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2019.07

2019.07.25 Thu

A Jazz Message / Art Blakey Quartet

今回はArt Blakey Quartetによる1963年録音作品「A Jazz Message」を取り上げたいと思います。自己のリーダーバンドArt Blakey and the Jazz Messengersから離れ、普段とは異なるメンバー、編成、コンセプトの作品にトライしました。タイトルに拘りを感じさせるところにJazz Messengersがあってこその、というメッセージが込められていると思います。

1963年7月16日Van Gelder Studioにて録音 Recording Engineer: Rudy Van Gelder Producer: Bob Thiele Label: Impulse! A-45

ds)Art Blakey ts, as)Sonny Stitt p)McCoy Tyner b)Art Davis

1)Cafe 2)Just Knock on My Door 3)Summertime 4)Blues Back 5)Sunday 6)The Song Is You

スカイブルーが妙に目立つ謎のレイアウトです(汗)

以前当Blogで取り上げたBlakeyの傑作「Free for All」の1作前にあたり、何度か訪れた彼の音楽的ピーク到達の直前、メインの活動であるJazz Messengersでの重責から解放された如きのリラックス感が味わえる作品に仕上がっています。共演メンバーの意外性に起因するのかも知れませんが、テナー、アルトサックス奏者のSonny StittはParker派の重鎮、Blakeyとはサイドメン同士での共演もありましたが自身のリーダー作では50年録音の2作「Kaleidoscope」「Stitt’s Bits」で共演しており、Blakeyのリーダーとしては本作が初になります。Jazz Messengers50年代〜60年代の変遷 = Be-Bop, Hard Bopのスタイルを経てのModal Sound真っ只中のBlakeyには、Stittのスタイルは久しぶりでむしろ新鮮なコラボレーションになりました。

本作プロデューサーのBob ThieleがBlakeyに話しかけています。「Hey Art, YouのバンドJazz Messengersは最近盛り上がっているそうじゃないか。フロントの3管Freddie(Hubbard), Wayne(Shorter), Curtis(Fuller)を始め、Cedar(Walton), Reggie(Workman)たちメンバーも素晴らしいし。でも今回俺がプロデュースする作品はそこから離れた感じが欲しいんだ。ワンホーン・カルテットで、いつも演っているサックス奏者やピアニストではない人が良いなぁ、誰か心当たりある?」のようなオファーがあったかどうか分かりませんが(笑)、「いつもは演らないサックス・プレーヤーね…、随分前にSonnyがレコーディングに呼んでくれて良い感じだったけど奴はどうかな?あれ以来お返しもしていないし。えっ?どっちのSonnyって、Stitt、Sonny Stittの方ね、Rollinsも良いけど最近どうやら人のセッションに呼ばれても顔出さないらしいよ(著者注: 実際60年代に入りRollinsはリーダー・セッションでしか演奏しなくなりました)。奴はBenny(Golson)やWayneとは全然違う味を出せる筈だよ。ピアニストはさ、Johnのところの若手、そうそうColtraneのバンドのMcCoy、メチャメチャ評判良いよ。彼はどうかな?一度演って見たかったしさ。」「McCoyならうちの専属アーティストだよ!素晴らしいレコードをもう何枚も作っている我が社Impulse!イチオシのピアニスト、こちらこそ彼を使ってくれたら嬉しいなあ!」

というやり取りの後(もちろん僕のイメージの世界ですが〜汗)、ベーシストには堅実な伴奏に定評のあるArt Davisに声がかかり、Quartetのメンバーが決まりました。本作レコーディングの直前、7月5日にMcCoyは名盤「Live at Newport」を、Stittは自身の代表作である「Now!」を6月7日に録音しています。これらが全てImpulse! Labelからのリリースであることを考えると、Bob Thieleのお抱えミュージシャン同士を掛け合わせた企画制作アルバムとも考えることが出来ます。

ジャズ・レコードはその作品自体を楽しむのが基本ですが、前後の作品や遡ったり関連した作品、共演者のリーダー作、はたまた共演者の他者への参加作品等を鑑賞する事により、元の作品、時には別の作品の内容、コンセプトがくっきりと浮かび上がり、新たな発見に出会える場合があります。本作での、ある種の音楽的クールダウンが「Free for All」への更なる飛翔に繋がったのかも知れないと感じました。

それでは収録曲を見て行きましょう。1曲目はBlakeyとStittの共作になるCafe、Tumbaoのベース・パターン後にラテンのドラミングが始まります。「ジャズ屋のラテン」とはよく言ったもので、多くのジャズドラマーは本職のラテンミュージシャンに比べて幾分ルーズな、味わいのあるグルーヴが聴かれますが、Blakeyのはかなりタイトなビートです。ピアノがテーマを演奏しますが、こ、これは…どう聴いてもColtraneのMr. PCじゃありませんか!メロディ多少の違いはあり、著作権には引っ掛からないかも知れませんが聴いていて些か気恥ずかしさを感じてしまいます。本人達にしてみればリズムや曲のキー(Mr. PCはCm、こちらはGm)を変えているし、多少メロディが似ていたって、このぐらいの事は良くあるだろう?程度の事かも知れません(汗)。ソロに入るといきなりスイングに変わり、リフのメロディを受け継ぎつつ先発はStittのテナー。McCoyのバッキングに煽られたのか流暢さはそのままに、いつもよりテンションの高いソロを聴かせます。StittのアドリブラインとBlakeyのシンバルレガートはよく合致しているように聴こえます。後年70年代に入り、Stittと何枚か共演作を残しているのは互いに同じテイストで惹かれるものがあったからでしょう。75年録音の「In Walked Sonny」はJazz MessengersにStittが客演した作品です。

続くMcCoyのソロは端正なピアノタッチ、スインギーなタイム感でシンコペーションを多用したフレッシュな感性を、唸り声混じりで聴かせます。ベースまでソロが回り、StittとBlakeyの4バース後再びピアノによるMr.PC、ではなく(汗)、Cafeのテーマがラテンのリズムで演奏されます。エンディングのバンプではラテンでもうひと盛り上がり、素晴らしいグルーヴなので曲中でもこのリズムでソロが聴きたかったです。

2曲目はやはりBlakeyとStittの共作によるJust Knock on My Door、シャッフルのリズムによるこちらもブルースです。Stittはアルトに持ち替え本領発揮、いつものStitt節を小気味好く聴かせます。続くMcCoyはColtraneのアルバム「Crescent」収録Bessie’s Bluesを彷彿とさせる、Fourth Intervalを駆使したソロ、McCoyとStitt両者の演奏表現は接点を持てず音楽的に交わる事なく、平行線を辿っているかのようです。ベースソロ最中に予め決めておいたシンコペーションによる2ndリフが入り、ラストテーマへ。

3曲目George Gershwinの名曲Summertimeを♩=180程度の軽快なスイングで演奏しています。Art DavisのOn Topなベースがバンドをリードしており、Blakeyもベーシストにスイングを一任しているが如く、ひたすらシンバル・レガートに従事して殆ど何もしていません。Stittは再びテナーに持ち替え、イントロ無しでテーマを朗々と吹き、そのまま短いソロを取りMcCoyに続きますが、Coltrane Quartetのテイストそのままに、短い中にもストーリーを感じさせる素晴らしいソロを展開しています。ベースソロの後ラストテーマへ、短いエンディングを経てFineです。

4曲目McCoyのオリジナルBlues Backは彼の62年11月録音の名盤「Reaching Fourth」にも収録されています。本作の演奏の方がテンポが早く、サウンドも明るめに聴こえます。ピアノがテーマを演奏しそのままソロに突入します。粒立ちの良いタッチから繰り出されるフレーズが、Blakeyのシャッフルががったリズムと良く合致しています。続くStittはアルトで饒舌かつブルージーにソロを取り、パーカーフレーズで上手くまとめています。再びピアノがソロを取りそのままラストテーマへ、エンディングはフェイドアウト、思いのほかラストがまとまらなかったのかも知れません。

5曲目はスタンダード・ナンバーSunday、Stittがテナーで小粋にメロディを演奏します。コード進行がStitt好みなのでしょう、巧みなフレージングを気持ち良さそうに繰り出しています。続くMcCoyも曲の雰囲気、イメージを的確に踏まえ、様々なアプローチを駆使して華やかに歌い上げています。ベースソロも骨太の音色で存在感をアピールしているかのようです。

6曲目ラストを飾るのはJerome Kernの名曲The Song Is You、無伴奏でStittのアルトから始まり、艶やかなテーマ奏から小粋さをたたえたソロまで、徹底したスインガー振りを発揮しています。McCoyのソロも唄を感じさせる部分とロジカルな構築部分、両者のバランス感が半端ありません!ラストテーマはサビから演奏され、大団円を迎えます。

2019.07.14 Sun

Leaving This Planet / Charles Earland

今回はオルガン奏者Charles Earlandの1973年録音リーダー作「Leaving This Planet」を取り上げたいと思います。レコードは2枚組でリリースされましたが、CDでは収録時間79分(長い!)の1枚にまとめられています。

73年12月11, 12, 13日@Fantasy Studios, Berkley, California Fantasy Label Producer: Charles Earland Supervision: Orrin Keepnews

org, el-p, synth, ss)Charles Earland tp, flg)Freddie Hubbard tp)Eddie Henderson ts)Joe Henderson ss, ts, fl)Dave Hubbard synth)Patrick Gleeson g)Eddie Arkin, Greg Crockett, Mark Elf ds)Harvey Mason, Brian Brake perc)Larry Killian vo)Rudy Copeland

1)Leaving This Planet 2)Red Clay 3)Warp Factor 8 4)Brown Eyes 5)Asteroid 6)Mason’s Galaxy 7)No Me Esqueca 8)Tyner 9)Van Jay 10)Never Ending Melody

70年代はクロスオーバー、フュージョンのムーブメントが開花し、本作が録音された73年にはHerbie Hancockエレクトリック時代の代表作にして名盤「Head Hunters」が録音、リリースされ大ヒットを遂げました。この流れに便乗という形になりますが、同年12月Charles Earlandもクロスオーバー〜ファンク路線の本作を録音しました。しかもドラマーはHead Huntersと同じHarvey Masonを起用、意識した人選か、たまたまなのか分かりませんが本作でも全編素晴らしいグルーヴ、インタープレイを聴かせています。加えて特筆すべきがフロント奏者達、トランペットにFreddie Hubbard、テナーサックスにJoe Hendersonと、泣く子も黙るオールスターズに思う存分ソロを取らせています。また彼らをサポートすべくトランペットにEddie Henderson、ソプラノ、テナー、フルートにDave Hubbardも起用されており、単なる偶然でしょうが二人ずつのHubbard, Hendersonがラインナップされた形です。

Head HuntersはBillboardジャズチャート1位に輝き、総合チャートのBillboard200でもHancockの作品として初めて上位を記録し、商業的にも大きな成功を収めました。キャッチーなメロディ、ダンサブルなリズムとグルーヴがオーディエンスに大いに受けた形ですが、Hancockの緻密なアレンジ、プロデュース力、共演ミュージシャンへの音楽的要望〜具体化が音楽をぐっと引き締め、不要な音型〜贅肉を削ぎ落とし、必要なサウンドだけを抽出、凝縮した形での作品作りが結果功を奏したのでしょう。いずれ本Blogで取り上げたい作品の一枚ではあります。一方こちらのLeaving This Planet、言ってみれば真逆の方向性、緻密とは縁のないと言っては失礼に当たりますが、Hancockとは違う種類の音楽的なこだわりからか、参加ミュージシャンに自由に演奏させており、Motown系の黒人音楽の様相、良い意味でのルーズなセッション風の演奏を呈しています。オルガン、ギターやパーカッションのバッキングの音数がtoo muchと感じる瞬間も多々ありますが、Masonのグルーヴィーでタイトなドラミングが、やんちゃで暴れん坊な参加ミュージシャン達のまとめ役となり、加えてアルバム全てに於けるFreddieの「本気」を感じさせるクリエイティヴなトランペット・ソロ、Joe Henの「神がかった」鬼気迫るテナー・ソロが本作の品位を数倍にも格上げしており、他にはないバランス感覚を持った作品です。

Earlandは41年5月24日Philadelphia生まれ、高校時代にサックスを学び、同じくオルガン奏者Jimmy McGriffのバンドで17歳の時にテナーサックス奏者として演奏しています。その後Pat Martinoのバンドに参加してからオルガンを演奏し始め、Lou Donaldsonのバンドにも参加しました。70年から率いた彼自身のバンドにはGrover Washington, Jr.が在団し、成功を収めたと言うことで、オルガンとサックス奏者に縁がある音楽活動に徹しています。ちなみに本作でもソプラノのソロを1曲演奏しています(ご愛嬌の域ですが)。多作家でリーダー作は40枚を数え、作品毎に多くのテナー奏者を迎えて録音しています。Jimmy Heath, Billy Harper, David “Fathead” Newman, George Coleman, Dave Schnitter, Frank Wess, Michael Brecker, Eric Alexander, Carlos Garnett, Najee… 確かにオルガンとテナーの音色はよく合致します。Jack McDuffとWillis Jackson、Shirley ScottとEddie “Lockjaw” DavisやStanley Turrentine、Jimmy SmithとTurrentine、Larry YoungとSam RiversやJoe Henderson、Larry GoldingsとMichael Brecker、また以前Blogで取り上げた「Very Saxy」のテナー4人衆、”Lockjaw” Davis, Buddy Tate, Coleman Hawkins, Arnett Cobbの伴奏もオルガン奏者Shirley Scottで素晴らしいコンビネーションを聴かせていました。Earlandは名手Joe Henと本作が初共演、彼の大フィーチャーはたっての願いであったかも知れません。

それでは演奏曲に触れて行きましょう。収録曲はJoe Hen, Freddieのオリジナル以外は全てEarland作曲になります。1曲目は表題曲Leaving This Planet、宇宙飛行を思わせる幾つかのサウンドエフェクトに始まり、Masonのドラムがリズムを刻み始め、次第にサウンドが作られシンセサイザー、そしてRudy Copelandのボーカルが加わります。Stevie Wonderの声質を感じさせる歌唱はMotown Soundを起想させる、冒頭に相応しいキャッチーなナンバーです。ところでEarlandはベース奏者を雇わず自身の足でペダルを刻み、ベース音を繰り出しますがそのタイトさは特筆モノです。この作品中全曲でその素晴らしさを堪能する事が出来ます。先発ソロはオルガン、リズミックで饒舌な演奏はMasonとの相性もバッチリです!ギターのバッキングの音数とその存在感が大き過ぎるのが気になりますが、この猥雑な感じがEarlandのサウンド志向なのでしょう、きっと。続いてJoe Henの登場、猥雑さはそのままにテナーがその世界を構築し始めます。One & Onlyな音色を引っ提げてリズミックなシングル・ノートからウネウネ、エグエグなラインに移行、次第にコード感、リズムに対してフローティングなアプローチを展開し、猥雑さを蹴散らすかの如き見事なストーリーを語ります。程良きところでボーカルが入り、エンディングに向け惑星からの離陸を図ろうとしていますが、シンセサイザーによるサウンド・エフェクトから察するに無事に成層圏を脱出したように思います(笑)。

2曲目はFreddieの名曲Red Clay、70年録音リリースの同名アルバムに収録されています。Joe Henはこの作品にも参加しています。

ギタリストGreg Crokettが曲の冒頭から参加、フルートも交えたテーマや各ソロ中、ラストテーマまで一貫して曲想やソロフレーズに関係なく(?)徹底して音数の多いワウ系のバッキングを聴かせ、更に至る所にEarland自身のバッキングも破壊的に繰り出され、けしかけるようにMasonのドラムフィルも炸裂、猥雑さは一層極まっています!しかし耳が慣れてしまうとこれはこれで演奏を楽しむことが出来るのが不思議です!Joe Hen、Freddieとも絶好調で、例えばトランペット・ソロでのドラム、オルガンを煽りつつ煽られつつの盛り上がりではギターのバッキングを見事に吹き飛ばしていて、爽快感すら感じさせます(本末転倒?)。続くオルガン・ソロも同様にリズミックにドラムを巻き込みバーニング!、更にラストテーマ後にもうひと山聳えており、パーカッションやMasonのドラミングが祭り太鼓のように囃し立て、最後はフェイドアウトしつつもFreddieのソロに耳が行ってしまいます。

3曲目はWarp Factor 8、オルガンのイントロから始まり、この曲ではドラマーがBrian Brakeに交替しますが、この人もMason同様にかなりの手練れ者とお見受けしました(笑)。ここでもギターのバッキングが炸裂モード、ギタリストはEddie Arkin、カッティングによるバッキングがメインなようです。テーマメロディはオルガンが担当、ホーンセクションがソリッドなバックリフを聴かせます。録音のバランスとしてホーンの方が大きいので、どちらが主旋律か戸惑ってしまいます。ソロの先発はFreddie、ここまでタイトなリズムで歯切れの良いタンギング、アグレッシヴなフレージングを演奏出来るトランぺッターは彼しかいません。しっかりと世界を作り上げ、2ndリフに見送られて次の謎のソロはソプラノ、こちらはDaveの方のHubbardになります。その後Earlandの短いオルガンソロを経てJoe Henのソロ、今までに行われたソロの経過を踏まえたかのような俯瞰したバランスを保ちつつ、コンパクトにリズミックに、でも存在感はしっかりと提示して演奏しています。その後ラストテーマへ。

4曲目Brown Eyes、他の曲に比べて叙情的な雰囲気が漂うナンバー、シンセサイザーがストリングス音を奏で(時代を感じさせる音色です)、コンガが中心となってリズムをキープしつつ、ホーンのアンサンブルメロディに続きシンセサイザーによる管楽器系の音色でメロディが演奏され、再び管楽器と絡みつつメロディ奏になります。ソロの先発はここでもFreddie、切り込み隊長を引き受ける事が多いですが、決して切り込みの際の捨て駒にならず、確実に自分の音楽性を貫き通しています。スペーシーに始まりMasonとのコール・アンド・レスポンス、リズムセクションをシンコペーションのフレーズで良い感じで煽りながら、潔くソロを終えて上手く次のソロイストに繋げています。続く長めのオルガン・ソロ、何しろリズムのタイトさ、安定感が半端ありません!途中シンセサイザーが隠し味的に演奏されていますが、どういう効果を求めてのサウンド・エフェクトなのかは謎ですが。その後のトランペットソロはEddieの方のHenderson、この人の演奏も大変クオリティが高くここでも健闘していますが、Freddieと比較してしまうと音色、タイム、音符の長さとたっぷり感、フレーズの歯切れ、アイデア、ストーリーの語り方、構成力、全体的にプレイの小振り感を否めません。尊敬する先輩(とは言え僅か3歳違いですが)の物凄い演奏の後では平常心は保てず、萎縮せざるを得なかったのでしょうが。その後のJoe Henのソロ、流石です!深く音楽内に潜り込み、曲の根底に根ざしてソロの際にどんなパーツを用いるか、組み立て方をすべきかが全てお見通しのよう、バックも彼の語るストーリーに誘われるがままについて行けば良いのです。一丸となっての盛り上がりの後、弦楽器のようなシンセサイザーの音色がインタールードとなり、ラストテーマへ。初めのテーマには無い異なったセクションを用い、フェードアウトしつつドラムがフィルを入れています。

5曲目Asteroid(小惑星)は軽快なシャッフルのナンバー。Mark Elfのギターメロディをフィーチャーしたテーマ奏はバックのホーンセクションが効果的にです。ソロの先発はオルガン、そしてJoe Henのソロへ、つくづくこの人のソロアプローチへの不定形さに感心してしまいます!常にスポンテニアス、先の読めない展開は真のジャズメンそのものです!受け継いでのFreddieのテクニカルで華麗なソロ、更にDave Hubbardのメロウなソプラノ・ソロと続いて再びギターメロディによるラストテーマへ。ギターソロはありませんでした。

6曲目Mason’s Galaxy、今更ながらこの作品は宇宙に関連する組曲形式になっているようです。1曲目惑星からの退去、2曲目赤い粘土(火星?)、3曲目ワープ、5曲目小惑星の次は本曲での銀河ですから。シンセサイザーによるSEの後、Masonのドラムパターンの上で様々な楽器によるメロディ奏が効果的に用いられています。Freddie先発、イメージを膨らませつつ色々な音色を用いて助走し、シンセサイザーの音色と合わさります。続いてオルガンソロ、容赦無くフレーズを繰り出していますが、プログレッシヴ・ロックのオルガン奏者Keith Emersonをイメージしてしまいました。

7曲目Joe HenのオリジナルNo Me Esqueca(Don’t Forget Me)は63年初リーダー作「Page One」にRecorda Meというタイトルで初演されています。同曲を早いテンポで演奏するときにNo Me Esquecaの名称を使うそうですが、ここではさほど早いテンポ設定ではありません。73年のリーダー作「In Pursuit of Blackness」に改めて同名で、初演が2管でしたがアルト、テナー、トロンボーン3管編成のアンサンブル、2ndリフとドラムソロが加筆、演奏され、ヴァージョンアップでの収録になっています。こちらもJoe Henの代表曲に挙げられる名曲です。

ソロの先発はFreddie、この曲はお手の物といった雰囲気で流暢に演奏しています。Dave Hubbardのフルート、オルガンソロと続きJoe Henのソロ、豊かなイメージを持ちつつ手短にソロを終えています。個人的にはもっとたっぷりと演奏を聴きたかったですが。ラストテーマ、エンディングはMasonのドラムによるカラーリングが印象的です。

8曲目はアップテンポのスイング・ナンバーTyner、やはりMcCoy Tynerに捧げられたナンバーでしょうか。ホーンセクションによるテーマが分厚いサウンドを聴かせます。早いテンポにも関わらずEarlandのペダル・ベースはタイトです。MasonのシンバルレガートはAlbert Heathを思わせるグルーヴ、ジャズ屋本来のものとは異なります。ソロの先発はオルガン、続いてのEarlandがソプラノを演奏、Freddieのソロを挟んで再びEarlandの多重録音によるソプラノソロ、こちらのコンセプトは良く分かりません(汗)、被さるようにJoe Henのソロが始まります。こちらは早いテンポでもタイムの安定感がハンパありません!続くトランペットはEddie Henderson、4曲目のソロ時よりもかなり本領を発揮していると感じます。ラストテーマ後に全員がコレクティヴ・インプロヴィゼーションで終了です。

9曲目Van Jay、前曲よりもテンポの落ち着いたスイング・ナンバー、ドラマーが再びBrakeに変わります。パーカッション奏者のコンガ演奏がCTIの4ビート・ジャズを思い起こさせます。Joe Henの先発ソロは曲想にピッタリのゴージャスなノリを聴かせ、実にスリリングです!Freddieがやや間を空けてからの登場、超絶にしてグルーヴィー、早い、高い、凄いの三拍揃ったカッコ良過ぎなソロです!この後オルガンソロに続きますが、二人にトコトン盛り上がられて、もう場はペンペン草も生えていないでしょうに(笑)、まだ盛り上がります!ホーンのメロディが入り、フェードアウトでFineです。

10曲目最後を飾るのはボサノバのリズムのハッピーなナンバーNever Ending Melody、この曲でもBrakeがドラムを叩きます。先発のJoe Henは既に殆どの収録曲でイマジネーション溢れるソロを連発していますが、疲れを知らない子供のようにここでもクリエイティブさを全く失っていません!この事は続くFreddieの演奏にも言えます!オルガンのバッキングに煽られながら完全燃焼です。オルガンのソロ後ラストテーマを迎え、大団円です!

2019.07.04 Thu

Getz at the Gate / The Stan Getz Quartet Live at the Village Gate Nov. 26 1961

今回は先日リリースされた未発表音源、Stan Getz Quartetの1961年11月New York, Village Gateでのライブ「Getz at the Gate」を取り上げたいと思います。1961年11月26日NYC Village Gateにて録音

ts)Stan Getz p)Steve Kuhn b)John Neves ds)Roy Haynes

Disc 1 1)Announcement by Chip Monck 2)It’s Alright with Me 3)Wildwood 4)When the Sun Comes Out 5)Impressions 6)Airegin 7)Like Someone in Love 8)Woody’n You 9)Blues

Disc 2 1)Where Do You Go? 2)Yesterday’s Gardenias 3)Stella by Starlight 4)It’s You or No One 5)Spring Can Really Hang You Up the Most 6)52nd Street Theme 7)Jumpin’ with Symphony Sid

数多くの未発表音源リリースを手掛けたプロデューサーZev Feldman、よくぞ本作を発掘しました!彼が手掛けた代表作としてBill Evans「Some Other Time」Stan Getz 「Moments in the Time」Joao Gilberto / Stan Getz「Getz / Gilberto ’76」があります。録音テープの存在確認だけでも大変な労力を必要とする事でしょう。おそらく収納ケースには簡単なインデックスしか記載されていないテープをオープンリールデッキに載せて再生し、その内容を耳を頼りに誰がどんな演奏を行なっているのかを判断する。経験値が物を言う作業ですが、すぐに目的の作品が見つかるとは限らず徒労に終わる事もあるのは容易に推測できます。お目当てのテープを見つけたとしてもその後には参加アーティストや、演奏者が故人の場合その家族に発生する諸々の権利の確認〜承認承諾、レーベルの版権等事務的な手続きが山積みしていて、膨大なそれらをクリアーしてやっと陽の目を見ることが出来るのです。米国は個人の権利の国ですから。いずれにせよGetzの代表作に挙げてもおかしくない、彼の真髄を捉えた素晴らしいクオリティーの作品です。ジャズミュージシャンは基本的にライブ演奏でその本領を発揮しますが、それが見事に具現化されています。

本作録音の8日前、同じくNYCのライブハウスBirdlandでのライブを録音した作品「Stan Getz Quartet at Birdland 1961」、当Blogでも以前取り上げたことがありますが、AMラジオのエアチェック音源をCD化したものなので、演奏内容がとても素晴らしいのですが音質のクオリティが玉に瑕なのです。

参加メンバーを含めこちらの演奏の延長線上に本作が位置し、霞の中から突然に御神体が出現した如くの驚くべきクリアーさを伴った素晴らしい音質(エアチェック盤の音質に耳が慣れていましたから)、レパートリーはかなり重複しますがむしろ二つの演奏の比較を楽しむことが出来ます。こちらは正式な録音と思われますが、60年近く前のレコーディングとなれば膨大な量の録音に紛れその詳細は定かではありません。ましてや違うレコード会社の倉庫に保管され、眠っていたとなれば事は尚更です。十分な曲毎の演奏時間、61年の演奏とは信じられない緻密で現代的な演奏内容、十二分な演奏曲数、一晩の演奏を全て収録したと考えられるアルバム。GetzとSteve Kuhn、Roy Haynesの共演、エアチェック盤ではベーシストがJimmy GarrisonでしたがここではJohn Nevesに変わりますが、ドラマー、ベーシスト共にKuhnの推薦による参加だそうです。本作の内容は僕にとって意外な謎解き、また新たな問題提起、認識を新たにする事柄を有しており、子供の頃に毎月購読していた少年雑誌の増刊号(付録の数が急増しました!)の如き様相を呈しています(笑)。

それでは早速演奏曲に触れて行きましょう。Disc 1のトラック1は司会者によるアナウンスメントになりますがChip Monck、どこかで見たことがある名前と思いきや、こちらも以前当Blogで取り上げたLes McCannの作品、同じくVillage Gateでのライブ作品「Les McCann Ltd. in New York」の冒頭曲の曲名じゃあありませんか!あんな名曲に名前がクレジットされる人物、Chip Monckとは一体何者でしょう?彼は39年Maschusetts生まれのライトニング・エンジニア〜ステージの照明技師ですね、彼はVillage Gateで59年から働き始め、店の地下にあるアパートで生活し、照明の他に店で司会業もこなしていたようです。想像するに人懐っこい性格で出演ミュージシャンたちと親交が深く、信頼関係を築いていたのでしょう。Les McCannとは特に懇意にしていたに違いありません。彼はVillage Gateで働き続ける傍ら、Newport Folk FestivalとNewport Jazz Festivalにも関わり、同じくNYC HarlemのApollo Theaterでも照明技師を勤めていました。彼のように音楽好きで、裏方の仕事を積極的にこなしつつミュージシャンと好んで関わる人物が古今東西ジャズ界には欠かせません。

トラック2、MonckのMCに促されるように演奏の1曲目It’s Alright with Meが始まります。MCや拍手が遠くから聞こえて来るのでかなり奥行きのあるライブハウスのようです。

MCに被りながらGetzのカウントがスタート、リズムセクションによる8小節のイントロ後テーマ開始です。テナーの音像、音色、定位ともちょうど良い所に位置し、申し分ありません!これから始まるカルテットの演奏をリスナーにぐっと引きつけるためのアドバンテージです。2ビートフィール、サビはスイング、2ビートから2小節ピックアップを経てソロ開始です。早速Kuhnはバッキングを停止、これもColtraneとの共演から学んだ一つでしょう。2コーラス目からバッキング開始、その間もGetzは快調に飛ばしています。HaynesとNevesのコンビネーションも抜群、Garrisonとのコンビも良かったですがそれを上回るビートを感じます。ドラムの音像がテナーのタイム感と絶妙のコントラストを描き、リズムの洪水となり押し寄せて来ます。続くピアノのソロ、タッチの細部まで収録されフレージングのアイデアと相俟ってリリシズムを聴かせます。その後テナーとドラムのバース開始、いや〜素晴らしいトレードです!互いのフレーズに寄り添いつつもどっぷりとは嵌らず、付かず離れず、音楽を熟知したマエストロのみが成し得る次元のやり取りが聴かれます。その後ラストテーマは後半から演奏され、エンディングはその場のアイデアによるものでしょう、スリリングなキメが演奏されFineです。

2曲目Wildwoodはバードランドのライヴでも演奏されていたジジ・グライスのナンバー。古き良きアメリカの長閑さを感じさせるムーディなテーマ後、Getzはアイデアを満載させながら縦横無尽に吹きまくっています。様々なニュアンス、音色の自在な使い分け、ダイナミクスの振れ幅は実にスリリングです。続くKuhnのピアノはBill Evansのテイストを感じさせながら、背の高いピアニストに見られる力強い打鍵を聴かせます。その後ベースソロ、ドラムとのバースを経てラストテーマへ。

3曲目も同様にバードランド盤で聴かれるHarold ArlenのバラードWhen the Sun Comes Out、低音域でのサブトーンとビブラート表現の多彩さ、ppからffまでの音量のダイナミクス、時に高音域でのシャウトを交え、非凡な唄心が聴き手を深遠な美の世界へと誘います。ピアノソロはなくテナーの独壇場で終始します。テナーフィーチャーの後はリズムセクションをフィーチャーしたナンバーに続きます。

4曲目はなんとJohn Coltrane作曲、しかもGetzは演奏せずにピアノトリオをフィーチャーしたImpressionsです!彼自身がこの曲での演奏をリタイアしたのか、お気に入りのピアニストKuhnをフィーチャーするためだったのか分かりませんが、GetzのMCで「リズム隊をフィーチャーしてMiles Davisの作品So Whatをお送りします」と紹介している点に興味が惹かれます。GetzともなればSo Whatという曲をまず知っているでしょう。考えられるのは①直前までリズムセクションはSo Whatを演奏する予定でその旨をバンマスであるGetzに伝えていたが、ベーシストがメロディ演奏に自信がなく直前になって弾けないと言い出したので、ピアノがメロディを演奏する同じコード進行のImpressionsに変えた。②GetzはImpressionsの原曲がSo Whatと知っており、Coltraneがそのコード進行を拝借して曲を書いた事をあまり良くは思わず、シニカルなGetzは敢えてMiles DavisのSo Whatと紹介した。③61年当時はSo WhatとImpressionsの区別は特に無く、ImpressionsもSo Whatと言った。

他にも単なるGetzの勘違いとも言えなくはありませんが、聡明な彼に限ってステージ上でそんなケアレスミスをするとは考えられません。So WhatやImpressionsを本当に知らなかったのか…真相に関して機会があればご存命の参加ミュージシャンにぜひ尋ねて見たいものですが、60年も昔の話ですから…

肝心の演奏ですがユニークなアプローチのImpressionsです。テーマ奏から斬新、Bill Evansを彷彿とさせる瞬間が多々ありますが、KuhnならではのMode解釈も光り、Ⅱm7-Ⅴ7のようにコーダルにも捉えつつ、Dorian ModeではなくMixo-Lydianを意識してもフレージングしています。I’m Old Fashonedのメロディを引用したりと12分近くの長さの演奏ですが、全く冗長さを感じさせません。ベースソロ後再びピアノソロ、ドラムと8バース、ラストテーマ、全編に渡ってHaynesのドラミングが素晴らしいサポートを聴かせています。

5曲目はACの冒頭を飾ったSonny Rollinsの名曲Airegin、アップテンポにも関わらず実にたっぷりとして安定したタイム感、しかも難しいコード進行をスキー競技のスラロームのように、いとも容易く潜り抜けて行きます!なんと密度の濃い、そして全てに余裕を感じさせるスインガー振りです!あまりの物凄さからでしょう、Getzのソロが終わった瞬間に客席から?笑い声すら聴こえてきます。続くピアノソロも大健闘、その後のドラムとのバース、こちらもネタ切れという言葉、そんな概念は微塵も存在しません!どんどん良くなる法華の太鼓(笑)、凄いバンドの物凄い瞬間を捉えた演奏です!

6曲目はスタンダードナンバーLike Someone in Love、この曲のキーはA♭、Cで演奏されますがここでは少数派?のE♭。幾分早めのテンポ設定でリズムセクションが熱演しますが、特にドラムのテナープレイへの寄り添い方が絶妙です!Kuhnの演奏もよりEvansのアプローチを感じます。ベースソロ後再びドラムと8バース、無尽蔵とも思えるHaynesのフレージング、アプローチに一層感心してしまいます!

7曲目もAC収録、この頃のGetzの十八番のナンバー、Dizzy GillespieのWoody’n You、Getzのいつものテンポ設定よりもかなり早い演奏、バンドの演奏はさらに白熱し、ありきたりな表現で恐縮ですが、留まるところを知りません!Getzにはとうとうスイングの神が降臨したようです!Kuhnも負けじとばかりにベースに煽られ?煽りながら?スイングしています。短いベースソロ(リズムの解釈が素晴らしい!)、ドラムの8バースを経てラストテーマへ、興味深いターンバックが付加されてFineです。

8曲目はBluesとタイトルされた即興のブルース・ナンバー、流石にリラックスしたテイスト・チューンが選曲されましたが、バンドのスイング道探求は一向に止むところを知りません!Getzはブルース進行とは名ばかりに(爆)好き勝手に唄い捲っています!Haynesのグルーヴが火のついたGetzに油を注いでいるのです!Kuhn、Nevesもブルースらしからぬソロを展開、ドラムとの4バースを経てテーマらしいテーマもなく終了、ここまでがDisc 1になります。

Disc 2の1曲目、ACにも収録のAlec Wilder作曲のバラードWhere Do You Go?、耽美的な様相を呈したストレートなメロディ奏、短いながらもとても印象的な演奏です。

2曲目Yesterday’s GardeniasもACで演奏されているミディアムテンポのナンバー、Getzは知られざる佳曲を発掘する名人でもあります。小粋に鼻歌感覚での演奏は他の演奏と一線を画す癒し系の印象です。続くピアノ、ベースソロもGetzのテイストを反映させているが如し、言ってみれば箸休め的な演奏です。

3曲目スタンダードナンバーStella by Starlight、普通はキーB♭メジャーで演奏されますがここではGメジャーです。52年録音Getzの代表作の1枚である「Stan Getz Plays」にも収録されています。テーマ奏でのGetzの「コーッ」という音色が堪りません!コンパクトな演奏の中にも大きな唄を感じさせるプレイです。

4曲目Jule Styneの名曲It’s You or No One、Getzが取り上げるのは珍しく、僕の知る限り初演と思われます。Dexter GordonやJackie McLeanの演奏で有名ですが、ここではキーがE♭メジャー、Haynesのドラミングが的確にサポートしつつ演奏が行われますが、珍しくGetzが曲に乗り切れていない印象を受けました。自分の好みのテイストでは無かったのか、恐らく以降演奏されなかったと思います。

5曲目美しいメロディのバラードSpring Can Really Hang You Up the Most、再びGetzの演奏だけで終始する演奏、何と気持ち良く耳に入り、心に響く唄い方でしょう!Haynesはバラードでも個性的なアプローチを展開しますが、ここでもブラシワークがトリッキーでいて決して演奏の邪魔をしない音楽的なプレイを聴かせています。ピアニストAlbert DaileyとGetzの83年録音Duo作品「Poetry」にも収録されていますが、こちらも大変美しい演奏です。

6曲目はThelonious Monk作曲の52nd Street Theme、49年8月録音「The Amazing Bud Powell Vol.1」に収録されていますが、こちらもドラマーがRoy Haynesです。Rhythm Change形式のコード進行、お得意のアップテンポで演奏されています。4度進行のフレージング、一つのフレーズの譜割りをずらしたりとアプローチが多彩です。何しろタイム感が素晴らしいので何をやってもカッコイイのですが。Kuhnも曲のテイストの中で、サウンドするようにと的確にアドリブをしています。そしてこの曲の目玉はHaynesのフリードラムソロです。この人の型にはまらない不定形なソロのアプローチは実に魅力的です!ここでも様々なモチーフを基に(Salt Peanutsのメロディさえ聴こえて来ます!)、ダイナミクスのショウケースとも言える自由奔放なロングソロを展開しています。後テーマのサビもドラムソロで締め括っており、エンディングでHaynes自身が「Thank You!」と挨拶しています。

7曲目最後を飾るのはACでもラストに演奏されていたLester YoungのJumpin’ With Symphony Sidですが、ルンバのリズムのドラム・イントロに続いてテナー1人でまずThe Breeze and Iを演奏します。ウケ狙いで?わざと?メロディを間違えて吹いていますが、その直後How High the Moonを吹きますが観客から?ブルースをリクエストされ、Symphony Sidを演奏し始めます。フリーキーな音を楽しげに吹いていたりと、いつになく上機嫌さを感じさせるGetz 、きっと当夜の演奏にかなり納得していたのでしょう、リラックスした雰囲気でロングソロを取っています。同様にピアノ、ベースもソロをたっぷりと演奏しますが、ベースソロが終わりそうでなかなか終わりません!というよりも後テーマ担当のリーダーが不在?Getzはどこかに出掛けてしまったのでしょうか?間を保たすべく?再びピアノソロが始まります(汗)。このソロも何やら長いですね、Kuhnオールド・スタイルでソロを続けますが、Getzはステージに戻って来なかったのでしょう、婦女子を伴って何処かに呑みに行ってしまったのかも知れません(苦笑)、Kuhnがエンディングを担当して強制終了です!