの表題曲。Joe Henならではの凄いメロディラインの曲です。 Blues In Fということですが、これまたJoe Henらしいトリッキーなイントロ〜エンディングが付け加わっています。当CD最速の演奏、物凄〜くカッコいいです!スピード感、スイング感、ソロの構成、ベースとドラムスとのコンビネーション、完璧です!!Al Fosterが曲が終わってからも曲中でプレイしたフレーズを名残惜しそうに(?)まだ叩いているのが印象的です。

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2017.10.01 Sun

Buster Williams / Something More

美しくて深い音楽、ベーシストBuster Williamsのリーダー作「Something More」を取り上げてみましょう。 New JerseyにあるRudy Van Gelder Studioにて1989年3月8,9日録音。 ドイツのIn+Out Recordsから1989年にまずレコードがリリースされ、後に1曲追加(7曲目I Didn’t Know What Time It Was)されてCDもリリースされました。 およそCD発売時の追加テイクに関しては残り物感が漂いますが、この作品では全く異なり、むしろ最重要な演奏曲です。演奏時間が14分28秒と長く、レコードでは時間の関係でやむなく収録を見合わせたように思います。CD化されて作品として完全な形になりました。 bass,piccolo bass)Buster Williams piano,keyboards)Herbie Hancock tenor,soprano sax)Wayne Shorter trumpet)Shunzo Ohno drums)Al Foster 1.Air Dancing 2.Christina 3.Fortune Dance 4.Something More 5.Deception 6.Sophisticated Lady 7.I Didn’t Know What Time It Was 我々ミュージシャンの演奏を生かすも殺すも録音エンジニアの腕に掛かっていると言って過言ではありません。 この作品は内容の素晴らしさもさることながら、録音がとても素晴らしいのです。美しい音で良い演奏を楽しめるのは音楽鑑賞の原点です。 さすがBlue Note、Prestige、Impulse、CTI、ジャズ黄金期の名レーベルの録音を支えたレジェンド・エンジニア、Rudy Van Gelder(RVG)、そして自身のNew Jerseyにあるスタジオでのレコーディングです。各々の楽器の音色の美味しい成分、倍音成分、輪郭、雑味、音像の位置を的確に捉えたレコーディングに仕上がっています。 RVGは楽器の特性、音色の本質、ミュージシャンそれぞれの個性やスタイルによるサウンドの表現の違いや醸し出される音のどこに着眼すべきなのか、芸術的な領域まで理解しています。その意味ではもう一人の参加ミュージシャンと言えます。ミキシングの際の各楽器の配置、レイアウト、マスタリング時のサウンドの変化の度合いも全て見据えて録音に臨んでいるので、さぞかしミュージシャン達は自分の音をRVGに任せていれば安心、大船に乗った気持ちで演奏に専念することが出来た事でしょう。 60年代Blue Note Labelの諸作ではポータブル蓄音機やジュークボックスでのレコード再生を念頭に置いた、『凝縮された音質』での録音で、これらをCD化した際には多少違和感のある音質でしたが、本人RVGによる24bitデジタルマスタリングでかなりの高音質に変化しました。でも個人的には60年代Blue Note録音の再生はレコードに勝るものはありません。 80年代CDのデジタル録音が主流になってからもRVGはその手腕、他の追随を許さないセンス、生涯クオリティの高いレコーディングのするための研究を続けた情熱、実績から、録音エンジニアの第一人者の地位を確固たるものにしています。 ここでのWayne Shorterのソプラノサックスの深い音色が堪りません!もう何度も耳にしていますが聴く度にゾクゾク、ワクワクしてしまいます!誰も成し得ていない未知の領域の音色。いわゆる普通のソプラノサックスの音色とは全く次元が異なります。太くてエッジー、暗くて明るくて、ツヤがありコクを併せ持ちつつ、七色に刻々と変化するサウンドを完璧なまでに押さえています。 実はソプラノサックスを録音するのはテナーやアルトよりもずっと難しく、エンジニアの腕の振るいどころ、いや、むしろその逆で鬼門かも知れません。ソプラノのベル先端に1本、管体中程に1本、そしてソプラノの全体のアンビエント(雰囲気)を収録すべくもう1本、少なくとも合計3本のマイクを必要とし、収録の際の楽器とマイクの距離や位置、イコライジング、更には3本のマイクのバランスが大切なのです。以前取り上げたことのあるSteve Grossmanの「Born At The Same Time」のソプラノの録音はベル先端に1本のみ使用の音色に聞こえます。これはこれで迫力のある音色ですが、どこか「チャルメラ」っぽさは否めません。大雑把に述べるならばベルからの音は金属的な硬い成分、対する管体中程からの音がマイルドな美味しい成分と言えます。ソプラノRVGは特に管楽器、中でもテナー、ソプラノサックスの録音が特に上手いと思います。Blue Noteで何枚ものリーダー作を録音した名テナー奏者Stanley Turrentineをして、「僕の生音よりRudyの録音の方が全然格好良いよ」言わしめています。Sonny Rollins、John Coltraneに始まり、Eddie “Lockjaw” Davis、Illinois Jacquet、Tina Brooks、Dexter Gordon、Hank Mobley、Benny Golson、Willis Jackson、Joe Henderson、Sam RiversたちのRVGが手掛けたテナーの音色は、確かに本人達の生音よりも良いのかもしれません(笑) この頃のWayne ShorterはYAMAHA YSS-62ネック部分がカーヴしたストレート・タイプのソプラノを使用しています。YAMAHAからのエンドースではなくWayne本人がチョイスしたと言われています。マウスピースはOtto Link Slant、オープニングが10番と特注以外考えられない仕様のものです。因みにテナーのマウスピースもOtto Link Slant 10番。ソプラノMPはOtto Link本人に何本か作って貰ったそうで、複数本まとめた状態での収納されたケースを見た事がある人がいます。リードに関しては色々な種類を使っていたようで、この頃は何を使っていたかは確認できていませんが、後年Vandorenの3番を使っていた模様です。テナーはRicoの4番を使用していたので、ソプラノもひょっとしてRicoを使っていたのなら3番から3半の辺りと推測されます。 作品中2曲目のChristinaの演奏が真骨頂です。メロディ、コード進行の美しいBuster Williamsのオリジナル曲、まさしくWayne Shorterのソプラノのために書かれた曲と言えます。Buster Williamsのベースライン、Herbie Hancockのバッキング、YAMAHAのDX7と思しき?シンセサイザーのオーケストレーション、ドラムスAl Fosterのカラーリングが「さあ下ごしらえは出来上がった。Wayne、思いっきり歌ってくれ!」とばかりにバックアップしています。 タイトル曲のSomething Moreでも全く同様の事が言えます。因みにBuster Williamsは”Something More Quartet”というバンド名でリーダー活動を継続的に行なっているようです。メンバーは流動的ですが、フロントはアルトサックス奏者の場合が多いようです。 そしてそして、もう一曲Wayneのソプラノサックスが大活躍するテイクが、CD追加分のスタンダード・ナンバーI Didn’t Know What Time It Was。この当時はWayne がスタンダードを演奏する事自体が珍しかったのです。1960年代Art Blakey Jazz MessengersやMiles Davis Quintetで曲目限定ではありましたが、スタンダード演奏を聴くことが出来ました。その後Weather Reportや自分のグループでの演奏では全くと言って良いほどスタンダード・ナンバー演奏から無縁でした。 このRichard Rodgersの名曲をBuster Williamsが素晴らしいアレンジに仕上げました。ミステリアスなベースパターンに始まり、イントロほか随所にWayneが独り言を呟くようにユニークなブリガードを入れています。美しくて深い音色でこんな風にメロディを演奏されたら我々は成す術がありません(涙)。それにしてもこのWayneのソロは一体何を考えているのでしょう??いわゆるジャズのインプロヴィゼーションで使われるリック(常套句)は用いられてもアクセント的に、異常なほどに研ぎ澄まされたメロディセンス、コード感から成り立つアドリブは、全てその場で自然発生的に生まれているに違いありません。このワンアンドオンリーぶりは他の追従を許すさず、そのためにWayne Shorterスタイルの後継者が生まれることを拒んでいます。 続くHerbieのピアノソロ、リーダーのベースソロ、ドラムスソロとこの曲の演奏者全員のアドリブがたっぷりと聞くことが出来、アルバムの大団円となります。    

2017.09

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2017.09.19 Tue

Jack Wilkins / You Can’t Live Without It

今回取り上げるのは、ギタリストJack Wilkinsのリーダー作「You Can’t Live Without It」(1977年10月31日NY録音)。 g)Jack Wilkins ts)Michael Brecker flh)Randy Brecker  p)Phil Markowitz b)Jon Burr ds)Al Foster Side A 1.Freight Trane 2.What’s New / Side B 1.Invitation 2.What Is This Thing Called Love? 77年当時Michael Breckerが参加したレコードでアコースティックな作品は数が少なく、更にジャムセッションで取り上げられるようなポピュラーなナンバーばかりを演奏した例は他にありません。そしてこれが実に素晴らしい内容で、僕はこの演奏でMichael Breckerに開眼してしまいました。 録音されたレコードはその瞬間の演奏、スタジオ内の雰囲気を全く真空パックにして封じ込めたものです。 特にジャズのような打ち込みやオーバーダビングを基本的に行わない(実はBlue Note Labelの名盤やMiles Davisの作品の幾つかは違っていたようですが)一発勝負の録音には、生々しいほどに録音現場の情景が浮かび上がる場合があります。 この「You Can’t Live Without It」は収録された4曲がスタンダードやジャズマンのオリジナルで、ほとんどアレンジも施されていない点からリハーサルを行ったとしても別日に一回、もしくは録音当日にリハーサルを行って準備が出来、『さあ、テープを回してくれ』的なラフな状態で演奏されたように思います。 そしてこの手のセッションでは往々にしてどこか音楽的に隙間風が吹く物足りなさ、統一感の希薄さを聞かせてしまいますが、この作品は極めて高度な次元で演奏が展開されています。 メンバー全員が一丸となってクリエイティヴに音楽を作り上げる姿勢が収録曲全てから、一瞬の緩みもなく、お互いの音を聴き合い、究極一音も無駄な音が存在しない高みにまで演奏が昇華している様に聞こえます。とにかく自然体なのです。 それはリーダーJack Wilkinsの人柄、音楽性から?メンバー6名集合体の相性から?プロデューサーの采配によるもの?レコーディングスタジオの雰囲気から?ここまで一体感のあるセッション・レコーディングに仕上がるには、必ず何か必然、理由があるはずです。 かつてMichael Breckerに会うたびに色々な話をしました。こちらからの一方的な質問といっても良いかも知れません。それこそ音楽的な事に始まり、彼の両親兄弟家族について、食べ物の嗜好、休日の過ごし方、好きな映画について… 彼はどんな質問にも丁寧に分かり易く答えてくれましたが、残念ながら気になっていたこの作品のクオリティの高さが何に起因するのかについて、尋ねる機会を逸してしまいました。 この作品のレーベルChiaroscuro Recordsにも気になる点があります。現在も作品をリリースしているChiaroscuro(絵画用語で明暗法、キアロスクーロ)RecordsはEddie Condon(cl)、Earl Hines(p)、Ruby Braff(cor)、Buck Clayton(tp)、Bob Wilber(ss)、Mary Lou Williams(p)、Al Grey(tb)といったいわゆる「中間派」(1950年代に存在したジャズの演奏スタイルのうち、バップにもスイングにも分類されないスタイルの総称)ミュージシャンの作品ばかりを制作しており、この「You Can’t Live ~」はレーベルのカラーに反して全く毛色の異なるミュージシャンによる、異色な内容の作品に仕上がっています。 Jack Wilkinsにはこの作品の前にもう一枚同レーベルからリーダー作がリリースされています。 1977年2月NY録音「The Jack Wilkins Quartet」 g)Jack Wilkins flh)Randy Brecker b)Eddie Gomez ds,p)Jack DeJohnette Side A 1.Fum 2.Papa, Daddy And Me 3.Brown, Warm & Wintery / Side B 1.Buds 2.Falling In Love With Love 3.500 Miles High Randy Breckerのワンホーン・カルテット、Eddie GomezにJack DeJohnetteという素晴らしいリズム陣、彼らメンバーのオリジナルを取り上げた、内容的にはこちらも”コンテンポラリー・ジャズ”です。 上記2枚のレコードを1枚のCDにカップリングしたものが「Merge」(合併)というタイトルで1992年Chiaroscuroよりリリースされています。残念ながら「The Jack Wilkins Quartet」の方から収録時間(77分30秒!)の関係からか1曲カットされていますが、大変お得なCDですね(笑) そして後年「The Jack Wilkins Quartet」のリズムセクションにMichaelとRandyの2管を加えたJack Wilkins Chiaroscuro Records総まとめ?的な作品「Reunion」を2000年12月11日NYで録音、やはりChiaroscuro Recordsから2001年にリリースしています。惜しむらくはMichael当時のレコード会社との契約の関係で3曲だけの参加になっていますが、テナーの音色が実に素晴らしく録音されています。 この演奏についてはMichaelに尋ねた事があります。収録曲Horace SilverのオリジナルBreak Cityでのソロ、いつものようにカッコ良いには良いのですが、何だかちょっと変です。落ち着きが無いと言うか、いつになく音楽的ではなく同じBreckerフレーズの連発があり、「あれはどうしたの?」と聞くとMichaelさんちょっと困ったような顔をして「スタジオのブースがとても狭くて演奏し辛かったんだ」と答えてくれました。どうも別の理由がありそうな返答の仕方ですが、演奏的不具合は本人にも覚えがあったのですね。 それにしてもJack Wilkins + Chiaroscuro Records = Contemporary Jazzには一貫した流れがあります。 今一度Chiaroscuro Recordのリリース・カタログを調べるとJack Wilkins以外全てが前述の「中間派」のミュージシャンの作品で完璧に占められていました。「You Can’t live ~」のスポンテニアスな素晴らしさには何かレーベルとの関わり具合が関係していても良さそうな気がします。 この写真は1977年当時のMichael Breckerのアンブシュアのクローズアップです。使用マウスピースはOtto Link Double Ring 6番、これはクラリネット奏者Eddie Danielsから譲り受けたものです。リードはLa Voz Medium Hard、リガチャーはSelmer Metalテナー用。テナー本体はSelmer MarkⅥ 67,000番台。勿論この「You Can’t Live ~」の演奏も含め、この当時(76年頃から78年頃まで)のMichaelの数々の名演、例えば「Heavy Metal Be-Bop」「Blue Montreux」「Sleeping Gypsy」「Browne Sugar」を生んだセッティングです。76年末頃にマウスピース、楽器いずれも入手したようです。「You Can’t live Without It」に話を戻しましょう。僕がこのレコードを初めて聴いたのは78年夏頃、当時行きつけのJazz喫茶で新譜として壁にディスプレイされていました。アルトからテナーに転向したばかりの僕はElvin Jonesの「Live At The Lighthouse」がバイブルのような存在で、Dave Liebman、Steve GrossmanらのいわゆるColtrane派のテナー奏者がフェイバリットでした。Michael Breckerの演奏も勿論聞いていましたが、それほどの感銘を受けるものには出会っていませんでした。そしてこのレコードの登場です。 以前から感じているのですが、John Coltraneは1955年Miles Davis Quintetに大抜擢も56年にドラッグの悪癖のため一時解雇されました。その後クリーンさを取り戻したColtraneは56年から57年にかけて神の啓示を受けたかのようにテナーサックスの腕前が飛躍的に上達しました。時は20年を経て1976年、Michael Breckerも翌年77年にかけてやはり超人的に上達し、ワンアンドオンリーなスタイルを確立しました。前述のマウスピース、楽器の入手もかなり関係しているように思えますし、Michaelも神の啓示を受けたかもしれません。僕はついに77年当時のMichaelに出会えたのです。 素朴でシンプルな文字だけの黒地のレコード・ジャケットをジャズ喫茶の店主が指差し、「ブレッカーの入った新譜が入荷したよ」ということで早速リクエストしました。インターネットやyoutubeで幾らでも新しい情報を好きなだけ入手可能な今の若い人たちには、ジャズ喫茶でレコードをリクエストするという習慣がない、それ以前に知らないのでピンと来ないでしょうが、当時の我々にはジャズを知る唯一にしてベストの方法でした。 いきなりSide B 1曲目Invitationを聴きました。その時の事は店内の情景も含めて今でもはっきりと覚えています。 スピーカーから流れてくるテナーの音の洪水!!〜フレージングのアイデア、コード進行に対するアプローチ、スピード感、タイム感、タンギングの正確さ、完璧なまでのフラジオの使い方、当たり具合、華麗なテクニックの数々、テナーの音色の素晴らしさ、ストーリーの語り口の流麗さ、起承転結の的確さ… 演奏のあまりのインパクトに薄暗い店内、座っている席から立つことが出来なくなりました。身体が感動で打ち震える、なんだこれは一体? 膨大な量のテナーサウンドにもかかわらず、身体がその情報量の全てをスムースに受け入れる、あたかも血液型やDNAタイプが全て合致した輸血や臓器移植であるかのように。このかつて無い体験を1枚のレコード鑑賞から出来たことに自分も驚きました。 「これだ!自分が目指すテナー奏者はMichael Breckerだ!このスタイルを掘り下げて研究しよう!」LiebmanやGrossmanにはない都会的でスマートなセンス、押し付けがましくない超絶技巧、明るさと仄暗さ、繊細さと大胆さ、演奏のバックグラウンドに感じる秘めたる情熱、努力と向上心。「見つけたぜ!」と20歳そこそこのサックス奏者は目を爛々と輝かせながら明日からの明確な目的を見出したのです。

2017.08

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2017.08.14 Mon

Born At The Same Time / Steve Grossman

Steve Grossmanの代表作、1977年録音のBorn At The Same Time(OWL)を取り上げてみましょう。 ts,ss)Steve Grossman p)Michel Graillier b)Patrice Caratini ds)Daniel Humair Recorded In Paris, November 25th 1977 Steve Grossmanは18歳でWayne Shorterの後釜としてMiles Davis Bandに大抜擢、約1年間ほど在籍していた模様です。この時の映像を新宿DUGのオーナー、写真家として知られる中平穂積氏がNew Port Jazz Festivalにて録画したものを見たことがありますが、大御所にして圧倒的な存在感のMiles Davisの横で堂々たるプレイを繰り広げていました。レコーディングでは”Jack Johnson””Big Fun””Bitches Brew”を始めとして、ソプラノサックスでの演奏が殆どですがそこではテナーを吹いていました。 早熟の天才、10代前半にアルトサックスを始めてすぐにCharlie Parkerのスタイルで演奏出来るようになり、テナーに転向後Miles Bandに参加という華々しいと言うか、前人未到、とんでもない経歴の持ち主です。以前Blogで取り上げたEddie Danielsもそうですが、ユダヤ系白人サックス・プレイヤーの代表格の一人です。 New York州Long IslandのHicksville出身、裕福な家庭に生まれ育ちましたが、ミュージシャンとして自立すべく、新聞配達の仕事をしていた時期もあるそうです。兄はトランペット奏者Hal Grossman、Berklee音楽院の講師を務めており、この兄の影響でサックスを始めたと言われています。弟の名前はMiles Grossman、特に管楽器奏者、ミュージシャンではないようですが、現在Hicksvilleの実家に戻ったSteve Grossman、全くテクノロジー関係に疎いので(そもそも興味がないのでしょう)弟Milesがインターネット関係(それこそメールの代筆等)で兄を手助けしているようです。 ところでアルバムタイトルのBorn At The Same Timeの意味するところは何でしょう?考えられるのは参加ミュージシャン4人が同世代に生まれたからでしょうか。ミュージシャンの生年月日を挙げてみましょう。 Steve Grossman(ts,ss) 1951年 1月18日 Michl Graillier(p) 1946年10月18日 Patrice Caratini(b) 1946年7月11日 Daniels Humair(ds) 1938年5月23日 ピアニスト、ベーシストは確かに同年生まれですがGrossmanとは5年違い、ドラマーとは13歳も歳が離れています。同世代とは言い難い年齢差ですが、Grossmanは何しろ18歳1969年から第一線、ジャズ界最先端で演奏しています。5歳13歳の年齢の違いは関係無く、音楽的な経験値のみ捉えてみれば同世代の4人と言えるのではないでしょうか。このアルバムの演奏内容、驚異的なインタープレイの連続を聴くとまさに同世代に生まれたミュージシャン達ならではの、彼らだからこそ成し得たクオリティの演奏と聴く事が出来ます。 だとしたらメンバー全員の写真、せめてレコーディング風景の写真をレコードジャケットに掲載すればアルバムタイトルとの統一感が出るものを、Grossman本人と当時のガールフレンド?奥方?とのツーショットが見られるだけです。Miles Davisのアルバムで何枚か当時のガールフレンドの写真を用いたジャケットがありますが、Miles Band出身のGrossmanならではのセンスかも知れません。 Miles Davis Bandを退団し、その後Elvin Jonesのピアノレス・カルテットにて盟友Dave Liebmanとのツーテナーで名盤Live At The Lighthouseを72年に録音、この演奏でジャズ・テナーサックス界に不滅の金字塔を建てました。ワンアンドオンリーなフレージング、50年代のSonny Rollinsを彷彿とさせるタイトでグルーヴィーなリズム感、Jonh ColtraneとBen Websterの融合とも言えるダークでエッジー、コクがあって極太のテナーサウンド…カリスマ・テナー奏者としてジャズ界知らぬ者は無い存在になりました。そして何と言ってもGrossmanこの時まだ21歳!無限の可能性を秘めた若者、その将来を嘱望されていました。 73年以降の活動:同年自身の初リーダー作”Some Shapes To Come” 74年録音Elvin Jones Quartet”Mr. Thunder” 75年Gene Perla(b)Don Alias(perc,dr)とのグループ”Stone Alliance” 75, 76年録音自身のリーダー作”Terra Firma” そして本作77年Born At The Same Timeに繋がりますが、早熟の天才プレイヤーにありがちな破天荒な行いが次第に目立ち始めます。大量の飲酒行為、ドラッグの使用での人格破綻、奇行、晩年のJaco Pastoriusを思わせる状況が見られるようになります。 Stone Allianceのヨーロッパツアー中にGrossmanが1人暴走(他メンバーのGene Perla、Don Aliasは温厚なタイプのミュージシャンでしたが)のため空中分解しツアーを途中でキャンセル、Elvin JonesはGrossmanの演奏をいたく気に入っていましたが、マネージャーを務めるElvinの奥様ケイコ夫人に素行の悪さからかなり嫌われていたようです。Grossmanは体力的にも強靭なものがあり、「25歳までは1週間徹夜しても平気だった」と発言していましたが、かなりドラッグの摂取も頻繁で「新しいクスリのやり方が流行ったとしたらそれを考えたのはSteveに違いない」とまで周囲から言われていました。 Grossman自身の発案か、レコード会社のアイデアか分かりませんが、それまでのGrossmanの集大成と言える”Born At The Same Time”が77年11月25日Parisで録音されました。 前述のStone Allianceのヨーロッパツアーが77年8月27日Austria Wiesenを皮切りに10月29日英国Londonまで挙行されました。その最後のLondon Ronnie Scott’s公演中でまさに空中分解したのです。 何とこの事件の1ヶ月後にヨーロッパの精鋭たちを集めてBorn At The Same Timeは録音されました。そのままヨーロッパに滞在していたかも知れません。 全9曲Grossmanのオリジナルで構成されています。CD再発時にはピアニストGeorge CablesのオリジナルLord Jesus Think On Me(Think On Meという曲名で作曲者が録音しています)が追加されていますが、アルバムのコンセプト、演奏のクオリティからオクラ入りしたのはうなずけます。 とにかく楽器の音色が凄まじいのです。テナーマウスピースはデビュー時から使用しているOtto Linkのメタル最初期(30~40年代)のモデル”Master”を使っています。それこそBen Websterもこのマウスピースを生涯使っていましたがチェンバーの広い、ダークでメロウなサウンドのマウスピースを使ってGrossmanはどうしてあんな凄まじい音がするのかは謎です。オープニングは多分5★か6番、リードはリコの4番を使っていたそうです。1970年代中頃来日した時に一緒に演奏した土岐英史氏から聞きましたがGrossmanのマウスピースにはボディに穴が空いていて、そこにマッチ棒を入れて遊んでいたそうです。もちろん内部に貫通はしていなかったでしょうが、かなり「へたった」状態のマウスピースには違いありません。テナー本体はSelmer MarkⅥの恐らく14~16万番台、ソプラノもSelmerでマウスピースもSelmerメタルのDかEを使っていたようです。ソプラノの録音された音色が生々しいのはベルを直接マイクに当てて演奏しているからです。 このアルバムの音色は80年代の演奏に比べると深さが全く違います。デビュー時から使っている自分の楽器、マウスピースで演奏したのは間違いないでしょう。 80年代に入ってからの話ですが、金策のためにテナーを質屋に入れて楽器が流れてしまったり、自分の弟子に楽器を借り、在ろうことかその他人の楽器を質屋に入れてしまったり(Charlie Parkerに同様の逸話がありますね)、自分のソプラノをNew Yorkでタクシーに置き忘れそのまま出てこなかったり、来日時に楽器を持参せず日本人ミュージシャンに借りたり(実は僕もしばらくテナーを貸したことがあります)87年録音Our Old Frame / Steve Grossman With Masahiro Yoshida Trioの時には僕のソプラノでNew Moonや415C.P.W.を演奏しています。 それにしてもこの天才テナーサックス奏者、自己管理能力は明らかに欠如していますね。 80年代はとうとう自分の楽器やマウスピースを持っていない時期があり、ギグや録音がある時に弟子に借りていたようです。Jerry Vejmola、Jeff HittmanらがそのGrossmanを支えた弟子たちの名前です。 Grossmanのテナーの音色は奏法の勝利と言え、たいていの楽器でGrossmanの音がします。86年87年の来日時にセッションでステージを共にしましたがその音色の物凄さ、音圧感、タイムの素晴らしさ、スイング感、そして最も驚いたのがアンブシュアの緩さ、ルーズさです。演奏中マウスピースを咥えていても左右に動き、口に対して抜き差しされるのです! Grossmanの特徴音の一つ、フラジオA音を「ギョエイイ〜」と出している時にもアンブシュアはゆるゆるです!本人に「マウスピースに歯は載せていないの?」と質問しましたが「ちゃんと乗せている」と答えが返ってきました。ダブルリップではなさそうです。 収録曲の演奏に触れて行きましょう。1曲目から6曲目がいわゆるレコードのA面、7曲目から9曲目がB面に該当します。全体的に組曲風なコンセプト・アルバム仕立てになっています。 1、4曲目のCapricorneは同じ曲でテンポも演奏時間もほとんど同じ、Daniel Humairのシャープなドラミングが各々のテイクに異なった彩りを添えています。2、4曲目のOhla Gracielaは若干テンポが異なり、別テイク的な関係にある演奏で、更に3曲目Plaza Franciaもほぼ同一曲、Patrice CaratiniのベースソロがフィーチャーされGrossmanはソプラノでソロを取ります。5曲目March Nineteenも傾向としては同じ曲ですが、Grossmanのオリジナル曲の独創的なメロディライン、ベースパターン、コード感が同一傾向曲が並ぶくどさよりもむしろ統一感を感じさせ、レコードのA面はGrossmanのオリジナル・サウンドを表現しています。 B面は一転してハードな演奏サイドです。7曲目A Chamadaはフランス語で「叫び」を意味します。エドヴァルド・ムンクの「叫び」、こちらは北欧ノルウェーですね。本作品の要の演奏で9分16秒にも及ぶGrossmanの叫びが延々と聴かれます。リズムセクションのテンションも尋常ではありません。テナーの演奏に完璧なまでに追随しています。ソロイストとリズムセクションのインタープレイの、ある種理想な形の名演と捉えています。何度聴いても背筋がゾクゾクするフレージングの連続、ソロの構成、4人一丸となったまさに絶叫!唯一残念なのは8’47″でテープが編集されている点です。恐らくGrossmanはまだ延々とソロを取り続けていたのでしょう。レコード収録時間の関係でカットされたに違いありません。いずれコンプリートな演奏を聴きたいものです。え?墓場荒らし?滅相もないことを言わないで下さい。僕は純粋にテナーサックスの名演を聞きたいだけです。 8曲目Pra Voceで叫びから癒しに場面転換を果たしています。この曲のサウンドもまさにGrossmanワールドそのものです。 アルバムの締めくくりはもう一つの白眉の演奏Giminis Moon。いつものGrossmanの作風とは異なるオリジナル、リディアン系のサウンドです。Grossmanの演奏は言わずもがな、この演奏でDaniel Humairの素晴らしさを再認識しました。ピアニストMichel Graillierも大変センスのあるプレイをしています。 以降80年代に入りGrossmanは全く第一線から遠ざかり、New Yorkでタクシーの運転手で生活したり(でもアブナイ彼の運転でタクシーには乗りたくありませんね)隠遁生活を送っていましたが、ドラマー吉田正広氏が再び彼をジャズシーンに引っ張り出しました。いずれその話もこのBlogで取り上げたいと考えています。 最後に、20年前にBorn At The Same Timeが東芝EMIから国内発売された時のCDライナーノーツ、僕が書いていました。自分自身すっかり忘れていましたがこのライナーを読んでしまうと20年前に書いた内容に捉われてしまうかもしれないと懸念し、敢えて読みませんでした。Blogが書き上がったのでこの後読んでみます。    

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2017.08.04 Fri

The Message / JR Monterose

前回投稿のJohn Coltrane海賊盤でもジャケ写が登場しましたが、今回はしっかりと取り上げたいと思います。 テナーサックス奏者JR Monteroseの代表作「The Message」 ts)JR Monterose p)Tommy Flanagan b)Jimmy Garrison ds)Pete La Roca 1959年11月24日 ニューヨーク録音 この作品自体大変レアですが、発売元のレーベルJaroも1950年代末に僅か5枚のレコードをリリースしただけで消滅してしまいました。 でもこの大名盤The Messageを世に出した功績は大きいです。 いわゆる幻の名盤という範疇の最右翼、Straight Aheadというタイトルで75年に再発されるまで、このアルバムの存在はマニアの間でしか知られていませんでした。 その後何度か再発され(タイトルも本来のThe Messageに)、現在では比較的容易に入手できる状態です。 僕はジャズ喫茶世代の出身ですが、行きつけのジャズ喫茶にこのレコードがあり、店のマスターに紹介されあまりの素晴らしさに貪るように何度も何度も聞いた覚えがあります。 また都内のとある廃盤専門のレコード店で、30何年か前に数十万円の値札と共に壁にディスプレイされていました。 「わっ!あった!!欲しい〜!」とゼロの数を一つ見誤りつつ購入を一瞬考えましたが、金もない貧乏な駆け出しミュージシャンがその価格で買える訳がありません。泣く泣く諦めました。 今でもレコードを自宅で聴く時があり、数枚持っているオリジナル盤でその音質や奥行き、空気感の素晴らしさにため息が出る時があります。この大好きなThe Messageをオリジナル盤レコードのゴージャスな音質で聴けたらさぞかし幸せだろうな、と想像する時があります。今ではオリジナル盤はその頃の何倍もするでしょう、叶わぬ夢を見つつ、本当に欲しいものはその時に借金をしてでも買わなければ後悔するぞ、と自分に言い聞かせています。 ここでJR Monteroseの演奏が聴かれるアルバムを何枚か挙げて見ましょう。 Charles Mingus / 直立猿人 Kenny Dorham and The Jazz Prophets Vol.1 J.R. Monterose Rene Thomas Quintet / Guitar Groove 実はいずれのアルバムでもJR Monteroseのプレイは凡庸なのです。Mingusの直立猿人ではリーダーの圧倒的な存在感に全く霞んでいますし、Kenny Dorham and The Jazz Prophetsはタイトル倒れの様を呈しています。Blue Noteに残されたリーダー作JR Monteroseでは別人かと見間違えるほど覇気が感じられませんし、ギタリストRene Thomasのアルバムでも気の毒なくらい自分を出し切れていません。 JR Monteroseにはまだ他にきっと名演奏があるに違いない、と一時探しましたが見事にありませんでした。The Messageの演奏が独立峰の如く燦然と輝いているのです。 さて大変前置きが長くなってしまいましたが、The Messageの内容に触れて行きたいと思います。 GIカットにスーツ姿、カッコ良いですね。楽器はセルマー・スーパー・バランスド・アクション・シルバープレート、マウスピースはOtto Link Metal Super Tone Masterとお見受けしました。 マウスピースのオープニングは6番7番くらい、リードはとっても硬めで4番か、もしかすると5番をお使いでしょう。でなければあの最低音域の爆発は得られません。 何と言ってもJRさん、本当に音色が素晴らしい!!僕の超×超好みです。John Coltrane流のエッジーなタイトネス、Otto Lomkの持つ臭み、ホゲホゲした音色にBen Webster張りのザワザワなサブトーン、豊かなビブラート、最低音域の「バッフン!」「ボギャン!」とまで聞こえる強烈なタンギング、発音、もう完璧な理想です。ホゲホゲ、ザワザワでバッフンですよ(笑)やっぱりテナーサックスは音色が命です。次に選曲が実に良いのです。 1) Straight Ahead (JR Monterose) 2) Violet For Your Furs (Matt Dennnis) 3) Green Street Scene (JR Monterose) 4) Chafic (JR Monterose) 5) You Know That (JR Monterose) 6) I Remember Clifford (Benny Golson) 7) Short Bridge (JR Monterose) 全7曲中5曲がJRのオリジナル、多くがハードバップの範疇にありますがその枠を超える新しいテイストを感じさせる曲想、構成のよく練られた楽曲、さすが1959年11月録音、翌60年からの匂いがプンプンとします。 名プレイヤーは間違いなくバラードの名手でもあります。Violet For Your Furs(コートにすみれを)はJohn Coltraneが57年に録音した彼の初リーダー作”Coltrane”でも演奏されていますが、僕はJR氏の演奏に何の躊躇もなく軍配を挙げます。やっぱりバラードはサブトーンとビブラートが表現の決め手ですよ。 そして本作品のハイライト、この演奏がアルバムの秀逸さを決定づけました。Benny Golson作の名曲、交通事故で夭逝した天才トランペッターに捧げたI Remember Clifford。何千何万回と聴いたことでしょうか。冒頭のピアノの和音に続くテナーのlow Dの音が「バフン!」、バラードでこの音出しってアリですか?アリですよね、かと思えばサブトーン駆使しつつビブラートしっとりロングトーンのメロディ奏、ハードボイルドとスイートネスの同居がたまらなく好きです♡ 1曲目Straight Aheadに特筆すべき点があります。ピアノソロの後にテナーサックスとドラムスの2人だけのトレードが聴かれますが、これが素晴らしい!僕は予てからジャズはミュージシャン同士の会話だと考えています。気の合った仲間同士の楽しい会話と言い換えることもできます。お互いが演奏(発言)した事をしっかりと聞き合い、その演奏(会話)を豊かに膨らませて行く行為がジャズ演奏なのです。JR MonteroseとPete La Rocaのバトル演奏は僕にはある種の理想として聞こえます。 5曲目You Know Thatのテナーソロの構成もハンパないものがあります。モチーフを丁寧に、リズムセクションとの共同作業でしっかりと足並みを揃えて、ステップ・バイ・ステップで歌い上げて行くその様。実に、実に堅実でスポンテニアスなストーリーテラーと化しています。 ピアニストTommy Flanaganの邪魔にならない上に確実に音楽のツボを押さえたバッキング、ソロ、ベーシストJimmy Garrisonはリズムのスイートスポットをしっかりと押さえたラインでハードバップからの脱却の手助けをしています。そしてPete La RocaのドラミングのテイストがJR Monteroseの音楽性と全く合致していた点が、この名盤を生み出した一因となっています。

2017.07

jazz/music 

2017.07.24 Mon

John Coltrane Live at The Jazz Gallery 1960

2011年にRLR RecordsというレーベルからリリースされJohn Coltraneのいわゆる海賊盤です。

内容の素晴らしさとレア度からご紹介したいと思います。

John Coltrane Live at The Jazz Gallery 1960

<Musicians>John Coltrane(ts,ss) McCoy Tyner(p) Steve Davis(b)Pete La Roca(ds) <Song List>1)Liberia 2)Every Time We Say Goodbye 3)The Night Has A Thousand Eyes / CD One 4)Summertime 5)I Can’t Get Started 6)Body And Soul 7)But Not For Me / CD Two 1960年6月27日New YorkのGreenwich VillageにあったThe Jazz Galleryでのライブ録音2枚組です。正式な録音ではないので音質は決して良くありませんが、演奏内容は本当に素晴らしいです。絶好調のColtraneとリズムセクションとの組んず解れつの演奏、ここには幾つか特筆すべき点があります。まずピアニストMcCoy Tynerが正式にJohn Coltrane Quartetに加入した直後の演奏という点です。ColtraneはMiles Davis Quintet脱退後自分のカルテットをスタートすべく、多くのピアニストを起用しました。Wynton Kelly、Cedar Walton、Tommy Flanagan、意外なところでCecil Taylorとも1枚作品が残されています。ギタリストWes Montgomeryも一時参加したという話を聞いたことがありますが、Coltraneの長いソロの最中バッキングを止められ、ステージでぼーっとしているのが嫌だったのでしょう、すぐ辞めてしまったようです。Steve Kuhnも同じThe Jazz Galleryで1960年1月2月3月とその間約8週間Coltraneと共演を果たし、音楽的恩恵をColtraneから被ったと述べています。Coltraneへの慈しみの想いで録音されたSteve Kuhnの作品がこちらです。 Steve Kuhn Trio w/ Joe Lovano “Mostly Coltrane” (ECM) このCDも名盤、そして愛聴盤です。Mostly Coltraneと名付けられただけに、収録13曲中11曲がColtraneのオリジナルやレパートリー、2曲がSteve Kuhnのオリジナルです。この作品もいずれこのブログで紹介したいと考えています。 本題に戻りましょう。Steve Kuhnとの共演3ヶ月後、以降65年まで行動を共にする音楽的パートナーMcCoy Tynerが遂に入団しました。ここでは既にMcCoyの個性が存分に発揮された演奏を聞くことが出来ます。リリカルで明快なタッチ、Coltraneの音楽に欠かすことの出来ない”Sus4″ のサウンドが随所で聴かれます。何よりColtraneの長いソロの間、バッキングを弾かずじっと我慢出来る忍耐強さを持ったピアニストの登場なのです(笑) パズルのピースが一つ揃いました。この後暫くして最重要ピースであるドラマーElvin Jonesの加入、そして程なくしてベーシストJimmy Garrisonが加わり、黄金のカルテットが出来上がる訳です。 ドラマーPete La Roca。Coltraneとの正式な録音は残されていないと記憶していますが、ここではハードバップから一歩飛び出た素晴らしいドラミングを聴かせています。60年録音Coltraneの作品”Coltrane Plays The Blues”にMr.Symsという曲が収録されています。 この作品にはBlues To Elvinという、盟友Elvinに捧げたナンバーが入っています。Pete La Rocaの本名はPete Sims、もしかしたらMr.SymsとはPete Simsの事かも知れません。Pete La Rocaの名演が以下の2枚で聴く事が出来ます。 Jackie McLean “New Soil”  (Blue Note) JR Montrose “The Message” (Jaro) この2枚も大好きな作品です。じっくりと取り上げて行きたいですね。 演奏曲にも触れてみましょう。1曲目Liberia、Dizzy GillespieのA Night In Tunisiaにどこか似ているこの曲、アフリカのTunisiaではなく近くのLiberiaで辺りで済ませたようです(笑)。しかしこの曲の演奏時間が凄いです、30分強!!長い!時は60年ですよ!63年以降の欧州ツアーでImpressionsを40分、Live In JapanでMy Favorite Thingsを1時間演奏したColtrane、さすがにそこまでは行かずとも、ここでは20分近くテーマ〜ソロを吹き続けていますが、全く中弛みすることなくテンションとパワーを湛えた演奏を展開しています。その後ピアノ〜ドラム・ソロと繋がります。 60年当時で1曲の演奏時間が30分という例をColtrane以外(でも一体外の誰がそんなに長く演奏するでしょうか?)でも僕は聞いたことがありません。でもオーディエンスは大喜び、お客様もしっかりColtraneの演奏について行ったようです。 もう1曲特筆すべきは5曲目のI Can’t Get Started、Coltrane自身がこの曲を演奏し、世に出ているのは恐らくこのテイクだけでしょう。ソプラノサックスで演奏されていますが、驚くべきはコルトレーン・チェンジが施された構成で演奏されている点です。Coltraneは60年当時、短3度と4度進行からなるコルトレーン・チェンジを数多くの曲に用いていました。代表作がGiant Stepsでスタンダード・ナンバー、例えばこのライブ録音に収録されているThe Night Has A Thousand Eyes、Body And Soul、But Not For Me、他にもSatellite (How High The Moonのコード進行がベース。月に引っ掛けた衛星のシャレですね)、Fifth House (Hot Houseのコード進行、構成がベース)、Count Down (Tune Upのコード進行、構成がベース。チューニングとカウントを引っ掛けてます) 、26-2 (Confirmationのコード進行がベース)。推測するに当時Coltraneは片っ端からスタンダード・ナンバーをコルトレーン・チェンジ化をしていました。その中で上手く行った曲をレコーディングし、世に出していたのでしょう。実際26-2はColtraneの死後に未発表テイクとしてリリースされました。演奏や曲の構成にもやや無理があるように聞こえます。このI Can’t Get Startedも内容としては今ひとつの感を拭えません。Coltraneファンとしては彼の未発表演奏の発掘をまだまだ心待ちにしています。前述のWes Montgomeryの共演を筆頭にお宝はきっとある筈です。聴いてみたいものです。

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2017.07.14 Fri

Pete Christlieb〜Warne Marsh Quintet /Apogee

昔からの愛聴盤、今でもちょくちょく引っ張り出して聴いているCDがこれ、Pete Christlieb(ts) 〜 Warne Marsh(ts) Quintet / Apogee (Warner Bros.)

1978年録音&リリース、CDではボーナストラックが3曲追加されて2003年に再発されています。 Pete Christlieb、Warne Marshと言う全くタイプの違うテナーサックス奏者のテナーマッドネス、本当に素晴らしい作品です。Sonny Rollins ~ John Coltrane、Gene Ammons ~ Sonny Sitt、Sonny Stitt ~ Sonny Rollins、Johnny Griffin ~ Eddie Lockjaw Davis、Al Cohn ~Zoot Sims、 Dave Liebman ~ Steve Grossman、Michael Brecker ~ Bob Mintzer… ジャズ史上多くのテナー・バトル・チームが存在しましたが、Pete ChristliebとWarne Marshほど毛色の違うテナーサックス・バトルは聞いた事がありません。 極論を言うならばあまりのスタイルの違いから水と油の2人、テナー・チームとしてタッグを組むにはとても距離感があると言わざるを得ませんが、彼等の界面活性剤的役割を果たしたのが本作のプロデューサー、Donald FagentとWalter Beckerの2人、言わずと知れたロック・グループSteely Danのリーダー。テナー奏者を2人フィーチャーしたアルバムを制作するくらいですからテナー奏者好きは間違い無いでしょう。Steely Danのアルバム”Aja”ではWayne ShorterをSteve Gaddのドラミングと共に大フィーチャー、Donald Fagenは自身のソロアルバム”The Nightly”でMichael Beckerの華麗なソロプレイを巧みに演出させていました。他にもJerome Richardson、Ernie Watts、Plas Johnson、Chris Potter等スタジオミュージシャン・テナー奏者を起用、ここまでのテナー奏者との関わりは通常の範囲内ですが、Steely Danのコンサート演奏活動にこの2人のプロデューサーのテナー奏者フェチが表れています。1994年の来日公演の際のホーンセクション、Cornelius Bumpus、Chris Potter、Bob Sheppardという個性派テナー奏者3人衆!!Donald Fagen、Walter Beckerの2人は一体何を考えいるのでしょうか?テナー奏者好きにも程があります(笑)この2人のマジックにより2大テナーの演奏が見事に融合と相成りました。 Pete Christliebはアメリカ西海岸を中心としたスタジオミュージシャン、音色も明るめで何しろタンギングの達人、フレージングの滑舌の小気味良いこと。明確なメッセージを湛えたアドリブ・ラインを聴かせてくれます。Warne Marshも西海岸ロサンゼルス出身ですが、師レニー・トリスターノと共に東海岸ニューヨークで活動、クール・ジャズと呼ばれるスタイルで演奏し、「ホゲホゲ」「モグモグ」「ガサガサ」を感じさせるダークなトーンと独自のアドリブラインで、ワン・アンド・オンリーなテナー奏者です。 サックスの音色やフレージングの滑舌はその人の喋り方が確実に反映されます。Pete Christliebはさぞかし明朗快活な分かり易い話しっぷり、更に彼のニュアンスやフレージングから感じるのですが、冗談好きでおちゃめな雰囲気も併せ持っているかも知れません。対するWarne Marshは「ぼそぼそ」とした喋り方でシニカルに物を言い、知的な話が好きですが人に自分の話を聞いて貰わなくても構わない、委細かまわず好きな事を好きに話す、ちょっと偏屈なタイプの人かも知れませんね。 1曲目Magna-Tism(コード進行はスタンダード・ナンバーJust Friends)に2人のスタイルの好対照振りが表れています。 ハイライトはWarne Marashの後に続く2人の同時進行ソロ〜オーバーダビングによる多重奏(4重奏?)〜絶妙な場所に訪れる不協和音のエグいハーモニー!何度聞いてもカッコいいです!! 続くピアノソロの後にはラスト・テーマが演奏されずそのままFine、とってもヒップ!この辺がプロデューサーたちの意向でテナーフェチのなせる技でしょう。 2曲目レニー・トリスターノ作の317 E. 32ndのエンディングも素晴らしい!トリスターノが聴いたらさぞかしビックリした事でしょう。 3曲目はプロデューサー2人のオリジナルRapunzel。さすがにポップな雰囲気のジャズチューンですね。Peteさんの芸風にはぴったりですが、Warneさんにはどうでしょうか?意外に楽しげに演奏しているように聞こえますが。 4曲目はアルバムのもう一つのハイライト、アップテンポのその名もTenor Of The Time。こう言い早い曲ではPeteさんまさしく本領発揮、バキバキとゴキゲンにスイングしています。タイムは良い、音符が長い、明瞭な話し方、バッチリなタンギングで音符がプリプリしている、そしてアドリブカッコ良いと来れば言うこと無しです。で、ここでテナー演奏が彼1人で終わってしまえばありきたりのごく普通の凄い演奏ですが(笑)、この後にホゲホゲのカリスマWarneさんの演奏が入る事により、全く普通では無い演奏に化学変化しています。テナーバトルって面白いですね。 5曲目はご存知Charlie Parkerの名曲Donna Lee。しかし何ですかこのテーマ演奏は?輪唱とはまた異なる、拍をずらしてのメロディ演奏、アンビリバボーなアイデアによるこの曲の代表的な演奏が生まれました。 6曲目はPeteさんのワン・ホーン・カルテットによるJerome Kernの名曲I’m Old Fashioned。もう、大好きな演奏で何度聴いても堪りません。 これだけ唄っていればテナー1人で完結しています。

2017.06

jazz/music 

2017.06.14 Wed

Eddie Daniels CD ”First Prize! ”

最近ハマっているCDがテナーサックス、クラリネット奏者Eddie Danielsの初リーダー作”First Prize! ”

1966年録音でEddie Danielsの誕生日直前、まだ24歳です。 当時ウィーンで行なわれていたInternational Jazz Compensationで一等賞を受賞した栄誉に掛けて”First Prize! ”というタイトルになりました。ちなみにChick CoreaトリオやWeather Reportの初代ベース奏者だったMiroslav Vitousも1966年僅か18歳で同コンペティションに優勝しています。 Eddie Danielsが当時所属していた伝説の名ビッグバンド、Thad Jones〜Mel Lewis Big BandのリズムセクションであるRoland Hanna(p) Richard Davis(b) Mel Lewis(ds)を雇い録音しています。 この作品はレーベルが名門Prestige、レコーディング・エンジニアが名手Rudy Van Gelderとジャズ名盤の王道を行っています。そして内容ですが、イヤ〜全く素晴らしい!! 現在ではジャズ・クラリネットの第一人者として君臨しており、一時は全くサックスを演奏しなかったようですが、最近ボチボチ吹いているようです。 CDジャケット写真を見る限り楽器はセルマー・スーパー・バランスド・アクション(low BとB♭のキーガードがセパレートではないので中後期のモデルです)、マウスピースもリガチャーは替えていますがオットーリンク・メタルと、こちらもジャズテナーの王道真っしぐらです。僕好みのエグみのあるテナーサックスの音色、端整なタイム感、コード進行に対して常に抑揚を失わない知的なフレージング、そして極端なまでのテナーの音量のダイナミクス〜ppからffまでの完璧なコントロール!!これが僅か24歳の演奏とは思えません。この時点で確固たる自分のスタイルを築き上げています。 僕の尊敬するサックス奏者たち、Stan Getz、Lee Konitz、Warne Marsh、Steve Grossman、Dave Liebman、Mike Brecker、Bob Berg、Bob Mintzerがそうであるように、Eddie Danielsもユダヤ系アメリカ人だそうです。

ところでMike Breckerから直接聞いた話ですが、1977〜78年頃、The Brecker Brothers Bandの代表作Heavy Metal Be-BopやBlue Montreuxをはじめ、Mikeさんがスタジオの仕事をやり倒していた頃に使っていたマウスピースはOtto Link Double Ringの6番で、なんとEddie Danielsから貰ったものだそうです。このCDで使っていたマウスピースがそのままMikeさんに渡ったのかも知れませんね。

2017.05

jazz/music 

2017.05.10 Wed

逆転裁判15周年記念オーケストラコンサート無事終了‼️

異議あり‼️   このセリフでお馴染みです。アニメやゲームで大人気の逆転裁判。

2017年5月6日「逆転裁判15周年記念オーケストラコンサート」

出演:東京フィルハーモニー交響楽団

佐藤達哉(as,ts)

会場:上野・東京文化会館

無事終える事が出来ました。

2,300人収容の大ホール、昼夜2部とも5階席まで満席、ステージではアニメの映像もスクリーンに映され、普段は打ち込みで演奏される名曲の数々も華麗なオーケストラでの文字通り生演奏‼️

観て聴いて、ファンの皆さんとても喜んでおられました。

東フィルに入って2曲演奏させて頂きました。当日のコンサートはレコーディングされ、いずれCDやネット配信での販売を考えているそうです。

演目のうち1曲はテナーサックスをフィーチャーした美しいメロディのバラード。リリカルでゴージャスなストリングス、ウッドウインズ、ブラスを配したオーケストラをバックにメロディを吹いていると、名盤Claus Ogerman / Michael BreckerのCityscapesでの名演を思い浮かべてしまいます。

いずれ全曲オーケストラをバックに自分のコンサートを開いてみたいと心から思いました(^_^)v

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2017.05.05 Fri

Stan Getz Live At Newport 1964

最近良く聞いているのがStan Getzです。 学生の頃はGetzのテナーの音色があまりにもシューシュー、ガサガサと聞こえてその本当の良さが分かりませんでした。 酒の好みが20代はビールやサワー等の飲み易いものから、加齢を重ねてバーボン、紹興酒、芋焼酎等の「臭い」酒に移り変わったのと同様に(笑)、Getzの音色が堪らなく好きになりました。 特に好みがオットーリンク・スラントを使っている頃の1960年代の演奏です。 50年代末からヨーロッパに移住し、地元のリズムセクションと共演を重ね、60年頃にアメリカに戻った時から音色がグッと逞しく太くなり、フレージングも一層淀みない安定したものになりました。何よりタイム感が完璧と言って良いほどの境地に達しました。 そんな彼の絶好調な時期の演奏を収録したCDがStan Getz Live At Newport 1964 未発表作品とは信じられないクオリティの演奏、そして録音状態が素晴らしいです。 ts) Stan Getz vib)Gary Burton b)Gene Cherico ds)Joe Hunt 、そしてスペシャルゲストに米国のジャズフェスティバルに初出演のvo)Astrud Gilberto、加えてtp)Chet Baker。 当時のレギュラーメンバーにゲストを加えた形です。 Phil WoodsのWaltz For A Lovely Wife、EllingtonのTonight I Shall Sleep、Michael GibbsのSweet Rain等の選曲もマニアの好みを擽ります。GetzのMCにもメチャ毒があって大変楽しいです。

2015.07

jazz/music, unclassified 

2015.07.19 Sun

HIBI★Chazz-K新譜発売!

2015年7月15日HIBI★Chazz-Kの新譜、Happy Sax Hit Express 2015がポニーキャニオンより発売になりました。image   昨年メジャーデビューでリリースしたCD、Happy Sax Express 2014がいきなり日本レコード大賞企画賞を受賞という快挙を成し遂げました。サックス4人+パーカッションという編成で地道にストリート・パフォーマンスを展開し、ひび則彦の緻密なアレンジによるバンドのアンサンブルをギグをこなす毎に確実なものにし、新作は更に充実した内容になりました。 image 前作にも参加させて貰いましたが、新作でも僕は4曲(1.TANK! 2.ルパン三世のテーマ 15.軍師官兵衛メイン・テーマ 17.DONNA LEE)で演奏、ソロもとっています。 ゲストのサックス奏者、土岐英史、藤陵雅裕、そして日本サックス協会会長の石渡悠史全員、僕と同様にひび則彦の師匠です。更にHIBI★Chazz-Kに新加入のアルト奏者染谷真衣は現在でも僕に師事しています。友情参加のアルト奏者萩原優も僕に師事していました。 2015年8月15日(土)瑞江東部フレンドホールで開催されるHIBI★Chazz-Kのコンサートに僕もゲスト出演します!            

2015.06

jazz/music 

2015.06.29 Mon

Metalution@田沢湖オラエ

6月26日(金)は田沢湖ジャズ倶楽部主催のMetalution(佐藤達哉、浜田均Duo)コンサート。美しい田沢湖畔に佇む地ビールレストラン、オラエで演奏しました。田沢湖ジャズ倶楽部は23年の歴史があり、我々の今回のコンサートで58回目を迎えました。国内だけでなく海外からのミュージシャンも多数出演する名門ジャズ愛好会と言えます。 風光明媚な田沢湖、美しい自然、スタッフの方々に暖かく迎えて頂き、我々演奏の機運が高まっていました。ビブラフォンの生演奏を初めて聴くと言う方がほとんどで、我々の演奏を大変熱心に聴いて頂き演奏はとても盛り上がりました。有難うございました! image      

jazz/music 

2015.06.11 Thu

Do Jazz Senzoku 2015

7月5日洗足学園音楽大学 前田ホールにて行なわれるDo Jazz Senzoku 2015に僕のリーダーセッションで出演します。(メンバーはスケジュールを参照して下さい) ボーカリストChakaを2曲フィーチャーしますがその内一曲はPatti Austinの名唱でお馴染みWait A Little While。
あまりに懐かしいのでCDを引っ張り出して聴いてしまいました。
image イヤ〜懐かしい演奏ですね(^o^)/ しかも昔とは聞こえ方が全然違います! あまりに素晴らしい演奏なのでレコードまで引っ張り出して聴いてしまいました!! image レコードの音質の方がふくよかでテイスティ、おまけにミックスの関係でMichael Breckerのテナーの音が更に前面に出ています。 たまりません!!!