Recorded: March 3, 1972. A&R Studios, New York City Label: Columbia Producer: Stan Getz
ts)Stan Getz electric piano)Chick Corea b)Stanley Clarke ds)Tony Williams perc)Airto Moreira
1)La Fiesta 2)Five Hundred Miles High 3)Captain Marvel 4)Times Lie 5)Lush Life 6)Day Waves
Getzの伝記「Stan Getz / A Life in Jazz: Donald L. Magginースタン・ゲッツ―音楽を生きる―村上春樹訳」によると、この作品録音の少し前、彼は生活が荒れて体調も優れない日々が続いていたようです。レジェンド・ジャズミュージシャンの伝記はその数だけ世の中に出回っていますが、Getzの場合も御多分に漏れず出版されており、日本ではジャズ通として名高い作家、村上春樹氏が翻訳を手掛け、微に入り細に入り的確な表現で読むことが出来ます。熱心なGetzファンの方ならこの本をご存知の事でしょう、ひょっとしたら座右の書にして彼の音楽的歩みを紐解きながら作品を鑑賞しているかも知れません。実は僕はその一人なのですが、前後作品との関連性と成り立ち、ミュージシャンやレコード会社とそのスタッフとの関わり、Getz自身の思い、家族との葛藤や愛情を辿りながら彼の作品を聴く事は、新たな発見や種明かしにも通じて、Getzの音楽を知る上での実に楽しい行為の一つです。それにしてもよくもこれだけ生々しく赤裸々に、全てを曝け出すように人生を吐露出来るのか、詳細に述べられている記述、Miles Davisの自伝の時もそうでしたが本人の驚異的な記憶力、また綿密な周囲へのリサーチ、事実関係の確認には頭が下がります。
CoreaがGetzの自宅に連れてきたのはStanley ClarkeとAirto Moreiraの二人で、Coreaを含めるとピアノトリオが出来上がり、そこにGetzを加えたカルテットで自分の曲を演奏するという目論見があったのでしょう。Clarkeは70年にHorace Silverのバンドで演奏しているところをCoreaに見染められ、MoreiraはMiles Davis Bandでの共演仲間でした。GetzはCoreaの新曲を大変気に入りました。「 Sweet Rain」収録とは異なり、今回用意されたナンバーは曲自体の構成もより明確に、メッセージ色が強くなり、またスパニッシュのムードをたたえた斬新なコンセプトから成ります。Clarkeのベースプレイにも感心しましたが、Moreiraのパーカッショニストとしての実力は認めたものの、ドラマーとしての伴奏能力には物足りなさを覚えたので、レコーディングに際して名ドラマーTony Williamsを起用し、Moreiraはバンドのパーカッシヴな領域を広げる役に配して対応することにしました。TonyはGetzの演奏に確実に寄り添う形で、しかも驚異的なセンスとパワーを兼ね備えたドラミングを披露し、MoreiraはTonyを補強しつつよりカラーリングする役割を担当、Clarkeのベースともコンビネーションの良さを聴かせ、結果この采配は大成功となりました。このメンバーでのRainbow Grillでの演奏は大変な評判を呼び、彼ら自身もCoreaのオリジナルという新鮮な素材を文字通りグリルし、じっくりと煮詰めて行くことが出来たので、レコーディングへの良いリハーサルとなりました。
それでは演奏に触れて行きたいと思います。1曲目はCoreaの書いた名曲中の名曲La Fiesta、本作録音のちょうど1ヶ月後の2月2〜3日、レコーディング・スタジオも全く同じNYC A&Rスタジオにて彼の代表作「Return to Forever」が録音されましたが、レコードのSide Bにおいて組曲形式でLa Fiestaを再録音しています。Coreaはやはり全曲エレクトリック・ピアノを弾き、サックス奏者にJoe Farrell、パーカッションを担当していたMoreiraがドラムの椅子に座り、そのMoreiraの奥方Flora Purimがボーカルを担当、Tonyのドラムは参加せず5人編成の演奏で、70年代を代表するアルバムが録音されたのです。以降作品タイトルReturn to Foreverをバンド名とし、メンバーチェンジを繰り返しながらギタリストを加えたり様々な編成にトライしつつ、次第にエレクトリック色が濃くなり、精力的な活動で計11作をリリースして。
Fender Rhodesによるイントロに導かれベース、ドラム、パーカッションが同時に加わりますがこの時点でリズミックなテンションが炸裂しています。Moreiraにパーカッションを演奏させたGetzの目利きにまず感心させられますが、様々な打楽器を駆使して繰り出すリズムの饗宴!Tonyにリズムの要、Getzの演奏への対応をほぼ一任し、Moreiraは細かい8分の6拍子を担当、リズムの祭り(Fiesta)を華やかに演じます!裏メロと思しきラインをCoreaが弾き、被るようにGetzによる主旋律が登場します。1ヶ月後の「Return to Forever」でのJoe Farrellによる演奏はソプラノサックスによるもの、こちらも実によく耳にしたメロディ奏なので違いがはっきりと伝わって来ますが、Getz特有のくぐもったハスキーな音色は奥行きを感じさせ、名曲は如何様にしても異なった魅力を発揮すると再認識しました。幾つかのメロディセクションから成るこの曲の、場面毎のリズムセクションのダイナミクス付け、グルーヴの変化に繊細さと大胆さを感じますし、Clarkeの変幻自在なベースラインの見事さには天賦の才を見せつけられました!スパニッシュ・モードから成るソロセクション、こちらはCoreaの歴代オリジナルに用いられていたパートの発展形と言えます。「Now He Sings, Now He Sobs」収録のSteps – What Was、「Sweet Rain」収録のWindows、両曲で部分的に聴かれていたスパニッシュ・モードを大胆に、全面に押し出し、結果その代表曲となり、そして同年10月に録音された「Lght as a Feather」収録、Coreaの代表曲にして傑作ナンバーSpainへと繋がって行きます。
5曲目はBilly Strayhornの名曲Lush Life、Getzはバラードの名手でもありますし、時期限定で取り上げる曲のチョイスが素敵です。バースはルパートで始まり、エレピとアルコが伴奏を努めます。テーマからインテンポでTonyがブラシを携え参加しますが既に倍テンポの様相を呈しており、いきなりスティックが登場して一瞬スイングのリズムになりますが、すぐさまリタルダンド、演奏終了です。ちなみにTonyのバラード演奏でブラシを一切使わず初めからスティックを用いて行われているのが、76年録音作品「I’m Old Fashioned : Sadao Watanabe with the Great Jazz Trio」に収録されている、同じくStrayhorn作Chelsea Bridge です。外連味のないストレートな演奏に仕上がっていますが、印象的なナンバーです。
今回はピアニストAlan Pasquaの1993年初リーダー作「Milagro」を取り上げてみましょう。Jack DeJohnette, Dave Hollandらの素晴らしいリズムセクションにMichael Breckerがゲスト参加、名曲揃いのオリジナルで盛り上がり、時にユニークな楽器構成のホーン・アンサンブルも加えて美しく荘厳な世界を作り上げています。
Recorded on October 10 and 11, 1993, at Sound on Sound, New York City.
Produced by Ralph Simon. Associate Producer: Joe Barbaria. Executive Producer: Sibyl R. Golden.
p)Alan Pasqua b)Dave Holland ds)Jack DeJohnette ts)Michael Brecker french horn)John Clark tp, flg)Willie Olenick alt-fl)Roger Rosenberg tb, btb)Jack Schatz bcl)Dave Tofani
1)Acoma 2)Rio Grande 3)A Sleeping Child 4)The Law of Diminishing Returns 5)Twilight 6)All of You 7)Milagro 8)L’Inverno 9)Heartland 10)I’ll Take You Home Again, Kathleen(For My Kathleen)
Alan Pasquaは1952年6月28日New Jersey生まれ。Indiana UniversityとNew England Conservatory of Musicで学び、レジェンド・ピアニストであるJaki Byardにも師事したそうです。彼のプレイの根底にあるものはJazzであり、Tony Williams, Peter Erskine(現在も共演は継続中、Peterとは学生時代の仲間だそうです), Allan Holdsworthたち錚々たるジャズマンとの共演は当然の流れによるものですが、Bob Dylan, Carlos Santana, Cher, Michael Buble, Joe Walsh, Pat Benatar, Rick Springfield, John Fogerty, Ray Charles, Aretha Franklin, Elton Johnら世界的大御所ポップ、ロック・ミュージシャンのバンドで全世界ツアーを重ねています。またJohn Williams, Quincy Jones, Dave Grusin, Jerry Goldsmith, Henry Manciniら名アレンジャーともコラボレーションを重ね、Disneyの映画音楽、CBS Evening Newsのテーマ音楽を手掛けるなど、Show Businessの世界でも八面六臂の活躍ぶりです。音楽的な幅の広さが為せる技以外の何物でもありませんが、彼にとってみればジャンルやフィールドは関係なく、良い演奏、表現をする事だけが全てなのだと思います。ミュージシャンとして全世界を駆け巡っている以上様々な体験をしているはずですが、その中でも近年の特筆すべき経歴として、2017年Bob Dylanのノーベル文学賞受賞に際しての講演(受賞講演が受賞にあたって唯一の条件で、授賞式2016年12月10日から6カ月以内に行わなければならない)は録音されたもので行われましたが、その際にPasquaがソロピアノ演奏を行ったそうです。Pasquaには大御所たちにアピールする音楽的な何かがあり、彼と一緒に演奏したい、メンバーに留めて置きたいと感じさせる魅力に溢れているのでしょう。41歳にしての初リーダー作録音は大御所ミュージシャンから引く手数多ゆえ、なかなか自己表現にまで手が回らなかったからでしょうか。
この作品ではJack DeJohnette, Dave Hollandとのトリオ演奏を中核として、他にフレンチホルン、トランペット&フリューゲルホルン、アルトフルート、バスクラリネットから成る、比較的弱音の管楽器を用いてのアンサンブルが4曲収録されていますが、ここでイメージさせられるのがHerbie Hancockの68年録音リーダー作「Speak Like a Child」です。この作品では同様にアルト・フルート、フリューゲルホルン、バストロンボーンの3管編成が、斬新にして深淵、柔らかさとふくよかさが半端ないアンサンブルを聴かせており、Hancockのピアノプレイをとことんバックアップし、サウンドを立体的に浮かび上がらせています。ピアノトリオ演奏を他の楽器を用いて映えさせる手立てとして、例えばトランペット、サックス、トロンボーンによるトラッドなアンサンブルではエッジが立ち過ぎてピアノの演奏を打ち消す、埋もれさせてしまうでしょうし、ストリングス・セクションではバラード等のゆっくりとした曲にはむしろうってつけですが、テンポのある演奏には切れ味がどうしても鈍くなる傾向にあります。Hancockのシャープでスピード感のある演奏には管楽器の音の立ち上がりを持ってして丁度良く、そこで楽器編成に工夫を重ね、凝らした結果が「Speak Like ~」での管楽器構成になったのだと推測しています。とあるピアニストが「 Speak Like ~」はピアノトリオを自己表現の媒体とするプレーヤーにとって、ある種理想の形態だと発言していましたが、まさしく言い得て妙だと思います。
4曲目Michaelを迎えてカルテットで演奏されるThe Law of Diminishing Returns、これは!!タイトルもですが物凄い曲!そして壮絶な演奏です!タイトルは経済学用語で「収穫逓減」を意味するらしいですが、意味はよく分かりません(汗)。テーマの構成は複数のフラグメントが組み合わされつつ複雑に入り組み、しかし事も無げに同時進行し、完璧なバランス感がキープされつつ実にスリリングに演奏されます。要となるのはDeJohnetteのドラム、各フラグメントの接着剤となるべく巧みなフィルインの連続、間違いなくこの人の存在なくしては楽曲は成り立たなかったでしょう!ソロの先発はPasqua、曲が凄けりゃ演奏は更に物凄いとばかりに集中力と繊細さと大胆さを武器に、百戦錬磨のツワモノたちDeJohnetteとHollandをパートナーに究極の共同作業を行います!う〜ん、素晴らしいです!でも、え?終わりですか?もっと聴きたい!と言う腹八分目のところでMichaelのソロになります。彼のゲスト参加での傾向の一つとして、リーダーのソロが自分の前に行なわれた場合、リーダーの演奏を立ててそこでの盛り上がり以上にはならないように、抑制を効かせる場合があります。2曲目Rio Grandeでは若干その傾向がありましたが、こちらではどうでしょう、Pasquaの幾分抑えめのソロ終了時にメッセージで「Go ahead, Mike!」とオペレーションの指示があったようです(笑)。ピアノソロのイメージを受け継ぎ、Michael助走を始めます。リズムセクションにサポートされつつHop, Step, Jumpと飛翔を遂げますが、DeJohnetteの一触即発体制でのレスポンスが堪りません!決して定形での対処ではなく、極めて不定形での自然発生的な呼応の数々、そしてPasquaのバッキングも緻密さを前面に出しつつ、ドラムの呼応に被ることを決してせず、異なる切り口からMichaelのソロをプッシュし続けます!と言うことで共演者の大いなる支援を得て(笑)、Michaelフリーキーにイってます!!その後のソロコーラスを用いてのドラムソロ、いや〜ヤバイくらいにカッコ良いです!ここでのDeJohnette, Hollandとの共演の手応えが同メンバーにPat Metheny, McCoy Tyner, Joey Calderazzo, Don Aliasを加えたMichael1996年リリースの傑作「Tales From the Hudson」へと繋がって行きます。エンディングでのDeJohnette、まだ曲が続くと勘違いしたのでしょうか、珍しく中途半端な終わり方をしています(汗)
6曲目スタンダードナンバーでCole Porter作の名曲All of You、比較的早めのテンポが設定されています。コードのリハーモナイズ感、フィルイン、アドリブラインの独特さ、DeJohnette, Hollandの目も覚めるような伴奏により、この曲のまた別な名演が誕生しました。Hollandのソロも素晴らしいです!それにしてもDeJohnetteは曲想によって演奏アプローチ、叩き方をどうしてこうも見事に変えることが出来るのでしょうか?これ以上は考えられないという程の的確さにいつもシビれてしまいます!
9曲目Heartlandは3管編成によるアンサンブルを活かしたナンバーですが、シンプルなメロディに付けられた相反するが如きハイパーなコードと、ホーンのアンサンブルのハーモニーがヤバ過ぎです!ところが最後にトニック・コードにストンと落ち着く辺りの絶妙さは、ちょっとこれ、ありえへんレベルとちゃいまっか?… なぜか関西弁になってしまうほどのインパクトです!(爆)。イントロやインタールードでフルートを吹くRosenbergのフィルインが聴かれ、アンサンブルでのバストロンボーンが重厚さをアピールします。まずピアノソロがフィーチャーされますがリアル「Speak Like a Child」状態、ホーンアンサンブルが実に心地よいのですが、ベース、ドラムのインタープレイも凄まじいまでの主張を聴かせます。Pasquaのソロはリリカルで知的、かつ気持ち良く演奏している様が伺えます。続くベースソロも攻めまくっていますが、曲の持つムードとコード進行、ピアノソロ時のトリオのコンビネーション、アンサンブルの重厚さなどがHollandのスインガー魂を刺激した結果なのでしょう。
10曲目I’ll Take You Home Again, Kathleen(For My Kathleen)は作品のエピローグとして、愛する奥方でしょうか?捧げられた演奏になります。古い米国のポピュラーソング、Elvis Presleyの歌唱で知られているようです。
1)Gemini 2)Bruh Slim 3)Goodbye 4)Dew and Mud 5)Make Someone Happy 6)The More I See You 7)Prospecting
Jimmy Heathは1926年10月25日数多くのジャズマンを輩出したPhiladelphia生まれ、家族全員が音楽家という環境で育ちました。本作参加のベーシストPercyは長兄、ドラマーAlbertは弟でHeath三兄弟として名高く、同じくPhiladelphia出身のピアニストStanley Cowellを加えたカルテット編成で、The Heath Brothersとしてもパーマネントに活動し、75年作品「Marchin’ On!」を皮切りに計10作をリリースしました。兄弟、親子関係でバンドを組む、共演するミュージシャンは多く、同じ屋根の下で寝食を共にし価値観を共有したゆえに音楽的嗜好、センス、そしてタイム感、グルーヴが似る傾向があると思います。Heath兄弟も多分に漏れません。やはり同世代で大活躍したHank, Thad, ElvinのJones三兄弟の場合は、三者三様の全く違う音楽性や卓越した個性ゆえに例外的な存在かも知れませんが、ジャズシーン第一線で活躍し続けた各々の楽器のエキスパートと言う点では、同じ立ち位置にいました。
Jimmyはテナーサックス奏者であると同時に優れたコンポーザー、アレンジャーでもあります。彼の魅力的なオリジナルは他のジャズマンにも好んで取り上げられ、Miles Davis66年録音作品「Miles Smiles」でGinger Bread Boyを、53年録音「Miles Davis Vol.1」、Lee Morgan57年録音「Candy」、時代はグッと新しくなり93年Chick Corea Elektric Band Ⅱ「Paint the World」でC. T. A.が演奏されています。
アレンジャーとしては56年10月26日録音Chet Bakerのリーダー作「Chet Baker Big Band」(実際にはフルバンドよりも人数の少ないビッグコンボ編成)で3曲素晴らしいアレンジを提供し(Art Pepprのリードアルトが実に美しいです!)、間髪を入れず今度はコンポーザー / アレンジャーとしての手腕を存分に発揮し、5日後の同月31日Chet BakerとArt Pepperの共同名義コンボ作品「Playboys」に本人不参加にも関わらず収録7曲中5曲彼のオリジナルが取り上げられ録音、テナーサックスにPhil Ursoを加えた3管編成による重厚でオシャレなアンサンブルを書いています。因みにこちらでもC. T. A.が演奏されています。
50年代以降のテナーサックス奏者の多くは演奏の他に作曲の才能も開花させています。John Coltrane然り、Benny Golson, Sonny Rollins, Wayne Shorter, Joe Henderson…彼らの演奏スタイルとテナーの音色、ライティングは見事に一致し三位一体、濃密なこれらは切っても切り離せない関係にあります。Jimmy Heathの作曲の才も彼ら歴史に名を連ねるテナータイタン達のそれに十分並び称されますし、3管編成〜ビッグバンドのアレンジにも素晴らしいセンスを発揮しています。ソロプレイでの押しの強さに加えてそこに作曲・アレンジと同等のセンス、音色の魅力がアピール出来たのなら、よりジャズ界に君臨していた事でしょう。
Heath Brothers以外のメンバー、まずFreddie Hubbardの本作全篇に渡る絶好調ぶりは特筆すべきです!当時の彼は60年にOrnette Coleman、61年John Coltraneとの共演を果たし、62年からLee Morganの後釜としてArt Blakey & the Jazz Messengersに参加しており、サイドマンとして十二分に実力を発揮できる経験を積んでおり、ブリリアントでジャジーな音色、正確無比でグルーヴィーなタイム感、迸るアイデア満載のインプロヴィゼーションは聴く者を魅了してやみません。ジャズには珍しいFrench Horn奏者のJulius Watkinsは40年代末から70年にかけて、実に多くの作品に参加しアンサンブルはもちろん、難易度の高い楽器を巧みに駆使し味わいあるソロを聴かせました。ピアニストCedar Waltonも当時すでにJazz Messengersの一員、それまでにもKenny Dorhamのバンド、ColtraneのGiant Steps初テイクセッションやArt Farmer & Benny Golson the Jazztetに参加し、頭角を表していました。
4曲目JimmyのナンバーDew and Mud、1コーラスのドラムソロからイントロが始まるブルースナンバーです。この曲でもJimmyのホーン・ハーモニー・ライティングと管楽器の用い方はマトを得ており、サウンドを熟知したアレンジャー然としたものを感じます。テナーが先発ソロ、本作中最もホットなテイストを感じさせる演奏です。Watkinsのソロが続き、意表を突くメロディラインを用いたセカンドリフの後、これまたトランペットが場面を刷新するが如き入り方を用いたソロ、カッコいいですね!ファンキーなテイストのピアノソロを経て、ラストテーマへ。エンディングのキメもグッドです!
6曲目同じくリーダーをフィーチャーしたスタンダードナンバーThe More I See You、アレンジ面では曲の雰囲気や構成を緻密に捉え、繊細さを伴いつつ大胆にかつ華麗にサウンドを構築するJimmyですが、自身のテナー奏ではそうは行かないようです(汗)。前曲とのソロ演奏の差異を感じるのが困難な状態で、ワンホーンによるテナーフィーチャーはどちらか1曲で十分であったと思います。